楡の木陰の欲望 [20世紀アメリカ文学]
「楡の木陰の欲望」 ユージン・オニール作 井上宗次訳 (岩波文庫)
楡の木陰に立つ家の息子と若き後妻の、禁断の愛と悲劇を描いた傑作戯曲です。
作者オニールは、アメリカ近代劇の創始者として知られています。
行方不明だった75歳の父親が、いきなり35歳の後妻を伴って家に帰ってきました。
農場が後妻のものになると考えた二人の兄は出て行き、三男のエビンは残りました。
初めてエビンと会った日、後妻のアビーは、財産目当ての結婚だったと言いました。
エビンはそんなアビーを憎みながらも、アビーに肉感的な魅力を感じていました。
ある日二人は、エビンの亡き母の部屋で愛し合い、やがて子どもが生まれました。
事情を知らない老父キャボットは、それを我が子だと思い祝宴を開きましたが・・・
子の誕生で農場を手にしたアビーは、しかしエビンを本気で愛してしまっていました。
アビーはどのような行動に出たか? そしてエビンはどのような行動に出たか?
とても衝撃的な戯曲でした。
特に、第三部の展開に驚きました。私はもっと穏やかな結末を想像していたので。
この戯曲には、どこかホラーっぽいところがあります。
不気味な雰囲気を醸し出しているのが、エビンの亡くなった母の面影です。
アビー:さっき初めてはいって来たとき—暗がりの中に—何かいるような気がしたわ。
エビン:おふくろだよ。
アビー:まだいるような気がするわ—何か・・・
エビン:おふくろだよ。(P88)
エビン:墓の中へ帰って行ったのがわからなかったのか?
キャボット:誰がよ?
エビン:おふくろだよ。おふくろは、こんどこそ休める。そして安心して眠れるんだ。
(P97)
そして、エビンの亡くなった母を象徴しているのが、家を覆うように立つ楡の木です。
冒頭部で、楡の木を「不気味な母性」と呼び、次のように描写しています。
「重苦しく家をおおっている様子は、ちょうど疲れきった女が、たるんだ乳房と両手
と髪の毛を屋根の上にやすませているようである。」(P7)
この物語の悲劇は、エビンの死んだ母親の呪いによって、もたらされたのでは?
楡の木に宿る霊が、計画的に二人を破滅に導いたのでは?
さて、この劇を味わい深くしているのが、老父キャボットの存在です。
ある意味、道化的な存在ですが、所々で印象深い言葉を吐いています。
「ここは石っころだらけの原っぱで、わしがここを買ったら、みんなぁ笑った
よ。やつらにゃわしの思わくがわからなかったんだ。石っころの中から麦の芽
を出せたら、その人間の中にゃ神さまが宿ってるんだ!」(P78)
ユージン・オニールには、ほかに「奇妙な幕間狂言」がありますが、絶版です。
「喪服のエレクトラ」も絶版。この3作は、文庫で手に入るようにしてほしい。
さいごに。(ケーキ2個)
私のバースデイ・ケーキは、シャトレーゼでカットケーキ2個ずつとなりました。
来年は、不二家のケーキ・バイキングに挑戦したい。サバラン10個食べてやる!
楡の木陰に立つ家の息子と若き後妻の、禁断の愛と悲劇を描いた傑作戯曲です。
作者オニールは、アメリカ近代劇の創始者として知られています。
行方不明だった75歳の父親が、いきなり35歳の後妻を伴って家に帰ってきました。
農場が後妻のものになると考えた二人の兄は出て行き、三男のエビンは残りました。
初めてエビンと会った日、後妻のアビーは、財産目当ての結婚だったと言いました。
エビンはそんなアビーを憎みながらも、アビーに肉感的な魅力を感じていました。
ある日二人は、エビンの亡き母の部屋で愛し合い、やがて子どもが生まれました。
事情を知らない老父キャボットは、それを我が子だと思い祝宴を開きましたが・・・
子の誕生で農場を手にしたアビーは、しかしエビンを本気で愛してしまっていました。
アビーはどのような行動に出たか? そしてエビンはどのような行動に出たか?
とても衝撃的な戯曲でした。
特に、第三部の展開に驚きました。私はもっと穏やかな結末を想像していたので。
この戯曲には、どこかホラーっぽいところがあります。
不気味な雰囲気を醸し出しているのが、エビンの亡くなった母の面影です。
アビー:さっき初めてはいって来たとき—暗がりの中に—何かいるような気がしたわ。
エビン:おふくろだよ。
アビー:まだいるような気がするわ—何か・・・
エビン:おふくろだよ。(P88)
エビン:墓の中へ帰って行ったのがわからなかったのか?
キャボット:誰がよ?
エビン:おふくろだよ。おふくろは、こんどこそ休める。そして安心して眠れるんだ。
(P97)
そして、エビンの亡くなった母を象徴しているのが、家を覆うように立つ楡の木です。
冒頭部で、楡の木を「不気味な母性」と呼び、次のように描写しています。
「重苦しく家をおおっている様子は、ちょうど疲れきった女が、たるんだ乳房と両手
と髪の毛を屋根の上にやすませているようである。」(P7)
この物語の悲劇は、エビンの死んだ母親の呪いによって、もたらされたのでは?
楡の木に宿る霊が、計画的に二人を破滅に導いたのでは?
さて、この劇を味わい深くしているのが、老父キャボットの存在です。
ある意味、道化的な存在ですが、所々で印象深い言葉を吐いています。
「ここは石っころだらけの原っぱで、わしがここを買ったら、みんなぁ笑った
よ。やつらにゃわしの思わくがわからなかったんだ。石っころの中から麦の芽
を出せたら、その人間の中にゃ神さまが宿ってるんだ!」(P78)
ユージン・オニールには、ほかに「奇妙な幕間狂言」がありますが、絶版です。
「喪服のエレクトラ」も絶版。この3作は、文庫で手に入るようにしてほしい。
さいごに。(ケーキ2個)
私のバースデイ・ケーキは、シャトレーゼでカットケーキ2個ずつとなりました。
来年は、不二家のケーキ・バイキングに挑戦したい。サバラン10個食べてやる!
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