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息子と恋人1 [20世紀イギリス文学]

 「息子と恋人」 D・H・ロレンス作 小野寺健・武藤浩史訳 (ちくま文庫)


 母親との密着度の高い青年が、親子関係や恋を通して成長する姿を描いた小説です。
 1913年に刊行した自伝的小説で、ロレンスの代表作として知られています。


息子と恋人 (ちくま文庫)

息子と恋人 (ちくま文庫)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2016/02/09
  • メディア: 文庫



 没落した中産階級出身のガートルードは、プライドが高くて美しい娘でした。
 坑夫の青年モレルと結婚しましたが、半年も経つと幻滅を味わうようになりました。

 夫は金にだらしなく、ごまかしてばかり。禁酒は続かず、泥酔することもあります。
 夫への愛は冷め、希望を失い、まるで生き埋めにされたようだと感じています。

 夫からの暴言、暴力。絶え間のない夫婦喧嘩。いら立ちと倦怠。かつかつの生活。
 惨憺たる生活の中、人生を諦め、夫を諦め、子どもだけを慰めに生きています。

 「人生が人生を捉えて、その体を動かし、生涯をまっとうさせても、その人生には
 中身がなく、当の本人が忘れられているようなことがある。」(P15)

 長男のウィリアム、長女のアニー、次男のポール、そして末っ子のアーサー。
 自分が失ったものを取り戻そうとするかのように、子どもたちに愛情を注ぎます。

 特に長男のウィリアムに対しては、大きな期待をかけていました。
 彼は聡明で、運動神経も抜群で、ダンスもうまく、女の子たちにモテモテでした。

 仕事をしながら猛勉強し、20歳で大会社に見込まれ、ロンドンに出て行きました。
 ところがそこで、リリーという身勝手で軽薄な美女と付き合うようになり・・・

 「息子と恋人」というタイトルから、私はこの小説を次のように想像しました。
 美しい未亡人が、息子をとるか恋人をとるかで、悩み苦しむ物語ではないか、と。

 ところが、夫はいつまでたっても死なず、恋人はいつまでたっても登場しません。
 第一部の終わりまで読んで、タイトルの解釈を間違えたようだと気づきました。

 タイトルは、「私の息子と私の恋人」ではなく、「息子と彼の恋人」なのでしょう。
 ちなみに原題は「Sons and Lovers」(息子たちと恋人たち)なのだそうです。

 第一部においてそれは、「長男ウィリアムとその婚約者リリー」を指すようです。
 そして第一部の主題は、「溺愛する息子が軽薄な娘に奪われる物語」のようです。

 ガートルードの全人生を賭けた最愛の息子が、リリーにあっさりと奪われます。
 それどころかウィリアムは・・・というように、母親の悲劇が描かれています。

 さて、この小説は私にとって久々の大ヒットです。
 なんといっても、文章がうまい! 一文たりとも不要な文がありません。

 原文が良いのか、訳が良いのか?
 時々「おー!」と叫びたくなるほど、うまい表現に出会います。

 「自分の人生は脇に置いて、子供という名の銀行に預けてしまっていた。」(P65)
 こういう文がぽんぽん飛び出します。ワクワクしながら読んでいます。

 さいごに。(ああ、やはり落選)

 Y氏はやはり落選。投票直前、狙ったかのように不倫問題が蒸し返されていました。
 もちろん浮気はいけないけど、それをネタにする方も品が無いように思います。

 私はY氏支持ではありません。むしろ、与党のW氏支持です。
 しかし、武士の情けってものを知らぬ世間に抗議するべくY氏へ投票しました。(笑)

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