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少将滋幹の母 [日本の現代文学]

 「少将滋幹の母」 谷崎潤一郎 (新潮文庫)


 妻を奪われた老大納言国経の執着と、その子滋幹の母への思慕を描いた物語です。
 平安朝の時代小説で、「今昔物語」などさまざまな説話を材料に描かれています。


少将滋幹の母 (新潮文庫)

少将滋幹の母 (新潮文庫)

  • 作者: 潤一郎, 谷崎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/12/13
  • メディア: 文庫



 色好みの平中(平定文)は、左大臣藤原時平の屋敷の侍従に惚れ込んでいました。
 そのため平中は時平邸を時々訪れて、二人は趣味の話や女の話に花を咲かせました。

 あるとき時平は、自分の伯父である大納言国経の妻について、平中に尋ねました。
 国経は80に近い老齢、妻は20ぐらいの絶世の美女。そして平中と関係がありました。

 時平は、国経にさまざまな贈り物をして相手を感動させ、とうとうその妻を・・・
 国経の妻への消えない執着心、そして息子滋幹の母への思慕の念・・・

 タイトルは「少将滋幹の母」なので、最初は女の話かと思っていたけど違いました。
 男たちの物語です。これは、少将滋幹の母を取り巻く男たちの物語です。

 前半は、時平と平中の物語です。さまざまなエピソードをまじえながら展開します。
 時平のやり方は実にしたたか。強引に奪うのではなく、相手に献上させてしまう!

 後半は、国経と息子滋幹の物語です。二人のそれぞれの思いが描かれています。
 ある月の夜、老いた父は一人でどこに出かけたが・・・滋幹はそこで何を見たか?

 特に「不浄観」について書かれている部分が、印象に残りました。
 父の前にあったのは腐った女の遺体で、内臓が流れ出し蛆がうごめいていて・・・

 「不浄観」については、P137から20ページほどにわたり、詳しく描かれています。
 おそらく谷崎自身も、とても興味を持っていたであろうと思います。

 そして、母と別れて40年後、滋幹は父の跡を追った日と同じような月夜に・・・
 このラストはすばらしいです。「お母さま」の一言に、すべて集約されています。

 さて、この小説を大学時代に初めて読んだときは、平中に感情移入していました。
 50を超えた今は、滋幹に共感していました。母を慕うところが可哀そうで・・・

 ところで、死体の腐る過程を描いた「九相図」は、不浄観のためのものだと言う。
 これまで気味の悪い絵だと思っていたけど、意外な意味があることを知りました。

九相図.jfif

 さいごに。(ただ走るだけでしょ?)

 冬の体育の授業は持久走で、各自のペースでただひたすら走るのだそうです。
 ただ走っているだけで楽しそうだなと思ったら、「そこが大変なんだ」とのこと。

 私が中学生だったときは、持久走の授業は完全な息抜きでした。
 走るのが苦手な娘にとっては、ただ走るだけで苦痛のようです。陸上部なのに!

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