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藪の中(芥川龍之介) [日本の近代文学]

 「藪の中 将軍」 芥川龍之介 (角川文庫)

 タイトル作など、大正10年に発表された短編を中心に、17編を収録しています。
 角川文庫は天野喜孝の妖艶なカバーで出ていましたが、現在は絶版のようです。


藪の中・将軍 (角川文庫)

藪の中・将軍 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2000/09/15
  • メディア: Kindle版



 「藪の中」は、王朝物の最後の傑作であり、真相が分からないことで有名です。
 一人の殺人事件について、当事者三人の証言が、まったく食い違っています。

 盗人は自分が殺したと言い、女は自分が殺したと言い、男の霊は自分で死んだと・・・
 藪の中で行われた殺人事件の真相は、調べれば調べるほど藪の奥深くへと・・・

 若いころに読んだ時には混乱して、「いったい真実は何なんだ?」と思いました。
 しかしそれこそ芥川の狙い。彼は、混沌とした結末こそ真実に近いと言いたいらしい。

 「将軍」は、いくつかのスケッチを通して、乃木将軍を身近に描いた作品です。
 しかし本当に書きたかったのは、次のような明治的考えに対する違和感だったのでは?

 「死は陛下の御為にしても、所詮はのろうべき怪物だった。戦争は、 — 彼はほとんど
 戦争は、罪悪という気さえしなかった。(中略)戦争は陛下の御為の御奉公にほかな
 らなかった。」(P190)

 「秋山図」は、「藪の中」同様ミステリーっぽい作品で、興味がそそられる佳作です。
 50年ぶりに見た秋山図は、昔見た秋山図と同じものだったのか? それとも・・・

 また、平中説話を題材にした「好色」、平家物語で知られる「俊寛」なども良いです。
 どちらも伝承をうまくアレンジして、芥川一流の味付けがされています。

 本の前半には「アグニの神」「奇遇」「妙な話」などオカルト的作品が目立ちます。
 中でも「奇妙な再会」が、とても印象に残りました。あの白い犬は何だったのか?

 大正10年というと芥川はまだ30歳前で、海外視察員として中国に派遣された頃です。
 オカルト的作品は、中国の志怪小説の影響でしょうか。

 芥川は帰国後、心身の健康を崩したので、この時期の作品は少なめです。
 この苦しい時期があったからこそ、晩年の「歯車」「河童」が生まれるのです。

 さいごに。(今年は家族イベント無し)

 娘が小学生の頃は、毎年夏休みには、泊りがけで旅行に行っていました。
 テントに泊まったり、バンガローに泊まったりして、自然の中で過ごしました。

 中学生で陸上部に入ると、なかなか都合がつかなくて、今年は旅行に行けません。
 せめてお盆にはどこかに行こうと思っていましたが、台風が来ちゃったし。

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