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失われた時を求めて2 [20世紀フランス文学]

 「抄訳版 失われた時を求めてⅠ」プルースト作 鈴木道彦編訳 (集英社文庫)


 自分の中に埋もれている「失われた時」を掘りおこし、紡ぎ直した人生の物語です。
 「抄訳版」のⅠは、「スワン家の方へ」と「花咲く乙女たちのかげに」を収録。


抄訳版 失われた時を求めて 1 (集英社文庫)

抄訳版 失われた時を求めて 1 (集英社文庫)

  • 作者: マルセル・プルースト
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2002/12/13
  • メディア: 文庫



 第二篇「花咲く乙女たちのかげに」の前半で、初恋の少女ジルベルトが登場します。
 彼女の母はスワン夫人のオデット、もと高級娼婦です。この二人が前半の中心人物。

 「私」はシャンゼリゼでジルベルトと出会い、親しく交際するようになりました。
 しかしなぜか「私」は、彼女の両親スワン夫妻から、良く思われていませんでした。

 ところが突然スワン家に招待されるようになったのは、なぜか?(人生の妙味!)
 幸せな時を過ごしていた「私」が、ジルベルトと離れるようになったのはなぜか?

 後半は、ジルベルトとの関係が終わって2年後、バルベックへ旅立った時期のこと。
 バルベック・グランドホテルで、祖母はヴィルパリジ侯爵夫人と偶然再会しました。

 一見ただの老婦人のように見える侯爵夫人は、実はゲルマント一族の人で・・・
 バルベックで「私」は、美しい少女たちに惹かれ、特にアルベルチーヌとは・・・

 第二篇の前半にはジルベルトが、後半にはアルベルチーヌが、中心にいます。
 小見出しの「花咲く乙女たち」とは、この二人を指しているのでしょうか。

 それにしても、相変わらず非常にスローなテンポで物語が進んでいきます。
 物語はしょっちゅう立ち止まり、「私」はどうでもいいことをあれこれ考察します。

 「私」の恋は少しも発展しないし、発展したかと思うと、突然変な終わり方をする。
 最後にアルベルチーヌが呼び鈴を鳴らす場面は、「そりゃないだろ」と思いました。

 抄訳なのに余分な場面が多いので、時々じれったくなって体がかゆくなりました。
 ところで、抄訳以上にサクッと読む手段を見つけました。フランスコミック版です。


失われた時を求めて フランスコミック版 第1巻 コンブレー

失われた時を求めて フランスコミック版 第1巻 コンブレー

  • 作者: ステファヌ・ウエ
  • 出版社/メーカー: 白夜書房
  • 発売日: 2007/11/20
  • メディア: ハードカバー



失われた時を求めて フランスコミック版 第2巻 花咲く乙女たちのかげに1 海辺への旅

失われた時を求めて フランスコミック版 第2巻 花咲く乙女たちのかげに1 海辺への旅

  • 作者: ステファヌ ウエ
  • 出版社/メーカー: 白夜書房
  • 発売日: 2008/05/23
  • メディア: ハードカバー



 このフランスコミック版が、びっくりするぐらいよくできています。
 絵はオールカラーで美しく、物語の雰囲気がとてもよく伝わってきました。

 例えばグランドホテルの情景は、イラストを見て初めて知ることができました。
 上流階級の泊り客、ホテルマン、地元の人々など、生き生きと描かれています。

 一方、人物はあまりうまく描けていません。(というか、こういうタッチ?)
 女性がちっとも美しくないので、彼女らに恋する「私」に感情移入できません。

 この本は、第二篇までしかなく、現在は絶版。私は図書館で借りて読みました。
 新版がソフトカバーで出ていますが、第一篇しか出ていません。


失われた時を求めて フランスコミック版  スワン家のほうへ

失われた時を求めて フランスコミック版 スワン家のほうへ

  • 作者: マルセル・プルースト
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2016/10/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 これらコミック版が、第一篇又は第二篇までしか出ていないのも仕方ありません。
 第三篇以降は、「おまけ」という感じで、読み進める人はあまりいないようです。

 第一篇「スワン家の方へ」には、物語のエッセンスが詰まっていると言います。
 「失われた時を求めて」を読む人で、第一篇を読まずにすませる人はいません。

 第一篇を面白いと思ったら、第二篇「花咲く乙女たちのかげに」に読み進めます。
 第二篇は、第一篇から自然な形で続いているので、比較的読みやすいです。

 ところが、第三篇ともなると、誰もが疲れてくるようです。
 私が読んでいるのは抄訳ですが、それでもここまで読み進めるのに苦労しました。

 さいごに。(今年も年賀状は別々に)

 今年も年賀状は、家族3人がみな別々に、思い思いの年賀状を作ります。
 私は相変わらず、娘の写真を使った「親ばか」年賀状です。申しわけない。

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