砂の本 [20世紀ラテンアメリカ文学]
「砂の本」 ボルヘス作 篠田一士(はじめ)訳 (集英社文庫)
アルゼンチン幻想文学のボルヘスが、簡潔な言葉で異常な世界を描いた短編集です。
晩年の短編集「砂の本」と、処女短編集「汚辱の世界史」の、二つを収録しています。
ある朝ベンチで座っていた時、突然「この瞬間は以前に経験した」と思いました。
そしてボルヘスは、向こう側のベンチに座っている男に気付き、声を掛けました。
「あなたの名はホルヘ・ルイス・ボルヘスです。
1969年に、われわれはケンブリッジ市にいるのです。」
「いや」と、彼はまぎれもなく私自身の声で答えて・・・
読者は、冒頭の「他者」から、いきなりボルヘスの迷宮さまようことになります。
「鏡と仮面」はアイルランド王と詩人オランの物語で、短いけど印象的でした。
オランが三度目に王に捧げた詩はたった一行で・・・その詩を味わった王は・・・
「疲れた男のユートピア」もまた迷宮もので、とても印象的な作品でした。
平原の道を進んでいると一軒の家があって、背の高い男がいてこう言いました。
「御召しになっているものから見て、別の世紀からこられたようですな。」
「私」はどこに来てしまったのか? 「彼」のいる世界はどのような状況か?
その男は言います。「われわれは過去を忘れたい」のだと。
そして、「現在、世界中の人間が〇〇することの是非が議論されている」と・・・
「砂の本」は13の短編と後書きから成っていますが、どれも魅惑的な作品ばかり。
しかし、なんといってもサイコーだったのは、タイトル作の「砂の本」でしょう。
あるとき聖書を売りに来た男が、「砂の本」というものを取り出しました。
「砂と同じくその本にも、はじめもなければ終りもない、というわけです」
「この本のページは、まさしく無限です。
どのページも最初ではなく、また、最後でもない。」・・・
もう一つの「汚辱の世界史」は、1935年に出たボルヘスの処女短編集です。
内容は「世界悪者カタログ」。その40年後の「砂の本」に比べて分かりやすいです。
吉良上野介も紹介されています。痛切な忠義を呼びさました人物と、皮肉を込めて。
しかし、吉良の刃傷沙汰も、他の登場人物たちに比べたら、かわいい、かわいい。
黒人奴隷を解放すると騙して逃亡させ、他の農園に売り渡す男、ラザラス・モレル。
7年間好き勝手に人を殺しまくり、その数21人に及んだ、ビリー・ザ・キッド。
一方、愛すべき悪党は、自分と全く似ていない名家の息子になりすましたカストロ。
見破られて訴訟を起こされた時、腹心の黒人ボウグルは、どんな手段を取ったか?
さて、同じ岩波文庫から出ている「アレフ」も、傑作短編集です。ぜひ読みたい。
河出文庫の「怪奇譚集」「幻獣事典」も、この機会に読んでおきたいです。
さいごに。(ドリフが好きなこと、なんで分かった?)
アマゾンプライムビデオでビデオを見ると、下の方にオススメ番組が出てきます。
私が仏像の番組を見たとき、なぜか「8時だよ全員集合」がオススメになりました。
ママさんが驚いて言いました。「AIはパパの好みを知り尽くしている!」と。
それにしても、どうして? まるで私の心を読んでいるかのようで、怖いです。
アルゼンチン幻想文学のボルヘスが、簡潔な言葉で異常な世界を描いた短編集です。
晩年の短編集「砂の本」と、処女短編集「汚辱の世界史」の、二つを収録しています。
ある朝ベンチで座っていた時、突然「この瞬間は以前に経験した」と思いました。
そしてボルヘスは、向こう側のベンチに座っている男に気付き、声を掛けました。
「あなたの名はホルヘ・ルイス・ボルヘスです。
1969年に、われわれはケンブリッジ市にいるのです。」
「いや」と、彼はまぎれもなく私自身の声で答えて・・・
読者は、冒頭の「他者」から、いきなりボルヘスの迷宮さまようことになります。
「鏡と仮面」はアイルランド王と詩人オランの物語で、短いけど印象的でした。
オランが三度目に王に捧げた詩はたった一行で・・・その詩を味わった王は・・・
「疲れた男のユートピア」もまた迷宮もので、とても印象的な作品でした。
平原の道を進んでいると一軒の家があって、背の高い男がいてこう言いました。
「御召しになっているものから見て、別の世紀からこられたようですな。」
「私」はどこに来てしまったのか? 「彼」のいる世界はどのような状況か?
その男は言います。「われわれは過去を忘れたい」のだと。
そして、「現在、世界中の人間が〇〇することの是非が議論されている」と・・・
「砂の本」は13の短編と後書きから成っていますが、どれも魅惑的な作品ばかり。
しかし、なんといってもサイコーだったのは、タイトル作の「砂の本」でしょう。
あるとき聖書を売りに来た男が、「砂の本」というものを取り出しました。
「砂と同じくその本にも、はじめもなければ終りもない、というわけです」
「この本のページは、まさしく無限です。
どのページも最初ではなく、また、最後でもない。」・・・
もう一つの「汚辱の世界史」は、1935年に出たボルヘスの処女短編集です。
内容は「世界悪者カタログ」。その40年後の「砂の本」に比べて分かりやすいです。
吉良上野介も紹介されています。痛切な忠義を呼びさました人物と、皮肉を込めて。
しかし、吉良の刃傷沙汰も、他の登場人物たちに比べたら、かわいい、かわいい。
黒人奴隷を解放すると騙して逃亡させ、他の農園に売り渡す男、ラザラス・モレル。
7年間好き勝手に人を殺しまくり、その数21人に及んだ、ビリー・ザ・キッド。
一方、愛すべき悪党は、自分と全く似ていない名家の息子になりすましたカストロ。
見破られて訴訟を起こされた時、腹心の黒人ボウグルは、どんな手段を取ったか?
さて、同じ岩波文庫から出ている「アレフ」も、傑作短編集です。ぜひ読みたい。
河出文庫の「怪奇譚集」「幻獣事典」も、この機会に読んでおきたいです。
さいごに。(ドリフが好きなこと、なんで分かった?)
アマゾンプライムビデオでビデオを見ると、下の方にオススメ番組が出てきます。
私が仏像の番組を見たとき、なぜか「8時だよ全員集合」がオススメになりました。
ママさんが驚いて言いました。「AIはパパの好みを知り尽くしている!」と。
それにしても、どうして? まるで私の心を読んでいるかのようで、怖いです。