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ドグラ・マグラ1 [日本の近代文学]

 「ドグラ・マグラ(上)」 夢野久作 (角川文庫)


 病院に監禁されていた記憶喪失の青年にまつわる、奇怪な事件を描いた物語です。
 1935年刊行。日本探偵小説の三大奇書のうちのひとつです。カバーがすばらしい。


ドグラ・マグラ(上) (角川文庫 緑 366-3)

ドグラ・マグラ(上) (角川文庫 緑 366-3)

  • 作者: 夢野 久作
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 1976/10/13
  • メディア: 文庫



 ある日、目覚めた「私」は監禁されていて、自分の名前さえ思い出せませんでした。
 部屋にも見覚えがありません。すると隣から、痛々しい女の声が聞こえてきました。

 「お兄さま、お隣の部屋にいらっしゃるお兄様」「あたしです。お兄様の許嫁だった」
 「結婚式を挙げる前の晩の真夜中に、お兄様のお手にかかって死んでしまったのです」

 やがて若林という巨大な紳士が現れ、ここが九州大学精神病科の七号室だと言います。
 そして「私」が、狂人の解放治療という実験の研究材料となっていると言うのです。

 「私」の記憶が戻ったときには、空前絶後の犯罪事件の真相が分かるのだそうです。
 その事件は、ある青年が従妹との結婚式の前の晩に、相手を絞殺したというものです。

 「私」は、自分を思い出させるために、病院の中のある部屋に連れて行かれました。
 さまざまな資料の中に、「ドグラ・マグラ」という原稿があって・・・

 「私」は誰なのか? なぜ記憶がないのか? なぜ病院にいるのか?
 隣の少女は何者なのか? 若林教授はいったい何をしたかったのか?

 「この小説を読破したものは、必ず一度は精神に異常をきたす」と言われています。
 ある意味その通りです。読み始めたら続きが気になって、気が狂いそうになりました。

 ところが、上巻を読み終えても、少しも謎が解けていないのです。
 どういうことなのか気になって気になって、気が狂いそうになっています。

 謎の解明のヒントは、若林教授の前任者である正木教授の残した文書にあるようです。
 「胎児の夢」「遺言書」など6つの文書があり、作品の半分ほどを占めています。

 中でも「胎児の夢」という論文は、非常にユニークで印象に残りました。
 それは、胎内の胎児は10か月の間、数十億年の生物進化を夢に見る、というものです。

 そして胎児は、先祖の行ったさまざまな体験を、記憶として持っているというのです。
 このことは、「私」の事件の謎の解明において、とても重要な伏線となっています。

 また「遺言書」は、正木教授が自殺の理由を、映画のシナリオ風に説明したものです。
 「呉一郎」という名前が、実母と許嫁を絞殺した嫌疑者として、初めて登場します。

 そして、どうやら「呉一郎」は、物語の主人公「私」のことのようなのです。
 さらに、許嫁の「モヨ子」というのは、隣の部屋にいる少女のことのようなのです。

 しかし、あくまでも「そのよう」なのであり、はっきりしたことが分かりません。
 ふと気が付くと読者も「私」同様、犯人は自分じゃないかと考えてしまう仕掛けです。

 さて、正木教授の6文書のうち、もっとも読みにくいのが最初の「アホダラ経」です。
 「チャチャラカ、チャカポン」のリズムで、ぐじゃぐじゃと30ページ以上続きます。

 この部分で挫折する人が多いのだそうですが、実は効果的な攻略法があります。
 それは、ユーチューブの朗読を2倍速で聞きながら読む、という方法です。

 この朗読は、とてもうまいです。特に「アホダラ経」は節回しがすばらしいです。
 ぜひ聞いてください。「アホダラ経」は、5:11:40(5時間11分40秒)から始まります。

 ちなみにこの朗読をすべて聞くと、26時間以上になります。2倍速でも13時間です。
 語りの西村俊彦さん、よくぞやってくれました。本当にいい仕事をしています。



 最後になりましたが、「ドグラ=マグラ」について、次のような説明がありました。
 「切支丹伴天連の使う幻魔術のことを言った長崎地方の方言だそう」と。(P93)

 さいごに。(300m走)

 記録会で、300m走という種目に出ました。炎天下の中で走りました。
 タイムは41秒70。40秒ジャストを狙っていましたが、だいぶ甘かった!

 最近、おなかのたるみと、足腰の弱体化が、とても気になっています。
 もう少し体を絞って、脚力をつけて、せめて40秒台で走れるようにしたいです。

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