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ペドロ・パラモ [20世紀ラテンアメリカ文学]

 「ペドロ・パラモ」 フアン・ルルファ作 杉山晃・増田義郎訳 (岩波文庫)


 死者たちのささやきが聞こえるコマラと、その街の悪漢ペドロ・パラモの物語です。
 死者と生者、過去と現在が交差する斬新的手法を用いた、メキシコ小説の傑作です。


ペドロ・パラモ (岩波文庫)

ペドロ・パラモ (岩波文庫)

  • 作者: フアン・ルルフォ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1992/10/16
  • メディア: 文庫



 「おれ」は、母の死に際の頼みに従って、父親を探しにコマラにやって来ました。
 父の名はペドロ・パラモ。コマラの街でのしあがり、悪行の限りを尽くした男です。

 しかし、コマラの街はひっそりと静まり返っていて、全く人間の気配がしません。
 しかも、道で出会った男は、ペドロ・パラモがもう死んでいると言っていました。

 母の昔の友人であるエドゥビヘスの家に泊まりますが、彼女は死者のようで・・・
 それどころか、この街全体が死者で溢れていて、そのささやきが聞こえ・・・

 「ペドロ・パラモ」が完璧な構成をもつ作品であることは、知らされていました。
 また、構成が顕密すぎるため、一読では理解しがたいことも、知らされていました。

 だから私は十分に警戒し、できるだけじっくりと読み進めました。
 頻繁に立ち止まっては筋を振り返り、時には同じ断章を3度続けて読み返しました。

 それにもかかわらず、100ページ(半分)辺りから分からなくなってしまいました。
 彼も死んでる、彼女も死んでる、「おれ」も死んでる? ここはどこ? 今はいつ?

 時系列のバラバラな断片をつなげると、全体像が浮かんでくると言うが・・・
 物語が永遠に繰り返される円環の内にあることが、最後に分かると言うが・・・

 ある人が、この小説は2度目に読むと、すんなり理解できると言いました。
 しかし私は、頭がすっかり疲れてしまって、今は2度目を読む気になれません。

 余分な部分を大胆にそぎ落とした結果、主語のよく分からない断章さえありました。
 これは、読み手を厳しく選ぶ作品です。私には、よく分からない小説でした。

 だから、「ペドロ・パラモ」の素晴らしさを、私はうまく伝えることができません。
 それなので、「ラテンアメリカ文学入門」中の、有益な記述を2つ引用します。

 「一方で死んでも死にきれない霊魂のさまようコマラの怪しい雰囲気を描きながら、
 他方でそのささやきを通じてコマラが『死の街』になったプロセスを断片的に再現し
 ていくところに、この小説の大きな特徴がある。」(P71)

 「断片的形式を通して再現される物語の内容がその断片的形式を正当化するという顕
 密な構成のなかで、ルルファは死に対する強迫観念を見事に具現化した。」(P71)

 この作品がが完璧すぎたため、ルルファはこののち小説を発表しなかったそうです。
 だからルルファの作品は、ほかに初期短編集の「燃える平原」があるだけです。


燃える平原 (岩波文庫)

燃える平原 (岩波文庫)

  • 作者: フアン・ルルフォ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2018/05/17
  • メディア: 文庫



 この短編集を、読んでみたい気もするし、読むのが怖い気もします。
 理解できるかどうか・・・

 さいごに。(またも、セコイ話ですまない)

 メーカー送りとなったゼニスは、オーバーホールして直りました。12万円でした。
 私は普段は個人経営のお店で、5年おきに、5万~6万でやってもらってます。

 それでも懐が痛むのに、メーカーでやると、倍の12万円かかるということです。
 2~3万円の腕時計を5年おきに買い替えた方が、私の身の丈には合っていたかも。

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