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オリエント急行の殺人 [20世紀イギリス文学]

 「オリエント急行の殺人」アガサ・クリスティー作 山本やよい訳(ハヤカワ文庫)


 オリエント急行の中で起きた殺人事件を、名探偵ポワロが解決する傑作推理小説です。
 奇抜なアイディアによって、作者の代表作となっています。2回映画化されました。


オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/04/05
  • メディア: 文庫



 名探偵エルキュール・ポアロは、急遽オリエント急行に乗り込むことになりました。
 冬なのに一等寝台は満員で、さまざまな国のあらゆる階級の人々が乗っていました。

 ポアロはアメリカの富豪ラチェットに、護衛を頼まれましたが、それを断りました。
 そしてその夜ラチェットは、刺殺されたのでした。刺し傷は12か所もありました。

 ポアロはさっそく事件解明に乗り出しましたが、乗客全員にアリバイがありました。
 燃えさしの手紙から、被害者がアームストロング家の誘拐事件の主犯だと分かり・・・

 この作品は、クリスティーの代表作であり、推理小説の傑作として知られています。
 私は1974年の「オリエント急行殺人事件」を見たので、内容は知っていました。

 映画を見ていなくても、結末を知っているという人は多いのではないかと思います。
 結末を知っていても楽しめました。オリエント急行を舞台にしているところがいい。

 「あらゆる階級、あらゆる国籍、あらゆる年齢の人が集まっている。これから3日間、
 この人々が、知らない者どうしが、一緒に過ごすことになる。(中略)その3日間が
 終わると、別れていく。それぞれの目的地へ向かい、おそらく、二度と会うことはな
 い」(P45)

 面白かったのは、あらゆる階級の人々が、ひとつの目的でつながったという点です。
 そして、彼らは真相を攪乱するために、それぞれ自分にふさわしい役を演じました。

 「念入りに組み立てられたジグソーパズルのようなもので、ジグソーの新しいピース
 がひとつ出てくるたびに、事件全体の解決がむずかしくなる仕掛けになっていたので
 す。」(P398)

 中でも味わいのある人物が、ハバード夫人でした。彼女の正体は・・・
 「昔からずっと、喜劇をやりたいと思ってましたのよ」(P404)・・・

 さて、ごちゃごちゃした情報を、丁寧に整理して解明していく過程はさすがでした。
 ポアロの推理に「なるほど」と感心し、最後の判断に「よかった」と安心しました。

 この決着の付け方については、賛否両論あるようですね。
 次のような言葉に、アガサ・クリスティーの考えが垣間見えるようで、面白いです。

 「今回に関しては、正義がーー本当の意味での正義がーーおこなわれたと思っており
 ます」(ドラゴミロフ公爵夫人の言葉・P356)

 ところで、この小説を読んでいると、オリエント急行に乗ってみたくなります。
 今でもオリエント急行を復元した列車が、部分的に運行しているらしいです。

オリエント急行.png

 クリスティーのほかの作品で、有名なものは次の二作です。今後読んでみたいです。
 「そして誰もいなくなった」と「アクロイド殺し」。


そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2003/10/01
  • メディア: 文庫



アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2003/12/01
  • メディア: 文庫



 さいごに。(一斉休校)

 新型コロナウィルスの流行防止のため、市内の小中高校は一斉休校に入っています。
 娘は月曜日の午前だけ登校して、その後は2週間休み。久々にのんびりしています。

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