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族長の秋 [20世紀ラテンアメリカ文学]

 「族長の秋」 ガルシア・マルケス作 鼓直訳 (集英社文庫)


 暴虐の限りを尽くした大統領の、残虐な行為とその孤独を描いた、幻想的小説です。
 1975年に刊行された独裁者小説です。「百年の孤独」と並ぶ、作者の代表作です。


ラテンアメリカの文学 族長の秋 (集英社文庫)

ラテンアメリカの文学 族長の秋 (集英社文庫)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2011/04/20
  • メディア: 文庫



 ある朝、大統領が死にましたが、死体を見てもその死を、誰も信じませんでした。
 というのも、大統領が死んだのは、これが初めてではなかったからです。

 かつて同じような状況で見出された死体は、実は影武者アラゴネスのものでした。
 大統領の身代わりとして死んだアラゴネスは、死の床で必死に訴えかけました。

 「それよりも閣下、このさい、真相に目を向けられたらいかがです、ほんとに心の
 なかで思っていることを閣下に言った人間は、一人もいないんですよ、みんなが、
 閣下が聞きたがっているなと思うことを口にする、閣下の前ではぺこぺこし、後ろ
 ではアカンベエをしている、・・・」(P41)

 この言葉は象徴的です。まさにそこに、大統領の孤独の原因があります。
 しかし大統領は信じません。民衆は自分を愛しているのだと思い込んでいて・・・

 さて、この本を手に取ってページをめくったところ、私はいきなり面食らいました。
 文章が段落なしで、50ページ以上にわたって続いています。文字がぎっしりです。

 覚悟して読み始めましたが、最初は戸惑ってばかりでした。
 語り手の人称がころころ変わるし、話はあっちへ行ったりこっちに行ったりします。

 しかも、ありえないことが、平然と当たり前のように記されています。
 ハゲタカの群れが大統領の死体を啄んだとか、バルコニーには牛がいたとか・・・

 ハゲタカや牛は、何かの比喩なのか? それとも、文字通りに解釈してよいのか?
 この手の小説の読み方がいまいち分からなくて、慣れるまでがたいへんでした。

 ともかく文字通り解釈しようと開き直ってからは、少し理解しやすくなりました。 
 文体は、バルザックやドストエフスキー同様にリズムがあり、クセになります。

 内容は、時に現実的で、時に非現実的、たまに突拍子もないたわごともあります。
 時に悲劇的で、時に喜劇的。たまにお下劣で、下ネタもあります。

 特に印象に残ったのは、中盤に語られる、身の毛もよだつ残虐行為です。
 2000人の子供らをいかに始末したか? 終生の友ロドリゴ将軍をいかに処分したか?

 しかし終盤、大統領が頻繁に「おふくろよ」とつぶやく場面は、痛々しかったです。
 結局、自分を終生本当に愛してくれたのは、亡き母ベンディシオンだけでした・・・ 

 さて、「族長の秋」は実に読みにくい小説でした。文体が良くも悪くも個性的です。
 次は、いよいよ「百年の孤独」にチャレンジです。覚悟を決めて読み始めなければ。


百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/12/01
  • メディア: 単行本



 さいごに。(歩き高跳びか!)

 娘の陸上教室の走高跳の先生は、良い先生なのですが、ちょっと毒舌です。
 うちの娘は助走が遅いので、「お前のは歩き高跳びか!」と言われたのだそうです。

 それでも娘は、めげずによくがんばっていると思います。
 助走の練習をしてから跳んだら、「お前にしては速くなった」と言われたそうです。

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