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2020年5月発売の気になる文庫本 [来月発売の気になる文庫本]

 2020年5月発売予定の文庫本で、気になるものを独断で紹介します。
 データは、出版社やamazonの、HPやメルマガを、参考にしています。


・5/7 「サロメ」 原田マハ (文春文庫)
 → ピアズリーやオスカー・ワイルドについて書かれた美術小説。買い。

・5/12 「純粋理性批判」 カント (まんが学術文庫)
 → あの難解な書物をいかにしてまんが化したか。絵がきれいなら、買い。
   5月の「100分de名著」で取り上げられる「純粋理性批判」とコラボか。

・5/13 「みずうみ 人形使いのポーレ」 シュトルム (古典新訳文庫)
 → 「みずうみ」は多くの訳が出ている。私は関訳で読んだ。松永訳も気になる。

・5/16 「真夜中の子供たち(上)」 サルマン・ラシュディ (岩波文庫)
 → 英国作家ラシュディの代表作。魔術的リアリズムで書かれた。気になる。


◎今「ペスト」の静かなブーム

ペスト (新潮文庫)

ペスト (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/05/22
  • メディア: ペーパーバック


 コロナ流行の今、カミュの「ペスト」が静かなブームとなっているようです。
 私は2018年に読んで、2回にわたって紹介しました。2018年のベスト5です。

 リウーの生きざまにとてもうたれました。
 ブログでも紹介した、次の言葉がとても印象に残っています。

 リウー:「これは誠実さの問題なんです。こんな考え方はあるいは笑われるかもし
     れませんが、しかしペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです」

 「ペスト1」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2018-07-21
 「ペスト2」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2018-07-24

 新潮社によると、「ペスト」の発行部数は、4月初めに100万部を突破したと言う。
 災厄に見舞われた人々がどう振舞うかを問いかけている点に、今読む価値がある。

 さて、ダニエル・デフォーの「ペスト」は、いつのまにか絶版となっていました。
 この機会に、復刊してくれるといいのですが。


◎「よくわかる科学史」のページ

 最近、よく訪れているのが、「よくわかる科学史」というページです。
 その特徴は、昔の子供向けの科学本が紹介されている、という点です。

 あえて昔の本を紹介しているのは、科学の進歩がわかるためなのだそうです。
 「地球と生物の謎」では、恐竜がゴジラのように立ち上がった姿で描かれています。

 私が子供の時も、同じようなイメージでした。懐かしいです。
 現在は、映画「ジェラシック・パーク」などで、だいぶイメージが変わりました。

 他に興味深いのは、マヤやインカなど、古代遺跡の本も紹介しているところです。
 今日は「コンチキ号」のページに読みふけりました。グラビアもあって良いです。


◎ようやく時代が「ムー」に追いついた!

 4月27日に米海軍がUFO動画を公開しました。ムー民の間では有名な動画です。
 翌28日には、河野防衛相が「UFO遭遇時の手順を定める」とコメントしました。

 ムー民からは、「今さら?」「遅すぎる!」という声が聞こえてきそうです。
 ようやく時代が、雑誌「ムー」の世界に、追いついてきたということでしょうね。

 ところで、河野防衛相は、次のような前置きをしているのが、気にかかります。
 「自衛隊のパイロットは、今までUFOに遭遇したことはないようでございます」

 彼は、もと空将の佐藤守が、UFO目撃談を暴露していることを知らないのか。
 知りながらあえて無視したのか。ちなみに佐藤守の次の本は、ムー民の必読書。

実録・自衛隊パイロットたちが目撃したUFO 地球外生命は原発を見張っている (講談社+α新書)

実録・自衛隊パイロットたちが目撃したUFO 地球外生命は原発を見張っている (講談社+α新書)

  • 作者: 佐藤 守
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 新書


 2015年にアントニオ猪木議員が、UFOについて質問して、スルーされました。
 あのころ猪木を笑ったものです。しかし、猪木は時代の先を行っていたのでした。

 昨年6月、アントニオ猪木は政界を引退し、我々は本当に惜しい人を失いました。
 UFOの質問を平気でできるような議員は、今の政界で見当たらないので。(笑)


◎さいごに。(人生初めての在宅勤務)

 いつになれば終息のめどが立つのか? 今は、コロナウィルスとの戦争ですね。
 私は数日おきに、人生初めての在宅勤務をしています。これが、実に良い!

 仕事がめちゃくちゃはかどるのです。職場の2倍くらいのペースでしょうか。
 職場では、他の仕事がどんどん割り込んでくるため、こんなに集中できません。

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スティル・ライフ [日本の現代文学]

 「スティル・ライフ」 池澤夏樹 (中公文庫)


 染色工場でアルバイトをする「ぼく」と、不思議な雰囲気を持つ佐々井の物語です。
 1988年に芥川賞を受賞しました。小説家池澤夏樹の、出発点となる名作です。


スティル・ライフ (中公文庫)

スティル・ライフ (中公文庫)

  • 作者: 池澤 夏樹
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1991/12/10
  • メディア: 文庫



 染色工場でアルバイトをしている「ぼく」は、アルバイトの佐々井と知り合いました。
 佐々井は不思議な雰囲気を持つ男で、バーでは宇宙やら微粒子やらの話をしました。

 二日後に佐々井はバイトをやめますが、その1か月後に電話がかかってきて・・・
 佐々井が持ち掛けた仕事は何だったのか? 佐々井にはどんな過去があったのか?

 「世界ときみは、日本の木が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、
 それぞれまっすぐに立っている。」(P9)

 池澤夏樹は詩人です。冒頭の詩的表現が、我々を物語の世界へいっきに引き込みます。
 透明感のある文章と、醒めきった雰囲気は、村上春樹の初期作品に似ていました。

 この作品の大きな魅力は、佐々井という男の不思議な雰囲気でしょう。
 バーで、水の入ったグラスをじっと見ながら、佐々井はこんなことを言います。

 「チェレンコフ光。宇宙から降ってくる微粒子がこの水の原子核とうまく衝突すると、
 光が出る。それが見えないかと思って」(P11)

 こういう言葉を吐く男を、クールだと思うか、キザだと思うかは、微妙なところです。
 「ぼく」はというと、佐々井の語る遠い星の爆発で出た粒子の話に引き込まれました。

 このときから、「ぼく」には、佐々井に対する強烈な好奇心が、湧き起こりました。
 だから、佐々井の持ち掛けた奇妙な仕事を、手助けするようになったのだと思います。

 「緊張と興奮が続いた。劇場の中みたいだ。外とはまったく別の世界を約束ごとで作っ
 て、みんながその実在を信じるふりをすることで、ドラマチックな興奮が得られる。で
 も、厭きるんだよ、そういうのって」(P72)

 この言葉は、バブル時代を演出した、当時の時代精神に対する批判となっています。
 この作品が出た1987年というのは、まさにバブル期のピークでした。

 さて、この本には「ヤー・チャイカ」という中編も収録されています。
 娘と二人暮らしをする男と、来日10年目のロシア人との、つながりを描いています。

 二人のやり取りが面白いです。あるときロシア人が、提案してきたことは・・・
 そして、娘はしだいに遠ざかっていきます。まるで、無人探査機のように・・・

 ところで、娘と恐竜の挿話は何なのか? この空想日記に何を象徴したのか?
 タイトルもイマイチだし、「スティル・ライフ」と比べて、完成度はずっと落ちます。

 私は「マシアス・ギリの失脚」の作者の出発点を知りたくて、この本を読みました。
 「マシアス・ギリの失脚」を読む前、私にとって池澤は「世界文学全集」の人でした。
 「世界文学全集」について→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2010-08-25

 ところが、色々調べてみると、池澤夏樹の受賞歴がスゴイ。
 「花を運ぶ妹」とか「ハワイイ紀行」とか、ほかにも読んでみたい作品は多いです。


花を運ぶ妹 (文春文庫)

花を運ぶ妹 (文春文庫)

  • 作者: 池澤 夏樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2003/04/10
  • メディア: 文庫



ハワイイ紀行 完全版 (新潮文庫)

ハワイイ紀行 完全版 (新潮文庫)

  • 作者: 夏樹, 池澤
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2000/07/28
  • メディア: 文庫



 さいごに。(届いた!アベノマスク)

 先日、職場に「アベノマスク」が届きました。公共性が高い仕事なので。
 マスクそのものよりも、その気持ちが嬉しいですね。

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マシアス・ギリの失脚2 [日本の現代文学]

 「マシアス・ギリの失脚」 池澤夏樹 (新潮文庫)


 南洋の小国ナビダード民主共和国大統領、マシアス・ギリが失脚するまでの物語です。
 新潮文庫で600ページ以上ありますが、時間を忘れてのめり込んでしまう作品です。


マシアス・ギリの失脚 (新潮文庫)

マシアス・ギリの失脚 (新潮文庫)

  • 作者: 夏樹, 池澤
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1996/05/29
  • メディア: 文庫



 マシアス・ギリが娼館で眠っている間に、エメリアナはあるものを探して・・・
 その封筒の中には、大統領がこれまで隠し続けていた、驚くべき秘密が・・・

 マシアス・ギリは、なぜ第三代大統領を・・・?
 そして、マシアス・ギリが失脚させられた本当の理由は?

 最後にマシアス・ギリは、いかにして自分自身に決着をつけたか?
 おそらく彼の孤独を救ったと思われる、エメリアナの最後の一言は?

 後半に入って、マシアス・ギリの物語は、いよいよ失脚に向かって動き始めます。
 自分を守るために置いたエメリアナが、まさか、そのような目的を持っていたとは!

 エメリアナは、メルチョール島の巫女。大統領も、メルチョール島の出身。
 そしてナビダード国は、メルチョール島の人々の霊力によって支えられています。

 「現実という舞台装置の背後には、それらすべてを動かしている演出家や道具方や
 機械仕掛けが隠されているのではないか。自分の手足には見えない糸がついていて、
 上の方でそれを操っている者がいるのではないか。」(P241)

 マシアス・ギリのこの言葉が、とてもイミシンだったことに、あとから気付きます。
 そして大統領に同情してしまう。この点が、他の独裁者小説との決定的な違いです。

 たとえば「大統領閣下」は、恐怖政治を描くことで、独裁制を批判していました。
 また「族長の秋」は、大統領の孤独を描くことで、独裁制を批判していました。

 ところが「マシアス・ギリの失脚」には、独裁制に対する批判が感じられません。
 この作品は、独裁者マシアス・ギリの孤独な心を、とことん純粋に描いています。

 この小説には日本的な味付けがあります。
 しみじみとした日本的な抒情があります。

 「この世界にあって個人の意志は何も決められない。すべては大きな流れの中に
 あり、われわれはそこに浮いている。」(P588)

 マシアス・ギリのこの思いの中に、作者の言いたかったことがあると思います。
 改めて、ラテン・アメリカの独裁者小説と、根本的に違うことに気づかされます。

 さて、最後にケッチとヨールが気になることを言っています。
 マシアス・ギリの物語は、彼らの創造の産物なのか、とも取れる言葉です。

 「一つの世界を想像して、想像することで創造していたのかもしれない。」
 「その実在性の大半はぼくたちが飲んで喋って作ったものだ」(ともにP618)

 ところで、失踪していたバスは、なぜかひょっこり現れました。
 「バスリポート」は、結局何の意味も無かったような気がしています。

 バスの代わりに、メルチョールの長老と大巫女たちのリポートがほしかったです。
 ナビダード国を支えている霊的なシステムを、もう少し描いてほしかったです。

 さいごに。(マスクは繁華街にあり?)

 しばらく前、「マスクは田舎の薬局へ行くとある」と言われていました。
 最近、「マスクは繁華街の薬局へ行くとある」と言われています。

 百貨店が次々と臨時休業に追いやられ、繁華街から人々の姿が消えました。
 だから、繁華街の薬局が、今ではマスク調達の穴場となっています。

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マシアス・ギリの失脚1 [日本の現代文学]

 「マシアス・ギリの失脚」 池澤夏樹 (新潮文庫)


 南洋の小国ナビダード民主共和国大統領、マシアス・ギリが失脚するまでの物語です。
 魔術的リアリズムの手法で描かれた独裁者小説で、1993年に谷崎賞を受賞しました。


マシアス・ギリの失脚 (新潮文庫)

マシアス・ギリの失脚 (新潮文庫)

  • 作者: 夏樹, 池澤
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1996/05/29
  • メディア: 文庫



 舞台は、南洋のどこかにある、ナビダード民主共和国。人口7万人の小さな島国です。
 かつて日本の統治領だったことがあり、そのため日本との深いつながりがある国です。

 主人公は大統領のマシアス・ギリ。日本語堪能で、日本と太いパイプを持っています。
 二代大統領の地位を滑り落ちた後、何か後ろめたい手段を用いて返り咲いたようです。

 ある日、日本から来た慰霊団のバスが失踪し、ケンペー隊の捜査は難航していました。
 一方、日本政府からの密使である鈴木が持ち掛けた提案には、何か裏がありそうです。

 マシアス・ギリは、我が身に変化が起きつつあることを、なんとなく感じ取りました。
 彼は問題に対処するため、霊力を持つ女エメリアナをそばに置きましたが・・・

 読書仲間から「この作品は日本のラテンアメリカ文学だ」と聞き、興味を持ちました。
 600ページ以上に及ぶ大作ですが、現在、半ばの300ページほどまで読みました。

 ガルシア・マルケスに心酔していた池澤は、魔術的リアリズムの手法を用いました。
 巫女的存在のエメリアナ、亡霊のリー・ボー、そして千変万化するバス・・・

 南米的な幻想世界が広がっています。しかし、ただのファンタジーではありません。
 この作品をさらに魅力的にしているのは、随所で述べられる歴史観や日本論です。

 「われわれが住むこの大きな騒乱の世紀を開いた戦争が、その戦場をほぼヨーロッパ
 に限定しながらもなお世界大戦と呼ばれるのは、まさにこの時になって一つの世紀と
 一つの世界が重なるという現象が起こったからである。一つの時間意識と一つの空間
 意識が同時にこの惑星の上のすべての人間を包み込んだ。」(P98)

 「この国を本当に世界に冠たる国にするには、歴史のこの局面で一度は敗北というこ
 とを味わうことが必要なのだ。これによって制度としての天皇制は、先の日の発展を
 読み、最も強い機能を発揮する。」(P115)

 一見物語と関係ないような文章ですが、実は奥深い所で有機的につながっています。
 物語を読み進めながら、異文化問題や独裁制など、多くの問題を考えさせられます。

 ところが、私によく理解できなかったのが、時々挿入される「バスリポート」です。
 「バスが海を泳いでいたよ」とか、「バスが空を飛んで行ったよ」とか・・・

 いったい何が面白いのか。シムラやカトちゃんが、言いそうなことではないか。
 魔術的な雰囲気を出そうとして失敗し、単なる子供だましになってしまったようです。

 一方「バスリポート」を「これぞ池澤ワールド」と評する人もいて、理解に苦しむ。
 この先このバスが、どのように物語に絡むのか。あっと驚く展開を期待したいです。

 さいごに。(我が地域でも緊急事態宣言)

 我が社では、仕事の半分を在宅勤務とし、職場の人を半減するよう求められました。
 それも、明日の月曜日から実施せよとのこと。

 私は、午前をほぼ在宅勤務にし、お客さんが来る午後には出勤する予定です。
 今は、みんなでがんばらなければならないとき。なんとかシフトを組まなくては。

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アレフ [20世紀ラテンアメリカ文学]

 「アレフ」 J・L・ボルヘス作 鼓直訳 (岩波文庫)


 1949年に出た幻想的で象徴的な短編集で、「伝奇集」と並ぶボルヘスの代表作です。
 私は岩波文庫版の鼓直訳で読みました。平凡社ライブラリーの木村榮一訳もあります。


アレフ (岩波文庫)

アレフ (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/02/17
  • メディア: 文庫



エル・アレフ (平凡社ライブラリー)

エル・アレフ (平凡社ライブラリー)

  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2005/09/09
  • メディア: 文庫



 冒頭の「不死の人」は、「この世界に不死が存在するか」を問いかけた作品です。
 「ラテンアメリカ十大小説」(以下「十大小説」)にも、紹介されていた名作です。

 ローマの軍団の司令官ルーフスが、不死の川と不死の都を探して出発しました。
 不死の都にたどり着き、黒く濁った水を飲んだとき、彼は不死の人となりました。

 その後ルーフスは、さまざまな場所において、さまざまな人間として生きました。
 そして1921年、あの懐かしい場所で、澄んだ水を飲んだとき、再び変化が・・・

 この作品を、さらに印象的にしているのは、随所に現れるイミシンな言葉です。
 次のような文章を、深遠と思うか、人を煙に巻くと思うかは、微妙なところです。

 「何者も何者かではなく、一個の不死の人間はすべての人間である。」

 「わたしはホメーロスであった。間もなく、オデュッセウスのように〈何者でもな
 いもの〉になるだろう。間もなく、すべての者になるだろう。すなわち、死者とな
 るだろう。」

 「十大小説」ではこれを、輪廻思想として読み解いています。
 無限の時間を、様々な人間に生まれ変わるなら、その人はすべての人間となるのだ!

 「タデオ・イシドロ・クルスの生涯」は、人の宿命を考えさせられる物語です。
 自分が何者であるかは、わずかな一瞬の中で、永遠に知ることになるという・・・

 「神の書跡」もまた、ボルヘス・ファンからの評価が高い作品です。
 「私」は地下牢に幽閉された神官で、「神の書跡」を読み取ろうと考えています。

 それは悪を祓う呪文の文字で、どこにどのように書かれているのか分かりません。
 ところが不意に、隣の檻の中のジャガーの模様に、文字を見出したように思い・・・

 「神の言語では、すべての単語があの事実の無限の連鎖を表すはずだ」
 「神というものは、ただ一語を発し、その一語のうちに一切を言い尽くすのだ」

 そして、私が見たものは・・・
 相変わらずボルヘスは、途方もないことを考えています。

 タイトル作であり、ラストを飾る「アレフ」は、この短編集を代表する傑作です。
 アレフとは、点のすべてを含む空間の一点という、不思議な球体のことです。

 「私」の知り合いの詩人が、屋敷を取り壊すことになって、嘆き悲しんでいました。
 なぜなら、地下室の片隅に、アレフが存在するのだから、と。アレフとは、何か?

 「あらゆる角度から見た、地球のあらゆる場所が、混じり合うことなく、存在してい
 る場所だよ。」(・・・はあ?)

 「私」は、彼が狂人であることを確信しつつも、彼の屋敷の地下室へに入りました。
 そして、「私」がそこで見た、光り輝く小さな球体は・・・

 この短編は「十大小説」でも紹介されていて、象徴的意味が少し解説されています。
 アレフとは、中世の「薔薇物語」に出て来る、泉の中の水晶のことなのでしょうか?

 ほか、「エンマ・ツンツ」「ドイツ鎮魂曲」「二人の王と二つの迷宮」「アベンハカ
 ン・エル・ボハリー、おのが迷宮に死す。・・・」なども、面白かったです。

 短編集「アレフ」の17編の中には、「神学者たち」のような難解な作品もあります。
 ボルヘスの他の作品では、「幻獣事典」や「怪奇譚集」などは読みやすいようです。


幻獣辞典 (河出文庫)

幻獣辞典 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2015/05/08
  • メディア: 文庫



ボルヘス怪奇譚集 (河出文庫)

ボルヘス怪奇譚集 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2018/04/06
  • メディア: 文庫



 さいごに。(毎日出勤)

 世間では休業要請が出ていますが、我が社は店を閉めた上で、全員が働いています。
 コロナに振り回されて、仕事が煩雑になって、やることはいくらでもあるためです。

 といっても、毎日の残業時間は1時間程度と、以前に比べて半減しました。
 また、土日のサービス残業がゼロになったのは、コロナによる皮肉な成果でした。

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世界文学の流れをざっくりとつかむ21 [世界文学の流れをざっくりとつかむ]

≪第六章≫ ルネサンス期から十七世紀の文学

 1 イタリアルネサンス文学

 古代ローマ帝国が古い神々を捨てて、キリスト教を国教としたことが、法王がヨーロッパの支配者となる道を開きました。中世において、法王は神の代理人であり、法王の言葉は神の声でした。1077年に神聖ローマ皇帝が破門された事件(カノッサの屈辱)は、法王に不動の真理があることを象徴し、1096年から始まった十字軍の遠征は、法王の権威をさらに増しました。

 キリスト教の教えに従わなければ地獄に落ちるとされ、自由に考えようとすれば異端とされ、ひどい場合は火あぶりの刑に処せられました。このような環境では文学は育ちません。のちにこの時代を振り返って、暗黒時代と呼んだのは、人間性がキリスト教によって抑え込まれていたからです。

 こういう時代において、古代ギリシアとローマの古典は異端の学問とされ、僧院などで厳重に封印されていました。この封印を解いたのが、皮肉にも遠征から帰った十字軍でした。彼らは、イスラム帝国で保存されていたギリシアやローマの古典を持ち帰ったのです。また、混乱を避けてビザンティン帝国から亡命してきた学者たちにも注目が集まりました。ラテン語とギリシア語に対する関心が高まり、人文主義が広がって古典研究が流行し、12世紀ルネサンスと言われる時代を現出しました。

 十字軍の遠征の影響で、東方貿易が始まると、その拠点となった北イタリアのヴェネツィアやジェノヴァやフィレンツェなどの地方都市が繁栄しました。特にフィレンツェでは銀行家のメディチ家が台頭し、ローマ教皇庁とつながることで急成長しました。しだいに都市に人口が集中するようになり、キリスト教の旧習にとらわれない人々が出てきました。「古代復興」「人間性の回復」を意味するルネサンスは、このような人々を担い手としたのです。

 ルネサンスは文芸の分野でいちはやく始まりました。その先駆者が、イタリア最大の詩人ダンテです。ダンテはフィレンツェの人で、ヴェルギリウスやホラティウスなどのラテン文学の古典を学びました。1293年頃にまとめられた「新生」は、永遠の女性ベアトリーチェの死に捧げた詩集です。そこには、血の通った人間らしい感情が表現され、新しい時代を予感させるものがありました。

 ダンテはのちに政争に巻き込まれ、流浪の身となってから、1320年頃に「神曲」を完成しました。イタリア文学最大の古典である「神曲」の内容は、キリスト教の世界観そのものです。しかしその案内役を、キリスト教以前のローマ詩人ヴェルギリウスが務めています。さらに重要な点は、この一大叙事詩を「新生」同様、当時としては珍しく、ラテン語ではなく民衆が日常的に使っているトスカナ語で、生き生きと表現している点です。こういった点から、「神曲」はルネサンス文学の先駆と言われています。

 ペトラルカもフィレンツェの詩人です。彼は、修道院に保管されていた古代の資料を研究した人文学者で、古典時代こそが人間を肯定した理想の時代だったという認識を持っていました。1374年の死まで「カンツォニエーレ」(歌の本)を作り続けましたが、これは人妻のラウラに捧げた抒情詩集です。

 ボッカチオもフィレンツェの詩人で、ペトラルカの友人でした。また、ダンテの讃美者でした。1349年から1351年にかけて作られた「デカメロン」(十日物語)は、ペストから逃れた10人が退屈しのぎに10は話ずつ話をするという趣向の枠物語です。全100話の多くは民衆の生き生きとした艶笑譚で、カトリックを批判した話も多いです。ダンテの「神曲」に対して、「人曲」とも呼ばれています。近代小説の先駆であり、イギリスのチョーサーにも影響を与えました。

 この頃、ローマの遺跡が出土し、古代建築が再評価され、ローマ建築の研究が盛んになりました。1420年から、ブルネレスキが、フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のドームを建築し始めました。1500年代に入ると、ボッティチェリ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロらが、絵画・彫刻・建築など様々な分野で豊かな才能を発揮し、イタリアルネサンス芸術は最盛期を迎えました。

 1532年、マキャベリの没後に「君主論」が刊行されました。彼は前年、ローマの歴史研究「リウィウス論」を書いていました。1575年、タッソの「解放されたエルサレム」が成立したのが、イタリアルネサンスの最後の輝きでした。このころからカトリック教会による、対抗宗教改革の大きな波が襲い、自由な気風が抑え込まれて、イタリアにおけるルネサンスは終焉に向かいました。そして、ルネサンス運動の中心は、フランスなどアルプスの北側の国々に移っていきました。

 次回は、フランスルネサンス文学について書いていきたいと思います。

 さいごに。(再び休校)

 娘の小学校は、4月7日、約1か月ぶりに休校が解除されました。
 しかし登校したのは4日だけ。11日から再び休校となり、今日も家にいます。

 私は安心しています。登校すれば、不特定多数との接触は避けられないので。
 今はいろいろと大変ですが、非常時ですから、がんばるしかありませんね。


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オルレアンの少女 [19世紀ドイツ北欧文学]

 「オルレアンの少女(おとめ)」 シルレル作 佐藤通次訳 (岩波文庫)


 神による啓示を受けてフランスのために戦った、ジャンヌ・ダルクの悲劇です。
 1801年に上演され大成功を収めました。チャイコフスキー作オペラも有名です。

 岩波文庫「オルレアンの少女」は、初版が1938年で、改訳が1951年です。
 活字が旧字体で読みにくいのですが、文章自体は意外と分かりやすいです。


オルレアンの少女 (1951年) (岩波文庫)

オルレアンの少女 (1951年) (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2020/03/17
  • メディア: 文庫



 英仏100年戦争の終わり頃、フランスの地はイギリス軍に蹂躙されていました。
 オルレアンの町は包囲され、敵に攻め落とされるのを待つばかりの状況でした。

 そのとき片田舎で、農夫の末娘ジャンヌは、突然、神の声を聞いたのです。
 「さあ往け、お前は地上でわたしの為に證(あかし)せねばならぬ。」(P35)

 ただし、常に清くなければならない。つまり、男を好きになってはいけない。
 妻にも母にもなれないが、戦いの名誉で、どの女よりも尊い者にしよう、と。

 神の命に従い、ジャンヌはフランス王を戴冠させるため、行動を開始しました。
 威風堂々と現れたジャンヌは、敵軍に勝利し、フランス王にも信頼されました。

 一方、敗走するイギリス軍からは、悪魔の使者として恐れられて・・・
 敵将ライオネルと戦ったことが、皮肉にも彼女にとってアダとなり・・・

 「わたしは、天国の開かれるのを見、マリヤ様のお姿をこの目に拝みました!
 それなのに、今わたくしの望みは、この世にあって、天国にはございませぬ!」
 (P199)

 シャルル七世の戴冠が盛大に行われた時、ジャンヌの父が想定外の行動を・・・
 そして、ジャンヌの運命は急転換して・・・

 これは、ずっと読みたかった戯曲です。2020年2月にようやく復刊されました。
 古い本ですが、文章は分かりやすくて、いっきに読めました。面白かったです。

 ジャンヌのドラマティックな生涯に、ロマンティックな味付けをしています。
 少女としてのジャンヌダルクの悲劇性が際立ち、魅惑的な戯曲となっています。

 特に、結末をシラー流に美しく描いたところがいいです。史実とは違いますが。
 ジャンヌ・ダルクのイメージの多くは、この戯曲によって作られたそうです。

 シラーの作品は、ほかにも次のようなものがあります。参考にしてください。
 「群盗」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2016-11-21
 「ヴァレンシュタイン」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2013-06-18
 「ヴィルヘルム・テル」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2017-06-01

 さいごに。(ようやくマスクが)

 ときどきマスクが、店頭で見られるようになりました。生産が追いつき始めたのか?
 しかし手作りの布マスクは、洗って何度も使えるので、店頭のマスクはいりません。

 もしかしたら、みんなが布マスクを作り始めたので、市場に出てきたのでしょうか。
 今後マスクが余って、店が多くの在庫を抱えるのではと、余計な心配をしています。

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日本沈没 [日本の現代文学]

 「日本沈没」 小松左京 (小学館文庫)


 大規模な地殻変動で沈没していく日本と、災害に立ち向かう国民を描いた小説です。
 1973年に刊行され大ベストセラーとなりました。映画もパニック映画の傑作です。


日本沈没 上 (小学館文庫 こ 11-1)

日本沈没 上 (小学館文庫 こ 11-1)

  • 作者: 小松 左京
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2005/12/06
  • メディア: 文庫



日本沈没 下 (小学館文庫 こ 11-2)

日本沈没 下 (小学館文庫 こ 11-2)

  • 作者: 小松 左京
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2005/12/06
  • メディア: 文庫



 日本では小中規模の地震が頻発し、小笠原諸島の小島が一夜で海底に沈みました。
 海底調査で、操縦士の小野寺と、地球物理学者の田所は、乱泥流を見つけました。

 田所は、日本が沈没する可能性に気づきますが、他の学者から相手にされません。
 しかし、黒幕的存在の渡老人の指示で、首相は極秘で「D計画」を立ち上げました。

 巨大地震や火山の噴火などが起こり、田所は計算で早くて2年と割り出して・・・
 国民を脱出させるための「D計画」は、俊才の中田を中心に進められていたが・・・

 さて、2020年4月現在、コロナウィルス感染者は、世界で100万人を超えています。
 イベントは自粛、学校は休校、マスクは品切れ、渡航は制限、株価はパニック安。

 こういう状況の中、国のかじ取りをする人々は、日夜難しい選択を迫られています。
 この本を読んでいる間、日本沈没とコロナウィルスが二重写しで見えていました。

 「われわれの直面する未来には、過去の歴史の延長からある程度類推できる部分も
 かなりある。しかし、未来の歴史の中には、単なる過去の歴史の延長によっては、
 決して類推できない未知の、暗黒の部分もあるのだ。――過去において、そんなこ
 とが一度も起こらなかったといって、それが未来にも決して起こらないとは、誰が
 いい得よう!」(上・田所博士の言葉)

 それにしても、2年以内に日本が沈没すると知ったら、いったい何ができるか。
 できることはとても限られています。自分だったら、その中で全力を尽くせるか?

 「日本救援」を叫びながら、各国の首脳陣は、それぞれ思惑をもって行動します。
 一方、不眠不休で働く「D計画」の面々。特に、小野寺と中田がカッコいい!

 ところで、特に興味深かったのは、沈没後の日本民族の在り方です。
 福原教授らが、命を削って出した結論は、次の4つでした。

 ①民族の一部がどこかに新しい国を作る。②世界中に分散してその国に帰化する。
 ③どこにも受け入れられず流浪する。④そして、究極の選択・・・

 人々が脱出していく中で、渡老人や田所博士が選択した道は?
 最後に明かされる、田所博士が日本人に呼びかけたかったことは?

 「日本人は、人間だけが日本人というわけではありません。日本人というものは
 ・・・この四つの島、この自然、この山や川、この森や草や生き物、町や村や、
 先人の住み残した遺跡と一体なんです。」(下・田所博士の言葉)

 中盤からは怒涛の展開でした。一度読み始めたら、なかなか本を置けません。
 私は遅すぎました。もっと早くに、この本を読んでおくべきでした。

 私が小学生の頃、日曜日の20時からドラマ「日本沈没」を見るのが楽しみでした。
 あの頃すでにこの本は、大ベストセラーとなっていました。

 余談ですが「日本沈没」は、刊行の翌年に日本推理作家協会賞を受賞しています。
 推理小説としては、タイトルがいきなりネタバレなんですけどね。

 なお、作者が本当に書きたかったのは、沈没後の日本人の在り方なのだそうです。
 続編が出たのはようやく2006年。谷甲州との共著でした。私はまだ読んでません。


日本沈没 第二部〔小学館文庫〕 (上)

日本沈没 第二部〔小学館文庫〕 (上)

  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2008/06/06
  • メディア: 文庫



日本沈没 第二部〔小学館文庫〕 (下)

日本沈没 第二部〔小学館文庫〕 (下)

  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2008/06/06
  • メディア: 文庫



 また、一色登希彦によるコミック版も出ています。


日本沈没 全15巻 (ビッグコミックス) [マーケットプレイス コミックセット]

日本沈没 全15巻 (ビッグコミックス) [マーケットプレイス コミックセット]

  • 作者: 小松 左京 一色 登希彦
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • メディア: コミック



 さいごに。(布マスク、注文してから1か月以上)

 妻が、ネットで布マスクを注文したのは2月の下旬で、当時3週間待ちでした。
 ところが、いつまで待っても届かず、ようやく4月になってから届いたのです。

 すでにもう待ちきれずに、家で布マスクを手作りした後でした。
 無かったら自分で作る。そういう昔ながらの姿勢がだいじですね。

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はかない人生 [20世紀ラテンアメリカ文学]

 「はかない人生」 J・C・オネッティ作 鼓直訳 (集英社・世界文学全集82)


 人生に行き詰った男が、空想世界に逃避しながら、現実世界を生きていく物語です。
 現実と空想が交差する実験的小説で、ラテンアメリカ文学ブームの先駆的作品です。


世界文学全集〈82〉アストリアス.オネッティ (1981年)大統領閣下 はかない人生

世界文学全集〈82〉アストリアス.オネッティ (1981年)大統領閣下 はかない人生

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2020/03/11
  • メディア: -



 広告代理店に勤めるブラウセンは、妻ヘルトルディスと結婚して5年がたちました。
 妻が片方の乳房を切除する手術をしてから、夫婦の関係は冷え切っていました。

 仕事上で頼まれた映画のシナリオは、空想するだけで、なかなか書き出せません。
 とうとう会社はクビになってしまい、ヘルトルディスとは別居してしまいました。

 ブラウセンは、自分が空想する映画の世界へ、たびたび没入するようになりました。
 また、アルセという偽名を使って、隣の部屋の娼婦ケーカと関係を持ち始めました。

 空想の中の田舎医師と、アルセとしての偽りの生活が、比重を増していきました。
 ブラウセンは痛感します。自分の生活は、空っぽの鋳型でしかないと・・・

 人生ははかない / 愛がちょっぴり / 夢がちょっぴり / そしてボンジュール
 人生ははかない / 希望がちょっぴり / 夢がちょっぴり / そしてボンソワール
 (第Ⅰ部22章「人生ははかない」からマミーの歌)

 後半の第Ⅱ部に入ると、現実の世界と空想の世界が、本格的に交差し始めます。
 どちらが本当の世界なのか? と思わせるところに、この小説の面白さがあります。

 さらにケーカの部屋で事件が起こると、なんだかすべてが夢のように思えてきます。
 主人公ブラウセンの行動の動機が、いまひとつよく理解できません。

 どうしてケーカを殺したいのか? どうしてエルネストをかばうのか?
 アルセとしての生活も、本当は頭の中の妄想だったのではないかと、思えてきます。

 ところで、ディアス・グレイとエレーナ・サラの物語の後半が分かりませんでした。
 いつのまにか二人で、ある男を追い始めていたけど、どういう展開だったのか?

 途中、話の内容が朦朧としてきたように感じたのは、私だけでしょうか。
 物語の展開がうまく呑み込めなくて、わけがわからないまま終わってしまいました。

 時々出て来る意味不明の言葉にも苦戦しました。(たとえばP467)
 「人生は自分そのものであり、自分自身は他人である。」って、どういうこと?

 なお、「はかない人生」は集英社文庫でも出ていました。カバーイラストは秀逸。
 現在は絶版なので、私は集英社の世界文学全集で読みました。古本を買えたので。


はかない人生 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)

はかない人生 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1995/03/17
  • メディア: 文庫



 さいごに。(パソコン無料診断)

 某パソコンショップで、18000円相当のケアが無料だと言うので、行ってきました。
 ところが、ウィルスが入っていたことが判明。その駆除に1万円以上かかるという。

 さらに、店員の勧めるままにメモリを交換したりすると、6万円ほどになるらしい。
 なるほど、そういうことか。中古で4万円のPCなので、何もしないで帰りました。
 ちなみに、店員は親切で、ウィルス駆除方法を教えてくれたので、家でできました。

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グアテマラ伝説集 [20世紀ラテンアメリカ文学]

 「グアテマラ伝説集」 M・A・アストゥリアス作 牛島信明訳 (岩波文庫)


 西欧的な合理主義とはかけ離れた、古代マヤの世界観を反映した幻想的な物語集です。
 1930年に出したことで、アストゥリアスは、魔術的リアリズムの開祖となりました。


グアテマラ伝説集 (岩波文庫)

グアテマラ伝説集 (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2009/12/16
  • メディア: 文庫



 アストゥリアスはグアテマラにおいて、白人の父とインディオの母から生まれました。
 政権ににらまれた父が判事の職を追われたため、一家は祖父の住む田舎へ移りました。

 アストゥリアス少年は、そこでインディオたちと交流し、マヤ神話を知りました。
 この体験があったからこそ、のちにパリへ脱出した彼は、マヤ神話を研究したのです。

 そして、マヤの神話や伝説を取り入れて創作されたのが、「グアテマラ伝説集」です。
 フランス語版を読んだヴァレリーが、「熱帯の悪夢」と言って絶賛したのは有名です。

 「そして一人ぼっちになった時、彼はあの『言葉』—ある世紀に、幾世紀も続いた1日
 があった—を生きたのだ。
  終始真昼である1日、夕暮れも曙もなく澄みわたった、無垢の結晶の1日。」

 以上は、「火山の伝説」からの一節です。「幾世紀も続いた1日」という表現がいい。
 まさに、「魔術的」です。こういう不思議で魅力的な語句が、至る所で見られます。

 というか、こういう魔術的な文章ばかりが、「これでもか」と積み重ねられています。
 だから、読んでいて頭がくらくらします。結果、非常に難解な作品となっています。

 かろうじて大筋を理解したのは、「火山の伝説」と「大帽子の男の伝説」の二作です。
 しかしどちらも、「どうしてそうなるの?」「だから、何?」と言いたくなりました。

 一方、腹が立つほど分からなかったのが、「ククルカン――羽毛に覆われた蛇」です。
 これは戯曲ですが、そのひどさは言葉にできません。冒頭部は、こんな感じです。

 ククルカン :わたしは太陽のごときもの!
 グワカマーヨ:クワック?
 ククルカン :わたしは太陽のごときもの!
 グワカマーヨ:クワック?…クワック?
 ククルカン :わたしは太陽のごといもの!
 グワカマーヨ:アククワック、クワック?
 ククルカン :わたしは太陽のごときもの!
 グワカマーヨ:あなたは太陽だ、アククワック、

 この冒頭で面喰い、私は結局この作品を投げ出しました。
 これと似たネタが一つあります。ドリフのコント、しむらの「耳の遠い神様」です。

 カトちゃん:あなた、神様でしょ?
 し む ら:なんだって?
 カトちゃん:あなた、神様でしょ?
 し む ら:なんだって?
 カトちゃん:あなた、神様でしょ?
 し む ら:とんでもねえ! あたしゃ、神様だよ!

 (先日コロナによる肺炎で亡くなった志村けんさんの、ご冥福をお祈りいたします。
 私たち世代にとっては、笑いの神様的存在でした。)

 こういう具合なので、「グアテマラ伝説集」は誰にでも勧められる本ではありません。
 図書館で「『大帽子の男』の伝説」を読んで、興味を持ったら借りてください。

 アストゥリアスは、こののちグアテマラに帰り、「大統領閣下」を執筆し始めます。
 「大統領閣下」は、「グアテマラ伝説集」に比べて、とても読みやすくて面白いです。

 さいごに。(笑いの師匠Oさん)

 職場にOさんという人がいて、この人のダジャレが私の笑いのツボにはまっています。
 Oさんの言ったダジャレを、時々家で話すのですが、妻と娘は全く笑ってくれません。

 職場でも、本当に心から笑っているのは、私だけのようだと、最近気付きました。
 というか、本気で笑っている私を見て、笑っている人もいるような・・・

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