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巨人たちの星1 [20世紀アメリカ文学]

 「巨人たちの星」 ジェイムズ・P・ホーガン作 池央耿訳 (創元推理文庫)


 ガニメアンの末裔チューリアンと、地球を狙うジェヴレニーズとの戦いの物語です。
 「星を継ぐもの」「ガニメデの優しい巨人」に続く第三弾で、様々な謎が解けます。


巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))

巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1983/05/27
  • メディア: 文庫



 地球で歓迎を受けたガニメアンは、巨人たちの星を目指して旅立っていきました。
 そして、彼らが到着する前に、巨人たちの星からメッセージが送られてきました。

 驚くことに巨人たち(チューリアン)は、地球のことを知り尽くしていたのです。
 「この地球という惑星そのものが、どこかから監視されているに違いない・・・」

 しかもチューリアンは、地球人がガニメアンの脅威であると、認識していました。
 地球を監視する者は、情報を故意に歪曲して、チューリアンに伝えているのでは?

 それにもかかわらず、国連は誤解を解消しようという努力を、全くしていません。
 国連の上層部では、なにやら陰謀が企てられているような気配がします。

 そこでハント博士らは、秘密裏にチューリアンとのホットラインを設けて・・・
 ハントらは椅子に座った瞬間に、チューリアンの世界に入り込んでいて・・・

 人工知能ヴィザーによるバーチャルリアリティの描写は、実にみごとです。
 知覚が超光速で伝送され、宇宙の果ての相手とリアルタイムで対話できるのです。

 そうしている間にも、ガニメアンたちの宇宙船には危機が迫っていて・・・
 ヴィザーに接続して、ガニメアン、チューリアン、地球人が一堂に会し・・・

 ジェブレンとは何者なのか? 彼らの狙いはいったい何なのか?
 これまで何をしてきたのか? これからいったい何をする気なのか?

 今回も、ハントとダンチェッカーのコンビが大活躍します
 彼らが、二人が論理的に導いた解釈は、あっと驚くような内容で・・・

 アメリカ人とソヴィエトの人間が、お互いに協力し合う場面は心温まります。
 地球人とガニメアンとの、人種を超えた友情もまた、感動的です。

 また、所々に表れる作者の文明批判や社会批判が、作品を奥深くしています。
 次のような記述に、作者の一番言いたかったことがあるのではないでしょうか?

 「生産性がどんなに向上しても、労働の質が変わるだけで、人が労働そのものから
 解放されることはない。一般大衆が自分たちの労働の成果である富と自由を与えら
 れないとしたら、いったいその収穫は誰が持ち去っているのだろうか?」(P252)

 さて、ようやく333ページまできました。内容が濃いのでなかなか進みません。
 チューリアンとジェブレンの対決は避けられません。このあとも、楽しみです。

 さいごに。(すごーく疲れーたー)

 ユーチューブで、グッチ裕三の「1週間」を見つけました。懐かしい!
 ディープパープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の替え歌です。

 「すごーく疲れーたー 休んでいいですかい?」 サイコーです。
 ほかにも「犬のおまわりさん」などもオススメ。久々に爆笑しました。




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ガニメデの優しい巨人 [20世紀アメリカ文学]

 「ガニメデの優しい巨人」ジェイムズ・P・ホーガン作 池央耿訳(創元SF文庫)


 2500万年前のガニメアンとの遭遇と、人類誕生の謎の解明を描いたSF小説です。
 傑作「星を継ぐもの」の続編です。「巨人たちの星」シリーズの第二作です。


ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫)

ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1981/07/31
  • メディア: 文庫



 あるときガニメデに、正体不明の飛行物体が接近して、接触を求めてきました。
 それは、2500万年前に太陽系から姿を消したはずの巨人ガニメアンだったのです。

 彼らは、今は無き惑星ミネルヴァから他の恒星へ旅立っていた科学者たちでした。
 実験が失敗して帰還する時、時空の狭間に落ち込んではるか未来にたどり着いたのです。

 「行きはどのくらいかかったかね?」
 「太陽の動きから計算して、十二,一年です。」
 「で、帰りは二千五百万年かかったというのか?」
 「そうです。超高速で飛ばざるを得ませんでしたから。」

 宇宙船の推進力は、人工的に局所の時空の歪みを起こすことで得られると言います。
 そしてすべてを制御しているのがコンピュータのゾラック、人工知能です。

 やがてガニメアンたちは地球にやってきて、地球人たちとの交流が始まりました。
 ところがやがて彼らは、先祖が移住したと思われる星を目指して去っていき・・・

 ガニメアンたちが去って行った本当の理由は? 彼らが人類の進化に与えた影響は?
 彼らの先祖は本当に移住したのか? ミネルヴァではいったい何があったのか?

 物語は実に単純です。ガニメアンがやってきて、また去って行った。それだけです。
 しかし、その間にさまざまな謎が解明されていきます。そこが読みどころです。

 「人類が直面した困難は並たいていのものではありませんでした。でも、人類は常に
 その困難と闘って、最期には見事に打ち勝ってきました。正直に言って、わたしたち
 の目にはそれが何やら極めて重要な意味を含むことのように映るのです」(P181)

 「幾千年もの長きにわたって想像を絶する困難と闘い、厚く高い障害を乗り越えた人
 類は、今やっと不幸な過去と袂を別ち、知性の輝きに満ちた繁栄の端緒についたばか
 りなのだ。」(P293)

 と、こういう部分に、作者ホーガンの一番言いたいことが、あるような気がします。
 何があっても諦めない、何事にも屈しない人々が、この作品のテーマなのではないか?

 さて、この作品でもまだ多くの謎が残されています。
 これに続く「巨人たちの星」で、残された謎が解明されると言います。楽しみです。


巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))

巨人たちの星 (創元SF文庫 (663-3))

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1983/05/27
  • メディア: 文庫



 さいごに。(年とともに・・・)

 2~3週間ほど前から、左手の指先が痺れています。そして、首を傾けると痛い。
 医者でレントゲンを撮ったら、頸骨が狭まって、神経に触っているようなのです。

 年をとると、しだいに、これまでにない症状が出て来るものですね。
 これからは、さまざまな病気に、仲良く付き合っていかなければなりません。

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世界文学の流れをざっくりとつかむ34 [世界文学の流れをざっくりとつかむ]

≪第七章≫ 近代小説の誕生

5 フランス・ロマン主義

 1789年のフランス革命によって、フランスの社会も芸術も荒廃しました。王政から共和政へ、さらに帝政へと移り、ナポレオンの支配下において文学は制約され、停滞しました。そのような社会情勢において「芸術の自由」を求める声が高まり、スタール夫人が1800年に「文学論」を刊行して、文学の自由を主張しました。そのため、ナポレオンに激怒され、パリを追放されました。その後ドイツ亡命時代にロマン主義に接し、ナポレオン退位後いちはやくフランスにロマン主義を紹介したことから、スタール夫人はフランス・ロマン主義の先駆者とされています。

 フランス・ロマン主義の先駆者に、もうひとりシャトーブリアンがいます。1801年に「アタラ」を、翌1802年には「ルネ」を刊行しました。「アタラ」は、アメリカ・インディアンの2人を主人公に、愛と宗教の葛藤を描いています。「ルネ」はその続編で、憂鬱で誇り高い青年ルネの人生を描いています。この二作におけるアンニュイな気分は、のちのロマン主義の多くの青年たちの共感を得ました。

 ヴィクトル・ユゴーは韻文劇「クロムウェル」を書いたとき、それに長文の序を付けて、古典主義的な規則に縛られない「芸術における自由」を掲げ、若きロマン主義者たちを熱狂させました。彼のもとには多くの文学青年たちが集まり、ユゴーはロマン派の総大将と目されるようになりました。当時は古典主義的な演劇が文学の主流だったので、彼らは演劇において勝利を得ようとしました。その結果、ユゴーによる革新的な演劇「エルナニ」上演の際、古典主義的な演劇を守ろうとする者たちと激しく論争しました。最終的にロマン派が勝利を収めたため、1830年のこの日からロマン主義の時代が始まったとされます。ユゴーは1831年に「ノートルダム・ド・パリ」を、1856年には「静観詩集」を出しました。しかし、彼の最高傑作は、1862年に出た人道主義的な大長編「レ・ミゼラブル」です。その内容はジャン・ヴァルジャンの物語として、日本でもよく知られています。

 アレクサンドル・デュマは、ユゴーのサロンの常連でした。たいへんな多作家で、1940年代に「三銃士」や「モンテ・クリスト伯」や「王妃マルゴ」などを次々と出しました。その息子アレクサンドル・デュマ・フィスは、1848年に出した娼婦の純情を描いた「椿姫」が有名です。親子で同じ時期に活躍しました。

 アルフレッド・ド・ミュッセもまたユゴーのサロンの常連で、「戯れに恋はすまじ」や歴史劇「ロレンザッチョ」などの戯曲を書きましたが、当時は冷たくあしらわれました。彼はまたジョルジュ・サンドとの恋愛で有名です。1836年に出した唯一の長編小説「世紀児の告白」にはサンドとの愛が描かれており、当時の青年たちの憂鬱や倦怠がよく表われています。一方のジョルジュ・サンドもまた、ミュッセのほかショパンとの愛でも有名です。1837年に出した「モープラ」のように、女性を踏みにじる社会を批判的に描いたものや、1846年の「魔の沼」や1849年の「愛の妖精」のように、自然の美しさを描いた田園小説が有名です。

 テオフィル・ゴーティエもまたユゴーの仲間で、「エルナニ」事件で活躍した作家です。ホフマンの影響を受け、幻想的な作品を出しました。 1834年の「モーパン嬢」では、男装の麗人を描きましたが、特にその序文がロマン主義に言及しているために有名です。

 ほかに、写実主義の開祖と目されるバルザックやスタンダールなどもユゴーの仲間であり、その最初の頃は明らかにロマン主義の影響下にありました。文学史においては、フランス・ロマン主義が1850年代を境に、しだいに写実主義文学に主流の座を譲る、というような説明がされています。しかし私には、写実主義もその後の自然主義も全て、芸術の自由を掲げたロマン主義文学の一派であるように思えます。

 さいごに。(県選抜に出られるって?)

 うちの娘が、なんと走高跳で、県の選抜大会に出られることになりました。
 絶好調だった4月の記録会で、1m40を1回でクリアしていたからです。

 それ以来スランプから抜け切れず、先日の大会では、1m40を3回失敗しています。
 でも、選抜大会は出られるだけで嬉しいです。大会を楽しんでもらいたいです。

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ホワイトアウト2 [日本の現代文学]

 「ホワイトアウト」 真保裕一 (新潮文庫)


 ダムを占拠したテロリストに、たった一人で立ち向かう男の活躍を描いた小説です。
 2000年に上映された、織田裕二主演の映画もぜひ見たいです。


ホワイトアウト (新潮文庫)

ホワイトアウト (新潮文庫)

  • 作者: 裕一, 真保
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1998/08/28
  • メディア: 文庫



 ようやくたどり着いた安全な場所を捨て、再び富樫は犯人たちのもとへ向かいます。
 疲労困憊した男がたったひとりで、人質を救助するために超人的な行動を取ります。

 「死は平穏で優しく、生は耐え難いほどの苦痛に満ちている。どちらを選ぶかと問わ
 れ、自ら苦痛に身を委ねようとすることの、何と愚かで滑稽なことか。」(P355)

 さすがの富樫も時に弱音を吐き、戦いに負けそうになります。
 しかし、不屈の意思で戦うことを選び、生きることを選びます。ガンバレ富樫!

 吹雪きの夜、凍るダム湖の上を進むうちに、犯人たちのスノーモービルに会い・・・
 主犯格のウツギは別行動を始めて、残された同志の間には疑心暗鬼が生じ・・・

 笠原の真の目的は? ウツギの真の狙いは? 犯人たちの意外な脱出方法とは? 
 富樫はいかにして敵を倒したのか? ウツギたちはいかにして自滅したか?

 後半は手に汗握る怒涛の展開です。本を置くことができません。
 そして感動のエピローグ。最後は涙なしでは読めないでしょう。

 さて、今更ながら2000年上映の「ホワイトアウト」を見ました。
 すばらしかったです。小説同様、最初から最後まで目が離せませんでした。


ホワイトアウト<初回限定2枚組> [DVD]

ホワイトアウト<初回限定2枚組> [DVD]

  • 出版社/メーカー: JVCエンタテインメント
  • 発売日: 2001/03/23
  • メディア: DVD



 舞台は黒部ダム。主人公は織田裕二。敵役に佐藤浩市。面白くないはずはない。
 特に富樫を演じる織田裕二が、本当にカッコ良かったです。

 ダムの中での銃撃戦、放水管からの脱出、雪原でのラッセル、ヘリを巻き込む雪崩。
 どれも映像でしか味わえない迫力がありました。

 唯一の難点は、ヒロインの松嶋菜々子が、前半を通して感じ悪いところでしょうか。
 小説におけるヒロインは、婚約者の友に対して、もう少し理解があったのですが。

 しかし、富樫を見て涙するラストシーンは泣けました。
 見てよかったです。これが、ツタヤで110円で借りられるとは!

 さいごに。(最後の県大会へ)

 先日の日曜日に地区大会が行われ、娘が走高跳に出場したので、応援に行きました。
 県大会の出場権が得られなければ、3年生の娘にとって、最後の大会となります。

 最近スランプだったので予想していましたが、1m30を2回落としてしまいました。
 しかし、1m35をクリアしてなんとか県大会の出場権を得ました。ほっとしました。

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ホワイトアウト1 [日本の現代文学]

 「ホワイトアウト」 真保裕一 (新潮文庫)


 ダムを占拠したテロリストに、たった一人で立ち向かう男の活躍を描いた小説です。
 「このミステリーがすごい!」で国内部門1位。織田裕二主演で映画化されました。


ホワイトアウト (新潮文庫)

ホワイトアウト (新潮文庫)

  • 作者: 裕一, 真保
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1998/08/28
  • メディア: 文庫



 11月の奥遠和で、ダムの運転員である富樫と吉田は、遭難者の救助に向かいました。
 救助活動において吹雪によるホワイトアウトに見舞われ、吉田は命を落としました。

 吉田を失って以来、生き残った富樫(とがし)はずっと自分を責め続けていました。
 翌2月、吉田の婚約者だった平川が奥遠和を訪れたとき、ダムが占拠されました。

 テロリストたちは、ダム職員と平川を人質に取り、政府に50億円を要求しました。
 一時的に送電を止め、ダムから水を放流し、政府に圧力をかけていきます。

 道を塞がれ、吹雪に閉ざされたダムには誰も近づけず、時間だけ過ぎていきます。
 犯人たちから逃れた富樫は、ひとりで彼らに立ち向かうべく、ダムに向かい・・・

 とにかく富樫がかっこいいです。単身ダムに乗り込み、敵を倒し放流を止め・・・
 やって来た敵を返り討ちにし、塞がれたダムから脱出して、再び敵のもとへ・・・

 富樫にはテロリストと戦う知識も経験もありません。あるのは知恵と勇気だけです。
 富樫はいかにして相手の人数を知ったか? いかにして塞がれたダムから脱出したか!

 しかし富樫を駆りたてたのは、なにがなんでも人質を救出したいという強い意志です。
 その意志は、あのとき吉田を助けられなかった、という深い後悔からきています。

 「富樫は自分だけが生き延びることになった理由が、今、理解できた。
 ーーやはり、吉岡、おまえだったのだな。」(P163)

 さて、映画「ホワイトアウト」の主演は、織田裕二。私の大好きな、織田裕二です。
 上映は2000年です。どうして今まで見なかったのか! 読み終わったら見たいです。

 現在、400ページぐらいまで読みました。あと200ページほどです。
 テロリストたちの正体は? ほかに真の目的があるのか? そして富樫の運命は?

 さいごに。(やってくれた山縣!)

 6月6日(日)の布勢スプリントで、山縣亮太がなんと9.95の日本新を出しました。
 故障から復帰して、山縣の走りはさらに進化しました。五輪もがんばってほしい!



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黒蜥蜴 [日本の近代文学]

 「黒蜥蜴」 江戸川乱歩 (創元推理文庫)


 美しき女盗賊「黒蜥蜴」と、名探偵明智小五郎の対決を描いた、傑作推理小説です。
 三島由紀夫が脚本化し、1968年に三輪明宏(丸山明宏)主演で映画化されました。

 岩波文庫、春陽堂文庫などからも出ていますが、オススメは創元推理文庫でしょう。
 連載時のすばらしい挿絵が、全点が復刻されています。読書の楽しさが倍増します。


黒蜥蜴 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

黒蜥蜴 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

  • 作者: 江戸川 乱歩
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1993/05/12
  • メディア: 文庫



 暗黒街に君臨する貴婦人の左腕には、真っ黒なトカゲの入れ墨がありました。
 その刺青ゆえに「黒蜥蜴(クロトカゲ)」と呼ばれる彼女は、女盗賊だったのです。

 黒蜥蜴が狙いを定めたのは、世界的宝石商の岩瀬が持つダイヤ「エジプトの星」。
 「エジプトの星」を手に入れるため、岩瀬の一人娘である早苗の誘拐を試みました。

 黒蜥蜴からの犯罪予告を受け、岩瀬が護衛を頼んだのは、名探偵の明智小五郎です。
 岩瀬たちが泊まるホテルにいた緑川夫人は、実は黒蜥蜴の仮の姿だったのです・・・

 黒蜥蜴はいかにして早苗を誘拐し、明智はいかにして奪い返したか?
 黒蜥蜴が二度目に早苗を誘拐した奇想天外な方法とは? 明智はいかに動いたか? 

 逆転に次ぐ逆転。してやったりと思ったら、してやられていたり・・・
 敵同士張り合いながらも、相手をリスペクトし、やがて不思議な感情が芽生えます。

 この小説の最大の魅力は、なんと言っても女盗賊「黒蜥蜴」の妖しい魅力でしょう。
 時に非情で残虐、時に女らしい。黒蜥蜴の存在感は、明智小五郎を圧倒しています。

 「もう君を憎んでやしない。かわいそうにさえ思っている・・・」
 「あたし、あなたに負けましたわ。なにもかも」

 ラストシーンは忘れられません。
 黒蜥蜴は敵対してきた明智小五郎に、いったい何を頼んだのか?!
  
 この物語を舞台化したい、映画化したい、という気持ちはとてもよく分かります。
 映画では、黒蜥蜴の魅力がさらに際立つアレンジや演出が、されているようです。

黒蜥蜴映画.jpg 

 さいごに。(ビルボード・トップ100)

 最近よくユーチューブで、「ビルボード・トップ100」の視聴しています。
 私の青春時代だった80年代の、懐かしい洋楽がたくさん聞くことができて嬉しい。



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奇妙な幕間狂言 [20世紀アメリカ文学]

 「奇妙な幕間狂言」 ユージン・オニール作 井上宗次・石田英二訳 (岩波文庫)


 戦死した婚約者にとらわれる女と、彼女を取り巻く人々の25年にわたる愛憎劇です。
 「楡の木陰の欲望」と並ぶオニールの代表作です。上演に6時間を要する戯曲です。


奇妙な幕間狂言 (岩波文庫)

奇妙な幕間狂言 (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2021/05/24
  • メディア: 文庫



 ニーナには、ゴードンという婚約者がいましたが、大戦で戦死してしまいました。
 彼が出征するとき、彼に自分を与えなかったことを、いつまでも後悔しています。

 煩悶したニーナは、軍の病院の看護婦を志願し、老父を残して出て行きました。
 ゴードンに与えられなかった愛を、負傷兵に与えることで自分を保とうとしたのです。

 しかし、その献身で心は疲れ果て、父が死んだときでさえ悲しくなりませんでした。
 そこで、次はわが子に献身できるようにと、ゴードンの友エヴァンズと結婚しました。

 ところが、子供ができたときに、エヴァンズの母から一族の恐ろしい話を聞き・・・
 エヴァンズ家の呪いとは? 呪いを避けるためにニーナはどのような行動をとったか?

 「お前があれを愛してゐることを是非サムに納得させにやならん―あれを幸せにする
 爲には。その爲には、お前がどの様な事をしてもいいのだ—いいのだよ。ニーナ! 
 わたしはちつとも構やせん!」(P110)

 このときからニーナの人生の長年にわたる悲劇が始まりました。それにしても長い!
 全9幕。文庫本で320ページ超。上演すれば6時間かかると言います。

 これほど長くなってしまうのは、登場人物たちが心の中まで吐露しているからです。
 副題に、「感情だだもれの四人衆」と付けたくなるぐらいです。

 勝手な感情をぶちまけながら、まったく裏腹なセリフを吐くところがこの劇の命です。
 心の中で相手を小バカにしながら、ばか丁寧な応対をしたりとか。

 さんざん悩み苦しんだ果てに、ニーナたちの人生ははかなくも過ぎ去っていきます。
 振り返ってみると、ただの幕間狂言。道化芝居のような人生だった・・・

 「実際に生きている世界は只過去と未来にある丈だ・・・現在は幕間狂言にすぎない。」
 (P267)
 「人生と云ふものは考へる事を必要としない単細胞の何物かなんですよ!」(P276)

 さいごに。(90歳以上のマイルで世界新!)

 青森県で行われたマスターズ陸上で、90歳以上の4×400mリレーで世界新が出ました。
 記録は8分49秒01。4分以上更新したとのこと。めっちゃカッコイイじっちゃんたち!

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ウィチャリー家の女 [20世紀アメリカ文学]

 「ウィチャリー家の女」 ロス・マクドナルド作 小笠原豊樹訳 (ハヤカワ文庫)


 行方不明の少女の捜索をする私立探偵の行動を通し、家庭の闇を描き出した物語です。
 作者はハメットやチャンドラーの後継者。日本ではロスマクとして親しまれています。


ウィチャリー家の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-1)

ウィチャリー家の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-1)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1976/04/01
  • メディア: 文庫



 私立探偵リュウ・アーチャーは、あるとき富豪のウィチャリーから依頼を受けました。
 それは、2か月前から行方不明となっている娘フィービを探し出すことでした。

 わずかな手がかりをもとに聞き込みをして、しだいに人間関係が分かってきます。
 フィービーの恋人のボビー、悪徳不動産屋のメリマン、その仲間のスタンリー。

 そしてどうやらフィービーの母キャサリンが、全てのカギを握っているようなのです。
 彼女に関わるなと言うウィチャリーの言葉を無視し、彼女を見つけて話しますが・・・

 フィービーはどこにいるのか? なぜフィービーは失踪したのか?
 そして、第二第三の殺人が起きます。その裏には、いったいどんな事情があるのか?

 前半は淡々と聞き込みが行われます。スペンサーのような粋なセリフはありません。
 10章までは、まるで退屈な新聞記事を読んでいるようで、私は眠たくなりました。

 ようやく物語が面白くなり出すのが、11章のミセス・スミスに出会った場面からです。
 この辺りから急に物語のテンポが上がって、私はいっきにのめり込みました。

 そして、24章のボビーの証言で話は一転します。私は慌てて11章を読み直しました。
 11章を読み直すという行為は、この小説を読んだ人の「あるある」なのだそうです。

 24章のボビーの話は全体のカギになる部分ですが、私は最初よく分からなかったです。
 死んだ人を生きていると言ったり、生きているはずの人を殺したと言ったり・・・

 このあとも、絡まった糸がほぐれると、また絡まって、なかなか終わりが見えません。
 しかもさらに話は二転三転していきます。終盤の展開は、目がまったく離せません。

 それにしても、この物語でえぐり出された真実は!
 ウィチャリー家の抱える闇の深さに、暗澹たる気持ちになります。

 ところで、最後の方になるとアーチャーは、ようやく気の利いたセリフを吐きます。
 地味ですが、なかなかの名セリフです。

 「この女のひと、いくつ?」/「三十九か、四十です」
 「命とりになった病気は・・・?」/「人生です」(P494)

 「人生というのは、いつまでもつづく勉強だよ。卒業もできないし、学位もとれない。
 だから、せいぜい努力して、退学にならないようにすることだ」(P442)

 さて、絶版ばかりのロスマクですが、傑作「さむけ」はハヤカワ文庫から発売中です。
 また、アーチャーシリーズの第一作「動く標的」は、創元推理文庫から発売中です。


さむけ (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-4)

さむけ (ハヤカワ・ミステリ文庫 8-4)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1976/09/01
  • メディア: 文庫



動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)

動く標的【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/03/22
  • メディア: 文庫



 さいごに。(娘をおんぶしたら)

 久々に娘をおんぶしてみたら、あまりにも重たくてびっくりしました。
 体重を聞くと、46キロだと言う。いつのまにかそんなに大きくなっていたのか。

 以前は娘をおんぶして二階まで上がったものでした。
 今ではとてもできません。娘が重くなった以上に、私の体力が衰えてしまって。

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ゴッドウルフの行方 [20世紀アメリカ文学]

 「ゴッドウルフの行方」 ロバート・B・パーカー作 菊池光訳 (ハヤカワ文庫)


 盗まれたゴッドウルフ写本の行方を追う探偵が、殺人事件に巻き込まれる物語です。
 スペンサー・シリーズの記念すべき第一作です。のちに人気シリーズとなりました。


ゴッドウルフの行方 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)

ゴッドウルフの行方 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1986/09/01
  • メディア: 文庫



 私立探偵のスペンサーは、ある大学の学長から仕事を依頼されました。
 それは、大学内組織に盗まれたゴッドウルフ写本を取り返す、というものでした。

 容疑者は、SCACE。「資本家の搾取に反対する学生委員会」という組織です。
 スペンサーはさっそく、その組織の書記をしているテリイに会いに行きました。

 テリイはその本を知らないと言い、男友達のデニスは答えようとしませんでした。
 ところが深夜にテリイから電話があり、駆け付けるとデニスが殺されていて・・・

 誰がデニスを殺したのか? なぜデニスは殺されたのか?
 デニス殺しとゴッドウルフ写本の盗難には、どのようなつながりがあるのか?

 ヘイドン教授を訪ねた後、スペンサーはギャングに手を引くよう脅されて・・・
 この事件を指揮していた殺人課のクワーク警部補もまた、担当を外されて・・・

 スペンサー・シリーズの魅力は、スペンサーはじめ登場人物たちの粋な会話です。
 特に13章、スペンサーとクワークがお互いの距離を縮める部分は実にしびれます。

 「くびになるまでは、かなり優秀な警官だったそうだな。なんでくびになったんだ?」
 「命令不服従。おれのいちばんの取り柄だ」(P161)

 一方、ヘイドンは・・・正義を掲げて悪を行い、助けられても助けることはしない。
 危険が迫ると、自分の妻さえも売る! こういう小モノが、いちばんタチが悪い。

 また、登場回数はわずかですが、学生新聞の編集者アイリスは印象に残りました。
 年のいった黒人女子学生ですが、生き生きとしていて、言葉が弾んでいます。

 さて、この本は名作だと思います。また、スペンサーの記念すべき第一作です。
 それにもかかわらず、現在絶版とのこと。早く新カバーで改版を出してほしいです。

 さいごに。(ネコのおかげ)

 友人のKはネコ嫌いですが、妻と娘に強行突破され、ネコを飼い始めたのだそうです。
 ところが、ネコが来てからというもの、女衆二人はいつも機嫌が良いのだそうです。

 Kは、「最近生活が快適なのは、ネコのおかげだよ」と言っていました。
 ちなみにわが家では、ジャニーズがネコの役割を担っています。

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楡の木陰の欲望 [20世紀アメリカ文学]

 「楡の木陰の欲望」 ユージン・オニール作 井上宗次訳 (岩波文庫)


 楡の木陰に立つ家の息子と若き後妻の、禁断の愛と悲劇を描いた傑作戯曲です。
 作者オニールは、アメリカ近代劇の創始者として知られています。


楡の木陰の欲望 (岩波文庫 赤 325-1)

楡の木陰の欲望 (岩波文庫 赤 325-1)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1974/01/01
  • メディア: 文庫



 行方不明だった75歳の父親が、いきなり35歳の後妻を伴って家に帰ってきました。
 農場が後妻のものになると考えた二人の兄は出て行き、三男のエビンは残りました。

 初めてエビンと会った日、後妻のアビーは、財産目当ての結婚だったと言いました。
 エビンはそんなアビーを憎みながらも、アビーに肉感的な魅力を感じていました。

 ある日二人は、エビンの亡き母の部屋で愛し合い、やがて子どもが生まれました。
 事情を知らない老父キャボットは、それを我が子だと思い祝宴を開きましたが・・・

 子の誕生で農場を手にしたアビーは、しかしエビンを本気で愛してしまっていました。
 アビーはどのような行動に出たか? そしてエビンはどのような行動に出たか?

 とても衝撃的な戯曲でした。
 特に、第三部の展開に驚きました。私はもっと穏やかな結末を想像していたので。

 この戯曲には、どこかホラーっぽいところがあります。
 不気味な雰囲気を醸し出しているのが、エビンの亡くなった母の面影です。

 アビー:さっき初めてはいって来たとき—暗がりの中に—何かいるような気がしたわ。
 エビン:おふくろだよ。
 アビー:まだいるような気がするわ—何か・・・
 エビン:おふくろだよ。(P88)

 エビン:墓の中へ帰って行ったのがわからなかったのか?
 キャボット:誰がよ?
 エビン:おふくろだよ。おふくろは、こんどこそ休める。そして安心して眠れるんだ。
 (P97)

 そして、エビンの亡くなった母を象徴しているのが、家を覆うように立つ楡の木です。
 冒頭部で、楡の木を「不気味な母性」と呼び、次のように描写しています。

 「重苦しく家をおおっている様子は、ちょうど疲れきった女が、たるんだ乳房と両手
 と髪の毛を屋根の上にやすませているようである。」(P7)

 この物語の悲劇は、エビンの死んだ母親の呪いによって、もたらされたのでは?
 楡の木に宿る霊が、計画的に二人を破滅に導いたのでは?

 さて、この劇を味わい深くしているのが、老父キャボットの存在です。
 ある意味、道化的な存在ですが、所々で印象深い言葉を吐いています。

 「ここは石っころだらけの原っぱで、わしがここを買ったら、みんなぁ笑った
 よ。やつらにゃわしの思わくがわからなかったんだ。石っころの中から麦の芽
 を出せたら、その人間の中にゃ神さまが宿ってるんだ!」(P78)

 ユージン・オニールには、ほかに「奇妙な幕間狂言」がありますが、絶版です。
 「喪服のエレクトラ」も絶版。この3作は、文庫で手に入るようにしてほしい。

 さいごに。(ケーキ2個)

 私のバースデイ・ケーキは、シャトレーゼでカットケーキ2個ずつとなりました。
 来年は、不二家のケーキ・バイキングに挑戦したい。サバラン10個食べてやる!

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