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日はまた昇る [20世紀アメリカ文学]

 「日はまた昇る」 ヘミングウェイ作 高見浩訳 (新潮文庫)


 パリやスペインで豪遊する、失われた世代のアメリカ青年たちを描いた物語です。
 ヘミングウェイの処女長編で、彼の出世作です。

 現在、新潮文庫、ハヤカワepi文庫、集英社文庫などから出ています。
 私が読んだのは新潮文庫版。高見訳は分かりやすくて、良かったです。


日はまた昇る (新潮文庫)

日はまた昇る (新潮文庫)

  • 作者: アーネスト ヘミングウェイ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/06/28
  • メディア: 文庫



 ハヤカワepi文庫版は土屋訳です。分かりやすい訳なので、こちらもオススメ。
 ちなみに土屋は、古典新訳文庫で他の作品の訳を出しています。


日はまた昇る〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)

日はまた昇る〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)

  • 作者: アーネスト ヘミングウェイ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/03/31
  • メディア: 文庫



 ジェイク・バーンズは、パリで新聞社の特派員として働くアメリカ人です。
 アシュリー卿夫人ブレットとは、相思相愛の仲です。

 しかし彼は、第一次大戦の従軍中の事故で、男性機能を失っていました。
 ブレットと愛し合いながらも、決して結ばれることがありません。

 ジェイクは仲間たちと飲み歩きますが、かえってみじめさはつのるばかり。
 ブレットは見境なく男と関係を持ちますが、やはりとてもみじめなのです。
 どんなに飲んでも豪遊しても、この虚しい気持ちからは逃れられず・・・

 さて、この小説の冒頭近くに、ジェイクのこんなセリフがあります。
 この言葉の中に、この作品のテーマが集約されているように思えます。(P25)

 「どこか外国にいったって、何か突破口がひらけるわけじゃないぞ。(中略)
 ある場所から別の場所に移動したって、自分自身から逃れられるわけじゃない。」

 パリからブルゲーテ、パンプローナ、サン・セバスチャンと旅するジェイク。
 表面上の華々しさとは裏腹に、どこへ行っても、同じ虚しい日々の繰り返しです。

 日はまた、昨日と同じように昇って、同じように沈むだけ。
 「日はまた昇る」というタイトルは、決して明るい未来を示唆していません。

 私の「失われた世代」のイメージは、まさにこの作品から作られました。
 享楽的に生きながら、虚しさから逃れられない人々。
 彼らは、第一次世界大戦によって、何か重大なものを失ってしまったのです。

 ところで、この作品はどこを取っても、ハッとするような新鮮な文体です。
 読み飛ばすなんてことはできません。じっくり味わうべき名文です。

 名文というと、読みにくい文章が多いです。
 しかし、この作品 は実に分かりやすい。名文でありながら、読みやすいです。

 この簡潔で客観的な文体を、ハードボイルドの先駆けと考えることもできます。
 そしてのちに、ハメットやチャンドラーらに、受け継がれていきます。

 さいごに。(楽しかったキャンプ)

 夏の我が家の最大のイベントが終わりました。
 わずか2泊3日でしたが、存分に楽しんできました。

 ここ3年毎年、尾白川渓谷周辺で遊んでいます。
 水も空気もきれいで、食べるものは何でもおいしかったです。
滝ブログ用.jpg

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moz

ご家族で2泊3日の旅行をされたんですね。
旅行中も読書をされましたか?
読ませていただいて、ヘミングウェイがまた読みたくなりました。 ^^
老人と海とか武器よさらばとかも読みたいです。、
by moz (2014-08-26 06:54) 

ike-pyon

mozさん、コメントありがとうございます。
家族旅行中も、常に文庫本を携帯していましたが、
結局1ページも読めませんでした。

私は、「海流のなかの島々」をまだ読んでいないので、
今年中には読みたいと思っています。
by ike-pyon (2014-09-14 14:19) 

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