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インターステラー [21世紀アメリカ文学]

 「インターステラー」 グレッグ・キイズ作 富永和子訳 (竹書房文庫)


 人類を滅亡から救うため、ワームホールを通り別の銀河を探査する者たちの物語です。
 2014年のクリストファー・ノーラン監督の映画は、視覚効果が評判になりました。


インターステラー (竹書房文庫)

インターステラー (竹書房文庫)

  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 文庫



 舞台は、異常気象による食糧難で、人類が滅亡の危機に瀕している近未来です。
 主人公のクーパーは農場主ですが、元はNASAの宇宙飛行士兼エンジニアでした。

 砂嵐の日に床の砂粒が形成した線状模様は、重力波で作った暗号のようでした。
 クーパーがそれを解読してみると、それはある座標を指し示していたのです。

 クーパーと娘のマーフはそこを訪れて捕らえられました。そこは極秘の施設でした。
 そこはすでに閉鎖されたはずのNASAで、秘密裏にある計画が進められていました。

 その名も「ラザロ計画」。「ラザロ」は、キリストの力で蘇った男の名です。
 「ラザロは死からよみがえり・・・」「だが、そのまえに死ななくてはならなかった」
 (P82)

 プランAとプランB・・・その意味を知れば、「ラザロ計画」の意味も分かります。
 ブランド教授が死ぬ直前まで隠していた、ある事実とは・・・

 なぜワームホールは生じたのか? 何者がワームホールを生じさせたのか?
 人類が生き残る道はあるのか? クーパーはマーフとの約束を守れるのか?

 本当に面白いです。読み始めたら止まりません。
 そして話が壮大で、知的興奮があります。ブラックホール、ワームホール・・・

 なんといってもこの作品のすばらしいところは、科学的根拠があるという点です。
 特に映画版の作成には、理論物理学者のキップ・ソーンが関わっています。

 たとえば、1時間が地球での7年にあたるというミラーの星。(そんなのあるのか)
 しかしそれは、ちゃんと理論上可能な設定となっているのだそうです。

 さらに、父と娘のドラマが絡みます。二人の愛と信頼!
 10歳のマーフとクーパーの別れ、老婆のマーフと若き父との再会・・・泣けます!

 この物語を感動的にしているのは、相対性理論による時間のズレです。
 なぜそうなるのか、分からない点もあるので、宇宙論を学び直したくなりました。

 ところで、小説を読んで、「2001年宇宙の旅」に似ていることに気が付きました。
 特に、最後に何者かが作ったワープ装置に入っていくところが、そっくりです。

 ところがこの部分は、映画を見ていないとまったくイメージできなかったと思います。
 そういう意味でこの本は、映画を見た後に読むべき本だと思います。

 映画「インターステラー」は、「2001年宇宙の旅」への挑戦とも言われています。
 CGを使わず、模型を作って撮影したと聞いて、もう一度見たくなりました。

 さいごに。(来月発売予定の気になる文庫本)

・11/16 「未成年」 ドストエフスキー (光文社古典新訳文庫)
 → 「カラマーゾフ」「罪と罰」「白痴」「悪霊」に続く大長編の亀山訳。気になる。


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