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ジャン・クリストフ5 [20世紀フランス文学]

「ジャン・クリストフ(二)」 ロマン・ロラン作 豊島与志雄訳 (岩波文庫)


 天才作曲家クリストフの苦悩に満ちた生涯を、壮大なスケールで描いた大河小説です。
 1904年から1912年にかけて発表され、ロランはこの作品でノーベル賞を取りました。

 原作は全十巻で刊行。岩波文庫(二)には、その第四巻と第五巻が収められています。
 今回は、第五巻の「広場の市」を紹介します。舞台はフランスのパリに移りました。


ジャン・クリストフ 2 (岩波文庫 赤 555-2)

ジャン・クリストフ 2 (岩波文庫 赤 555-2)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1986/07/16
  • メディア: 文庫



 ドイツからあてもなく逃げてきたクリストフには、パリで暮らしに行き詰りました。
 そんな彼を助けたのが、太っちょで滑稽なユダヤ人の旧友シルヴァン・コーンです。

 コーンはパリの書店に雇われていて、社交界の噂話を書く記者となっていたのです。
 クリストフはコーンの人脈によって、さまざまな芸術家や批評家とつながりました。

 ところが、彼らと接すれば接するほど、クリストフはフランスに失望するのです。
 彼はとうとう、芸術家気取りのコーンに、「君らは偽善者だ。」と言い放ちました。

 「芸術! それは鷲が餌食をつかむように、人生をつかみ取り、それを空中に運び去
 り、それとともに晴朗な空間に上昇することだ。・・・そのためには、爪と大きな翼と
 力強い心とが必要だ。しかし君らは小雀にすぎない。一片の腐肉を見出すと、即座に
 それをつっついて、ちゅうちゅう鳴きながら争っている・・・」(P485)

 クリストフは、富豪の娘のコレットにピアノを教え、二人には友情が芽生えました。
 しかし彼は、彼女を取り巻く社交界には、いつもうんざりさせられていました。

 ある政治家が、クリストフの作品を芝居として上演しようとした理由は・・・
 ひとりの下手な女優を、誰もやめさせようとしなかったのは、なぜか?・・・

 この「第五巻」に入ってから、急に読みにくくなりました。
 というのも、パリの社交界に対する批判が、やや観念的すぎるからです。

 当時のパリでは、芸術を知らないヤカラが、いかにも通ぶって批評していました。
 そのため芸術作品はつまらないものや、病的なものばかりであったようです。

 ロランはクリストフの口を借りて、そういう状況に対する批判を書いています。
 妙にロランの筆致に力がこもっていますが、物語としては面白くありません。

 そういう文章の中で、下層階級の女シドニーとの交流はほっとする場面でした。
 それにしてもシドニーは、なぜ行先を知らせずに急に立ち去ってしまったのか?

 また、コレットの従妹グラチアが、密かにクリストフを慕っていて・・・
 20歳代の青年詩人が、密かにクリストフの作品を好んでいて・・・ 

 この先、少しずつ明るくなる兆しが見えています。
 いかにしてクリストフは、パリでの名声を打ち立てるか(打ち立てないか)?

 さいごに。(おひとりさまカラオケで気づいたこと)

 かっこいい歌ほど難しくて、うまく歌えない、ということに気付きました。
 「pure soul」はもちろん、グレイの曲はどれも難しく、うまく声が出ませんでした。

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