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幻獣辞典 [20世紀ラテンアメリカ文学]

 「幻獣辞典」 ボルヘス作 柳瀬尚紀訳 (河出文庫)


 神話から近代小説まで、古今東西の書物に登場する幻の生物を、集大成しています。
 1957年に初版が出て、1969年に完全版が出ました。全120の幻獣を紹介しています。


幻獣辞典 (河出文庫)

幻獣辞典 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2015/05/08
  • メディア: 文庫



 キマイラ、スフィンクス、セイレーンなど、ギリシア神話でおなじみのものから、
 ポオ、カフカ、ルイス・キャロルの小説中の存在まで、幅広く集められています。

 どの幻獣も個性的で面白く、ボルヘスの蘊蓄が、知的好奇心を満たしてくれます。
 「誰しも知るように、むだで横道にそれた知識には一種のけだるい喜びがある。」
 (P9「序」より)

 私はこの本に「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」で出会いました。
 主人公が「幻獣辞典」で、一角獣について調べていたので、気になっていました。

 「一角獣」については、乙女の手で捕らえられるという点が面白かったです。
 一角獣は、情欲ゆえに我が狂暴さを忘れ、乙女の膝に頭を乗せたところを・・・

 私にとって最も興味深かったのは、「鏡の動物誌」です。
 かつて、鏡の世界と人間の世界は共存し、自由に行き来していたと言います。

 あるとき鏡の人々が地上に侵入し・・・黄帝は彼らを鏡の中に閉じ込めて・・・
 現在彼らは単なる奴隷的な反射像だが・・・いつか黄帝の魔力が解けると・・・

 「ア・バオ・ア・クゥー」の記述もまた、なかなか興味深かったです。
 それは、勝利の塔の螺旋階段に住み、誰かが階段を登り始めると目覚めて・・・

 訪問者が一段一段登るにつれて、その生き物の色合いは強烈になり・・・
 最上段においてそれは完全な姿になるが、人はそれを見ることができず・・・

 中には、「スクォンク(溶ける涙体)」というかわいらしい生き物もいます。
 スクォンクは始終涙を流して泣いていて、涙に全身が溶けてしまうことが・・・

 「足萎えのウーフニック」もまた、かわいらしいです。
 もし自分が足萎えのウーフニックだと悟ると、その者は死んで他の者が・・・

 また中には、わけのわからない項目もあります。例えば「過去を称える者たち」。
 「過去は絶対で、過去は現在を所有したこともなく」・・・どこが、幻獣?

 興味深いのは、「球体の動物」。プラトンが「法律」の中で、こう述べました。
 「惑星その他の星も生きている」と。つまり、星もまた幻獣、ということです。

 「ファスティトカロン」の項では、聖霊が作った二冊の本について書かれています。
 ひとつは聖書。もうひとつは世界全体。教訓は生き物の内に閉じ込められて・・・

 突然、意外な文章に出会って、驚くこともあります。
 デカルトは言ったという、猿は実はじゃべれるのだが、沈黙の方が好きなので・・・

 さて、ボルヘスはほかに、「怪奇譚集」を出しています。少し気になります。
 また、後期短編集「ブロディ―の報告書」も、読んでみたいです。


ボルヘス怪奇譚集 (河出文庫)

ボルヘス怪奇譚集 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2018/04/06
  • メディア: 文庫



ブロディーの報告書 (岩波文庫)

ブロディーの報告書 (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2012/05/17
  • メディア: 文庫



 さいごに。(家族で見る日本選手権)

 これまで陸上の日本選手権の中継があっても、見るのは私ひとりでした。
 最近は家族で見ています。娘が昨年陸上を始めて、興味を持つようになったので。

 100mはやはり桐生が強かったです。200mは飯塚。400Hは、やはり安部でした。
 やっぱり、家族で見た方が、ずっと楽しいですね。とても盛り上がります。

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