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世界文学の流れをざっくりとつかむ35 [世界文学の流れをざっくりとつかむ]

≪第七章≫ 近代小説の誕生

6 フランス写実主義と自然主義

 ロマン主義が華やかなりし頃、作家たちは貴族のサロンに出入りし、貴族をパトロンとして活動していました。作家自身が貴族であることも多く、そのためロマン派の作品では、英雄や王侯が理想化された形で描かれました。しかし、19世紀の半ばになると社会の様相は一変しました。貴族は没落し始め市民階級が勃興し、企業としての出版社ができ、職業作家が成立しました。また、識字率が上がり、大衆が小説を読むようにもなりました。これによって作家たちは、大衆の嗜好に合わせて、無名の人物のありふれた出来事を描くようになりました。

 産業革命により各種産業が発展すると、科学的な実証主義が尊ばれるようになりました。文学においても、主観的な理想化や誇張は抑えられ、具体的な出来事をできるだけ忠実に描くことがもてはやされました。たとえばバルザックの作品は、ある性格の人物がある状況の下でいかなる行動を取るかを、客観的に再現していると言われています。文学におけるこのような傾向は、写真が発明され普及したこととも関係があるようです。このように、すべてを客観的に写し取ることで、社会や人間の本質を捕らえようとしたのが、写実主義だと私は考えています。

 1930年にスタンダールは「赤と黒」を出し、人々の精緻な観察と行動の予測をし、写実主義小説の最初のものとなりました。副題の「1830年代史」には、実際にこの年の7月革命を予言したという自負が込められています。主人公ジュリアン・ソレルの野望と挫折は、永遠の名作として読み継がれています。スタンダールが1939年に出したもうひとつの傑作「パルムの僧院」も、写実主義小説の初期の例として、多くの作家たちに影響を与えました。

 同じころバルザックは、自分の作品を「人間喜劇」という作品群にまとめることを構想していました。バルザックはそれを、内容によって、「風俗研究」「哲学的研究」「分析的研究」に分けて体系化していきました。人物再登場法を用いて、同じ人物が複数の小説に登場することで、膨大な数の小説がひとつの世界として関連付けられました。あらゆる階級のあらゆるタイプの人物を描くことで、19世紀のフランス社会をそのまま映し出すことを目指した「人間喜劇」は、写実主義文学の代表的作品とされています。その中に収録されている「ゴリオ爺さん」(1835年)がバルザックの代表作で、出世のために手段選ばぬ青年ラスティニャックを描いています。

 1857年にはフローベールが、「ボヴァリー夫人」でロマン主義文学に溺れた女を描きました。これは、実際に起こったド・ラマール事件をモデルとしています。細やかな客観的描写と、登場人物の内面の声を自由に伝える手法によって、ボヴァリー夫人の破滅がたいへん生き生きと描かれています。この小説は写実主義小説の傑作とされ、主人公ボヴァリー夫人は、夢と現実の葛藤に悩む女性を象徴するようにもなりました。フローベールは1869年にもうひとつの傑作「感情教育」を出しました。作者による解釈を交えずに、客観描写だけで書かれています。なお、フローベールの弟子にはモーパッサンがいて、1880年に出した短編「脂肪の塊」では、人間心理を克明に映し出しました。また、1883年の「女の一生」は、写実主義文学の傑作とされています。

 エミール・ゾラは科学的な方法を取ることを目指し、観察と実験、遺伝と環境の影響を文学に導入しようとしました。ゾラはその実践として、小説20作から成る「ルーゴン・マッカール叢書」を完成させました。ここに収録されている1876年の「居酒屋」や1877年の「ナナ」などが、ゾラの代表作です。この叢書の副題は「第二帝政下における一家族の自然的・社会的歴史」であり、当時のフランス社会をすべて描き尽くそうとしたものです。その中心にあるのが、ルーゴン・マッカール家で、この家はあらゆる階級の人物を生み出しています。例えば「居酒屋」では洗濯女のジェルヴェーズ・マッカールを、続く「ナナ」ではその娘で高級娼婦のナナを描くという具合です。そして、自然のもとで人間がどのように行動するのかを、飾ることなくそのまま描くことで、人間というものを理解しようとしました。このような傾向を自然主義と呼び、19世紀の終盤には大きな文学運動となりました。

 このように、スタンダールとバルザックから始まった写実主義が、フローベールに受け継がれたのち、ゾラの自然主義につながっていく、というのが19世紀フランス文学の流れです。ほかにも、19世紀の後半に「風車小屋だより」や戯曲「アルルの女」を出したドーデや、「さかしま」や「彼方」を出したデカダン派のユイスマンなどもいます。また、ボードレールやヴェルレーヌやランボーなど、象徴派と呼ばれる詩人たちも活躍しました。

 さいごに。(EZONーT031買いました)

 GPS付のウォッチ「EZONーT031」を買いました。アマゾンで4500円ほどでした。
 さっそく競技場の400mトラックで、GPSを試してみたら意外にも正確で驚きました。 

 中華ウォッチですがオススメです。もう、2万も3万も出して買う必要はありません。
 説明書が英語オンリーですが、愛用者がユーチューブで使い方を教えてくれています。







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