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2019年10月発売の気になる文庫本 [来月発売の気になる文庫本]

 2019年10月発売予定の文庫本で、気になるものを独断で紹介します。
 データは、出版社やamazonの、HPやメルマガを、参考にしています。

・10/4 「最後の錬金術師 カリオストロ伯爵」イアン・マカルマン(草思社文庫)
 → ヨーロッパ中に名を轟かせた錬金術師の生涯。単行本の文庫化。気になる。

・10/8 「ロシア怪談集」沼野充義編(河出文庫)
 → 絶版だった文庫の新版。ゴーゴリの「ヴィイ」が読める。買い。

・10/8 「アメリカ怪談集」荒俣宏(河出文庫)
 → 「ロシア怪談集」と同じく絶版文庫の新版。「ロシア」とセットで買い。

・10/9 「なんでわざわざ中年体育」角田光代(文春文庫)
 → 作者はマラソンや登山をする小説家。私と同い年。少しだけ気になる。

・10/10「勇気の赤い勲章」スティーヴン・クレイン(光文社古典新訳文庫)
 → 「赤い武功章」として有名な作品。以前から新訳で読みたかった。買い。

・10/17「サラムボー(上)」フローベール(岩波文庫)
 →前3世紀のカルタゴの反乱を描いた歴史ロマン。読みたかった! 迷わず買い。


◎ おまけ(読み逃してきた大作)

 今年2019年のテーマである「17世紀文学」を、ほぼ読み終えました。
 次回にそのまとめをしたいと思います。

 ところで、購入しておきながら、今まで読み逃してきた大作がたくさんあります。
 今年の残り3か月のテーマは、その作品をできるだけ多く読んでいくことです。

 以下、書棚に眠っている大作です。(大作=文庫本で2冊以上にわたる作品)
 数字は優先順位です。1~3はぜひに読みたいのだけど、時間が取れるかなあ・・・

 1 「風と共に去りぬ(全5巻)」マーガレット・ミッチェル(新潮文庫)
  → 2015年に新訳が出ました。かなり長い間、積ん読状態です。

 2 「抄訳版 失われた時を求めて(全3巻)」プルースト(集英社文庫)
  → 抄訳なのに全3巻。完訳は退職後に読む。今のうちに抄訳を読んでおきたい。

 3 「背教者ユリアヌス(全3巻)」辻邦生(中公文庫)
  → 私が持っているのは旧版。少し前に新版が全4巻で出た。新版を買い直すかも。

 4 「楡家の人びと(全3巻)」北杜夫(新潮文庫)

 5 「恋愛対位法(全2巻)」ハックスリ(岩波文庫)

 6 「死せる魂(全3巻)」ゴーゴリ(岩波文庫)

 7 「贋金づくり(全2巻)」ジッド(岩波文庫)

 8 「ブリキの太鼓(全3巻)」グラス(集英社文庫)

 9 「告白(全3巻)」ルソー(岩波文庫)

10 「夜明け前(全4巻)」島崎藤村(岩波文庫)

11 「ローマ人の物語(全43巻)」塩野七生(新潮文庫)

12 「ローマなき後の地中海世界(全4巻)」塩野七生(新潮文庫)


◎ さいごに。(週に3回は3キロジョッグ)

 少しジョッグしただけで、おへその周りがダブダブと揺れるようになりました。
 やばいです。とりあえず週に3回はジョッグするようにします。

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真珠夫人 [日本の近代文学]

 「真珠夫人」 菊池寛 (文春文庫)


 男を弄ぶ瑠璃子の奔放な生活と、それと裏腹な純情を描いた、菊池初の通俗小説です。
 1920年に新聞連載されて話題となり、菊池寛をいっきに人気作家に押し上げました。


真珠夫人 (文春文庫)

真珠夫人 (文春文庫)

  • 作者: 菊池 寛
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2002/08/02
  • メディア: 文庫



 ある日渥美の乗ったタクシーが事故を起こし、同乗していた学生が亡くなりました。
 学生は渥美に「時計をるりこに返してくれ」と言い残し、自分のノートを託しました。

 死んだ学生は青木男爵の長男でした。渥美は行きがかり上、葬儀に出席しました。
 そこで、荘田瑠璃子という、妖艶でとても美しい未亡人を知り、その屋敷を訪ねます。

 ノートには何が書かれているのか? 青木と瑠璃子の関係は?
 ミステリー小説のように進むので、すぐに小説の世界に入り込めました。

 瑠璃子はなぜ男を弄ぶようになったのか? 彼女はどのような半生を歩んで来たか?
 瑠璃子の夫はどのように亡くなったのか? そもそもなぜ荘田と結婚したのか?

 「妾は女性としての恋を捨て、優しさを捨て慎ましやかさを捨てて、ただ復讐と膺懲
 のために、狂奔する化物のような人間になろうとしているのです。」(P200)

 悪魔だと思って倒した相手は、死ぬときには人間の姿をしていました。
 逆に瑠璃子自身が、意外にも悪魔に近い存在になっていたのです・・・

 「敵と戦うために、自分自身心に塗った毒は、いつの間にか、心のうち深く侵み入っ
 て消えなかった。」(P300)

 新聞連載当時、瑠璃子の生きざまに対して、多くの共感が寄せられたと言います。
 次のような言葉に表れているように、彼女はただの毒婦ではありません。

 「男性は女性を弄んでよいもの、女性は男性を弄んでは悪いもの、そんな間違った男
 性本位の道徳に、妾は一身を賭しても、反抗したいと思っていますの。」(P406)

 この作品もまた、ただの通俗小説ではありません。社会問題を取り上げています。
 瑠璃子を介して、男性本位の社会を痛烈に批判しています。

 さて、「真珠夫人」の前半は、瑠璃子がいかにして毒婦になったかを描いていました。
 そして後半、妖女となった瑠璃子が、運命の皮肉によってどうなるか・・・

 さいごに。(天気の子)

 娘が、部活の友だちと「天気の子」を見に行って、その内容を教えてくれました。
 驚いたことに、「君の名は」に続いて、オカルト雑誌「ムー」が登場したそうです。

 主人公が最初に従事した仕事が、なんと「ムー」の原稿執筆だったと言います。
 新海誠監督は、「ムー」の愛読者だったと言う。親近感が湧いてしまいました。

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芥川龍之介特集 [日本の近代文学]

 芥川龍之介特集


 今年2019年、芥川の主な作品を、角川文庫ですべて読み終わりました。
 読んだのは以下8冊。( )内はタイトル作以外に収録されているオススメ作です。

 1 「羅生門・鼻・芋粥」 大正3年~大正5年 (「老年」「父」)
  → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2019-07-26
 2 「河童・戯作三昧」  大正6年~昭和2年 (「或日の大石内蔵之助」)
  → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-10-15
 3 「蜘蛛の糸・地獄変」 大正7年 (「袈裟と盛遠」)
  → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2019-07-08
 4 「舞踏会・蜜柑」 大正8年 (「竜」「魔術」)
  → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2018-10-25
 5 「杜子春・南京の基督」 大正9年 (「黒衣聖母」)
  → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2019-09-07
 6 「藪の中・将軍」 大正10年 (「秋山図」「アグニの神」)
  → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2019-08-22
 7 「トロッコ・一塊の土」 大正11年~大正12年 (「報恩記」「仙人」)
  → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2019-07-23
 8 「或阿呆の一生・侏儒の言葉」 昭和2年・遺稿 (「歯車」)
  → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2019-08-25

 「芥川龍之介選集」を編むなら、上の8冊のタイトル作とオススメ作から採用します。
 さらに遺書の「或旧友に送る手記」を加えて、以下の全30作とします。

 「老年」「羅生門」「鼻」「芋粥」「父」「河童」「或日の大石内蔵之助」
 「戯作三昧」「蜘蛛の糸」「地獄変」「袈裟と盛遠」「舞踏会」「蜜柑」「竜」
 「魔術」「杜子春」「南京の基督」「黒衣聖母」「藪の中」「将軍」「秋山図」
 「アグニの神」「トロッコ」「一塊の土」「報恩記」「仙人」「歯車」
 「或阿呆の一生」「侏儒の言葉」「或旧友へ送る手記」

 「沼」「奇妙な話」「六の宮の姫君」「雛」「秋」など捨てがたい作品もあります。
 が、ここでは涙を呑んで切りました。ちょうど30作にしたかったので。

 さて、これらの作品を今一度ぱらぱらと読み返して、ベスト10を決めました。
 ここに選んだ作品は、どれも素晴らしいので、順位をつけるのが大変でした。

 1位「地獄変」・・・とにかくすごい話です。良秀と芥川が重なって見えます。
           あらゆる意味で芥川を象徴する作品だと思います。
 2位「舞踏会」・・・この作品の雰囲気が、私はたまらなく好きです。
 3位「南京の基督」・これも芥川らしい皮肉がきいていて、私の好きな作品です。
 4位「魔術」・・・・こういう作品を、もっともっと書いてほしかったです。
 5位「蜜柑」・・・・小品ながらホッとする作品で、心を癒してくれます。
 6位「羅生門」・・・芥川といったら「羅生門」でしょう。
 7位「蜘蛛の糸」・・いや、芥川といったら「蜘蛛の糸」でしょう。
 8位「鼻」・・・・・いやいや、芥川といったら「鼻」ですよ。
 9位「杜子春」・・・いやいやいや、芥川といったら「杜子春」ですよ。
 10位「歯車」・・・芥川の狂気が垣間見える作品で、非常に興味深いです。

 さいごに。(あれらの本は?)

 20代のころ、宮本顕治の「敗北の文学」を読んで、芥川龍之介にハマりました。
 当時、週末にふらりと東京に出て、芥川の生家や回向院などの史跡を回りました。

 あのとき持って行った芥川の入門書は、いつのまにか無くなってしまいました。
 「敗北の文学」もまた、手元にはありません。どこへ行ってしまったのか?

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恩讐の彼方に [日本の近代文学]

 「藤十郎の恋・恩讐の彼方に」 菊池寛 (新潮文庫)


 タイトル作など、菊池寛の初期の作品中、歴史モノの傑作を10編収録した短編集です。
 菊池は「文藝春秋」を創刊し、芥川とは親友で、芥川賞を作ったことでも有名です。


藤十郎の恋・恩讐の彼方に (新潮文庫)

藤十郎の恋・恩讐の彼方に (新潮文庫)

  • 作者: 菊池 寛
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1970/03/27
  • メディア: 文庫



 菊池寛と言ったら、何といっても「恩讐の彼方に」ですよ!
 これは、日本国民全員に読んでほしい。全高校生の必読書に指定してほしいです。

 市九郎は、愛妾と通じて殺されるべきところを、逆に主人を殺してしまいました。
 愛妾と逃げて強盗を働くようになりましたが、自分の罪を悔いるようになります。

 一転して仏道に帰依し旅に出て、鎖渡しという難所で犠牲になった死者を見ました。
 そして、二百間以上ある大絶壁を、自分一人の力でくり抜こうと決意したのです。

 初め市九郎を笑っていた村人たちは、一年二年とたつうちに・・・
 そして19年たったとき、市九郎の前に突然現れたのは・・・

 「敵は、父を殺した罪の懺悔に、身心を粉に砕いて、半生を苦しみ抜いている。しか
 も、自分が一度名乗りかけると、唯々として、命を捨てようとしているのである。か
 かる半死の老僧の命を取ることが、何の復讐であるか」(P110)

 敵とは何か? 復讐とは何か? 人は過去の過ちを正すことができるのか?
 さまざまなことを考えさせられます。道徳の教科書にも出ているそうです。

 「藤十郎の恋」も、有名な物語です。
 坂田藤十郎が近松門左衛門から与えられた狂言は、命がけの恋を描いたものでした。

 しかし、そのような恋をしたことのない藤十郎は、どう演じていいか分かりません。
 そこで彼が思い立ったことは・・・その結果、ある悲劇が・・・

 「忠直卿行状記」もまた、とても考えさせられる物語です。
 槍術の大仕合で家来を次々と破った忠直卿は、偶然意外な言葉を立ち聞きしました。

 忠直が真槍で勝負したところ、罪を自覚していた家来たちはどうしたか?
 傷を負って屋敷に運ばれた彼らは、そのあとどうしたか?

 「忠直卿は、つくづく考えた。自分と彼等との間には、虚偽の膜が、かかっている。
 その膜を、その偽(いつわり)の膜を彼等は必死になって支えているのだ。その偽は、
 浮ついた偽でなく、必死の懸命の偽である。」(P56)

 こういう文章を書かせたら、菊池寛は抜群にうまいです。
 非常に練られた文章が、物語の完成度をぐっと上げています。

 「形」はわずか4ページ足らずの小品ですが、鮮烈な印象を残します。
 槍の名人中村は、自身の猩々緋の羽織を、若い武士の初陣に貸してやります。

 「あの羽織や兜は、申さば中村新兵衛の形じゃわ。」
 若武者の初陣は成功しますが、しかし、猩々緋を貸した中村は・・・

 さて、「恩讐の彼方に」が書かれたのが、大正8年でした。
 その翌年の大正9年には「真珠夫人」が書かれました。ギャップが大きすぎる。


真珠夫人 (文春文庫)

真珠夫人 (文春文庫)

  • 作者: 菊池 寛
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2002/08/02
  • メディア: 文庫



 さいごに。(電卓じゃないって)

 私がついこのあいだまで使っていたケータイは、AUのsportioというガラケーです。
 「お洒落な電卓ですね」とよく言われました。・・・電卓じゃないし。ガラケーだし。

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生の短さについて [古代文学]

 「生の短さについて」 セネカ作 大西英文訳 (岩波文庫)


 人生を有意義に過ごすことを説いたタイトル作など、代表作3編を収録しています。
 セネカはストア学者として有名で、「ネロの5年」と言われる善政の立役者でした。

 2010年に岩波文庫から出た大西訳で読みました。感動するぐらい分かりやすいです。
 2017年に古典新訳文庫から出た中澤訳も読みやすいです。


生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

  • 作者: セネカ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/03/17
  • メディア: 文庫



人生の短さについて 他2篇 (古典新訳文庫)

人生の短さについて 他2篇 (古典新訳文庫)

  • 作者: セネカ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/03/09
  • メディア: 文庫



 多くの人々は、つまらぬことに関わって時間を浪費し、人生の短さを嘆いています。
 しかし、英知を求め、時間を有意義に使うことによって、人生は長くなるのです。

 「生は出発点となったその日から走り出し、そのまま駆け行く。(中略)君は何かに
 忙殺され、生は急ぎ足。やがてそのうち死が訪れ、否応なく、その死とともに君は(
 永久に)安らわねばならないのだ。」(P31)

 「現在という時は常に動きの中にあり、流れ去り、駆けさる。やってきた刹那に、す
 でに存在するのをやめている。現在という時に一刻の遅滞もないのは、休止すること
 なく絶えず運行し、決して同じ位置にとどまることのない宇宙や星辰の動きと同様で
 ある。」(P36)

 人生はいかに早く過ぎ去るか。時間はいかに大切か。
 セネカは人生を有意義に過ごすよう、警句を交えて何度も繰り返し説いています。

 では我々は、具体的にどのように過ごしたらよいか。
 セネカは最後に、次のような、ストア学者らしいアドバイスをしています。

 「神聖にして崇高なものに携わり、神の質量は何か、神の快楽は何か、神の属性は
 何か、神の形態は何か、あるいはまた、どのような事が(死後の)精神を待ち受け
 ているのか」等々の問題にまなざしを向けるべきだ、と。

 なるほど。この考え方は、隠者に通じます。兼好法師に通じるものがあります。
 我々も、生活のための労働から解放されたら、死について深く考えたいものです。

 この本には、「心の平静について」も収録されています。
 ところが、こちらは「生の短さについて」と違って、非常に分かりにくいです。

 いろんなことがごちゃごちゃと書かれていて、まとまりがないように感じました。
 結局私は、最後まで読み通すことができませんでした。

 もうひとつ、「幸福な生について」は、徳の大切さを伝えた著作です。
 興味深い内容ですが、「心の平静について」で挫折していたので、見送りました。

 セネカには、同じ岩波文庫に「怒りについて 他二編」があります。
 こちらも名著で、訳も分かりやすいと言われています。

 さいごに。(リモコンじゃないって)

 先日、職場の机に infobar vx を出しておいたら、女性職員にこう言われました。
 「それは何のリモコンですか?」・・・リモコンじゃないし。ケータイだし。

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世界文学の流れをざっくりとつかむ14 [世界文学の流れをざっくりとつかむ]

1 中世ヨーロッパの事情

 476年に西ローマ帝国が滅亡しました。この時から、15世紀までの約1000年間を「中世」と呼んでいます。この時期の最大の出来事は、「ヨーロッパ」が成立したことでしょう。それまで地中海を中心に繁栄していたローマ世界は、イスラム勢力の侵入によって衰退し、代わってアルプス以北のゲルマン諸国が繁栄するようになりました。ゲルマン諸国は、やがて「ヨーロッパ」というひとつのまとまりを形成していきました。そのとき、彼らをゆるやかに結び付けていたのが、キリスト教の信仰と教会でした。

 繁栄の中心が南から北へ移ったことで、ギリシア・ローマ文化は断絶してしまいました。古代の文化は、教会の中でのみ細々と保存され続けたのです。教会ではラテン語が使われ続け、人々の教育機関の役割を担うようになりました。そして教会は、知識を独占するとともに、文化の方向性を規定しました。堂々たるゴシック建築の中で、宗教音楽が奏でられ、賛美歌が歌われました。そして文学といったら、聖人伝や宗教的な詩ばかりでした。

 中世は、教会がヨーロッパ世界をキリスト教一色に染め上げた時期です。しかしその一方で、様々な民族が次々と国を建てた時期でもあります。特に西ヨーロッパでは、西ローマ帝国が滅亡したため、これまで抑えられてきたゲルマン民族の勢いが増しました。国が興ると、民族精神が高揚し、自分たちの言葉が生み出されます。教会で相変わらずラテン語が使われていた一方で、それぞれの地域には様々な俗語が生まれました。すると、俗語を使って語られる物語が誕生します。その土地独自の英雄伝説や騎士物語は、こうして誕生しました。

 中世を代表する文学が、英雄叙事詩です。その中で特に名高いものが三つあります。イギリスの「ベーオウルフ」、フランスの「ロランの歌」、ドイツの「ニーベルンゲンの歌」です。これを三大叙事詩と呼んでいます。また、スペインには「わがシッドの歌」が、アイスランドには「エッダ」と「サガ」があります。なお、ヨーロッパではありませんが、日本の「古事記」や「平家物語」なども、広義の英雄叙事詩と言っていいでしょう。

 次回は、これらの作品について、もう少し具体的に見ていきたいと思います。

 さいごに。(2回目のテストも)

 中学校の2回目のテストも、まあまあ良い結果でした。少なくとも昔の私より上です。
 特に英語と数学は良かったです。この2教科は、塾でだいぶしぼられているため。

 ところが、学年でもトップクラスにいる子たちは、みんな塾に行ってないのです。
 本当にデキル子たちは、塾に行かなくても、自分で勉強できるんですよね。

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138億年宇宙の旅2 [理系本]

 「138億年宇宙の旅(下)」 ガルファール著 塩原通緒訳 (ハヤカワ文庫)


 138億年の宇宙を自在に旅しながら、宇宙論の基本を学べるユニークな本の下巻です。
 文庫の帯の言葉は「ホーキング博士の直弟子によるスリリングな宇宙論入門」です。


138億年宇宙の旅(下) (ハヤカワ文庫NF)

138億年宇宙の旅(下) (ハヤカワ文庫NF)

  • 作者: クリストフ・ガルファール
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2019/06/06
  • メディア: 文庫



 著者が学んだケンブリッジ大学には、当時スティーブン・ホーキング博士がいました。
 博士に誘われて、ブラックホールと宇宙の起源について、研究することになりました。

 この本は、ホーキング博士との研究の成果が、分かりやすい言葉で解説されています。
 ところが下巻に入ると、いっきに数段階も難しくなりました。

 特に分かりにくいのが、量子論が関わる部分です。粒子はあらゆる経路をとる?
 宇宙には無はなく、量子場がある? そこでは仮想粒子が出たり消えたりしている?

 反電子? 反粒子? 反物質? すべてが反物質でできている反世界がある?
 量子の世界では、起こりうることはすべて起こるんだって?

 ハイゼンベルクの不確定性原理。そして有名なシュレーディンガーの猫。
 猫は死んでいると同時に死んでいない。死んでいながら、生きている・・・

 何度読んでも分からないのですが、とにかく気にしないで読み進めました。
 後半は読むペースがガクンと落ちながらも、どうにか最後までたどり着きました。

 下巻では、ブラックホールの中に突入する場面が圧巻でした。
 ロボットの裏切り(?)によって、事象の地平面を越えた「あなた」は・・・

 「あなた」は、そこでどのような光景を目にするのか?
 「あなた」は、いかにしてブラックホールから脱出したのか?

 うまく想像できない場面もありましたが、とてもスリリングな体験ができました。
 目で見えない場面を、「ヨガモード」を使って感じ取るところが、面白いですね。

 この本は数式をほとんど使わず、宇宙を分かりやすく解説してくれました。
 といっても、私が分かったのは半分くらいでしょうか・・・

 10年前に新潮文庫から出た「宇宙創成」は、上巻の半分まで読んで挫折しました。
 この機会に、今一度挑戦してみようか。

 さいごに。(infobar xv 不具合)

 infobar xv に、またもや不具合が生じました。
 常に「圏外」で電話もメールもつながらないという、非常に深刻な問題です。

 一時間奮闘したが、解決せず。しかし、友人に勧められて、再起動してみたら・・・
 なんと、あっけなく解決しました。これを、「困ったときの再起動」と言うらしい。

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杜子春・南京の基督(芥川龍之介) [日本の近代文学]

 「杜子春 南京の基督」 芥川龍之介 (角川文庫)


 タイトル作の「杜子春」など、大正9年に書かれた作品17作を収録しています。
 以前は天野喜孝の妖艶なカバーでしたが、現在はお洒落なデザインになっています。


杜子春・南京の基督 (角川文庫)

杜子春・南京の基督 (角川文庫)

  • 作者: 芥川 龍之介
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1968/10
  • メディア: 文庫



杜子春 (角川文庫)

杜子春 (角川文庫)

  • 作者: 芥川 龍之介
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/10/25
  • メディア: 文庫



 「杜子春」は、仙人を目指したひとりの青年の物語です。舞台は中国の洛陽です。
 一文無しとなった杜子春の前に、不思議な老人が現れ、彼を大金持ちにしました。

 しかし彼は、与えられた財産を二度まで蕩尽し、人の世の虚しさを知りました。
 そして、老人が仙人であることを見破ると、老人の弟子になることを望みました。

 老人は、峨眉山に住んでいる鉄冠子という仙人でした。老人は言いました。
 「たといどんなことが起ころうとも、決して声を出すのではないぞ。」・・・

 杜子春の前にどのような幻影が現れるのか? 杜子春は約束を守れるのだろうか?
 よく知られた物語です。私は子供の頃に、絵本で読んだ記憶があります。

 「何になっても、人間らしい、正直な暮らしをするつもりです」印象的な言葉です。
 本当の幸せとは何かを、改めて考えさせてくれる作品です。

 「南京の基督」も中国が舞台。キリスト教徒の少女の身に起こる、奇跡の物語です。
 宋金花という15歳の少女は、貧しい家計を助けるために、毎夜部屋に客を迎えます。

 ところがあるとき梅毒にかかってしまい、商売を続けることができなくなりました。
 他の客に移せば病気は治ると言われましたが、そんなことはとてもできません。

 しかし、急にやってきた客は、誰かに似ているようで・・・彼と寝た後は・・・
 皮肉の利いた、芥川らしい作品だと思います。この本における、マイ・ベストです。

 「黒衣聖母」も「南京の基督」と似たエキゾティックな雰囲気があります。
 黒い服をまとった美しい聖母像は、福を転じて禍とする、縁起の悪い聖母で・・・

 「沼」はわずか3ページですが、不気味な美しさをたたえた、忘れがたい作品です。
 「おれ」は昔から葦の茂みの向こうに、不思議な世界があることを知っていて・・・

 「素戔嗚尊」と「老いたる素戔嗚尊」は、「古事記」に取材した力作です。
 しかし、私は作品の世界観が好きになれません。素戔嗚は英雄として描いてほしい。

 「秋」や「お律と子等と」も、非常に苦心して書かれた作品だろうと思います。
 しかしこういう「普通の作品」は、芥川がわざわざ書かなくてもいいのではないか?

 さて、芥川龍之介の作品は、この本を最後に、ほとんど制覇することができました。
 以下に、角川文庫版で読んだ8冊を、振り返ってみたいと思います。

 1 「羅生門・鼻・芋粥」 大正3年~大正5年
 2 「河童・戯作三昧」  大正6年~昭和2年
 3 「蜘蛛の糸・地獄変」 大正7年
 4 「舞踏会・蜜柑」 大正8年
 5 「杜子春・南京の基督」 大正9年
 6 「藪の中・将軍」 大正10年
 7 「トロッコ・一塊の土」 大正11年~大正12年
 8 「或阿呆の一生・侏儒の言葉」 昭和2年・遺稿

 近いうちに、「芥川マイ・ベスト」の特集をやらなければ。
 数ある傑作から、1位に何を選ぶか。考えただけでワクワクしてしまいます。

 さいごに。(時々拍手が聞こえる)

 私が夜、2階の部屋で本を読んでいると、時々下から拍手が聞こえてきます。
 そういうときは、たいていママさんと娘が一緒に、TVの録画を見ています。

 ジャニーズのメンバーで、お気に入りが登場すると、二人は拍手をしています。
 Hey! Say! JUMP の山田君が出ているドラマでは、娘のテンションが高いです。

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138億年宇宙の旅1 [理系本]

 「138億年宇宙の旅」 クリストフ・ガルファール著 塩原通緒訳 (ハヤカワ文庫)


 138億年の宇宙を自在に旅しながら、宇宙論の基本を学べるユニークな本です。
 文庫の帯の言葉は「ホーキング博士の直弟子によるスリリングな宇宙論入門」です。


138億年宇宙の旅(上) (ハヤカワ文庫NF)

138億年宇宙の旅(上) (ハヤカワ文庫NF)

  • 作者: クリストフ・ガルファール
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2019/06/06
  • メディア: 文庫



 この本では、これまで読んだどの旅行ガイドよりも、壮大な旅を疑似体験できます。
 太陽系、銀河系はもちろん、宇宙の果てや、50億年後の世界にまで移動するのです。

 あるとき「私」の意識は、太陽の中心部へ飛び込み、熱核融合反応を間近に見ます。
 あるとき「私」は、銀河の中心部で、ブラックホールに飲み込まれそうになります。

 あるとき「私」は、高速で宇宙を飛び、相対性理論の不思議な世界を体感します。
 あるとき「私」は、限りなく小さくなって、量子力学の奇妙な世界を垣間見ます。

 わくわくしたりハラハラしたりしながら、宇宙論の基本的なことを学んでいきます。
 下手なSF小説を読むより、はるかに面白い読書体験ができると思います。

 たとえば、量子のトンネル効果。まるで瞬間移動みたいです。
 手で粒子を捕まえたのに、いつのまにか粒子は抜け出していて・・・

 さて、この上巻はどちらかというと、宇宙論の基本知識を身につける旅でした。
 下巻は、もう少し突っ込んだ話になるようです。下巻も楽しみです。

 ところで、著者クリストフ・ガルファールは、ホーキングの直弟子だと言います。
 同じハヤカワ文庫から、理系本の名作「ホーキング宇宙を語る」も出ています。

 この本がベストセラーになった頃、私はまだ20代だったように思います。
 当時、気合を入れて読んだのですが、正直に言ってよく分かりませんでした。


ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで (ハヤカワ文庫NF)

ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで (ハヤカワ文庫NF)

  • 作者: スティーヴン・W. ホーキング
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1995/04/01
  • メディア: 文庫



 さいごに。(娘のデビュー戦)

 先日の土曜日、中学生の娘が、陸上の走高跳で競技会に出場しました。
 来てほしくないと言われましたが、私は仕事の合間にこっそり応援に行きました。

 結果は、最初の1m20を3回落として記録なし。なるほど、来てほしくないわけだ。
 しかし、出場したことで自信が付いたようで、元気よく帰ってきました。良かった。

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蟹工船・党生活者 [日本の近代文学]

 「蟹工船・党生活者」 小林多喜二 (新潮文庫)


 「蟹工船」は、過酷な労働を強いられる船員たちの、悲惨さを描いた中編小説です。
 29歳で特高警察に虐殺された作者が残した、プロレタリア文学の傑作二篇を収録。


蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

  • 作者: 小林 多喜二
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1953/06/30
  • メディア: ペーパーバック



 「蟹工船」とは、オホーツク海で蟹を取り、その場で缶詰にしてしまう工場船です。
 多くの貧困層がうまい言葉に乗せられて乗船し、過酷な労働を強いられていました。

 特に監督の浅川がひどい。何時間も働かせる、病気の者も働かせる、働けないと殴る。
 大事なのは蟹缶の数。資本家の儲けが最優先。だから労働者は人間扱いされません。

 実に巧みなことに、資本家たちはこの虐待を、国策と結び付けて肯定していました。
 日本の行き詰った人口問題と食糧問題を解消するために、重要な使命を持っていると。

 疲れ切った船員たちの寝る場所は、空気が濁って臭いので「糞壺」と呼ばれています。
 その「糞壺」でゴロゴロしている彼らは、まるで「蛆虫」のように見えると言います。

 ところが、この「蛆虫ども」も、やがてこのシステムに疑問を持つようになり・・・
 ある労働者の死をきっかけに、彼らの一部が中心となってサボタージュを始め・・・

 労働者400人が結束しておこなったストライキは、成功したかと思われたが・・・
 国民を守るはずの帝国軍の軍艦は、いったい誰のために行動したのか?

 とてもやりきれない気持ちになると同時に、ふつふつと怒りが湧きおこりました。
 当時の資本家の不正を、これだけはっきりと暴いた作品は、ほかに無いでしょう。

 「資本家は『モルモット』より安く買える『労働者』を、乃木軍神がやったと同じ
 方法で、入り代り、立ち代り雑作なく使い捨てた。鼻紙より無雑作に!」(P69)

 確かに、こんなにはっきりと書いてしまったら、特高に狙われるのも当然でしょう。
 しかし当時、誰かがこういう作品を、書かなければいけなかったのかもしれません。

 一緒に収録されている「党生活者」は、「蟹工船」ほどの衝撃はありません。
 しかし文章がハードボイルドっぽくて、はるかに読みやすくはるかに面白いです。

 「私」は、軍事品を作る倉田工業で働きながら、党組織を作ろうとしていました。
 ところが同志が捕まり、「私」の部屋では「私服」が張り込んでいて帰れず・・・

 ストライキは失敗しますが、希望を見出すような終わり方をしています。
 しかし「私」が多喜二の分身である以上、我々はそこに悲惨な未来を見てしまう。

 「党生活者」は、多喜二自身の地下活動の体験をもとに書かれていると言います。
 その多喜二は29歳で、野蛮な殺され方をしたことを、我々は忘れてはいけません。

 さいごに。(目覚まし係クビ)

 娘がなかなか起きなかったので、敷布団を引っ張って娘をごろっと転がしました。
 その朝、娘はいじけてしまってたいへんでした。(だったら自分で起きろ)

 翌日ママさんが娘を起こしたら、すんなり起きてきました。で、私はお役御免に。
 娘は14歳。思春期の子はホント、難しいですね。

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