遊戯の終わり [20世紀ラテンアメリカ文学]
「遊戯の終わり」 コルタサル作 木村榮一訳 (岩波文庫)
幻想で現実世界を豊かにしようと目論んだコルタサルの、夢と狂気の短編集です。
1956年に出ました。3年後に出た「秘密の武器」と並ぶ、作者の短編集の代表作です。
絶版で手に入らなかった本を、2012年に岩波文庫が出しました。さすが岩波さん。
全18編。日常世界が足元から、ガラガラと崩壊していくような短編が多いです。
冒頭の「続いている公園」は3ページ足らず。しかし、鮮烈な印象を残します。
小説の中の男がナイフを持って走り出し、入り込んだ屋敷にいたのは・・・
「いまいましいドア」も短いながら、印象的なホラー小説です。
ホテルの部屋に不自然に付いているドアから、夜な夜な赤ん坊の泣き声が・・・
「キクラデス諸島の偶像」は、18編中私が最も気に入った作品です。
奇人ソモーサは、掘り出した彫像を理解するため、像と一体化しようと努めました。
「倦むことなく対象に近づこうと努めれば、いつか始原の彫像と一体化できるはず
だ。(中略)完全な融合、本原的な触れ合いが起こるのだ。」(P93)
そして彼は、彫像を使って行われていた、古代の残虐な儀式を蘇らせてしまい・・・
日常生活の時空間に、突如異質な時空間が出現する、コルタサルらしい傑作です。
「黄色い花」は、輪廻転生をテーマにした、とても興味深い作品です。
昔の自分そっくりの少年に出会った男は、自分を不死だと信じるようになり・・・
「正確無比な輪廻の歯車にちょっとした狂いが生じ、時間に襞がよってしまったの
です。本来なら引き続いて起こるべき生まれ変わりが同時に起こってしまったので
すよ。」(P104)
「山椒魚」も、突如異質な時空間が出現し、ハッとさせられる作品です。
「ぼく」は水族館に通って、何時間も山椒魚を眺めているうちに、とうとう・・・
「その時、彼ら山椒魚の秘めた意志、つまり一切に無関心になりじっと動かずにいる
ことによって、時間と空間を無化しようとする彼らの意志がおぼろげながら理解でき
るように思えた。」(P204)
「夜、あおむけにされて」もまた、突如異質な時空間が出現する作品です。
事故で入院した「彼」は、アステカ族に捕らえられている夢を、何度も見たが・・・
ほか、「誰も悪くはない」「バッカスの巫女たち」「水底譚」なども面白かったです。
タイトル作「遊戯の終わり」は、意外にも郷愁を誘うような作品でした。
さて、コルタサルの短編集は色々出ているので、選ぶときには注意が必要です。
2012年に岩波文庫から出た「遊戯の終わり」と「秘密の武器」を読むのがオススメ。
以前から出ている「悪魔の涎」は選集。重複している作品が多いのでいらないかも。
処女短編集「動物寓話集」も、古典新訳文庫から「奪われた家」として出ています。
しかし、コルタサルといったら、なんといっても、長編「石蹴り遊び」でしょう。
以前集英社文庫から出ていましたが、現在は絶版です。ぜひぜひ復刊してほしい!
さいごに。(髭ダンと言えば・・・)
娘に「髭ダン」を知ってるかと聞かれたので、「もちろん知ってる」と答えました。
しかし、私の知っているのとは違いました。
てっきり、志村とカトちゃんの「髭のダンス」のことだと思っていました。
今では「髭ダン」と言えば、「オフィシャル髭男ディズム」のことだって?
幻想で現実世界を豊かにしようと目論んだコルタサルの、夢と狂気の短編集です。
1956年に出ました。3年後に出た「秘密の武器」と並ぶ、作者の短編集の代表作です。
絶版で手に入らなかった本を、2012年に岩波文庫が出しました。さすが岩波さん。
全18編。日常世界が足元から、ガラガラと崩壊していくような短編が多いです。
冒頭の「続いている公園」は3ページ足らず。しかし、鮮烈な印象を残します。
小説の中の男がナイフを持って走り出し、入り込んだ屋敷にいたのは・・・
「いまいましいドア」も短いながら、印象的なホラー小説です。
ホテルの部屋に不自然に付いているドアから、夜な夜な赤ん坊の泣き声が・・・
「キクラデス諸島の偶像」は、18編中私が最も気に入った作品です。
奇人ソモーサは、掘り出した彫像を理解するため、像と一体化しようと努めました。
「倦むことなく対象に近づこうと努めれば、いつか始原の彫像と一体化できるはず
だ。(中略)完全な融合、本原的な触れ合いが起こるのだ。」(P93)
そして彼は、彫像を使って行われていた、古代の残虐な儀式を蘇らせてしまい・・・
日常生活の時空間に、突如異質な時空間が出現する、コルタサルらしい傑作です。
「黄色い花」は、輪廻転生をテーマにした、とても興味深い作品です。
昔の自分そっくりの少年に出会った男は、自分を不死だと信じるようになり・・・
「正確無比な輪廻の歯車にちょっとした狂いが生じ、時間に襞がよってしまったの
です。本来なら引き続いて起こるべき生まれ変わりが同時に起こってしまったので
すよ。」(P104)
「山椒魚」も、突如異質な時空間が出現し、ハッとさせられる作品です。
「ぼく」は水族館に通って、何時間も山椒魚を眺めているうちに、とうとう・・・
「その時、彼ら山椒魚の秘めた意志、つまり一切に無関心になりじっと動かずにいる
ことによって、時間と空間を無化しようとする彼らの意志がおぼろげながら理解でき
るように思えた。」(P204)
「夜、あおむけにされて」もまた、突如異質な時空間が出現する作品です。
事故で入院した「彼」は、アステカ族に捕らえられている夢を、何度も見たが・・・
ほか、「誰も悪くはない」「バッカスの巫女たち」「水底譚」なども面白かったです。
タイトル作「遊戯の終わり」は、意外にも郷愁を誘うような作品でした。
さて、コルタサルの短編集は色々出ているので、選ぶときには注意が必要です。
2012年に岩波文庫から出た「遊戯の終わり」と「秘密の武器」を読むのがオススメ。
以前から出ている「悪魔の涎」は選集。重複している作品が多いのでいらないかも。
処女短編集「動物寓話集」も、古典新訳文庫から「奪われた家」として出ています。
悪魔の涎・追い求める男 他八篇―コルタサル短篇集 (岩波文庫)
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1992/07/16
- メディア: 文庫
しかし、コルタサルといったら、なんといっても、長編「石蹴り遊び」でしょう。
以前集英社文庫から出ていましたが、現在は絶版です。ぜひぜひ復刊してほしい!
さいごに。(髭ダンと言えば・・・)
娘に「髭ダン」を知ってるかと聞かれたので、「もちろん知ってる」と答えました。
しかし、私の知っているのとは違いました。
てっきり、志村とカトちゃんの「髭のダンス」のことだと思っていました。
今では「髭ダン」と言えば、「オフィシャル髭男ディズム」のことだって?