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ブリタニキュス ベレニス [17世紀文学]

 「ブリタニキュス ベレニス」 ラシーヌ作 渡辺守章訳 (岩波文庫)


 皇帝ネロと皇帝ティチュスの時代を描いた、ローマ帝国モノの悲劇二編です。
 「アンドロマック」ほど知られていませんが、ラシーヌの代表作の一つです。

 2008年に岩波文庫から出た直後に買い、ようやく読みました。現在は絶版です。
 「フェードル アンドロマック」同様、渡辺訳は分かりやすかったです。
 「アンドロマック」→ https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-02-23


ブリタニキュス ベレニス (岩波文庫)

ブリタニキュス ベレニス (岩波文庫)

  • 作者: ラシーヌ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2008/02/15
  • メディア: 文庫



 「ブリタニキュス」は1669年に上演されましたが、評判は芳しくなかったそうです。
 「ブリタニキュス」はクラウディウス帝の子。皇帝ネロの義理の弟に当たります。

 ネロン(=ネロ)が皇帝の座に着けたのは、母アグリピーヌのおかげです。
 それがよく分かっているからこそ、実の母アグリピーヌが疎ましくなってきました。

 その心につけこみ、ネロンを悪の道に走らせるのが、ナルシスという悪人です。
 ナルシスはブリタニキュスの後見をしていながら、ネロンのために彼を裏切り・・・

 「ブリタニキュス」は、ブリタニキュスとその恋人ジュニーの悲劇を描いています。
 しかし主役はどう見ても皇帝ネロです。ネロと母アグリピーヌの確執がテーマです。

 誰でも大人になるため、親から一歩踏み出すときが来ます。人生の変化のときです。
 ネロンにもそのときが来ました。そのとき彼を導いたのが、運悪くナルシスだった。

 その結果、3年間の善政もむなしく、ネロンは暴君の道を歩み始めるのです。
 最後はアグリピーヌも暗殺されることが暗示され、不気味な雰囲気で幕が下ります。

 「だが、わたしの死が、お前には何の役にも立たぬようにしてやろう。
 死ぬ時にこのわたしが、お前を無事安穏にしておくなどとは思わぬがよい。」

 実に後味が悪い。我々はこののちのネロの暴虐を知っているので、なおさらです。
 ラシーヌは、暴君ネロンが誕生する瞬間を描きたかったのかもしれません。

 さて、もう一方の「ベレニス」は、翌1670年に上演され、それなりに成功しました。
 「ベレニス」はパレスティナの女王です。ローマ皇帝ティチュスに愛されました。

 ティチュスとベレニスの婚礼が近づく中、皇帝の友アンティオキュスが悩んでいます。
 彼もベレニスを愛していたのです。彼は思いを断ち切り、ローマを離れようとします。

 ところが、ローマには、異国の女王を妃にしてはいけないという掟があったのです。
 皇帝はベレニスと別れるために、友であるアンティオキュスを彼女の元に遣わし・・・

 皇帝がアンティオキュスの恋心を知らないため、三人の関係はややこしくなります。
 主役はベレニスではなくて、皇帝ティチュスとその友アンティオキュスでしょう。

 ところで「ベレニス」の登場人物は良い子ちゃんばかりで、やや面白みに欠けます。
 私的には「ブリタニキュス」の方が面白かった。ネロンの個性が強烈だったので。

 この本も、「フェードル アンドロマック」と同じで、訳注がやたらと多いです。
 本文が二編で300ページ足らずなのに、訳注は250ページあります。読まないって!

 訳注をバッサリ切って、500円くらいで出ていたら、もっと読まれたのではないか。
 文庫本には専門的な訳注はいらない、というように割り切ってほしいと思います。

 さいごに。(シゲが出てるから)

 普段あまりドラマを見ないママさんが、最近NHKの夜のドラマを見ています。
 わけを聞いたら、「シゲが出ているから」とのこと。(シゲ=重岡くん)

 ママさんは、ジャニーズ・ウェストの重岡君のファンなのです。
 ドラマに出てくる重岡君が、いまいちチャライ役なので不満があるようです。

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