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精霊たちの家2 [20世紀ラテンアメリカ文学]

 「精霊たちの家 下」 イサベル・アジェンデ作 木村榮一訳 (河出文庫)


 クラーラ、ブランカ、アルバと続く、デル・バージェ家の三代にわたる年代記です。
 マルケスの「百年の孤独」と並び称せられる、ラテンアメリカ文学の名作です。


精霊たちの家 下 (河出文庫)

精霊たちの家 下 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/07/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 エステーバンは共和国の国会議員となり、社会的な地位を確立していきました。
 ところが、クラーラの死とともに、トゥルエバ家の運命は少しずつ傾きました。

 「クラーラが亡くなったとたんに、角の邸宅から花をはじめあちこちを渡り歩いて
 いる友人たちや陽気な精霊が姿を消し、凋落の時代がはじまった。」(P127)・・・

 物語の中心にはいつもクラーラがいたのに、途中で死んでしまったので驚きました。
 しかも、精霊たちが去ってしまいます。「精霊の家」なのに!

 物語の中心は、娘のブランカへ、そして孫のアルバへと続きます。
 そして、エステーバンが見届ける中、時代はどんどん変わっていき・・・

 さて、下巻の後半、11章「目覚め」辺りから、雰囲気ががらりと変わりました。
 政治や革命の話が多くなり、雰囲気が急に殺伐としてくるのです。

 実は私は、この物語は、10章までで終わっても良かった、と思っています。
 エステーバンがクラーラを思いながら、二度と目覚めぬ眠りにつくことにして。

 しかしアジェンデは、その後の政治的混乱をこそ、描きたかったのでしょう。
 自分の目で見て体験したことを、作品の中で訴えたかったに違いありません。

 それを作品として書くことで、自分の半生の意味をかみしめていたのではないか。
 そういう意味で、エピローグにおけるアルバの思考は、ちょっと興味深いです。

 「犬小屋(墓穴のように密閉された独房)の中でふと、自分は今、それぞれの断片
 が収まるべきところに収まるはずのジグソーパズルを組み立てているのだと考えた。
 完成するまでは不可解なものに思えたが、その一方で、もしできあがれば、それぞ
 れの断片が意味を持ち、全体としては調和のとれたものになるはずだという確信が
 あった。」(P369)

 人生には、あとから振り返ってみて、初めてその意味に気づくことがあります。
 アジェンデもまた、辛かった体験の中に、意味を見出そうとしたのではないか。

 そして物語を紡ぎながら、パズルのピースの意味を、見い出したに違いありません。
 それを見出してくれるものこそが、真実の「精霊」だったのではないでしょうか。

 53歳の私は最近、突然天啓のように、昔の出来事の意味を理解することがあります。
 人生のパズルが完成に向かうのを感じながら、歳をとっていくんですね。

 さいごに。(県大会20位)

 中学生の県大会の走高跳で、娘は1m30を1回でクリアし、20位に入りました。
 記録なしになるかもしれないと恐れていましたが、記録を残せて良かったです。

 1年前と記録は変わっていませんが、跳び方はだいぶ上手になってきました。
 1m35以上、体が上がっているようでした。反る練習をすれば記録が伸びそうです。

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