SSブログ

蹴りたい背中 [日本の現代文学]

 「蹴りたい背中」 綿矢りさ (河出文庫)


 クラスに溶け込むことができない男女二人の、微妙な心の交流を描いた青春小説です。
 2003年に金原ひとみの「蛇とピアス」と共に、芥川賞を受賞して評判になりました。


蹴りたい背中 (河出文庫)

蹴りたい背中 (河出文庫)

  • 作者: 綿矢 りさ
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2007/04/05
  • メディア: 文庫



 高校1年の6月の時点で、まだ友達ができていないのは、ハツとにな川だけでした。
 ハツは、皆が他人に合わせておしゃべりをし合うことに、違和感を覚えていました。

 「どうしてそんなに薄まりたがるんだろう。同じ溶液に浸かってぐったり安心して、
 他人と飽和することは、そんなに心地よいもんなんだろうか。」(P22)

 クラスでも浮いて、陸上部でも浮いて、周囲に溶け込めないハツ。
 しかしオリチャンつながりで、もう一人の余り者のにな川と、話すようになりました。

 ある日にな川は、自分の部屋でハツに構わず、オリチャンのラジオを聴き始めました。
 その無防備でもの悲しい背中を見たとき、不意に蹴飛ばしたくなる衝動が起きて・・・

 「蹴りたい背中」は、冒頭部分のヘンテコ(?)な文章に、注目が集まりました。
 「葉緑体? オオカナダモ? ハッ。っていうこのスタンス。」(P7)とか。

 この文章を、新鮮だと評価するか、意味不明だと斬って捨てるかは、微妙なところ。
 当時、評価する方向に傾いたのは、綿矢が19歳の美少女だったという要素が大きい。

 2003年、綿矢が19歳という若さで、芥川賞に輝いたのは、文学史上の大事件でした。
 あっというまに100万部以上を売って、一躍人気作家の仲間入りを果たしました。

 文庫化されてから積んどく状態で、なぜかこれまで読む機会がありませんでした。
 今回綿矢作品を読んで、少女の心の叫びを表現するのがうまいなあと思いました。

 「認めてほしい。許してほしい。櫛にからまった髪の毛を一本一本取り除くように、
 私の心にからみつく黒い筋を指でつまみ取ってごみ箱に捨ててほしい。」(P109)

 こういう表現がさらりと出てきてしまうところが、この人の才能であったのでしょう。
 また、少女の内面を、背中を蹴りたい衝動で表すところなど、ユニークだと思います。

 最近、綿矢が中学時代に「風と共に去りぬ」を繰り返し読んでいたことを知りました。
 それで、急に気になり始めました。現在35歳? どんな作品を書いているのでしょう。

 さいごに。(紅葉)

 娘が中学に入ってからは部活があって、家族で出かける機会が作りにくくなりました。
 先日、久々に家族3人で、少し遅めの紅葉を見に行きました。紅葉は癒されますね。

KIMG0051-2.jpg

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。