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知的創造のヒント [読書・ライフスタイル]

 「知的創造のヒント」 外山滋比古 (講談社現代新書)


 著者自身が行っている、知的創造のためのトレーニング法について紹介した著書です。
 1977年に出た講談社新書版は絶版ですが、ちくま文庫に入って読み継がれています。


知的創造のヒント (講談社現代新書 490)

知的創造のヒント (講談社現代新書 490)

  • 作者: 外山 滋比古
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2024/04/14
  • メディア: 新書



知的創造のヒント (ちくま学芸文庫 ト 10-2)

知的創造のヒント (ちくま学芸文庫 ト 10-2)

  • 作者: 外山 滋比古
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2008/10/08
  • メディア: 文庫



 グライダーが空を飛ぶことができるのは、誰かが引っ張ってくれるおかげなのです。
 落ちそうになったらまた引っ張る。教育は、グライダー効果を狙っているようです。

 彼らに「さあ自由に飛んでみよ」と言ったら、優秀な人ほど途方にくれるでしょう。
 しかし、我々は落ちるリスクを冒してでも、自分のエンジンで飛ぶ必要があります。

 というように、いつもの外山節で始まります。外山一流の比喩が際立ちます。
 さまざまな比喩を用いて、「創造すること」の大切さとその方法を教えてくれます。

 私たちは、面白いアイディアがあると、それを借りてきて真似しようとしがちです。
 しかし借りてきたアイディアは、花の咲いている枝を切って来たようなものです。

 切り花には根がないから、たちまち枯れてしまいます。学校教育もまた同じです。
 アイディアは、人間の心という土壌の中で芽を出した植物でなければなりません。

 そういうアイディアは、出来上がるまでしばらく寝かせておくことが大事です。
 「その間に種子は精神の土壌の中で爆発的発芽の瞬間を準備する。」と言います。

 ほかたいへん参考になることが多いです。私は本書で外山滋比古にはまりました。
 ただし、1983年刊行のロングセラー「思考の整理学」と、一部内容がかぶります。
 「思考の生理学」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2022-10-09

 本書でもっとも印象に残っているのが、冒頭の「啐啄(そったく)の機」の話です。
 それは、孵化した卵を親鳥が外からつつくのと、雛が殻を破る呼吸が合うことです。

 自然の摂理は精巧で、親鳥は早くも遅くもない絶妙なタイミングで卵をつつきます。
 アイディアもまた、充分な時間をかけて温め、ちょうどよい時期に生み出すのです。

 7章では、本は面白いところでわざと離れる、という読書法を紹介しています。
 あえて読みさすことで先が気になり、次回本に入り込みやすくなると言うのです。

 ただし、これはいつでも本が読める人の方法でしょう、と私はツッコミたいです。
 私事ですが最近やたらと忙しくて、読みかけの本たちが気になって気になって・・・

 3月じゅうに、「ミドルマーチ」は全4巻すべてを読み終えておくべきでした。
 まったく本が読めていないので、今回も、大学時代に読んだ本書を紹介しています。

 さて外山には、同じ講談社現代新書から出た「読書の方法」という著書もあります。
 読書には、既知を読むアルファー読みと未知を読むベーター読みがあると言います。

 さらに、既知のものを指すアルファー語と未知のものを指すベーター語があって・・・ 
 と続きますが、そのように小難しい分類をする意味が、私には分かりませんでした。


読書の方法: 未知を読む (講談社現代新書 633)

読書の方法: 未知を読む (講談社現代新書 633)

  • 作者: 外山 滋比古
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1981/11/01
  • メディア: 新書



 さいごに。(先週の読書は0ページ)

 4月も2週目に入って、忙しさが倍増しました。まるで冗談のように忙しいです。
 もちろん、本なんて読めません。この1週間の読書は0ページです。ああ・・・

 世の中には「本なんて読まない」という人もいます。そういう人が少し羨ましい。
 ドロシアとラディスローがこの先どうなるのか、気になって仕方がありません。

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知的生産の技術 [読書・ライフスタイル]

 「知的生産の技術」 梅棹忠夫 (岩波新書)


 まだパソコンがない時代に、知的生産活動の実践的技術について提案した著書です。
 1969年に出ました。今なお読み継がれている、知的生産についての古典的名著です。


知的生産の技術 (岩波新書 青版 722)

知的生産の技術 (岩波新書 青版 722)

  • 作者: 梅棹 忠夫
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2024/04/06
  • メディア: 新書



 梅棹は「知的生産」を「頭を働かせて何か新しい情報を提出すること」と言います。
 そして、梅棹自身が行っているその実践的な方法を、次の11章で解説しています。

 ①発見の手帳 ②ノートからカードへ ③カードとその使い方 ④きりぬきと規格化
 ⑤整理と事務 ⑥読書 ⑦ペンからタイプライターへ ⑧手紙 ⑨日記と記録
 ⑩原稿 ⑪文章

 ①の「発見の手帳」とは、毎日の生活体験における発見や着想を記述する手帳です。
 いつでも書けるように持ち歩き、思いついたらその場で文章にして記述します。

 ②では、ノートが整理に向かないため、カードを使い始めたことが書かれています。
 さまざまな発見もカードに書けば、それを並び替えることで、思考が整理されます。

 ③では、そのカードを説明します。B6判のそれを「京大型カード」と呼びます。
 いつでも持って歩き、一枚一項目を原則に書きつけ、書いたら忘れてもいいのです。

 カードで大事なことは組み換え操作であり、並び替えたとき意外な発見があります。
 そしたらその発見もカード化します。そのときカードは創造の装置となるのです。

 ④は、新聞切り抜きをフォルダーに保存する、オープン・ファイル方式の説明です。
 その際、定型の台紙に貼ることで、切り抜きは規格化され、カード化されるのです。

 ⑤では、「垂直式ファイリング・システム」という、文書整理法を紹介しています。
 それは、二つ折りフォルダーに書類を挟み、カードのように立てて並べるものです。

 ⑥では、読書の仕方や、その後の「読書カード」の作り方などを紹介しています。
 本に傍線を引きながら読み、何日か寝かせてから、カードにしていくのだそうです。

 ⑦では、タイプライターの必要性を訴え、⑧では、手紙の形式化を提唱しています。
 ⑨で、日記のカード化を考え、⑩と⑪では、原稿化と文章化のコツを伝えています。

 さて、本書でもっとも有名な箇所は、②と③における「京大型カード」の説明です。
 梅棹が図書館用品店に注文して作ったカードは、本書でさらに有名になりました。

 一方、私が個人的にもっとも興味を覚えた箇所は、もちろん⑥における読書法です。
 私のこのブログは、考えてみると、梅棹の「読書ノート」の代わりになっています。

 ところで、私の持っているこの本は1991年の第49刷です。社会人2年目の年です。
 働き始めたばかりの、仕事に追われる中、自分だけの「知的生活」に憧れたのです。

 「知的生活の方法」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2018-04-24
 「考える技術・書く技術」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2018-04-21
 「思考の整理学」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2022-10-09

 ちなみに本書は、押入れの棚を整理をしていたときに、どこからか出てきました。
 ほか、外山滋比古の「知的創造のヒント」「読書の方法」も一緒に出てきました。

 さいごに。(うなぎ)

 先日、久しぶりにうなぎを食べました。5年ぶりぐらいでしょうか。
 記念に写真を残しました。おそらく次に食べるのは、5年後ぐらいでしょうから。

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ミドルマーチ2 [19世紀イギリス文学]

 「ミドルマーチ2」 ジョージ・エリオット作 廣野由美子訳 (古典新訳文庫)


 架空の町ミドルマーチに住む2人の男女を軸に、様々な人間模様を描いた作品です。
 1871年刊行です。古典新訳文庫で全4巻です。今回はその第2巻を紹介します。


ミドルマーチ2 (光文社古典新訳文庫 Aエ 1-3)

ミドルマーチ2 (光文社古典新訳文庫 Aエ 1-3)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2019/11/08
  • メディア: 文庫



 市長の長男フレッド・ヴィンシーは、職に就かず毎日をだらだらと過ごしています。
 金持ちのフェザストーンの相続人と目されているため、甘やかされているのです。

 フレッドは、フェザストーンの看護をしているメアリー・ガースに求愛しています。
 メアリーもフレッドに好意を持っていますが、彼が職についてないので応じません。

 フレッドは、仲間から借りた160ポンドを返すため、メアリーの父に借金しました。
 しかし、彼の見込みが甘かったせいで、その金を返すことができなくなったのです。

 ガース家は困り果て、フレッドも良心を痛めますが、どうすることもできません。
 そのころフェザストーンが死の床に就き、フレッドへの相続の期待が高まりました。

 と同時に、フェザストーンの親類たちが、何かおこぼれをもらおうと集まりました。
 そんな人々の卑しさを、何も期待していないメアリーは、冷徹に観察していました。

 「彼女はすでに、人生とはまさに喜劇だと思う境地に至っていた。そのなかで自分は、
 卑劣な役や不誠実な役は演じまいと、誇り高く、というよりも広い心で構えていた。
 (中略)みんなばかげた妄想に取りつかれていた。自分も例外なく道化師帽をかぶっ
 た愚か者であるのに、それには気づかず、他人の愚かさは見え透いていて、自分だけ
 は見透かされないと思っているのだ。」(P191)

 そんなメアリーだったからこそ、フェザストーンの最後の頼みに応じられず・・・
 それによって、さまざまなどんでん返しがあり・・・そしてフレッドは・・・

 と、フレッドとメアリーの恋愛は、遺産問題と絡まって、実に面白い展開をします。
 フレッドにとって不本意な展開ですが、最終的にはプラスになるような気がします。

 さて、ここで興味深いのが、フレッドのメアリに対する愛情です。
 メアリーは美人でもなく金持ちでもありませんが、心が豊かでまっとうな女性です。

 そんなメアリーを愛したところに、フレッドというのらくら青年の美点があります。
 彼は、軽薄でばかげた青年に見えますが、本当は純な心を持っているのではないか?

 ところで、メアリーの母親もしっかりしていて、見栄えはメアリーより良いのです。
 それはめったにないことです。そのことを、次のように絶妙な表現で伝えています。

 「母親を見て、娘の方もこんなふうになってほしいと思われるようならば、それは持
 参金にも匹敵する財産だ。しかし実際には、母親は『娘も間もなく、私みたいになっ
 てしまうのですよ』と予言する背後霊のような役割を果たしている場合の方が、ずっ
 と多いようだ。」(P38)

 この第2巻では、リドゲイトとロザモンドの関係もいっきに進みました。
 噂を恐れたリドゲイトは、ロザモンドと距離をとりますが、そのことがかえって・・・

 また、ドロシアとラディスローも、微妙な仕方で接近していきます。
 ふたりともまだ自分の本当の気持ちに気づいていないようですが・・・

 「ミドルマーチ」はここでようやく中間点です。
 第3巻はどんな展開をするでしょうか。目が離せません。

 さいごに。(幻想的な青いラン)

 先週訪れた花博で、青いランを見ました。とても幻想的な美しさでした。
 また、さりげなく植えてある花たちにも、疲れた心を癒されました。

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コンビニ人間 [日本の現代文学]

 「コンビニ人間」 村田沙耶香 (文春文庫)


 コンビニで18年間バイトを続ける、36歳で恋愛経験のない女性を描いた物語です。
 2016年に刊行されて、その年の芥川賞を受賞し、作者を一躍有名にした話題作です。


コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

  • 作者: 村田 沙耶香
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2018/09/04
  • メディア: Kindle版



 古倉恵子は、子供の頃から他人と感覚がズレていて、周囲に馴染めませんでした。
 トラブルを避けるため会話をしなかった古倉を変えたのが、コンビニだったのです。

 古倉は大学1年のとき、スマイルマートのオープニングスタッフとして働きました。
 店のマニュアル通りに動いたとき、初めて世界の正常な部品になれたと感じました。

 「私は、今、自分が生まれたと思った。世界の正常な部品としての私が、この日、確
 かに誕生したのだった。」(P25)

 以後18年間、36歳の現在まで店員を続け、世界の歯車となって回り続けてきました。
 周囲に合わせて笑ったり怒ったりし、なんとか普通の人のように振る舞っています。

 ただし、この年で結婚も就職もしていないことが、なぜおかしいのか分かりません。
 しかし、自分が周りから浮いてしまい異物となっている、と感じることはできます。

 「正常な世界はとても強引だから、異物は静かに削除される。まっとうでない人間は
 処理されていく。そうか、だから治らなくてはならないんだ。」(P84)

 あるとき、35歳で独身の白羽という、やる気のない新人が入ってきました。
 あっという間にクビになりますが、その後、古倉は白羽と再会して・・・

 サイテー男の白羽がいい味を出しています。こういうクズ野郎が話を面白くします。
 古倉と白羽の会話の場面が実に面白いです。古倉を前に白羽は急に饒舌になります。

 「この世界は、縄文時代と変わってないんですよ。ムラのためにならない人間は削除
 されていく。狩りをしない男に、子供を産まない女。現代社会だ、個人主義だといい
 ながら、ムラに所属しようとしない人間は、干渉され、無理強いされ、最終的にはム
 ラから追放されるんだ」(P92)

 そういう白羽に、古倉はどのような提案をしたか?
 このときのやり取りが、また実に笑えます。ある意味、似たもの同士ですよね。

 とにかく、めちゃくちゃ面白い小説です。中編なので、あっという間に読めます。
 古倉が自分を「コンビニ人間」だと認識する結末も、良かったです。

 作者の村田沙耶香もまた、小説を書きながらコンビニで働いていたそうです。
 なるほど、だから描写が生き生きしているのかと、納得しました。

 さいごに。(今年もまた桜の季節が)

 年度末から年度初めにかけて、課長職の引き継ぎがあり、めちゃ忙しかったです。
 気が付くといつの間にか、今年も桜の咲く季節がやってきていました。

 18年前、自然に囲まれたこの土地を気に入って、家族でここに移り住みました。
 寝室から桜が楽しめるのですが、今年は開花に気付く余裕もありませんでした。

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ミドルマーチ1 [19世紀イギリス文学]

 「ミドルマーチ1」 ジョージ・エリオット作 廣野由美子訳 (古典新薬文庫)


 架空の町ミドルマーチに住む2人の男女を軸に、様々な人間模様を描いた作品です。
 1871年刊行です。作者の代表作であり、ヴァージニア・ウルフに激賞されました。


ミドルマーチ1 (光文社古典新訳文庫)

ミドルマーチ1 (光文社古典新訳文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2019/01/08
  • メディア: 文庫



 ドロシア・ブルックと妹のシーリアは、幼い頃両親を亡くし伯父に育てられました。
 伯父のブルック氏はそこそこ良い家柄で、ふたりは何不自由なく育てられました。

 ドロシアは美しいので、魅力的な青年ジェイムズ・チェッタムが恋していました。
 ところが18歳のドロシアは、45歳の牧師エドワード・カソーボンに惹かれたのです。

 カソーボンは「全神話解読」の執筆に向けて、日々神話の研究に明け暮れています。
 そんな彼がドロシアには、立派な精神で自分を導いてくれるように見えたのです。

 「この方は、高貴な内面生活というものを理解しておられるのだ。この方となら、魂
 の交わりというものが可能かもしれない。」(P47)
 
 つまり、ドロシアは結婚に対して、高い理想(というより幻想)を持っていました。
 そして、カソーボンの求婚を即座に受け入れ、ローマへの新婚旅行に旅立ちました。

 理想的な結婚をしたにもかかわらず、ドロシアもカソーボンも幸せではなく・・・
 ローマのドロシアの宿に、カソーボンの甥ウィル・ラディスローの訪問があり・・・

 というように、このあとの展開が、もうなんとなく読めるような気がします。
 それでいながら、この物語から目が離せません。この先どうなってしまうのやら?

 第一巻は、第1部「ミス・ブルック」と、第2部「老いと若さ」から成っています。
 そしてこの巻は以上のように、カソーボン夫妻を中心として物語が進行しています。

 それと同時に、ミドルマーチにやってきた若き医者リドゲイトの物語も進行します。
 ほか、フェアブラザー牧師一家との交流、市長ヴィンシー氏の娘ロザモンドとの恋。

 さらに、ドロシアの妹シーリアとジェイムズ・チェッタムとの淡い恋や、フレッド
 ・ヴィンシーとメアリ・ガースとの微妙な関係などが、重層的に展開しています。

 ミドルマーチの人々を描くことにより、「人間」とは何かを考察した小説です。
 冒頭を飾る次の言葉が、そのことを象徴しているように思います。

 「人間の歴史とは何か? いろいろな要素が入り混じった人間という得体の知れない
 存在が、さまざまな時の試練を経ていかに振る舞うか?」(P6)

 多くの人々が登場するので、誰が誰なのか分からなくなってしまうこともあります。
 そういうときは栞が役に立ちます。主要登場人物がコメント入りで書いてあるので。

 ちなみに私は、ドロシアとシーリアの伯父アーサー・ブルックが気に入りました。
 ブルック氏は60がらみの愚かな男として描かれますが、いい味を出しているのです。

 「実を言うと、私は結婚の罠に掛かってしまうほど、誰かを愛したことはない。結婚
 というのは罠だからね。」(P87)

 このセリフは、独身を通したブルック氏が言うと、ちょっと滑稽で笑えます。
 ところが、のちの展開を考えると、この言葉は真実を言い当てているので驚きます。

 さて、私はこの作品がジェイン・オースティンの小説に似ていると思いました。
 文章が美しく、ユーモアがあり、先が読めて読みやすい、などの共通点があります。

 さらに、結婚をテーマとしている点でも同じですね。
 この先、ドロシアとカソーボンの結婚は、いったいどうなっていくのでしょうか?

 さいごに。(花博)

 仕事の引き継の忙しい中を縫って、先日の日曜日に、家族で花博に行ってきました。
 色んな色のチューリップに囲まれ、優雅な時間を過ごせたので、心が癒されました。

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ジョーカー・ゲーム [日本の現代文学]

 「ジョーカー・ゲーム」 柳広司 (角川文庫)


 スパイ養成学校の創設者結城中佐と、部下のスパイたちの活躍を描いた連作小説です。
 2008年に刊行され、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞を受賞した傑作です。


ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

  • 作者: 柳 広司
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2011/06/23
  • メディア: 文庫



 1年半前、佐久間陸軍中尉は武藤大佐に呼ばれ、D機関への出向を命じられました。
 D機関とはスパイの養成学校のことで、佐久間の任務は参謀本部との連絡係でした。

 佐久間は武藤大佐から、アメリカ人技師のスパイ容疑の証拠を探せと言われました。
 D機関の三好少尉一行は憲兵隊に偽装し、アメリカ人技師宅に踏み込みますが・・・

 まさか、それが罠だったとは! いったい誰が仕組んだ罠だったのか?
 そして、証拠のマイクロフィルムは、いったいどこに隠してあったのか?

 以上は冒頭のタイトル作「ジョーカー・ゲーム」です。
 ほか全5編、すべてD機関の活躍を描いたスパイ小説で、いずれもめちゃ面白い。

 「ロビンソン」もまた、実に印象的な作品です。 
 ロンドンで活動中の伊沢が、スパイ容疑で逮捕されたところから始まります。

 英国諜報機関に利用され、味方に偽情報を流したことで、どのような結果が?
 結城中佐が餞別として与えた「ロビンソン・クルーソー」には、どんな意味が?

 全5編を通して独特の味わいを醸し出しているのが、D機関の創設者結城中佐です。
 audibleの中でも、結城の静かだがドスの聞いた声は、とても印象的でした。

 さて、昭和12年、結城中佐の発案でスパイ養成学校(D機関)が開設されました。
 ここで鍛え上げられた者たちは、世界各地で「見えない存在」となって活動します。

 「スパイがその存在を知られるのは、任務に失敗した時—即ち敵に発見された時だけ
 だ。(中略)諸君の未来に待っているものは、真っ黒な孤独だ。孤独と不安。やがて
 自分自身の存在すら疑わしく思えてくる。そこでは、外部に支えられた虚構など、砂
 でできた城のように時間とともに崩れてゆく。」(P27)

 結城のこの言葉の中に、スパイというものの本質が表されていると思いました。
 この作品集は、スパイの活躍を描く以上に、彼らの深い孤独をも描いています。

 「とらわれないこと。しかし、それは同時にこの世界の何ものも信じないこと—愛情
 や憎しみを取るに足りないものとして切り捨て、さらには唯一の心の拠り所さえ裏切
 り、捨て去ることを意味している。」(P271)

 この作品には、続編「ダブル・ジョーカー」があります。
 タイトル作ほか全5編が収録されている、連作小説です。


ダブル・ジョーカー (角川文庫)

ダブル・ジョーカー (角川文庫)

  • 作者: 柳 広司
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2012/06/22
  • メディア: 文庫



 「ダブル・ジョーカー」は、もう一つの諜報部「風機関」との戦いを描いています。
 「殺すな死ぬな」のD機関、「躊躇なく殺せ潔く死ね」の風機関。勝つのはどちらか?

 私的にもっとも興味深かったのが、「棺」です。若かりし日の結城が登場します。
 結城はどのようにして敵地から脱出したのか? どのようにして左手を失ったのか?

 続編も人気が出て、その後シリーズ化され、現在では4巻まで出ているようです。
 また、実写映画化やアニメ化もされれいます。


「ジョーカー・ゲーム」シリーズ【4冊 合本版】 (角川文庫)

「ジョーカー・ゲーム」シリーズ【4冊 合本版】 (角川文庫)

  • 作者: 柳 広司
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/07/24
  • メディア: Kindle版



 さいごに。(どらやきの日)

 4月4日は4が合わさるので「しあわせの日」です。
 「どらやきを食べて幸せになろう」ということで、どらやきの日でもあります。

 「そんなのこじつけじゃないか」などと突っ込まずに、楽しくどらやきを食べたい。
 丸京製菓の「塩もち入りどらやき」がスーパーにあったら、私は必ず買ってしまう。

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ジェルミナール3 [19世紀フランス文学]

 「ジェルミナール(下)」 エミール・ゾラ作 安士正夫訳 (岩波文庫)


 炭坑労働者の悲惨な生活と、彼らのストライキをリアルに描き出した長編小説です。
 1885年刊行です。岩波文庫から三分冊で出ています。今回はその下巻を紹介します。


ジェルミナール 下 (岩波文庫 赤 544-9)

ジェルミナール 下 (岩波文庫 赤 544-9)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2024/03/19
  • メディア: 文庫



 恐るべき事件の後、町は不気味に静まり、エティエンヌは炭坑の地下に潜みました。
 ストライキは続き、人々は飢えによる苦しみにあえぎ、餓死する者も出てきました。

 そのような状況の中、ル・ヴォルー坑ではベルギー人たちを雇って入坑させました。
 怒る坑夫たちは400人の暴徒となって、炭坑を守る兵隊たちと激しく衝突しました。

 兵隊は一斉に射撃し、多くの犠牲者が出ました。マユは心臓を撃たれて死にました。
 暴徒たちの行動は鎮圧され、坑夫を率いたエティエンヌは一転してなじられました。

 会社は再開され、エティエンヌは誓いを破り、カトリーヌとともに入坑しました。
 ところがその前日、ルヴァクが裏切り者を制裁するため、炭坑に細工をしたのです。

 激震があり、炭坑が崩れ落ちて、20人ほどの人々がその中に閉じ込められました。
 その中には、エティエンヌとカトリーヌと、彼女の情夫のシャヴァルがいました。

 岩を打って助けを求めると、カトリーヌの兄が音を聞きつけ、助けに向かい・・・
 閉じ込められた因縁の3人。彼らに何が起こるか? 彼らは無事に救助されるか?

 終盤にきて恐ろしい展開がありますが、この部分こそゾラの描写の白眉だそうです。
 本書は、炭坑での労働の悲惨さを容赦なく描いているため、高く評価されています。

 さて、意外だったのは結末部です。エティエンヌはひとりパリへ旅立ちます。
 私はこの小説を、救いのない物語だと思いましたが、最後に希望を持たせています。

 「鉱山の底の辛い体験によって自分が成熟し、力強くなったことを感じた。彼の教育
 は完了した。そして彼が見たままに欠陥を見出したままに、社会に対して戦いを宣し
 て、革命の兵士たる理論家としていよいよ出陣したのである。」(P208)

 「人々は芽生えていた。真黒な、復讐に燃えた軍団は畔の中でおもむろに萌え、来る
 べき世紀の収穫となるために成長していて、その発芽は間もなく大地をはじけさせよ
 うとしていた。」(P212)

 ここでようやくタイトル「ジェルミナール」(芽月)の意味が分かりました。
 しかし彼には、パリになんか行かずに、カトリーヌと幸せになってほしかったです。

 正直に言って、このあとエティエンヌが、パリで幸せになるようには思われません。
 炭坑に閉じ込められたとき彼は、恋敵であるシャヴァルを〇〇しています。

 ここに、エティエンヌの隠れた本性が垣間見えているような気がしてなりません。
 この先彼は、孤独で冷酷で利己的な革命家に、育っていくのではないでしょうか。

 余談ですが、「ジェルミナール」はフランス文学史上に残る大傑作として有名です。
 それなのに、岩波文庫版は活字は小さく漢字は旧字体です。しかも、現在絶版です。

 「居酒屋」と「ナナ」は、新潮文庫からオシャレなカバーで出ているというのに・・・
 新潮文庫で新訳を出してくれるといいのですが。もっと読まれてもいい作品ですよ。

 そういえば、エティエンヌにはクロードという名の兄がいて、画家になっています。
 クロードを主人公にした作品が1886年刊の「制作」で、岩波文庫から出ていました。

 印象派の画家たちを描いた小説で、私は印象派が好きなので注目していました。
 最近まで書店で見かけていましたが、現在は絶版です。復刊されたら読みたいです。


制作 (上) (岩波文庫)

制作 (上) (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1999/09/16
  • メディア: 文庫



制作 (下) (岩波文庫)

制作 (下) (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1999/09/16
  • メディア: 文庫



 さいごに。(来年度の人事)

 3年間のプロジェクトが終了し、某課長のおかげで、ある程度の成果を出せました。
 そのため、プロジェクトの主任だった私が、某課長のポジションを引き継ぐことに!

 これで、4月からはさらに忙しくなります。やれやれ。
 しかし、56歳の老いぼれに仕事を与えてくれたことは、ありがたいことなのかも。

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鹿の王2 [日本の現代文学]

 「鹿の王3~4」 上橋菜穂子 (角川文庫)


 謎の病から生き延びて放浪する男と、謎の病の治療法を求める男を描いた物語です。
 2014年刊行のファンタジー小説で本屋大賞。角川文庫全4巻中3~4巻の紹介です。


鹿の王 3 (角川文庫)

鹿の王 3 (角川文庫)

  • 作者: 上橋 菜穂子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/07/25
  • メディア: 文庫



鹿の王 4 (角川文庫)

鹿の王 4 (角川文庫)

  • 作者: 上橋 菜穂子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/07/25
  • メディア: 文庫



 何者かにさらわれたユナを探し求めて、ヴァンは火馬の民のもとにやって来ました。
 それを陰ながら助けたのが、谺主の洞窟で知り合った、跡追いの女人サエでした。

 ヴァンは、火馬の民の族長オーファンから、「キンマの犬」について聞きました。
 それは、ミッツァル(黒狼熱)という病、侵略者を滅ぼす力を与えられた獣です。

 東乎瑠(つおる)人の持ち込んだ麦は、現地の麦と混ざったとたん毒を持ちました。
 その毒麦を食べても死ななかった火馬がいて、その火馬の肉を食べた山犬がいます。

 その山犬たちは毒麦でも黒狼熱でも死にませんでした。それが「キンマの犬」です。
 「キンマの犬」に噛まれても現地人は死にませんが、侵略者たちはすぐ死ぬのです。

 火馬の民はミッツァルに、キンマの神の摂理とその意志を見て、こう考えました。
 キンマの犬とミッツァルがあれば、戦わずして故郷を取り戻せるのではないか、と。

 「侵略者の毒に汚されても生き延びよ! さすれば、おまえたちは、以前より強くな
 る! そう、キンマの神は我らに教えてくださったのだ。―—ユタカの大地を侵した
 者だけを殺す毒を犬の牙に与えて」(P60)

 その夜ヴァンの夢の中に、「犬の王」と名のる初老の男が現れました。
 彼は普段は病んだ年寄りですが、我が身を脱いでキンマの犬を操ることができます。

 犬の王はヴァンに、火馬の民の希望を託しますが、ヴァンにはそれができません。
 やがてサエとともにユナを探して旅する中で、ヴァンはホッサルと出会いました。

 ところが、火馬の民の企みの背後には、意外な人物の予想を超える企みがあり・・・
 という具合で、「鹿の王」は後半も読み出したらなかなか本が置けません。

 しかし、もっとも印象的だったのはヴァンの生き様です。特にあの感動的なラスト!
 あのような決断を下せるのは、ヴァンだけでしょう。彼こそ本物の「鹿の王」です。

 「飛鹿の群れの中には、群れが危機に陥ったとき、己の命を張って群れを逃がす鹿が
 現れるのです。長でもなく、仔も持たぬ鹿であっても、危難に逸早く気づき、我が身
 を賭して群れをたすける鹿が。」(第4巻P19)

 さて、本書「鹿の王」は本屋大賞だけでなく、日本医療小説大賞も受賞しています。
 ミッツァルという架空の病を扱いながらも、随所で命や病の本質を考察しています。

 「身体も国も、ひとかたまりの何かであるような気がするが、実はそうではないの
 だろう。雑多な小さな命が寄り集まり、それぞれの命を生きながら、いつしか混然
 一体となって、ひとつの大きな命をつないでいるだけなのだ。そういう大きな――
 多分、この世のはじまりのときに神々がその指で紡ぎ出した――理の中に、我々は
 生まれ、そして、消えていく。」(第4巻P191)

 「〈・・・病は〉この上なく魅力的なのだ。恐ろしいが、たまらなく心惹かれる。
 この世の裏側に隠れている――闇の底に隠れている――生き物の真実が、病という
 現象の中に、鬼火のようにチラチラと光って見えるからだ。」(第4巻P282)

 さいごに。(「鹿の王 ユナと約束の旅」)

 アニメ映画「鹿の王 ユナと約束の旅」は、2022年にアニメ映画になりました。
 この濃密な内容をわずか2時間足らずで表現した点に、巷では賛否両論でした。

 私の読書仲間は口をそろえて、原作を読んでから見た方がいいと言っていました。
 そうしないと理解に苦しむのだそうです。では、私も見てみようか。



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鹿の王1 [日本の現代文学]

 「鹿の王1~2」 上橋菜穂子 (角川文庫)


 謎の病から生き延びて放浪する男と、謎の病の治療法を求める男を描いた物語です。
 2014年刊行のファンタジー小説です。翌2015年に本屋大賞の第1位となりました。


鹿の王 1 (角川文庫)

鹿の王 1 (角川文庫)

  • 作者: 上橋 菜穂子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/06/17
  • メディア: 文庫



鹿の王 2 (角川文庫)

鹿の王 2 (角川文庫)

  • 作者: 上橋 菜穂子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/06/17
  • メディア: 文庫



 ヴァンは、ピュイカ(飛鹿)に乗る軍団独角(どっかく)の頭で、物語の主人公です。
 強大な東乎瑠(つおる)帝国と戦って敗れ、岩塩鉱で奴隷として労働していました。

 あるとき岩塩鉱がオッサム(山犬)に襲われ、全員が咬まれて謎の病で死にました。
 なぜかヴァンは生き延びて、つながれていた鎖を怪力で断ち切り、脱出を試みます。

 岩塩鉱の建物で食べ物を漁っていると、泣き声が聞こえ、女の幼子を見つけました。
 女児を背負って逃亡したヴァンは、自分の感覚が鋭くなっていることに気づきます。

 交易都市カザンに向かう途中、トマという青年に出会い彼の故郷オキを頼りました。
 ピュイカの扱いに慣れたヴァンは、トマの家族に歓迎され、ひと冬を過ごし・・・

 ホッサルは、東乎瑠帝国に仕えるオタワル人の医術師で、もうひとりの主人公です。
 岩塩鉱を全滅させた謎の病を調査するため、マコウカンを従えてやってきました。

 彼は死体を観察して、この病がミッツァル(黒狼熱)ではないかと考えました。
 それは、約250年前に大流行し、古オタワル王国を滅亡に追い込んだ伝説の病です。

 また彼は、ひとつの壊された足枷を見て、生き延びた者がいることを知りました。
 もし生き延びた者がいるのなら、ミッツァルの特効薬作りのヒントになります。

 ホッサルは、「跡追い」の女人サエに、逃亡奴隷ヴァンの行方を探らせました。
 サエはわずかな痕跡をたどりオキに向かいますが、途中多くの山犬に襲われ・・・

 読みだしたら止まりません。さすが、本屋大賞になった作品です。
 物語世界がとても緻密に構築されているため、その中にどっぷりと入り込めます。

 たとえば、舞台となっているアカファ地方は、現在東乎瑠帝国領となっています。
 しかし、以前はアカファ王国の地であり、今もゆるやかな自治が許されています。

 以前アカファ王国は、繫栄していた古オタワル王国の一地方にすぎませんでした。
 オタワル王国でミッツァルが流行したとき、アカファは被害を受けませんでした。

 そこで、オタワル王国最後の王が、アカファの首都に遷都し王権を譲ったのです。
 しかし、オタワル人はオタワル聖領にいて、その後のアカファを支え続けました。

 そして、オタワル人は今も、アカファにおいて大きな影響力を持ち続けて・・・
 という具合です。物語の背景だけ見ていても、とてもわくわくしてきます。

 それだけでなく、アカファや東乎瑠の文化についても実に詳細に描かれています。
 食については、目で見えるようです。作者は文化人類学者だそうで、さすがです。

 私としては特に、ヴァンが獣に咬まれたあとに見た夢が、とても気になります。
 それは、腕の傷口から木の根が生え、枝分かれして全身を満たすというものです。

 ヴァンは、おそらくその時点で生まれ変わりました。理由はまだ分かりません。
 しかし、人間離れした怪力や鋭い直感は、その日を境に発揮され始めたのです。

 そして第2巻では、ヴァンは山犬と同調し、彼らの光る命の糸が見えたりします。
 そのことを、謎の老人谺主(こだまぬし)は「裏返し」と呼びます。それは何か?

 さて、ヴァンはなぜ生き残ったのか? ホッサルはヴァンを見つけ出せるのか?
 ミッツァルはなぜ再び現れたのか? ミッツァルの特効薬はできるのか?

 気にかかる点は多いのですが、私にはオタワル人の生き方が興味深かったです。
 「他者を生かし幸せにすることで、自分も生き幸せになる」という価値観が。

 「食われるのであれば、巧く食われればよい。食われた物が、食った者の身体と
 なるのだから」(1巻P287)

 さいごに。(「クソ野郎」訴訟に思う)https://news.yahoo.co.jp/articles/d5e1a03060af420f78b515f1a2581f65a80e9f4d

 クソ野郎訴訟の大石晃子(れいわ新選組)が、まさか高裁で完全勝利するとは!
 クソには色んな意味があるとはいえ、クソ野郎はとてもひどい侮蔑表現ですよ。

 たとえば「大石晃子のクソ野郎」(良い意味)という表現は、許されるでしょうか?
 私は絶対ダメだと思います。言葉が乱れると国も乱れます。嘆かわしいことです。

 以前、れいわの山本太郎が、国会で首相を「増税クソメガネ」と言い放ちました。
 れいわの「クソ」好きは分かりますが、もっと品のある言葉選びをしてほしいです。

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ジェルミナール2 [19世紀フランス文学]

 「ジェルミナール(中)」 エミール・ゾラ作 安士正夫訳 (岩波文庫)


 炭坑労働者の悲惨な生活と、彼らのストライキをリアルに描き出した長編小説です。
 1885年刊行です。岩波文庫から三分冊で出ています。今回はその中巻を紹介します。


ジェルミナール 中 (岩波文庫 赤 544-8)

ジェルミナール 中 (岩波文庫 赤 544-8)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2024/03/11
  • メディア: 文庫



 ある日、炭坑夫たちは一斉にストライキに入り、代表者は支配人の家を訪れました。
 その際、優秀な炭坑夫で人望あるマユが、エティエンヌに推され口火を切りました。

 「(我々の要求は、)我々が当然もらうべきものを、会社が自分たちで分配している
 我々の儲けを、我々によこして率直に公平な態度を示してくれることです。一体、恐
 慌に見舞われる毎に、株主の配当を救うために労働者を飢え死に任せるということは
 正しいことでしょうか?」(P36)

 要求は受け入れられず、ストライキは2週間続けられ、とうとう財源が尽きました。
 飢餓の恐怖が迫る中でも、彼らは正義の時代の到来と万人の幸福を信じていました。

 エティエンヌはインタナショナルの役員を呼び寄せ、炭坑夫全員を加盟させました。
 インタナショナルからは4000フランが送られましたが、それもすぐに尽きました。

 そしてさらに2週間が過ぎて、炭坑夫の町は断末魔の苦しみにあえいでいました。
 会社との2度目の会見も虚しく、追い詰められた炭坑夫らは集って話し合いました。

 「賃金制度は奴隷状態の新しい形だ。」
 エティエンヌの思いは、しだいに賃金制度の撤廃を求める政治思想に達しました。

 まず国家を破壊しなければならない、人民が統治権を握れば改革が始まるだろう。
 平等を旨とする自由な家族を造ることだ、市民的、政治的、経済的に平等な・・・

 「惨めな人間を奴らは機械の餌食に投げあたえ、家畜同然に抗夫町の中にかこい、
 大会社は徐々に彼らを吸収し、奴隷状態を制度化し、千人ばかりの怠け者が富み栄
 えるために一国の全労働者を、数百萬の腕を配下に編入する脅威を示している。だ
 が、もはや抗夫は無知ではない、地の底で圧し潰されているけだものではない。」
 (P129)

 カトリーヌと駆け落ちしたシャバルもまた、ストライキへの参加を表明しました。
 しかし・・・彼は会社にいかに取り込まれ、仲間からいかなる仕打ちを受けたか?

 エティエンヌは、エスカレートした集団をもはや統率することができず・・・
 食品店のメグラが犠牲となり・・・彼はどのようなおぞましい仕返しをされたか?

 中巻に入ってストライキに入ると、作者ゾラの描写がさらに凄みを増しました。
 特に、仲間の裏切りに対する仕返しの場面が、目を覆いたくなるぐらいでした。

 炭坑の象徴であるボイラーが壊され、施設が次々と破壊されるのは理解できます。
 しかし、炭坑内で人が働いているのを知りながら・・・彼らは何を破壊したか?

 この勢いのまま、下巻に突入します。下巻も楽しみです。
 岩波文庫版は読みにくいですが、だんだん慣れてきました。

 さいごに。(プロテインを買いに行ったのに)

 ドンキホーテでプロテインを購入しました。これを飲んで、走れる体にしたいです。
 ところが、ラミーが税込み150円と激安だったので、つい箱買いしてしまいました。

 「プロテインを飲んでも、ラミーを食べたら意味ない」と、妻と娘に言われました。
 ああ、ドンキに行ったことが失敗でした。自分の弱さを痛感しました。

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