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リンボウ先生の書斎のある暮らし [読書・ライフスタイル]

 「リンボウ先生の書斎のある暮らし」 林望 (知恵の森文庫)


 書斎とはライフスタイルだと言う著者が、書斎についてのこだわりを語っています。
 副題は「知のための空間・時間・道具」。様々な視点から論じています。


リンボウ先生の書斎のある暮らし~知のための空間・時間・道具~ (光文社知恵の森文庫)

リンボウ先生の書斎のある暮らし~知のための空間・時間・道具~ (光文社知恵の森文庫)

  • 作者: 林 望
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/07/28
  • メディア: Kindle版



 著者は書斎を「何かをつくり出すための空間」と定義します。つまり創造の場です。
 学問に限らず趣味でも何でも、ひとりで何か創造的な行為をする場だと言います。

 ところが、そういう自分一人の秘密の場所を、男も女も結婚した途端に失います。
 だから、結婚と同時に精神生活が退化しないよう、自分だけの空間を持つべきです。

 書斎はライフスタイルです。そこでの過ごし方次第で、人生ははるかに充実します。
 「人生はまさに一度きりだけど、二重三重に生きることができる」・・・

 書斎というものに対するこだわりと愛を、リンボウ先生こと林望が語ります。
 幸い私は、結婚直前にこの本(当時は新初版)と出会い、大きな影響を受けました。

 その第一の最も大きな影響は、なんといっても結婚当初から書斎を持ったことです。
 当時は2LDKの借家住まいでした。我儘を許してくれた妻には感謝しきれません。

 今から15年前に家を建てたときも、もちろん、書斎を持つことを最優先しました。
 さらに、書斎の壁一面に書棚を手作りし、その後もう半面まで書棚を増設しました。

 ではいったい、私はそこでどんな創造的行為をしているのでしょうか?
 これは自信をもって言えます。このブログを書いているのです!

 もし書斎が無かったら、ブログを始めようという発想も無かったと思います。
 自分ひとりになって落ち着ける場所があるからこそ、ブログも書けるのです。

 このブログを書くようになってから、私の人生ははるかに充実してきました。
 お金のための仕事のほか、自分のための仕事(ライフワーク)を持てたからです。

 この「ライフワークを持つ」ということが、私はとても大事なことだと思います。
 ライフワークがあることで人生に張りが出て、お金のための仕事も頑張れるのです。

 第二の影響は、趣味に対する見方が変ったことです。
 次のような文を読んで、趣味だからこそ真剣に行おう、と考えるようになりました。

 「何の道でも、本当にプロになれるかというくらいまでやっているからこそ、趣味
 としても楽しいのだというのが、私の以前からの主張です。」(P249)

 「趣味は、懸命に取り組むと、趣味以上のものとなり、そうなって初めて、本当の
 意味での趣味になるのだ」(P256)

 私の趣味で真っ先に浮かぶのは、陸上競技です。(書斎とは関係なくなりますが)
 その影響もあって、40代前半の頃は、マスターズ陸上で優勝していました。

 しかし、仕事で重要な部署を任されるようになると、なかなか時間が取れず・・・
 今では細々続けるだけですが、「100歳で世界新記録」という夢は捨てていません。

 ほかにもメモの取り方とか、出世を諦めるとか、面白い話が盛りだくさんです。
 書斎を糸口に、ライフスタイルを提案していて、実に深い内容になっています。

 ところが、この本が絶版となって久しい。理由ははっきりしています。
 「6章パソコンの使い方」など、古い情報がたくさん入っているからです。

 フロッピーがどうの、マッキントッシュがどうの、という話は当時は新鮮でした。
 皮肉にもそういう部分こそが、この本を古ぼけたものにしてしまったのです。

 さて、林望は書斎だけでなく、住宅にもこだわりを持っています。
 新築したとき、「思想する住宅」「思い通りの家を造る」などを参考にしました。


思想する住宅 (文春文庫)

思想する住宅 (文春文庫)

  • 作者: 林 望
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/02/06
  • メディア: 文庫



思い通りの家を造る (光文社新書)

思い通りの家を造る (光文社新書)

  • 作者: 林 望
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/03/14
  • メディア: Kindle版



 さいごに。(娘も三度目を打ちました)

 娘も先日の土曜日に、大規模会場でワクチンを接種しました。ファイザーでした。
 ファイザーでしたが、翌日はちゃんと副反応が出て39度近くまで熱が上がりました。
 (さすが、若い人は違う!)

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狂気の山脈にて2 [20世紀アメリカ文学]

 「狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選」
 H・P・ラヴクラフト作 南條竹則編訳 (新潮文庫)


 タイトル作や「時間からの影」など、重要なクトゥルー神話を含む作品集です。
 前作「インスマスの影」に続く、「クトゥルー神話傑作集」の第二弾です。
 「インスマスの影1」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-11-30
 「インスマスの影2」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-12-03


狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選 (新潮文庫)

狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選 (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/11/28
  • メディア: 文庫



 南極の探検隊が、人類誕生前の超古代文明を発見する「狂気の山脈にて」は傑作です。
 クトゥルー神話を語るうえで外すことができません。すでに前回紹介しました。
 「狂気の山脈にて1」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2022-04-22
 
 「時間からの影」も「狂気の山脈にて」同様、クトゥルー神話上の重要作品です。
 5年間記憶を失っていたピーズリー教授が、当時の自分を調査するという物語です。

 ピーズリー教授はあるとき記憶をすべて失い、同時に全く別の人格が現れました。
 もとに戻ると夢を手掛かりに、わが身に起こったことを次のように解釈しました。

 未知の領域から侵入したはるかに優れた知性が、自分を乗っ取っていたのだと。
 そしてその間、自分は時空を超えて、彼ら「大いなる種族」の体の中にいたのだと。

 「『大いなる種族』の身体は高さ十フィートの巨大な皺の寄った円錐体で、その頂部
 から伸び広がる太さ一フィートの膨張性の肢に、頭や他の器官がついていた。」(P336)

ダウンロード (2).jpg

 しかしそれは、結局ただの夢だったのではないか?
 ところが、オーストラリアの遺跡で彼が見たものは・・・ラストにハッとします!

 「ランドルフ・カーターの陳述」は、墓地における恐怖体験です。
 親友ウォレンは何を見たのか? 彼の身に何が起こったのか?

 ランドルフ・カーターは、この作品をはじめ、5回にわたって登場するそうです。
 彼はまた、夢を介して異世界に行くという特殊能力を持つのだそうです。

 「ピックマンのモデル」は、奇怪で妖しい絵を描く画家ピックマンの物語です。
 「恐怖も現実を見て描かなくては」と言う彼は、いったい何をモデルにしたのか?

 「エーリッヒ・ツァンの音楽」は小品ですが、たいへん印象に残る作品です。
 「私」が大学時代に出会った、エーリッヒ・ツァンというヴィオール弾きの話です。

 異様で妖しい音楽を奏でるツァンは、窓の外にある何かに怯えているようなのです。
 そしてある夜、外から美しい音が響くと、彼は狂ったように弾き始めて・・・

 「ダゴン」は、「インスマスの影」との関連がありそうな「半魚人もの」です。
 ボートで座礁した「私」が、そこで見た一本石には、奇妙な浮き彫がありました。

 「水掻きのついた手と足、ゾッとするほど幅広く、たるんだ唇、どんよりした突き出
 した眼、(中略) それでも全体の輪郭はいやらしくも人間の形をしていた。」・・・

 ほか、「猟犬」「祝祭」など、恐ろしい物語ばかりです。
 しかし、現実的に本当に恐ろしいのは、新型コロナウィルスだったりします。

 ところが、「新型コロナはでっちあげでワクチンは毒だ」と信じている人もいます。
 本当に恐ろしいのは、我々人間の迷妄なのかもしれません。

 ところで、ラヴクラフトのマニアは、創元推理文庫版の全集を読むのだそうです。
 私も少し読んでみましたが、訳が古いせいか、新潮文庫よりも読みにくかったです。


ラヴクラフト全集 1 (創元推理文庫)

ラヴクラフト全集 1 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/10/25
  • メディア: Kindle版



 さいごに。(トレンド転換か)

 先日モデルナを打った同僚が、副反応が何も出なかったと言って自慢していました。
 周囲の仲間たちも「すごいねー」と称賛していました。

 まさか、トレンドが転換していたとは。今は副反応が出ないことか自慢になるとは。
 そうとは知らず、まじめに副反応を求めていた私は、なんと愚かだったことか!

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狂気の山脈にて1 [20世紀アメリカ文学]

 「狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選」
 H・P・ラヴクラフト作 南條竹則編訳 (新潮文庫)


 タイトル作で代表作の「狂気の山脈にて」は、ラヴクラフトには珍しい中編小説です。
 そのほか「時間からの影」など、重要なクトゥルー神話を含む怪奇幻想小説集です。


狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選 (新潮文庫)

狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選 (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/11/28
  • メディア: 文庫



 「狂気の山脈にて」は、地質学者ダイアー教授の手記という形をとっています。
 ダイアー教授は探検隊の隊長として、化石を採集するために南極にやってきました。

 ところが、別動隊を率いる生物学者のレイク教授が、とてつもない発見をしました。
 未知なる黒い山脈の洞窟の中で、見たこともない奇怪な化石を見つけたのです。

 ヒトデのような形の頭部を持ち、巨大な植物を思わせる姿だったと言うのです。
 しかも背中には羽があり、古代神話で語られる「最先のものら」を思わせたと。

 その中で、無傷で残っていた八体を、レイクがキャンプで解剖を試みたところ・・・
 その後、レイクからの連絡は途絶え、ダイアーは救援に向かいますが・・・

 ダイアーが漆黒の山脈の上で見たものは? レイクのキャンプで見たものは?
 レイクたち隊員に何があったのか? あの奇怪な化石は何だったのか? 

 読み応え充分です。非常に面白かったのですが、非常に疲れました。
 物語の恐怖と、うねるような独特の文体が、我々読者の神経を消耗させます。

 200ページ弱の中編なので、それほど長くはないのですが、とても長く感じました。
 特に緻密な描写が続く場面は、頭の中で想像するのがたいへんでたいへんで・・・

 ところが、「狂気の山脈にて」をもっと手軽に楽しめる方法があるのです。
 ビームコミックスから全4巻で出ているのです。これが本当にすばらしかった!


狂気の山脈にて ラヴクラフト傑作集 コミック全4巻完結セット (ビームコミックス)

狂気の山脈にて ラヴクラフト傑作集 コミック全4巻完結セット (ビームコミックス)

  • 作者: 田辺 剛
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/08/01
  • メディア: 単行本



 レビューの評判が非常に良かったので購入しました。なんといっても絵が良い。
 とてもイメージ湧きました。「百聞は一見にしかず」とはよく言ったものです。

狂気の山脈にて1.jpg
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 私はこの作品で田邊剛を知りました。
 代表作は「ラヴクラフト傑作集」です。シリーズ全作を読みたいです。

 この作品はみんなにおすすめしたい。
 と思ったら、岡田斗司夫がユーチューブで紹介していました。



 さいごに。(友達ができた)

 娘に友達ができたと言う。よかった。
 近くの席にイケメン君がいると言う。次はイケメン君と仲良くなるのが目標だな。

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「現代の国語」「言語文化」(娘の教科書) [その他・雑感]

 「現代の国語」「言語文化」(大修館)


 さて、年度初めの冗談みたいな忙しさは、今週の木曜日までがピークでした。
 睡眠時間を4時間は取ろうと努力しましたが、水曜日は3時間しか取れませんでした。

 まったく本が読めなかったので、高校生になった娘の国語の教科書について書きます。
 娘の高校では、大修館の「現代の国語」と「言語文化」を使用しています。

 実は、国語がこのような二科目の編成になるのは、今年度の高校1年生からなのです。
 昨年までの高校生は「国語総合」という4単位(週4時間)の科目をやっていました。

 「国語総合」の中には、現代文と古文と漢文がありました。だから「総合」なのです。
 そして、現代文には、実用的な文章もあれば、文学的な文章もありました。

 ところが、今年から始まった二科目は、内容が実にアンバランスなのです。
 「現代の国語」で扱えるのは現代文だけで、しかも文学的な文章はダメだからです。

 実際に娘の「現代の国語」を見てみると、評論文や解説文や実用的な文章ばかりです。
 そして、所々に国語表現的取り組みが、ページ数稼ぎのように差し込まれていました。

 逆に、「言語文化」では、現代文も古文も漢文も扱うことになっています。
 さらに現代文では、小説などの文学的な文章のほか、評論文なども扱えるのです。

 実際に娘の「言語文化」を見てみると、以前の「国語総合」の凝縮版のようでした。
 現代文は、「羅生門」や「夢十夜」はもちろん、評論も詩も短歌も入っていました。

 古文は、今昔物語集、徒然草、枕草子、和歌、伊勢物語、平家物語、土佐日記・・・
 漢文は、論語、孟子、故事成語、十八史略、李白、杜甫、韓愈、「人面桃花」・・・

 つまり「言語文化」には、これまで日本人が大切にしてきた教養が詰まっています。
 日本人特有の情緒や伝統文化の理解は、「言語文化」を通して学ぶことができます。

 ということで、思い切って言いましょう。
 「現代の国語」は内容が薄い! 「言語文化」は内容が濃すぎ!

 これは、実際に教科書のページ数に、露骨に表われています。
 「現代の国語」は274ページ。「言語文化」は354ページ。差がありすぎですよ。

 しかし、これをどちらも2単位(週2時間)ずつ行うのです。先生は困るでしょう。
 きっと、「現代の国語」の時間は余って、「言語文化」の時間は足りなくなります。

 ここで思い出すのは、昨年話題になった、第一学習社の国語教科書検定問題です。
 第一学習社の「現代の国語」は、5編の文学作品を載せながら検定に合格しました。

 文学作品を除くはずの「現代の国語」に、「羅生門」も「夢十夜」も入っています。
 これによって第一学習社は教科書採用数でトップとなり、他社は怒っているのです。

 「話が違うだろう」と言って、批判は文部科学省と第一学習社に向けられました。
 「正直者がバカを見た」ということも言われました。しかし本当にそうでしょうか?

 私は、第一学習社は、現場の要望にしっかり応える仕事をしたと思っています。
 検定不合格のリスクをとっても、先生や生徒のために挑戦をしたのだと思います。

 その結果、多くの現場に受け入れられました。
 それは、第一学習社の企業努力の成果だと思います。

 そういう努力や挑戦をしなかった出版社が、つべこべ言うべきではありません。
 むしろ自分たちの怠慢(と言ったら言い過ぎでしょうか)を反省すべきでしょう。

 さて一方、この教科書を検定で合格させた文科省も、えらいと私は思っています。
 彼らは、今回の学習指導要領がろくでもない間違いだったと、素直に認めました。

 だからこそ罪滅ぼしに、少しでも現場の役に立つことをした、と私は見ています。
 つまり、自分たちの過ちにいちはやく向き合い、軌道修正しようとしたのです。

 いまだに「ゆとり教育はまちがっていない」と言っている、あの頑固な文科省が。
 おそらく、現在の文科省の方々は非常に器の大きな人たちだと、私は思います。

 チャレンジした第一学習社もあっぱれ。
 それを認めた文科省もあっぱれ。

 私もひとりの親として、第一学習社で学ばせたかったと、思ってしまいました。
 「現代の国語」で「羅生門」と「夢十夜」をやれば、「言語文化」に余裕が・・・

 我々文学愛好家は、「言語文化」の授業をたくさんやってほしいと願うからです。
 (やれやれ、つい熱くなってしまった。また寝るのが遅くなった・・・)

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知性の磨きかた [読書・ライフスタイル]

 「知性の磨きかた」 林望(はやしのぞむ) (PHP新書)


 「学問」「読書」「遊び」について、講話形式で書かれた知的生活の入門書です。
 著者はリンボウ先生こと林望。板坂元、渡部昇一と並ぶ、私の知的生活の師匠です。


知性の磨きかた (PHP新書)

知性の磨きかた (PHP新書)

  • 作者: 林 望
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 1996/11/05
  • メディア: 新書



 知性とは何か? それは、自分なりの「学問の方法」を身につけていることです。
 「物知り」になるのではなく、物を知る方法を身につけることが大事なのです。

 「まず絶対に一つのことに邁進しなさい。しかも十年間一つのことをじっくりと修
 行して、揺るぎない方法というものを身につけなさい。それによって将来、どうい
 うふうにでも応用がきくから」(P22)・・・

 というように、三日間の講話形式で書かれているので、親しみやすいです。
 第一日「学問の愉しみ」、第二日「読書の幸福」、第三日「遊びは創造」。

 話は「学問の方法」から「読書法」に移ります。
 そして第二日の「読書の幸福」が、私にとっては断然に面白かったです。

 たとえば、読んだ本は書棚に並べ、背表紙を見られるようにしておけと言います。
 確か、齋藤孝なども、同じことを言っていました。私もまったく同感です。

 「書物がそこに存在して、ここにあるよ、ということを主張する、それは読書の、
 もう一つの非常に大切な要素だと私は思うんです。」(P131)

 「自分が読んで面白かったなあという本が書棚にたまっていくということは、その
 人の人生の軌跡なんですね。」(P135)

 このように、読書と本と書棚、さらに書斎は、切っても切れない関係にあります。
 これが、林望の「書斎の造りかた」「思い通りの家を造る」につながっていきます。


書斎の造りかた―知のための空間・時間・道具 (カッパ・ブックス)

書斎の造りかた―知のための空間・時間・道具 (カッパ・ブックス)

  • 作者: 林 望
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2022/04/10
  • メディア: 新書



思い通りの家を造る (光文社新書)

思い通りの家を造る (光文社新書)

  • 作者: 林 望
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/03/14
  • メディア: Kindle版



 また、本はすすんで汚すべし、と言っています。これも齋藤孝と同じ主張です。
 本というのは、線を引いたり書き込みをしたりすると、よく理解できるものなのです。

 「そのよれよれになった本こそ尊いわけです、自分にとっては。なにかいっぱい線や
 なんか引いてあってね、自分の感想やなんか書き込んである。それこそほんとうに自
 分の血となり肉となっている本なんです。」(P154)

 実際、手元にある私の本も、傍線が引いてあるうえに、蛍光ペンも引いてあります。
 さらに所々にフセンが貼り付けてあるので、短時間に読み返すことができるのです。

 さて、最後は「遊び」の話になるのですが、学問を本質的には遊びだと言います。
 遊びだからこそ、そこに一生をつぎ込んでも悔いがないのだと。なるほど!

 そのほか、細々とした知識よりも自分の中に一つの筋道を見つけることが大事とか、
 趣味はプロと同じ努力と腕前があって面白くなるとか、興味深い指摘が多いです。

 ところで、齋藤孝もまた「知性の磨き方」という本を、新書で出しています。
 知性とは自分で考えることであり、そのためには良い本を読め、と述べています。


知性の磨き方 (SB新書)

知性の磨き方 (SB新書)

  • 作者: 齋藤 孝
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2017/01/06
  • メディア: 新書



 さいごに。(冗談のように忙しい)

 年度初めはいつものことですが、忙しいです。まるで冗談のように忙しいです。
 平日は仕事を遅くまでやっても終わらず、金曜日に多くの仕事を持ち帰りました。

 しかし土日は別口の出張だったので、持ち帰った仕事をしたのは日曜日の夜でした。
 というわけでブログの更新は2日遅れ。本は昔読んだ本ですが、絶対オススメです。

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消えた心臓/マグヌス伯爵 [20世紀イギリス文学]

 「消えた心臓/マグヌス伯爵」
 モンタギュー・ローズ・ジェイムズ作 南條竹則訳 (光文社古典新訳文庫)


 「英国が生んだ最高の怪談作家」の第一短編集「好古家の怪談集」から、八編です。
 作者は中世写本の研究家です。余技で書いた怪談で多くの作家に影響を与えました。


消えた心臓/マグヌス伯爵 (光文社古典新訳文庫)

消えた心臓/マグヌス伯爵 (光文社古典新訳文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2020/06/10
  • メディア: 文庫



 冒頭の「聖堂参事会員アルベリックの貼込帳」から、独特の世界に引き込まれます。
 ある英国人が、写本を手に入れたことによって起こる怪奇現象についての物語です。

 英国人デニストンは、サン・ベルトラン教会を訪れ、多くの写真を撮っていました。
 時々奇妙な声が聞こえました。そして、案内の男は何かを隠しているようなのです。

 その後、案内の男に誘われて彼の家に行き、中世の貴重な写本を見せられました。
 そこには恐ろしい怪物が描かれており、彼は写本を非常な安値で譲り受けて・・・

 この物語の続編的な作品が「銅版画」で、ブリットネル氏の出会った絵画の話です。
 何の変哲もないように見えたその絵は、時間とともにわずかな変化をして・・・

 タイトルにもなっている「消えた心臓」は、ジェイムズらしいゴシック的物語です。
 孤児を引き取る慈善家の男の、ひそかな野望と悲劇を描いています。

 アブニー氏は、引き取った孤児を使って、何をしようとしていたのか?
 彼の異教徒研究は、どのようなものだったのか? そして彼はなぜ死んだのか?

 もう一つのタイトル作「マグヌス伯爵」は、ジェイムズの作品では比較的有名です。
 恐怖体験をする中世写本の研究家ラクソール氏は、作者ジェイムズと重なります。

 ラクソールは、スウェーデンの名門貴族マグヌス伯爵について調査をしています。
 その中で、伯爵が「黒の巡礼」に出て何者かを連れ帰ったということを聞きました。

 また、残された本の中に、「黒の巡礼」と題する伯爵の書き込みを見つけました。
 「何人か長命を望まば、忠実なる使者を得、敵の血を見ることを望まば・・・」

 翌日、ラクソールは霊廟に入り、伯爵の棺を見ました。
 そこには、怪物じみた者が、男を追いかけている情景が、彫り込まれていました。

 興味を持ったラクソールは、思わず伯爵に呼びかけてしまいます。
 伯爵に呼びかけるたびに、棺を留めている南京錠が、一つずつ外れていき・・・

 「若者よ、口笛吹かばわれ行かん」もまた、ジェイムズの中では有名な作品です。
 パーキンズ教授は、旅先で聖堂騎士団の遺跡を訪ね、青銅の笛を掘り出しました。

 その笛には「来るは誰ぞ?」という意味の文字が刻まれていました。
 何が来るというのか。パーキンズはそれを吹いてみたところ、強風がおこり・・・

 ほか、無いはずの十三号室が突如出現する「十三号室」、修道院長の残した宝を探
 して恐ろしい目に合う「トマス修道院長の宝」など、味わい深い怪談ばかりです。

 さて、M・R・ジェイムズは、イギリス怪奇小説の三巨匠のひとりです。
 あとの2名は、ブラックウッドとアーサー・マッケン。

 ブラックウッドは、すでに二回紹介しました。
 「人間和声」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2016-09-18
 「秘書綺譚」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2016-07-01-4

 アーサー・マッケンについては、まだ一度も読んでいません。
 古典新訳文庫から、同じく南條竹則の名訳で「白魔」が出ています。


白魔 (光文社古典新訳文庫)

白魔 (光文社古典新訳文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/02/01
  • メディア: 文庫



 ところが、「アーサー・マッケンと言えば平井呈一訳だよ」と言う人も多い。
 平井呈一の訳もまた、多くの怪奇幻想小説ファンから、根強い支持を受けています。


恐怖 (創元推理文庫 F マ 1-3)

恐怖 (創元推理文庫 F マ 1-3)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2021/05/19
  • メディア: 文庫



夢の丘 (創元推理文庫)

夢の丘 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1984/09/26
  • メディア: 文庫



 どちらも読んでみたいです。しかし、年度初めでやたらと忙しくて・・・
 ああ、読みたい本ばかりが増えていく。読む時間は無いというのに。

 さいごに。(ついていけない)

 娘の高校では、入学前から数学の宿題が山のようです。しかも難しい。
 時々娘が苦戦しているので、私が教えようとするのだけど、教えられません。

 やっぱり高校の数学はたいへんですね。自分がまったく理解できません。
 数学で落ちこぼれてしまった、自分の高校時代を思い出してしまいました。

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幕間(まくあい) [20世紀イギリス文学]

 「幕間」 ヴァージニア・ウルフ作 片山亜紀訳 (平凡社ライブラリー文庫)


 野外劇が上演される日の、オリヴァー家の様子を、スケッチ風に描いた物語です。
 ヴァージニア・ウルフの遺作で、ウルフはこの作品の出版を待たずに自殺しました。


幕間 (平凡社ライブラリー)

幕間 (平凡社ライブラリー)

  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2020/02/13
  • メディア: 文庫



 1939年のある日、オリヴァー家では野外劇の上演の準備をしていました。
 オリヴァー家の人々や客人や使用人たちの様子が、スケッチ風に描かれています。

 やがて、劇作家ミス・ラトロープによる野外劇が始まりました。
 それは、エリザベス朝時代からのイギリスの歴史を、順にたどっていくもので・・・

 とにかく最初は場面がコロコロ変わるため、流れに付いていくのがたいへんでした。
 私は、登場人物の名前がなかなか覚えられなくて、内容が頭に入ってきませんでした。

 「バート」というのは「バーソロミュー」の愛称で、オリヴァー家の長老のこと。
 「アイサ」というのは「イザベラ」の愛称で、バートの息子「ジャイルズ」の妻。
 「ルーシー」というのは「ミセス・スウィズン」のことで、バートの妹の老婦人・・・

 あるときは「バート」、あるときは「バーソロミュー」、あるときはただの「老人」。
 呼び名がいちいち変わるので、主語が分からなくて、理解するのがたいへんでした。

 しかも、途中で劇中劇が始まって、実在の人物と劇中の人物がごっちゃになりました。
 さらに、劇の途中から、なんだかわけが分からなくなるし。

 さて、「ある夏の夜、庭に面した窓をすべて開け放った大きな部屋で、彼らは屎尿溜
 めについて話していた。」(P9)、という印象的な一文で、この物語は始まります。

 屎尿溜め(しにょうだめ)、つまり肥だめの話から始まるのです。
 一瞬「ユーモア小説か」と思ってしまいますが、読んでみると実に暗い内容でした。

 その暗さはどこから来るかというと、なんとなく聞こえる戦争の足音からです。
 物語の1939年というのは、第二次世界大戦が始まる年なのです。

 「ヨーロッパ全土が—すぐ向こう側が—満身創痍で、(中略)『ハリネズミ』というパ
 ッとしない言葉が、ヨーロッパについての彼のイメージ、つまり無数の銃を突き立て
 られ、無数の飛行機が舞い飛んでいるというイメージを如実に表していた。」(P67)

 そして、我々はそのような状況に対して、何もできません。
 「ぼくたちはじっと座っているしかない」「ぼくたちは観客」(P74)・・・

 ウルフは、のどかな一日を描くことで、かえって我々の無力感を表したいようです。
 近づく戦争に対して何もできない無力感を。しかし、私が分かったのはそれだけ。

 ウルフがこの作品に託した思いは?
 タイトル「幕間」に込められた意味は?

 そういうことが私には、まったく分かりませんでした。
 ところが、ユーチューブのスケザネさんの解説で、ようやくそれが分かりました。

 スケザネさんの解説は目からうろこです。本当にすばらしいので、おススメです。
 このブログで伝えられなかった作品の核心を、ぜひこの動画で理解してください。


 
 さいごに。(結婚20周年)

 先日20回目の結婚記念日を迎え、結婚式のアルバムを見ながらケーキを食べました。
 お互いに「よく我慢してきたよね」と、いたわり合いながら食べました。(笑)

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