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息子と恋人3 [20世紀イギリス文学]

 「息子と恋人」 D・H・ロレンス作 小野寺健・武藤浩史訳 (ちくま文庫)


 マザコン青年ポールが、親子関係や恋を通して成長していく姿を描いた小説です。
 すでに第一部と第二部の前半を紹介しました。今回は第二部の後半を紹介します。

 「息子と恋人1」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2022-07-16
 「息子と恋人2」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2022-07-19


息子と恋人 (ちくま文庫)

息子と恋人 (ちくま文庫)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2016/02/09
  • メディア: 文庫



 ポールは、ミリアムを通して、30歳の美しい夫人クララ・ドーズを知りました。
 クララは自立心が強く、婦人参政権運動に関わっていて、夫とは別居中でした。

 ポールは、母親がミリアムを嫌っているので、別れることに決めました。
 そして、クララに接近し、同じ職場となったことで、付き合うようになりました。

 あるときクララは、「ミリアムが欲しているのは魂の合一だ」と言うポールに対し、
 「彼女の一番の基本が分かっていない。彼女のほしいのはあなただ」と答えました。

 ポールはふたたびミリアムのもとに通い、愛はこれまで以上に深まりました。
 ふたりが一線を越えたとき、ミリアムは自分を生贄として捧げているようでした。

 ポールはミリアムとの関係に息苦しさを感じ、またも別れる決意を固めました。
 そして今度はクララにのめり込みましたが、彼女は夫と別れようとしませんでした。

 ところがあるとき、母ガートルードが不治の病であることが分かり・・・
 母親と同じ病院に、クララの夫ドーズがチフスで入院していて・・・

 読んでいて、ポールの煮え切らない態度にイライラしてきます。
 ミリアムとクララの間でふらふらと揺れるポール。しかし、彼の本命は、ママ!

 ポールはミリアムから逃げ、クララからも逃げ、そして故郷からも逃げるのか?
 ところがなぜか、そんなダメダメなポールのことが、かわいく感じられるのです。

 また、ドーズと奇妙な友情が芽生える場面が、意外性があって面白かったです。
 裸の憎しみをぶつけた者同士だからこそ生じる連帯感。終盤のよみどころです。

 さて、ポールは母親から解放されるために、いかなる方法をとるのか?
 ポールとミリアムの恋は、いったいどうなるのか?

 「ポールはぐしゃぐしゃで一人ぼっちになった気分だった。母こそが文字通り彼の人
 生の支えだったのだ。彼は母を愛した。二人でともに世界と対峙した。その母が逝っ
 て、彼の背後に、人生の亀裂が、ベールの裂け目が永遠に生じた。そこから人生がず
 るずると流れ出て、死の方向に引き寄せられるようだった。」(P762)

 ここに、ポールというマザコン人間の本質が垣間見えます。
 母から解放された今、ポールにはまったく新しい人生を歩んでほしいです。

 ところで、ロレンスを読むなら「チャタレイ夫人の恋人」も手に取ってほしいです。
 過激な描写で有名ですが、森番のメラーズが語る「自然との合一」が興味深いです。
 「チャタレイ夫人の恋人」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2016-05-11

 「黙示録論」という著作もあります。聖書における黙示録について論じています。
 少しだけ気になります。


黙示録論 (ちくま学芸文庫)

黙示録論 (ちくま学芸文庫)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2004/12/09
  • メディア: 文庫



 さいごに。(まるごとメロン)

 昨年に続き、今年も昼食に、メロンまるまるひとつを食べました。
 「食ったー!」って感じです。これは新しい恒例行事にしたいです。

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