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インスマスの影1 [20世紀アメリカ文学]

 「インスマスの影 クトゥルー神話傑作選」
 H・P・ラヴクラフト作 南條竹則編訳 (新潮文庫)


 タイトル作や「クトゥルーの呼び声」など、代表作を含む怪奇幻想小説傑作選です。
 作者は、クトゥルー神話の創始者として、広く知られるようになった存在です。


インスマスの影 :クトゥルー神話傑作選 (新潮文庫)

インスマスの影 :クトゥルー神話傑作選 (新潮文庫)

  • 作者: H・P・ラヴクラフト
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/07/26
  • メディア: 文庫



 冒頭の「異次元の色彩」は、宇宙からやって来た邪悪な存在について描いています。
 1982年にガードナー農場に落下した隕石の内部には、奇妙に輝く球体がありました。

 球体をハンマーで叩くと破裂して消滅しましたが、その後奇妙な現象が始まりました。
 農場の作物は変質し、周囲の植物が異臭を放ち、球体と同じ色で輝き出したのです。

 家畜は狂い、妻は発狂し、子供たちは変死したり、行方不明になったりしました。
 農場主は亡くなる前、光る何かが井戸の中にいて、家族に取りついたと話し・・・

 「ダンウィッチの怪」は、ある人間が呼び寄せた異次元の怪物について描いています。
 ダンウィッチ村のホウェイトリーは、異教の神々に生贄を捧げているとのことでした。

 その未婚の娘が私生児を産みました。その子ウィルパーは、異常に早く成長しました。
 10代で背が2メートルを超えたウィルパーは、あるとき大学図書館にやってきました。

 ウィルパーの求めた知識は、「ネクロノミコン」という本に書かれたある呪文でした。
 彼はどうやら、異次元の魔人を呼び出し、人類を破滅させようとしているようです。

 犬に襲われた時の彼は異形で、蛇のような外皮を持ち、下半身には多くの触腕が・・・
 さらに、ウィルパーの死後、ダンウィッチ村では巨大な怪物が目撃されて・・・

 「ウィルパー本人だって、まるきりの人間じゃなかった。あいつとホウェイトリー爺さ
 んと二人して、釘付けにしたあの家ん中で何かを育てたにちがいないわ。ウィルパーよ
 りももっと人間離れしたやつをね。」(P107)

 あの怪物は何だったのか? どこから来たのか? 人類をどうするつもりだったのか?
 「あれは主として、我々の宇宙には属さない一種の力だった。・・・」(P144)

 「クトゥルーの呼び声」は、ラヴクラフトを代表する傑作のひとつです。
 「クトゥルー神話」という語は、この作品から出たのだそうです。

 「私」は、大伯父のエインジェル教授が急死したため、遺品を整理していました。
 そして箱の中に、触手のある奇怪な怪物が彫られた粘土板を、発見したのでした。

 教授の手記からそれは、ある青年が夢で見たものを彫ったものだと分かりました。
 その夢は、巨石建造都市の下から「クトゥルー」と呼ぶ声がするというものでした。

 そこに彫られた怪物は、17年前にある警視正に見せられた像とそっくりで・・・ 
 はるか昔、空からやって来たという「大いなる古きものら」とは何なのか?・・・

 「闇にささやくもの」は、クトゥルー神話の謎を考える上で興味深い物語です。
 この作品においては、謎の怪物についての説明が比較的詳しくなされています。

 「私」は、バーモント州の山奥に怪物めいた種族が住んでいるという話を聞きました。
 また洪水時に、カニに似た不気味で異様な死骸が目撃されたということを知りました。

 新聞で自説を発表していた「私」に、ある日エイクリー氏から手紙が届きました。
 彼は怪物の存在を示す証拠を持っているため、彼らから監視されていると言うのです。

 2人は文通で意見交換し、エイクリーから怪物の声を録音したレコードが届きました。
 ところが、やがてエイクリーは何者かに命を狙われるようになりました。

 エイクリーから、「レコードを粉々にして、このことには巻き込まれるな」とのメッセ
 ージを受けた後、「彼らと和解したから自宅に来てほしい」という招待がありました。

 半信半疑でエイクリー邸に行った「私」は、彼から意外なことを聞き・・・
 あの怪物たちは何だったのか? エイクリーはどうするつもりか?

 これらの物語は、コミックにもなっています。
 どのように描かれているか、ユーチューブで出ているので参考になります。


クトゥルフの呼び声 ラヴクラフト傑作集 (ビームコミックス)

クトゥルフの呼び声 ラヴクラフト傑作集 (ビームコミックス)

  • 作者: 田辺 剛
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/12/20
  • メディア: Kindle版





 さいごに。(2021年12月発売の気になる文庫本)

・12/7 「アムンセンとスコット」 本多勝一 (朝日文庫)
 → 一部では本田勝一のベストとも言われている。興味深い内容。買い。

・12/14 「イタリア紀行(上)(下)」 ゲーテ (光文社古典新訳文庫)
 → 若き頃のイタリア旅行について28年を経て書き始めた紀行文。気になる。

・12/23 「ギリシア人の物語(1)民主政のはじまり」 塩野七生 (新潮文庫)
 → 「ローマ人の物語」全43巻をまだ読んでいないのに・・・文句なく買い。

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