スーツの神話 [読書・ライフスタイル]
「スーツの神話」 中野香織 (文春新書)
17世紀の衣服改革から現代までのスーツの歴史をたどり、その魅力に迫っています。
2000年刊。私にとってスーツの教科書的な本です。著者はファッション評論家です。
1660年の王政復古で迎えられたチャールズ二世は、「陽気な王様」と綽名されました。
1665年にペストが流行すると、道楽にふける王とその宮廷への天罰だと言われました。
そこで王は、宮廷のイメージを変えるため、「衣服改革」で地味な服を採用しました。
「上着+半ズボン+ヴェスト+シャツ+タイ」という、スーツの原形が生まれました。
また、スーツの表現すべき基本理念は「ジェントルマンシップ」として定着しました。
中には「目立ちすぎない」など、ダンディズムにつながる考え方も含まれていました。
1789年のフランス革命では、キュロットを着用する貴族が片っ端から殺されました。
その後フランスでは、サンキュロット派にならい、長ズボンを履くようになりました。
イギリスでは18世紀後半に、新古典主義がおこり、男性服に大きな影響を与えました。
古代ギリシアの裸体像が美の基準となり、脚にぴったり合う長ズボンが流行しました。
19世紀初頭、プリーツの入った宮廷服から、今のジャケットに近い上着に移りました。
それは、ジェントルマンが田舎で着ていたアウトドア用の、地味で古びた服でした。
これ以後、ファッションと無縁だったカントリー・ジェントルマンが注目されました。
ファッションから超然としていたところが、逆に人々には「クール」に映ったのです。
19世紀の初頭から、ダンディズムがイギリスを熱気で包み、フランスで流行しました。
その理想的体現者であるボー・ブランメルは、男性服の美の基準を打ち立てて・・・
この本を読んだのは、今から20年ほど前の頃で、私はまだ30代前半でした。
まるで教科書で学習するかのように、せっせとノートにまとめながら読みました。
当時の私にとって最も面白かったのは、ダンディズムに関して論じた部分でした。
「ダンディー」という言葉に、思想的な裏付けがあることを知って興味を持ちました。
ブランメル登場前夜、古い世代のこれみよがしの装飾が、宮廷を席巻していました。
ブランメルは引き算の美学によって彼ら貴族階級に対抗し、その違いが際立ちました。
すると貴族階級は逆にそれを取り入れたのです。自分たちにしか分からない粋として。
そしてダンディズムは、貴族階級が新興成金との差別化を図るために用いられました。
ダンディの王を目指したジョージ四世が没すると、ダンディズム批判が始まりました。
やがて中産階級が力を持つと、彼らをも含めたジェントルマン像ができあがりました。
というように、時代の変遷によって、美学も服装も変わりました。
しかし、時代の変遷があっても、伝統的な美学と服装に対する敬意は残されました。
この本で男性ファッションについて学んでから、私はスーツの選び方が変わりました。
流行しているものよりも、トラディッショナルなものを選ぶようになりました。
ついでながら、この本の出た当時(2000年)、クールビズは始まっていませんでした。
夏であっても、半そでのワイシャツを着るなんて、カッコ悪くてできませんでした。
今では半そでシャツしか着れません。自分だけ周りから浮いてしまうので。
しかし心の中では、「邪道な格好をしている」という感じが離れません。
2020年までは、環境省がクールビズの始まりを大々的に伝えていました。
そのときの彼らの服に、違和感を覚えた人はいませんか?(本当にいつもアレ?)
日本はもともと着物文化でしたが、戦後急速に洋服に切り替えてきた歴史があります。
だから、服装に対するこだわりや敬意といったものが、少ないのかもしれません。
さて、中野香織にはほかに、「ダンディズムの系譜 男が憧れた男たち」があります。
現在、新潮選書から出ているので、新潮文庫に入ったら購入したいです。
さいごに。(QRコードが気持ち悪い)
私はいまだにガラケーなので、QRコードを読み取ることができません。
だから、「QRコードを読み取って」と言われるたびに、フリーズしてしまいます。
しかし世間はQRコードだらけ。それを見かけるたびに気持ち悪くなります。(笑)
一番の悩みは、NHK「クロ現」の途中から左上に出て来るヤツ。アレ消してくれ!
17世紀の衣服改革から現代までのスーツの歴史をたどり、その魅力に迫っています。
2000年刊。私にとってスーツの教科書的な本です。著者はファッション評論家です。
1660年の王政復古で迎えられたチャールズ二世は、「陽気な王様」と綽名されました。
1665年にペストが流行すると、道楽にふける王とその宮廷への天罰だと言われました。
そこで王は、宮廷のイメージを変えるため、「衣服改革」で地味な服を採用しました。
「上着+半ズボン+ヴェスト+シャツ+タイ」という、スーツの原形が生まれました。
また、スーツの表現すべき基本理念は「ジェントルマンシップ」として定着しました。
中には「目立ちすぎない」など、ダンディズムにつながる考え方も含まれていました。
1789年のフランス革命では、キュロットを着用する貴族が片っ端から殺されました。
その後フランスでは、サンキュロット派にならい、長ズボンを履くようになりました。
イギリスでは18世紀後半に、新古典主義がおこり、男性服に大きな影響を与えました。
古代ギリシアの裸体像が美の基準となり、脚にぴったり合う長ズボンが流行しました。
19世紀初頭、プリーツの入った宮廷服から、今のジャケットに近い上着に移りました。
それは、ジェントルマンが田舎で着ていたアウトドア用の、地味で古びた服でした。
これ以後、ファッションと無縁だったカントリー・ジェントルマンが注目されました。
ファッションから超然としていたところが、逆に人々には「クール」に映ったのです。
19世紀の初頭から、ダンディズムがイギリスを熱気で包み、フランスで流行しました。
その理想的体現者であるボー・ブランメルは、男性服の美の基準を打ち立てて・・・
この本を読んだのは、今から20年ほど前の頃で、私はまだ30代前半でした。
まるで教科書で学習するかのように、せっせとノートにまとめながら読みました。
当時の私にとって最も面白かったのは、ダンディズムに関して論じた部分でした。
「ダンディー」という言葉に、思想的な裏付けがあることを知って興味を持ちました。
ブランメル登場前夜、古い世代のこれみよがしの装飾が、宮廷を席巻していました。
ブランメルは引き算の美学によって彼ら貴族階級に対抗し、その違いが際立ちました。
すると貴族階級は逆にそれを取り入れたのです。自分たちにしか分からない粋として。
そしてダンディズムは、貴族階級が新興成金との差別化を図るために用いられました。
ダンディの王を目指したジョージ四世が没すると、ダンディズム批判が始まりました。
やがて中産階級が力を持つと、彼らをも含めたジェントルマン像ができあがりました。
というように、時代の変遷によって、美学も服装も変わりました。
しかし、時代の変遷があっても、伝統的な美学と服装に対する敬意は残されました。
この本で男性ファッションについて学んでから、私はスーツの選び方が変わりました。
流行しているものよりも、トラディッショナルなものを選ぶようになりました。
ついでながら、この本の出た当時(2000年)、クールビズは始まっていませんでした。
夏であっても、半そでのワイシャツを着るなんて、カッコ悪くてできませんでした。
今では半そでシャツしか着れません。自分だけ周りから浮いてしまうので。
しかし心の中では、「邪道な格好をしている」という感じが離れません。
2020年までは、環境省がクールビズの始まりを大々的に伝えていました。
そのときの彼らの服に、違和感を覚えた人はいませんか?(本当にいつもアレ?)
日本はもともと着物文化でしたが、戦後急速に洋服に切り替えてきた歴史があります。
だから、服装に対するこだわりや敬意といったものが、少ないのかもしれません。
さて、中野香織にはほかに、「ダンディズムの系譜 男が憧れた男たち」があります。
現在、新潮選書から出ているので、新潮文庫に入ったら購入したいです。
さいごに。(QRコードが気持ち悪い)
私はいまだにガラケーなので、QRコードを読み取ることができません。
だから、「QRコードを読み取って」と言われるたびに、フリーズしてしまいます。
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by Alana (2023-12-10 14:42)