東海道中膝栗毛2 [日本の古典文学]
「現代語訳 東海道中膝栗毛(下)」 十返舎一九作 伊馬春部訳 (岩波現代文庫)
江戸時代の東海道の旅を、狂歌をまぜながら面白おかしく描いた、滑稽本の傑作です。
訳は作家の伊馬春部。1974年に出ました。下巻は五編から七編まで収録しています。
とうとう、目的だったお伊勢参りを済ませますが、これで終わりではありません。
このあと、京都まで足を延ばしますが、この部分が思いのほか面白かったです。
あとへ行くほど、1つ1つのエピソードが、長く凝ったものとなっていきます。
十返舎一九の筆はますます冴えますが、下ネタ満載なところは上巻と変わりません。
外宮を参拝した後、弥次さんは急に腹痛がしたので、宿屋に入って横になりました。
勘違いして弥次さんのところにやってきた産婆。二人のやりとりが傑作でした。
ばば「ぐっと力んで。それ、もうひとふんばり」
弥次「ここで力んでたまるものか。雪隠(せっちん)に行きてえ。はなしてくれ」
ばば「厠(かわや)へ行てはならんわいの。とんだことをおっしゃるわい」
弥次「ここで力むと、ここに出る」
ばば「出るから、りきまんせと言うのじゃ。それ、ううん。それ、もう頭がでかけた、
出かけた」
弥次「いたたたた。これ、そりゃあ、赤ん坊じゃねえ。それをそんなに、引っぱっちゃ
いけねえ。ああ、これ痛えよ」
(目の悪い産婆が、赤ん坊だと思って引っ張ったモノは、もちろん・・・)
また、淀川を下る乗合船での一幕も傑作です。
弥次さんが小便が出そうで困っていると、隣にいたご隠居が尿瓶を貸してくれました。
夜の暗がりの中での手探りのため、弥次さんは急須を尿瓶だと間違えて用をたし・・・
翌朝ご隠居はそれと知らず、その急須に酒を入れ、燗をして皆にふるまって・・・
尿瓶は新品だったため、今度はその尿瓶に酒を入れて、燗をして皆に回しました。
しかし途中で、酒の入った尿瓶と、病人の尿瓶が取り違えられてしまい・・・
この手の話がわんさと出てきますが、嫌いな人もいるでしょう。私は好きですけど。
そういえば、上巻の冒頭付近にも、こんな話が出ていました。
ある女を手篭めにしようとしたら声を出すので、その口に餅を入れて黙らせました。
女は餅をむしゃむしゃ食って「もっとくれ」と言うので、馬糞を入れてやったとか。
「東海道中膝栗毛」は児童用の抄訳も出ているので、私も子供の頃に読みました。
しかし、こういう本当に面白い(?)部分は、全部カットされていたのですね。
この作品が出たのは1802年です。江戸時代後期の人々の好みが分かって面白いです。
この後、一九は「続膝栗毛」を連発し、流行作家となりました。
一九は、日本で初めて文筆のみで自活した作家です。それだけ作品が売れました。
その背景には、寺子屋が増え、庶民の識字率が高まっていたことがあると言います。
さいごに。(世界陸上ドーハ大会)
世界陸上では、50キロの鈴木に次いで、20キロでは山西が金メダルを取りました。
お見事。競歩という地味でキツイ競技が、注目されるきっかけとなってほしいです。
そして、なんといってもスゴかったのは、4×100mリレー。米英に続き銅メダル!
ここ10年で、日本のリレーは3以内に入って当然、というチームに成長しました。
江戸時代の東海道の旅を、狂歌をまぜながら面白おかしく描いた、滑稽本の傑作です。
訳は作家の伊馬春部。1974年に出ました。下巻は五編から七編まで収録しています。
とうとう、目的だったお伊勢参りを済ませますが、これで終わりではありません。
このあと、京都まで足を延ばしますが、この部分が思いのほか面白かったです。
あとへ行くほど、1つ1つのエピソードが、長く凝ったものとなっていきます。
十返舎一九の筆はますます冴えますが、下ネタ満載なところは上巻と変わりません。
外宮を参拝した後、弥次さんは急に腹痛がしたので、宿屋に入って横になりました。
勘違いして弥次さんのところにやってきた産婆。二人のやりとりが傑作でした。
ばば「ぐっと力んで。それ、もうひとふんばり」
弥次「ここで力んでたまるものか。雪隠(せっちん)に行きてえ。はなしてくれ」
ばば「厠(かわや)へ行てはならんわいの。とんだことをおっしゃるわい」
弥次「ここで力むと、ここに出る」
ばば「出るから、りきまんせと言うのじゃ。それ、ううん。それ、もう頭がでかけた、
出かけた」
弥次「いたたたた。これ、そりゃあ、赤ん坊じゃねえ。それをそんなに、引っぱっちゃ
いけねえ。ああ、これ痛えよ」
(目の悪い産婆が、赤ん坊だと思って引っ張ったモノは、もちろん・・・)
また、淀川を下る乗合船での一幕も傑作です。
弥次さんが小便が出そうで困っていると、隣にいたご隠居が尿瓶を貸してくれました。
夜の暗がりの中での手探りのため、弥次さんは急須を尿瓶だと間違えて用をたし・・・
翌朝ご隠居はそれと知らず、その急須に酒を入れ、燗をして皆にふるまって・・・
尿瓶は新品だったため、今度はその尿瓶に酒を入れて、燗をして皆に回しました。
しかし途中で、酒の入った尿瓶と、病人の尿瓶が取り違えられてしまい・・・
この手の話がわんさと出てきますが、嫌いな人もいるでしょう。私は好きですけど。
そういえば、上巻の冒頭付近にも、こんな話が出ていました。
ある女を手篭めにしようとしたら声を出すので、その口に餅を入れて黙らせました。
女は餅をむしゃむしゃ食って「もっとくれ」と言うので、馬糞を入れてやったとか。
「東海道中膝栗毛」は児童用の抄訳も出ているので、私も子供の頃に読みました。
しかし、こういう本当に面白い(?)部分は、全部カットされていたのですね。
この作品が出たのは1802年です。江戸時代後期の人々の好みが分かって面白いです。
この後、一九は「続膝栗毛」を連発し、流行作家となりました。
一九は、日本で初めて文筆のみで自活した作家です。それだけ作品が売れました。
その背景には、寺子屋が増え、庶民の識字率が高まっていたことがあると言います。
さいごに。(世界陸上ドーハ大会)
世界陸上では、50キロの鈴木に次いで、20キロでは山西が金メダルを取りました。
お見事。競歩という地味でキツイ競技が、注目されるきっかけとなってほしいです。
そして、なんといってもスゴかったのは、4×100mリレー。米英に続き銅メダル!
ここ10年で、日本のリレーは3以内に入って当然、というチームに成長しました。
東海道中膝栗毛1 [日本の古典文学]
「現代語訳 東海道中膝栗毛(上)」 十返舎一九作 伊馬春部訳 (岩波現代文庫)
江戸時代の東海道の旅を、狂歌をまぜながら面白おかしく描いた、滑稽本の傑作です。
19世紀の初頭に大流行し、主人公の名をとって「弥次喜多道中」とも呼ばれています。
神田八丁堀に住む弥次郎兵衛と、食客の喜多八は、ともにのんきな独り者です。
二人は、諸国の名所景勝を見物しながら、伊勢参りをしようと思い立ちました。
財産を整理して、江戸を出発。弥次さん北さんの、珍道中が始まりました。
旅の恥はかき捨て。行く先々で人にちょっかいを出し、失敗を繰り返します。
小田原の宿では、二人とも五右衛門風呂の入り方が分からなくて・・・
北八はつかりすぎて、立ったり座ったりしているうちに・・・
藤枝の茶店では、先ほど喧嘩になったオヤジが、酒をおごると言うので・・・
調子の乗って、さんざん飲み食いしたあげく・・・
赤坂に向かう途中、弥次さんは悪い狐が出るというのを聞いて・・・
「あきれた。北八そのままだ。よくもうまく化けやがった。こん畜生め」・・・
しかし、なんと言っても傑作は、宮の宿でのあんまとのやりとりでしょう。
あんまは北八の頭をもみながら、手拍子をうち、頭をぴしゃぴしゃたたく・・・
私が小4のとき、担任の先生がよく「弥次さん北さん」の話をしてくれました。
あんまが頭をうつ場面は、先生の身振り手振りが面白くて、印象に残っています。
さて、今回初めて「東海道中膝栗毛」を読みました。前半が終わった所です。
意外だったのは、狂歌が頻繁に出てきて、話にオチをつけることです。
この作品はただのバカ話ではありません。読者は、多少の教養が求められます。
たとえば八橋では、ちゃんと伊勢物語を踏まえた狂歌が添えられています。
「八つはしの古跡をよむもわれわれがおよばぬ恥をかきつばたなれ」
注無しで味わうにはちょっと難しいです。狂歌には注がほしかったです。
さいごに。(またinfobarネタ)
infobar vx はガラホですが、いっちょ前にナビのアプリが入っています。
しかし使おうとすると、月に300円払えと言うのです。そんなアプリはいらん。
江戸時代の東海道の旅を、狂歌をまぜながら面白おかしく描いた、滑稽本の傑作です。
19世紀の初頭に大流行し、主人公の名をとって「弥次喜多道中」とも呼ばれています。
神田八丁堀に住む弥次郎兵衛と、食客の喜多八は、ともにのんきな独り者です。
二人は、諸国の名所景勝を見物しながら、伊勢参りをしようと思い立ちました。
財産を整理して、江戸を出発。弥次さん北さんの、珍道中が始まりました。
旅の恥はかき捨て。行く先々で人にちょっかいを出し、失敗を繰り返します。
小田原の宿では、二人とも五右衛門風呂の入り方が分からなくて・・・
北八はつかりすぎて、立ったり座ったりしているうちに・・・
藤枝の茶店では、先ほど喧嘩になったオヤジが、酒をおごると言うので・・・
調子の乗って、さんざん飲み食いしたあげく・・・
赤坂に向かう途中、弥次さんは悪い狐が出るというのを聞いて・・・
「あきれた。北八そのままだ。よくもうまく化けやがった。こん畜生め」・・・
しかし、なんと言っても傑作は、宮の宿でのあんまとのやりとりでしょう。
あんまは北八の頭をもみながら、手拍子をうち、頭をぴしゃぴしゃたたく・・・
私が小4のとき、担任の先生がよく「弥次さん北さん」の話をしてくれました。
あんまが頭をうつ場面は、先生の身振り手振りが面白くて、印象に残っています。
さて、今回初めて「東海道中膝栗毛」を読みました。前半が終わった所です。
意外だったのは、狂歌が頻繁に出てきて、話にオチをつけることです。
この作品はただのバカ話ではありません。読者は、多少の教養が求められます。
たとえば八橋では、ちゃんと伊勢物語を踏まえた狂歌が添えられています。
「八つはしの古跡をよむもわれわれがおよばぬ恥をかきつばたなれ」
注無しで味わうにはちょっと難しいです。狂歌には注がほしかったです。
さいごに。(またinfobarネタ)
infobar vx はガラホですが、いっちょ前にナビのアプリが入っています。
しかし使おうとすると、月に300円払えと言うのです。そんなアプリはいらん。
今昔物語集2 [日本の古典文学]
「今昔物語」 福永武彦訳 (ちくま文庫)
怪異譚、滑稽譚、人情譚等、あらゆる話を収録した、平安末期成立の説話集です。
私は、本朝篇から155話を抄録したちくま文庫版で読みました。訳者は福永武彦。
ちくま文庫「今昔物語」後半は、滑稽・悪行・人情・奇譚・仏法・・・と続きます。
特に悪行は本書のクライマックスで、どこかで聞いたことのある話も多いです。
「谷底に落ちても平茸(ひらたけ)を取る話」 「鼻を持ち上げて朝粥を食う話」
「異端の術で瓜を盗まれる話」 「何者とも知れぬ女盗賊の話」
「羅城門の楼上で死人を見る話」 「大江山の藪の中で起こった話」
「太刀帯(たてわき)の陣で魚を売る女の話」 「近江の国に婢となった女の話」
「信濃の国にあった姥捨山の話」 「死んでも舌が残った僧の話」
「女の執念が凝って蛇となる話」 「京の町で百鬼夜行にあう話」
最も印象に残ったのは、「丹波の守が胎児の生き胆(ぎも)を取る話」です。
平貞盛が丹波の守だったとき、悪い病気に罹ったため、医者に診断させました。
医者が言うには、「これは命にかかわる病で、胎児の生き胆を薬とするしかない」。
貞盛が、子の維衡に言うには、「お前の妻の腹の子を、おれにくれ」。(!)
いくら親子だって、それはないでしょう。で、維衡は災難をどのように防いだのか?
また、そののち医者にふりかかった災難を、維衡はどのように防いだのか?
最も面白かったのは、「平中物語」で有名な「平中が本院の侍従に恋する話」です。
平中は「侍従の君」に恋い焦がれ、彼女の部屋に忍んで行きましたが・・・
痛い目にあった平中が、侍従の君を思いきるために案じた一計とは?
しかし、そのはこの中のう〇こは、何とも言えない良い匂いがして・・・
なお、う〇こネタなら「越前の守為盛が謀をめぐらす話」も面白いです。
6月の暑い日、役人たちが越前の守の屋敷に、量米の取り立てに行きました。
門の中に通されると、そこには塩辛い料理ばかりがたくさん並べられていました。
出された酒は、少し濁って酸っぱかったが、のどの渇きに何杯も飲むうちに・・・
「近江の国に婢(ひ)となった女の話」も、忘れられない話です。
両親が亡くなり、残された女は、夫を養うことができず、別れることにしました。
やがて落ちぶれた女は、ある男に見初められて、近江の国に連れて行かれました。
数年後、そこに赴任した新しい国の守とは・・・本書の中で最も泣ける話でした。
さて、ちくま文庫版「今昔物語」は、全体の2割弱の155話を採録しています。
最初はこのくらいがちょうどいいと思っていましたが、今ではもの足りないです。
その最大の理由は、源博雅と蝉丸の伝説が、ここには収録されていないからです。
いつか時間がたっぷりできたなら、講談社学術文庫版の全2巻に挑戦したいです。
さいごに。(10連休に旅行?どこの国の話?)
毎年ゴールデンウィークの最後の3日間には、大事な出張が入っています。
その準備をするため、ゴールデンウィークは、ほとんど休むことができません。
すでに10日間のうち9日間が仕事で、唯一の4/29の休みを必死で死守しています。
巷では「10連休に旅行」とか言ってますが・・・
怪異譚、滑稽譚、人情譚等、あらゆる話を収録した、平安末期成立の説話集です。
私は、本朝篇から155話を抄録したちくま文庫版で読みました。訳者は福永武彦。
ちくま文庫「今昔物語」後半は、滑稽・悪行・人情・奇譚・仏法・・・と続きます。
特に悪行は本書のクライマックスで、どこかで聞いたことのある話も多いです。
「谷底に落ちても平茸(ひらたけ)を取る話」 「鼻を持ち上げて朝粥を食う話」
「異端の術で瓜を盗まれる話」 「何者とも知れぬ女盗賊の話」
「羅城門の楼上で死人を見る話」 「大江山の藪の中で起こった話」
「太刀帯(たてわき)の陣で魚を売る女の話」 「近江の国に婢となった女の話」
「信濃の国にあった姥捨山の話」 「死んでも舌が残った僧の話」
「女の執念が凝って蛇となる話」 「京の町で百鬼夜行にあう話」
最も印象に残ったのは、「丹波の守が胎児の生き胆(ぎも)を取る話」です。
平貞盛が丹波の守だったとき、悪い病気に罹ったため、医者に診断させました。
医者が言うには、「これは命にかかわる病で、胎児の生き胆を薬とするしかない」。
貞盛が、子の維衡に言うには、「お前の妻の腹の子を、おれにくれ」。(!)
いくら親子だって、それはないでしょう。で、維衡は災難をどのように防いだのか?
また、そののち医者にふりかかった災難を、維衡はどのように防いだのか?
最も面白かったのは、「平中物語」で有名な「平中が本院の侍従に恋する話」です。
平中は「侍従の君」に恋い焦がれ、彼女の部屋に忍んで行きましたが・・・
痛い目にあった平中が、侍従の君を思いきるために案じた一計とは?
しかし、そのはこの中のう〇こは、何とも言えない良い匂いがして・・・
なお、う〇こネタなら「越前の守為盛が謀をめぐらす話」も面白いです。
6月の暑い日、役人たちが越前の守の屋敷に、量米の取り立てに行きました。
門の中に通されると、そこには塩辛い料理ばかりがたくさん並べられていました。
出された酒は、少し濁って酸っぱかったが、のどの渇きに何杯も飲むうちに・・・
「近江の国に婢(ひ)となった女の話」も、忘れられない話です。
両親が亡くなり、残された女は、夫を養うことができず、別れることにしました。
やがて落ちぶれた女は、ある男に見初められて、近江の国に連れて行かれました。
数年後、そこに赴任した新しい国の守とは・・・本書の中で最も泣ける話でした。
さて、ちくま文庫版「今昔物語」は、全体の2割弱の155話を採録しています。
最初はこのくらいがちょうどいいと思っていましたが、今ではもの足りないです。
その最大の理由は、源博雅と蝉丸の伝説が、ここには収録されていないからです。
いつか時間がたっぷりできたなら、講談社学術文庫版の全2巻に挑戦したいです。
さいごに。(10連休に旅行?どこの国の話?)
毎年ゴールデンウィークの最後の3日間には、大事な出張が入っています。
その準備をするため、ゴールデンウィークは、ほとんど休むことができません。
すでに10日間のうち9日間が仕事で、唯一の4/29の休みを必死で死守しています。
巷では「10連休に旅行」とか言ってますが・・・
今昔物語集 [日本の古典文学]
「今昔物語」 福永武彦訳 (ちくま文庫)
怪異譚、滑稽譚、人情譚等、あらゆる話を収録した、平安末期成立の説話集です。
一話一話は短いながら、全31巻に及び、実に1000話以上の物語を収録しています。
読書人にとって問題となるのは、「今昔物語集」をどこまで読むべきか、です。
その答えによって、私たちの選ぶべき本が、自然と決まってきます。
まず、読書人なら、1000話すべてを読むのが正道だ、という考え方があります。
ところが、まるまる全文を収めているという本が、なかなか見当たりません。
定番の岩波文庫版(全4巻)でさえ、約400話の抄録だと言うではありませんか。
しかも、なんと、現代語訳が付いていない。私はてっきり全訳だと思っていた!
また、天竺篇、震旦篇、本朝篇のうち、「本朝篇」だけを収録した本も多いです。
中には、本書のクライマックスである「本朝世俗部」のみ、という本もあります。
2016年に出た講談社学術文庫版もそうで、「本朝世俗篇」は全て収録しています。
天竺篇も震旦篇も本朝仏法篇もバッサリ切って、本朝世俗篇だけはこだわりの全訳。
これはこれで潔いやり方だと思います。実際、とても効率的な方法でもあります。
それでも、講談社学術文庫版は、二分冊で1300ページ以上あります。
実際に書店で、上下巻のぶ厚い文庫本を目にしたら、気力が萎えてしまいました。
しかも2冊で4000円。現代語訳は分かりやすいのですが、私は敬遠しました。
ということで、私が選んだのは、本朝篇から155話採録したちくま文庫版です。
全1巻で650ページほどですが、この分量がちょうどいいのです。
また、福永武彦の訳も、分かりやすくていいです。さすが、作家さんです。
ただし、訳者独自の分類がされているので、目的の話を探すのがたいへんでした。
さて、ちくま文庫版「今昔物語」の前半は、世俗・宿報・霊鬼・・・と続きます。
この三部には、不思議な話がたくさん入っていて、とても興味深かったです。
「碁の名人が女に負かされる話」 「蛇の嫁いだ娘を治療する話」
「地神に追われた陰陽師の話」 「天文博士が夢をうらなう話」
「死んだ妻が悪霊となる話」 「犬の鼻から蚕の糸が出る話」
「水の精が人の顔を撫でる話」 「近江の国の生霊が京に来る話」
「死んだ妻とただ一夜遭う話」 「高陽川(かやがわ)の狐が瀧口をだます話」
以上は、怪異好きには絶対オススメできる話です。
また、源博雅が登場する「玄象の琵琶が鬼に取られる話」は、とても有名です。
朝廷に昔から伝わる、玄象という由緒正しい琵琶が、あるとき不意に消えました。
管弦の道を極めた源博雅が宿直をしていると、どこからか玄象の音が聞こえ・・・
ついでに源博雅のほかの話も読みたいと思ったのですが、探すことができません。
「今昔物語集」の24巻にある博雅と蝉丸の話は、どこに分類されているのか?
ところで、私が一番印象に残ったのは、「生贄の男が猿神を退治する話」です。
展開が面白くて、ちょっとした小説になりそうな話です。
諸国行脚の僧が、飛騨の国で出会った男は、滝の中に入って姿をかき消しました。
自分も同じようにすると、滝の裏には道があって、大きな人里に続いていました。
その里では、人々が僧を見て「ぜひうちへ来てくれ」と、取り合いになりました。
僧はある家に迎えられ、妻を得て、毎日何不自由なく暮らしていましたが・・・
この本に訳出された話は、全体の2割にも満たない数ですが、それでも充分です。
650ページ全部を読んだら、おなかいっぱいになりそうです。
さいごに。(娘は中学生)
今年も、家の前の桜が見ごろを迎え、そして先日、娘は中学生になりました。
私は仕事を2時間ほど休んで、中抜けさせてもらい、入学式に出席しました。
このブログを始めた頃、幼稚園にも入っていなかった娘が、もう中学生です。
「入学おめでとう」と言われて、うれしいやら、さびしいやら・・・
怪異譚、滑稽譚、人情譚等、あらゆる話を収録した、平安末期成立の説話集です。
一話一話は短いながら、全31巻に及び、実に1000話以上の物語を収録しています。
読書人にとって問題となるのは、「今昔物語集」をどこまで読むべきか、です。
その答えによって、私たちの選ぶべき本が、自然と決まってきます。
まず、読書人なら、1000話すべてを読むのが正道だ、という考え方があります。
ところが、まるまる全文を収めているという本が、なかなか見当たりません。
定番の岩波文庫版(全4巻)でさえ、約400話の抄録だと言うではありませんか。
しかも、なんと、現代語訳が付いていない。私はてっきり全訳だと思っていた!
また、天竺篇、震旦篇、本朝篇のうち、「本朝篇」だけを収録した本も多いです。
中には、本書のクライマックスである「本朝世俗部」のみ、という本もあります。
2016年に出た講談社学術文庫版もそうで、「本朝世俗篇」は全て収録しています。
天竺篇も震旦篇も本朝仏法篇もバッサリ切って、本朝世俗篇だけはこだわりの全訳。
これはこれで潔いやり方だと思います。実際、とても効率的な方法でもあります。
それでも、講談社学術文庫版は、二分冊で1300ページ以上あります。
実際に書店で、上下巻のぶ厚い文庫本を目にしたら、気力が萎えてしまいました。
しかも2冊で4000円。現代語訳は分かりやすいのですが、私は敬遠しました。
今昔物語集 本朝世俗篇 (上) 全現代語訳 (講談社学術文庫)
- 作者:
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/06/11
- メディア: 文庫
今昔物語集 本朝世俗篇 (下) 全現代語訳 (講談社学術文庫)
- 作者:
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/08/11
- メディア: 文庫
ということで、私が選んだのは、本朝篇から155話採録したちくま文庫版です。
全1巻で650ページほどですが、この分量がちょうどいいのです。
また、福永武彦の訳も、分かりやすくていいです。さすが、作家さんです。
ただし、訳者独自の分類がされているので、目的の話を探すのがたいへんでした。
さて、ちくま文庫版「今昔物語」の前半は、世俗・宿報・霊鬼・・・と続きます。
この三部には、不思議な話がたくさん入っていて、とても興味深かったです。
「碁の名人が女に負かされる話」 「蛇の嫁いだ娘を治療する話」
「地神に追われた陰陽師の話」 「天文博士が夢をうらなう話」
「死んだ妻が悪霊となる話」 「犬の鼻から蚕の糸が出る話」
「水の精が人の顔を撫でる話」 「近江の国の生霊が京に来る話」
「死んだ妻とただ一夜遭う話」 「高陽川(かやがわ)の狐が瀧口をだます話」
以上は、怪異好きには絶対オススメできる話です。
また、源博雅が登場する「玄象の琵琶が鬼に取られる話」は、とても有名です。
朝廷に昔から伝わる、玄象という由緒正しい琵琶が、あるとき不意に消えました。
管弦の道を極めた源博雅が宿直をしていると、どこからか玄象の音が聞こえ・・・
ついでに源博雅のほかの話も読みたいと思ったのですが、探すことができません。
「今昔物語集」の24巻にある博雅と蝉丸の話は、どこに分類されているのか?
ところで、私が一番印象に残ったのは、「生贄の男が猿神を退治する話」です。
展開が面白くて、ちょっとした小説になりそうな話です。
諸国行脚の僧が、飛騨の国で出会った男は、滝の中に入って姿をかき消しました。
自分も同じようにすると、滝の裏には道があって、大きな人里に続いていました。
その里では、人々が僧を見て「ぜひうちへ来てくれ」と、取り合いになりました。
僧はある家に迎えられ、妻を得て、毎日何不自由なく暮らしていましたが・・・
この本に訳出された話は、全体の2割にも満たない数ですが、それでも充分です。
650ページ全部を読んだら、おなかいっぱいになりそうです。
さいごに。(娘は中学生)
今年も、家の前の桜が見ごろを迎え、そして先日、娘は中学生になりました。
私は仕事を2時間ほど休んで、中抜けさせてもらい、入学式に出席しました。
このブログを始めた頃、幼稚園にも入っていなかった娘が、もう中学生です。
「入学おめでとう」と言われて、うれしいやら、さびしいやら・・・
平家物語2 [日本の古典文学]
「平家物語(下)」 尾崎士郎訳 (岩波現代文庫)
繁栄の極みにあった平家が没落し、合戦によって滅亡するまでを描いた物語です。
幼い頃より琵琶に親しんだ尾崎士郎の訳は、読みやすい名調子で貫かれています。
下巻には、第7巻から第12巻まで、平家物語の後半が収められています。
都落ちした平家が、院宣を受けた源氏に追討され、滅亡するまでを描いています。
義仲の登場、平家一門の都落ち、頼朝が征夷大将軍に、義仲の最期、一ノ谷の戦い、
維盛の入水、屋島の戦い、壇ノ浦の戦い、平家滅亡、義経の都落ち、建礼門院の死。
下巻の前半では、都に義仲、西に平家、東に頼朝と、勢力は三分されていました。
義仲が味方である源氏に追い詰められる場面が、最初のクライマックスです。
義仲の前で、最後に強敵を討ち取って見せ、名残惜しみながら落ちていった巴御前。
義仲に自害させるため命がけで敵を防ぎ、最後は太刀を口に含んで果てた今井兼平。
倶利伽羅峠で平家の大軍を破り、旭将軍と呼ばれながら、同じ源氏に討たれた義仲。
「木曽の最後」における、義仲と兼平の悲しい結末は、涙無しには読めません。
そして、下巻の後半に入ると、滅びゆく平家一門の人々が主役となります。
動かしがたい時代の流れに吞まれた彼らは、いかに生き、いかに死んでいったか?
都落ちから俊成の家に戻り、一ノ谷での死後千載集によみ人しらずで歌を残した忠度。
仁和寺に駆けつけ、下賜されていた琵琶の名器青山を返上し、一ノ谷で果てた経正。
都に置いてきた妻子を思いきれず、高野山で出家し、熊野で入水する道を選んだ維盛。
南都焼き討ちの罪を一身に被り、鎌倉で生き恥をさらした上で、無残に斬られた重衡。
平家一の武勇を誇り、壇ノ浦で義経を追い詰め、最後まで戦い抜いて入水した教経。
平家の滅亡を宿命として受け入れ、一門の最後を全て見届けた上で、入水した知盛。
平家の総帥でありながら勇断を下せず、一門を滅亡に導き、生き恥までさらした宗盛。
平家の面々それぞれに、それぞれの人間模様があり、読んでいて面白かったです。
わずか八歳で分けも分からず、平家一門と運命をともにし、壇ノ浦で入水した安徳帝。
入水したところを捕えられ、大原で寂しく暮らし、人知れず世を去った建礼門院・・・
灌頂巻の女院の姿が印象的です。「この世のことはすべて、車輪の廻るようなもので、
いかなる快楽も、全く束の間の夢まぼろし、流転きわまりないものです。」(P358)
壇ノ浦で最後の戦いに挑んだ平家も、同じように考えていたのではないでしょうか。
彼らは自分たちの時代が終わったことを察して、華々しく死のうとしたのではないか?
「平家物語」には、武士の生き様があらわれています。武士の美学が詰まっています。
貴族の世から武士の世へ。その移り変わりを象徴するのが「平家物語」です。
「平家物語」は、ある意味、武士たちの建国神話です。まさに武士たちの叙事詩です。
琵琶法師に語られながら、内容が増補されていったという形成過程も、叙事詩的です。
世界文学史的に見ても、中世文学を代表する作品の一つだと、私は考えています。
もっともっと世界で訳され、知られてもいい作品だと思います。
ところで、下巻を読み終わったあと、以前読んだ「平家物語」の原文を見てみました。
そして改めて、文章の味わい深さは、原文にはかなわないと思いました。
時間が許したら、ぜひ原文をもう一度、ゆっくり音読してみたいです。
なお、「すらすら読める平家物語」もオススメですが、現在は絶版です。
さいごに。(今年もよろしくお願いします。)
明けましておめどうございます。このブログは今、ちょうど10年目に入っています。
今年も、みなさまよろしくお願いいたします。
10年前、娘はまだ3歳でした。今年、娘は中学生になります。半分は大人です。
娘が独り立ちできるよう、昨年一年、少しずつ子離れしてきたつもりですが・・・
繁栄の極みにあった平家が没落し、合戦によって滅亡するまでを描いた物語です。
幼い頃より琵琶に親しんだ尾崎士郎の訳は、読みやすい名調子で貫かれています。
下巻には、第7巻から第12巻まで、平家物語の後半が収められています。
都落ちした平家が、院宣を受けた源氏に追討され、滅亡するまでを描いています。
義仲の登場、平家一門の都落ち、頼朝が征夷大将軍に、義仲の最期、一ノ谷の戦い、
維盛の入水、屋島の戦い、壇ノ浦の戦い、平家滅亡、義経の都落ち、建礼門院の死。
下巻の前半では、都に義仲、西に平家、東に頼朝と、勢力は三分されていました。
義仲が味方である源氏に追い詰められる場面が、最初のクライマックスです。
義仲の前で、最後に強敵を討ち取って見せ、名残惜しみながら落ちていった巴御前。
義仲に自害させるため命がけで敵を防ぎ、最後は太刀を口に含んで果てた今井兼平。
倶利伽羅峠で平家の大軍を破り、旭将軍と呼ばれながら、同じ源氏に討たれた義仲。
「木曽の最後」における、義仲と兼平の悲しい結末は、涙無しには読めません。
そして、下巻の後半に入ると、滅びゆく平家一門の人々が主役となります。
動かしがたい時代の流れに吞まれた彼らは、いかに生き、いかに死んでいったか?
都落ちから俊成の家に戻り、一ノ谷での死後千載集によみ人しらずで歌を残した忠度。
仁和寺に駆けつけ、下賜されていた琵琶の名器青山を返上し、一ノ谷で果てた経正。
都に置いてきた妻子を思いきれず、高野山で出家し、熊野で入水する道を選んだ維盛。
南都焼き討ちの罪を一身に被り、鎌倉で生き恥をさらした上で、無残に斬られた重衡。
平家一の武勇を誇り、壇ノ浦で義経を追い詰め、最後まで戦い抜いて入水した教経。
平家の滅亡を宿命として受け入れ、一門の最後を全て見届けた上で、入水した知盛。
平家の総帥でありながら勇断を下せず、一門を滅亡に導き、生き恥までさらした宗盛。
平家の面々それぞれに、それぞれの人間模様があり、読んでいて面白かったです。
わずか八歳で分けも分からず、平家一門と運命をともにし、壇ノ浦で入水した安徳帝。
入水したところを捕えられ、大原で寂しく暮らし、人知れず世を去った建礼門院・・・
灌頂巻の女院の姿が印象的です。「この世のことはすべて、車輪の廻るようなもので、
いかなる快楽も、全く束の間の夢まぼろし、流転きわまりないものです。」(P358)
壇ノ浦で最後の戦いに挑んだ平家も、同じように考えていたのではないでしょうか。
彼らは自分たちの時代が終わったことを察して、華々しく死のうとしたのではないか?
「平家物語」には、武士の生き様があらわれています。武士の美学が詰まっています。
貴族の世から武士の世へ。その移り変わりを象徴するのが「平家物語」です。
「平家物語」は、ある意味、武士たちの建国神話です。まさに武士たちの叙事詩です。
琵琶法師に語られながら、内容が増補されていったという形成過程も、叙事詩的です。
世界文学史的に見ても、中世文学を代表する作品の一つだと、私は考えています。
もっともっと世界で訳され、知られてもいい作品だと思います。
ところで、下巻を読み終わったあと、以前読んだ「平家物語」の原文を見てみました。
そして改めて、文章の味わい深さは、原文にはかなわないと思いました。
時間が許したら、ぜひ原文をもう一度、ゆっくり音読してみたいです。
なお、「すらすら読める平家物語」もオススメですが、現在は絶版です。
さいごに。(今年もよろしくお願いします。)
明けましておめどうございます。このブログは今、ちょうど10年目に入っています。
今年も、みなさまよろしくお願いいたします。
10年前、娘はまだ3歳でした。今年、娘は中学生になります。半分は大人です。
娘が独り立ちできるよう、昨年一年、少しずつ子離れしてきたつもりですが・・・
平家物語1 [日本の古典文学]
「平家物語(上)」 尾崎士郎訳 (岩波現代文庫)
繁栄の極みにあった平家が没落し、合戦によって滅亡するまでを描いた物語です。
作者は未詳です。琵琶法師によって語られたため、一般大衆にまで広まりました。
岩波現代文庫「平家物語」は、昭和を代表する小説家尾崎士郎による名訳です。
その上巻には、第1巻から第6巻まで、平家物語の前半が収められています。
平家の支配、鹿ケ谷の陰謀、安徳天皇即位、以仁王の乱、頼朝挙兵、清盛の死。
平家が栄華の極みから、清盛の死によって、没落を始めるまでを描いています。
「平家物語」というと、源氏と平家の戦いの場面の印象がとても強いのですが、
頼朝が挙兵するのは第5巻に入ってからであって、上巻では全くの脇役です。
上巻における源氏の顔は源頼政です。源氏の最長老で、70歳を超えていました。
二度にわたって鵺(ぬえ=妖怪)を撃ち落とした、若き日の活躍は伝説的です。
頼政はどのように出世したのか? 老いてからどうして謀反をおこしたのか?
頼政の人生は、なかなか興味深いです。そして哀愁を感じさせます。
さて、上巻の主役はなんといっても清盛です。まさに、清盛あっての平家です。
気性が激しく、傲慢でしたが、それだけの実力を持った人間でもありました。
平家独裁政府を樹立するために、遷都までするところは、並みの人間ではない。
批判は多いけど、清盛はとても革新的なことを考えていた人なのだと思います。
だからこそ、彼は生前から、伝説で彩られていました。
慈慧大僧正の生まれ変わりだとか、実は白河院の御落胤なのだとか。
清盛はその強烈なキャラクターで、世の中全体をぐいぐい引っ張っていました。
また、傍若無人な振る舞いによって、清盛の死後、平家は一気に衰退しました。
平家を栄えさせたのも清盛であり、没落させたのも清盛であったのではないか?
嫡男の重盛が生きていたら、平家はこんなにも早く亡びることはなかったはず。
重盛も良い味を出しています。清盛にこんなことを言えるのは重盛だけです。
「我が一門は、あまりに短時日の内に、この世の栄華富貴を極めすぎた・・・」
重盛は、平家のバランスをとりながら、清盛の心のバランスもとっていました。
だから重盛が死んだ後、清盛の行動はどこか病的になっていくのだと思います。
ところで、平家物語の魅力の一つは、随所で語られるさまざまな人間模様です。
たとえば、以仁王を逃がした長谷部信連(のぶつら)を、生け捕りにした場面。
平家の侍たちは、その立派な態度を見て、敵である信連に感心してしまいます。
「これこそ一騎当千の侍」とか言って、敵である信連を称賛したりして・・・
さて、林望の現代語訳「謹訳 平家物語」が単行本で出ています。気になります。
「謹訳 源氏物語」同様、文庫化されることを強く願っています。
さいごに。(クリスマスプレゼントはいらない?)
なんと、娘は「今年のクリスマスのプレゼントはいらない」と言っています。
感心するというより、怖い感じがします。また、なんとなく寂しいような気も。
繁栄の極みにあった平家が没落し、合戦によって滅亡するまでを描いた物語です。
作者は未詳です。琵琶法師によって語られたため、一般大衆にまで広まりました。
岩波現代文庫「平家物語」は、昭和を代表する小説家尾崎士郎による名訳です。
その上巻には、第1巻から第6巻まで、平家物語の前半が収められています。
平家の支配、鹿ケ谷の陰謀、安徳天皇即位、以仁王の乱、頼朝挙兵、清盛の死。
平家が栄華の極みから、清盛の死によって、没落を始めるまでを描いています。
「平家物語」というと、源氏と平家の戦いの場面の印象がとても強いのですが、
頼朝が挙兵するのは第5巻に入ってからであって、上巻では全くの脇役です。
上巻における源氏の顔は源頼政です。源氏の最長老で、70歳を超えていました。
二度にわたって鵺(ぬえ=妖怪)を撃ち落とした、若き日の活躍は伝説的です。
頼政はどのように出世したのか? 老いてからどうして謀反をおこしたのか?
頼政の人生は、なかなか興味深いです。そして哀愁を感じさせます。
さて、上巻の主役はなんといっても清盛です。まさに、清盛あっての平家です。
気性が激しく、傲慢でしたが、それだけの実力を持った人間でもありました。
平家独裁政府を樹立するために、遷都までするところは、並みの人間ではない。
批判は多いけど、清盛はとても革新的なことを考えていた人なのだと思います。
だからこそ、彼は生前から、伝説で彩られていました。
慈慧大僧正の生まれ変わりだとか、実は白河院の御落胤なのだとか。
清盛はその強烈なキャラクターで、世の中全体をぐいぐい引っ張っていました。
また、傍若無人な振る舞いによって、清盛の死後、平家は一気に衰退しました。
平家を栄えさせたのも清盛であり、没落させたのも清盛であったのではないか?
嫡男の重盛が生きていたら、平家はこんなにも早く亡びることはなかったはず。
重盛も良い味を出しています。清盛にこんなことを言えるのは重盛だけです。
「我が一門は、あまりに短時日の内に、この世の栄華富貴を極めすぎた・・・」
重盛は、平家のバランスをとりながら、清盛の心のバランスもとっていました。
だから重盛が死んだ後、清盛の行動はどこか病的になっていくのだと思います。
ところで、平家物語の魅力の一つは、随所で語られるさまざまな人間模様です。
たとえば、以仁王を逃がした長谷部信連(のぶつら)を、生け捕りにした場面。
平家の侍たちは、その立派な態度を見て、敵である信連に感心してしまいます。
「これこそ一騎当千の侍」とか言って、敵である信連を称賛したりして・・・
さて、林望の現代語訳「謹訳 平家物語」が単行本で出ています。気になります。
「謹訳 源氏物語」同様、文庫化されることを強く願っています。
さいごに。(クリスマスプレゼントはいらない?)
なんと、娘は「今年のクリスマスのプレゼントはいらない」と言っています。
感心するというより、怖い感じがします。また、なんとなく寂しいような気も。
今物語 [日本の古典文学]
「今物語」 藤原信実 三木紀人訳注 (講談社学術文庫)
鎌倉時代に語られていた風流譚・恋愛譚・滑稽譚を、53編収録した説話文学集です。
簡潔で一話が短いため読みやすいです。著者は36歌仙を描いたと言われる歌人です。
「今物語」は中世説話文学の傑作というが、恥ずかしながら私は全く知らなかった。
ある読書仲間から、「今物語」のある話を勧められて、読んでみる気になりました。
第二話の「忠度と扇」は、読みながら私はうなりました。風流譚の傑作でしょう。
歌の一部をとっさに口にする機転、そしてその意味を正確に理解する教養・・・
知識をひけらかすことなく、純粋に和歌を楽しむ忠度の振る舞いが、印象的です。
生活に和歌が自然に溶け込んでいた、古き良き時代の理想の姿がここにあります。
ほか、第三話「雪の朧月夜」(女房から即座に敷き物が出てきたのはなぜか?)、
第六話「うしろむき」(女が後ろ向きで寝たのはなぜか?)等も風流で良いです。
また、第十話「やさし蔵人」(蔵人は主人に代わってどんな返事をしたか?)、
第二十四話「亀井の尼」(帝の一夜の訪れが・・・)等はよく知られています。
私にとっては、第二十六話「小式部の夢」(夕暮れに不意に訪れた殿方は?)、
第三十八話「源氏供養」(紫式部の亡霊!)など、不思議な話が面白かったです。
特に、第三十五話「蓮華王の往生」は、半ページながら強烈な印象を残します。
夢に言われたとおり、その少年の棺を七日目に開けてみると・・・
しかし、なんといっても最も印象に残るのは、第五十二話「はこの不始末」です。
実は、ある読書仲間に勧められた話というのが、この話なのです。
説教師が説法をした後、急に大便をしたくなり、布施も受け取らず帰りました。
急いで便所に駆け込みましたが、屁ばかりが出て大便が出なかったので・・・
昨日は大便にだまされ、今日は屁にだまされ・・・この先はとても語れません。
品のない滑稽譚ですが、こういう話に限って記憶に残ってしまうのが悲しいです。
さて、講談社学術文庫版は、語釈と解説が充実していますが、やや詳しすぎます。
語釈を無くし、もっと一般の読書人が読みやすくなる構成で、出してほしいです。
さいごに。(ダウンコレクション?)
ユニクロのちらしに「ダウンコレクション」と、大きく出ていました。
その、「ウンコ」の部分だけが、なぜかやたらと目に焼き付いてしまいました。
妻と娘にそのことを話すと・・・なんともいえない冷たい反応でした。
実は、ほかにも「かわいいワンコ」が「かわいい〇ンコ」に見えてしまって・・・
鎌倉時代に語られていた風流譚・恋愛譚・滑稽譚を、53編収録した説話文学集です。
簡潔で一話が短いため読みやすいです。著者は36歌仙を描いたと言われる歌人です。
「今物語」は中世説話文学の傑作というが、恥ずかしながら私は全く知らなかった。
ある読書仲間から、「今物語」のある話を勧められて、読んでみる気になりました。
第二話の「忠度と扇」は、読みながら私はうなりました。風流譚の傑作でしょう。
歌の一部をとっさに口にする機転、そしてその意味を正確に理解する教養・・・
知識をひけらかすことなく、純粋に和歌を楽しむ忠度の振る舞いが、印象的です。
生活に和歌が自然に溶け込んでいた、古き良き時代の理想の姿がここにあります。
ほか、第三話「雪の朧月夜」(女房から即座に敷き物が出てきたのはなぜか?)、
第六話「うしろむき」(女が後ろ向きで寝たのはなぜか?)等も風流で良いです。
また、第十話「やさし蔵人」(蔵人は主人に代わってどんな返事をしたか?)、
第二十四話「亀井の尼」(帝の一夜の訪れが・・・)等はよく知られています。
私にとっては、第二十六話「小式部の夢」(夕暮れに不意に訪れた殿方は?)、
第三十八話「源氏供養」(紫式部の亡霊!)など、不思議な話が面白かったです。
特に、第三十五話「蓮華王の往生」は、半ページながら強烈な印象を残します。
夢に言われたとおり、その少年の棺を七日目に開けてみると・・・
しかし、なんといっても最も印象に残るのは、第五十二話「はこの不始末」です。
実は、ある読書仲間に勧められた話というのが、この話なのです。
説教師が説法をした後、急に大便をしたくなり、布施も受け取らず帰りました。
急いで便所に駆け込みましたが、屁ばかりが出て大便が出なかったので・・・
昨日は大便にだまされ、今日は屁にだまされ・・・この先はとても語れません。
品のない滑稽譚ですが、こういう話に限って記憶に残ってしまうのが悲しいです。
さて、講談社学術文庫版は、語釈と解説が充実していますが、やや詳しすぎます。
語釈を無くし、もっと一般の読書人が読みやすくなる構成で、出してほしいです。
さいごに。(ダウンコレクション?)
ユニクロのちらしに「ダウンコレクション」と、大きく出ていました。
その、「ウンコ」の部分だけが、なぜかやたらと目に焼き付いてしまいました。
妻と娘にそのことを話すと・・・なんともいえない冷たい反応でした。
実は、ほかにも「かわいいワンコ」が「かわいい〇ンコ」に見えてしまって・・・
すらすら読める方丈記 [日本の古典文学]
「すらすら読める方丈記」 鴨長明著 中野孝次訳 (講談社文庫)
出家遁世した長明が、体験してきた災厄と自身の思想を記した随筆文学です。
「徒然草」「枕草子」と並び、日本三大随筆のひとつです。鎌倉時代に成立。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。・・・」
冒頭のこの名文を、高校の国語の授業で学習した人は、きっと多いことでしょう。
私もその一人。しかし高校時代には、この作品の魅力が全く分かりませんでした。
そりゃ、そうですよ。若さ爆発の時代に、「無常観」を味わえって言ってもねえ。
ところが今、51歳になって読み返してみると、意外なほどに面白いのです。
年を重ねたためか、長明の放つちょっとした言葉に、しびれてしまうのです。
「世にしたがへば、身、くるし。したがはねば、狂せるに似たり。」
「事を知り、世を知れれば、願はず、走らず。
ただ、静かなるを望みとし、愁へ無きを楽しみとす。」
「おほかた、世をのがれ、身を捨てしより、恨みもなく、恐れもなし。
命は天運にまかせて、惜まず、いとはず。身は浮雲になずらへて、頼まず」
そういえば高校時代に、「隠者になりたい」と言っていた友人がいました。
鴨長明のように、田舎に方丈の庵を結んで、自由に生きたいと言うのです。
10年ほど前に陸上部の集まりで再会した時、彼はIT企業で働いていました。
いわく「残業ばかりで自由な時間など無い」 思うようにいかないものです。
さて、本書は中野の訳と補足説明が、「方丈記」の魅力を増幅させています。
訳は分かりやすく「すらすら読め」て、補足説明には長明への愛があります。
特に、第三部と第四部の補足説明は、鴨長明の生涯を愛おし気に語っています。
長明のことがが好きで好きでたまらない人が、書いたんだなあと思いました。
実は私は最初、角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックスで読みました。
ところが、解説における言い回しに引っかかって、途中でやめてしまいました。
著者は随所で、長明をちくちく批判しています。たとえば、次のような言葉で。
「いかにも苛烈な政権抗争の圏外で、ぬるま湯に浸かって育った長明らしい。」
角川ソフィア文庫版は、図版が多く充実していますが、私には合わなかった。
気になって、アマゾンのレビューを見たら、同じような意見が多かったです。
なお、中野孝次による「すらすら読める」の姉妹編に、「徒然草」もあります。
中野がどのようなコメントをしているか、少し気になります。
また、中野孝次といえば、世捨て人の暮らしを論じた「清貧の思想」でしょう。
バブル崩壊後の1992年に出て、大きな反響を呼び起こしました。再読したい。
さいごに。(走れるようになりました)
昨年の秋に、左ひざの後十字靭帯を損傷し、ずっとリハビリを続けてきました。
ようやく違和感が無くなり、少しずつ走れるようになってきました。
100mは15秒、200mは30秒かかりましたが、走れるようになっただけで有難い。
本を読むことと走ることが、人生における私の大きな楽しみなので。
出家遁世した長明が、体験してきた災厄と自身の思想を記した随筆文学です。
「徒然草」「枕草子」と並び、日本三大随筆のひとつです。鎌倉時代に成立。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。・・・」
冒頭のこの名文を、高校の国語の授業で学習した人は、きっと多いことでしょう。
私もその一人。しかし高校時代には、この作品の魅力が全く分かりませんでした。
そりゃ、そうですよ。若さ爆発の時代に、「無常観」を味わえって言ってもねえ。
ところが今、51歳になって読み返してみると、意外なほどに面白いのです。
年を重ねたためか、長明の放つちょっとした言葉に、しびれてしまうのです。
「世にしたがへば、身、くるし。したがはねば、狂せるに似たり。」
「事を知り、世を知れれば、願はず、走らず。
ただ、静かなるを望みとし、愁へ無きを楽しみとす。」
「おほかた、世をのがれ、身を捨てしより、恨みもなく、恐れもなし。
命は天運にまかせて、惜まず、いとはず。身は浮雲になずらへて、頼まず」
そういえば高校時代に、「隠者になりたい」と言っていた友人がいました。
鴨長明のように、田舎に方丈の庵を結んで、自由に生きたいと言うのです。
10年ほど前に陸上部の集まりで再会した時、彼はIT企業で働いていました。
いわく「残業ばかりで自由な時間など無い」 思うようにいかないものです。
さて、本書は中野の訳と補足説明が、「方丈記」の魅力を増幅させています。
訳は分かりやすく「すらすら読め」て、補足説明には長明への愛があります。
特に、第三部と第四部の補足説明は、鴨長明の生涯を愛おし気に語っています。
長明のことがが好きで好きでたまらない人が、書いたんだなあと思いました。
実は私は最初、角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックスで読みました。
ところが、解説における言い回しに引っかかって、途中でやめてしまいました。
著者は随所で、長明をちくちく批判しています。たとえば、次のような言葉で。
「いかにも苛烈な政権抗争の圏外で、ぬるま湯に浸かって育った長明らしい。」
角川ソフィア文庫版は、図版が多く充実していますが、私には合わなかった。
気になって、アマゾンのレビューを見たら、同じような意見が多かったです。
なお、中野孝次による「すらすら読める」の姉妹編に、「徒然草」もあります。
中野がどのようなコメントをしているか、少し気になります。
また、中野孝次といえば、世捨て人の暮らしを論じた「清貧の思想」でしょう。
バブル崩壊後の1992年に出て、大きな反響を呼び起こしました。再読したい。
さいごに。(走れるようになりました)
昨年の秋に、左ひざの後十字靭帯を損傷し、ずっとリハビリを続けてきました。
ようやく違和感が無くなり、少しずつ走れるようになってきました。
100mは15秒、200mは30秒かかりましたが、走れるようになっただけで有難い。
本を読むことと走ることが、人生における私の大きな楽しみなので。
枕草子 [日本の古典文学]
「枕草子」 清少納言作 坂口由美子訳 (角川ソフィア文庫)
宮廷生活や四季の移ろいを、鋭い観察眼で簡潔に描いた、随筆文学の傑作です。
「源氏物語」の「あはれの文学」に対し、「をかしの文学」と称されています。
「枕草子」は、随筆の古典中の古典です。今さら内容説明は不要でしょう。
中学校や高校で誰もが必ず接してきたと思います。有名な章段は・・・
春はあけぼの、木の花は、鳥は、虫は、ありがたきもの、うつくしきもの。
くらげの骨、逢坂の関、言はで思ふぞ、香炉峰の雪、枕にこそ侍らめ。
「枕草子」といったら「春はあけぼの」。この固定観念がつまらなくしている!
本当に面白いのは、清少納言の、当時の人間関係がしのばれる章段です。
清少納言の出仕のいきさつ、中宮定子の全盛期、道隆の死と伊周の没落・・・
清少納言と則光、清少納言と斉信(ただのぶ)、清少納言と行成・・・
補足説明では、今昔物語なども引用して、知られざる一面を紹介しています。
もと夫の則光は意外とイケメンだったり、父の元輔は意外とお茶目だったり。
しかし、もっとも印象的だったのは、やはり藤原斉信と藤原行成です。
清少納言も、一流の貴公子たちとのやり取りを楽しんでいたんですね。
さて、「NHKまんがで読む古典1 枕草子」は、よくできているマンガです。
内容はもちろん、作者のこと、時代背景、宮中生活等についても分かります。
この中で私が最も気になったのは、ほんの一瞬だけ登場した藤原実方です。
清少納言と藤原の実方は、幼なじみであったという!
実方は、私の憧れの歌人のひとりです。「おくのほそ道」で紹介しました。
「おくのほそ道」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2015-01-16
「むかし・あけぼの」は、「枕草子」の小説で、めちゃくちゃ面白いです。
ある意味、枕草子本の決定版です。2016年に文春文庫から復刊されました。
さいごに。(早めの誕生日プレゼント)
娘の誕生日は9月ですが、すでに早めの誕生日プレゼントを与えました。
6月末に出る「ヘイセイ・ジャンプ」の10周年記念ライブDVD3枚組です。
妻がアマゾンで予約購入しました。6000円ほどの出費でした。
しかし、3パターンあるので、ジャニオタは3種(18000円!)買うんだとか。
(うちの子が、1つで満足してくれて良かった)
宮廷生活や四季の移ろいを、鋭い観察眼で簡潔に描いた、随筆文学の傑作です。
「源氏物語」の「あはれの文学」に対し、「をかしの文学」と称されています。
「枕草子」は、随筆の古典中の古典です。今さら内容説明は不要でしょう。
中学校や高校で誰もが必ず接してきたと思います。有名な章段は・・・
春はあけぼの、木の花は、鳥は、虫は、ありがたきもの、うつくしきもの。
くらげの骨、逢坂の関、言はで思ふぞ、香炉峰の雪、枕にこそ侍らめ。
「枕草子」といったら「春はあけぼの」。この固定観念がつまらなくしている!
本当に面白いのは、清少納言の、当時の人間関係がしのばれる章段です。
清少納言の出仕のいきさつ、中宮定子の全盛期、道隆の死と伊周の没落・・・
清少納言と則光、清少納言と斉信(ただのぶ)、清少納言と行成・・・
補足説明では、今昔物語なども引用して、知られざる一面を紹介しています。
もと夫の則光は意外とイケメンだったり、父の元輔は意外とお茶目だったり。
しかし、もっとも印象的だったのは、やはり藤原斉信と藤原行成です。
清少納言も、一流の貴公子たちとのやり取りを楽しんでいたんですね。
さて、「NHKまんがで読む古典1 枕草子」は、よくできているマンガです。
内容はもちろん、作者のこと、時代背景、宮中生活等についても分かります。
枕草子 (ホーム社漫画文庫―NHKまんがで読む古典 (特5-1))
- 作者: 面堂 かずき
- 出版社/メーカー: ホーム社
- 発売日: 2006/02/01
- メディア: 文庫
この中で私が最も気になったのは、ほんの一瞬だけ登場した藤原実方です。
清少納言と藤原の実方は、幼なじみであったという!
実方は、私の憧れの歌人のひとりです。「おくのほそ道」で紹介しました。
「おくのほそ道」→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2015-01-16
「むかし・あけぼの」は、「枕草子」の小説で、めちゃくちゃ面白いです。
ある意味、枕草子本の決定版です。2016年に文春文庫から復刊されました。
さいごに。(早めの誕生日プレゼント)
娘の誕生日は9月ですが、すでに早めの誕生日プレゼントを与えました。
6月末に出る「ヘイセイ・ジャンプ」の10周年記念ライブDVD3枚組です。
妻がアマゾンで予約購入しました。6000円ほどの出費でした。
しかし、3パターンあるので、ジャニオタは3種(18000円!)買うんだとか。
(うちの子が、1つで満足してくれて良かった)
私家版かげろふ日記 [日本の古典文学]
「私家版かげろふ日記」 杉本苑子 (講談社文庫)
時の権力者藤原兼家との結婚生活における、愛と苦悩を描いた女流日記です。
藤原道綱の母によって書かれたものを、読みやすくアレンジしてあります。
才色兼備で知られた作者は、19歳の時、兼家から熱烈なプロポーズを受けました。
周囲は将来有望な兼家との結婚を喜び、やがてひとり息子の道綱が生まれました。
しかし、蜜月時代は短く、「結ばれてすでに十一、二年・・・。そのあいだの私の
内奥を打ち明けて言えば、一日として物思いのない日はなかった。」という。
その間「うつろひたる菊」「ゆするつきの水」等、有名なエピソードも登場します。
結婚生活への失望、浮気相手への嫉妬、正妻への複雑な心情、我が子への執着・・・
当時の悩める姫君の姿が、とてもリアルに感じられました。
平安貴族の世界に入り込んだようで、興味深く読むことができました。
特に、兼家を身近に感じられて楽しかったです。この男、まったく憎めませんね。
著者が、兼家を憎みながらも、どうしようもなく愛している様子が伝わってきます。
さて、数ある現代語訳の中で本書を選んだのは、断然に分かりやすかったからです。
その読みやすさの理由は、以下のような編集方針にあります。
「冗漫な部分を思い切ってカットし、原作者自身は触れていないけれども政界官界
の動きなどを挿入して、当時の時代背景を知っていただけるよう配慮しました。」
原典では分かりにくい個所が、文章中でとてもさりげなく補足説明されています。
そのため、註を読んで中断したり、不明箇所を読み飛ばしたりすることもないです。
しかも、巻末に「その後のかげろふ日記」が付いています。(これが良かった!)
日記で書かれなかった日々のことが、知ることができて、とても参考になりました。
さいごに。(富士山世界遺産センター)
今年のGWもほとんど仕事で潰れました。働き方改革って、どこの国の話?
唯一休めた4月29日に、富士宮の富士山世界遺産センターに行ってきました。
外観が有名ですが、中では螺旋階段を登りながら富士登山を体験できて面白い。
娘は「富士山に登りたい」と言いました。夏に、一緒に登れるといいのだけど。
時の権力者藤原兼家との結婚生活における、愛と苦悩を描いた女流日記です。
藤原道綱の母によって書かれたものを、読みやすくアレンジしてあります。
才色兼備で知られた作者は、19歳の時、兼家から熱烈なプロポーズを受けました。
周囲は将来有望な兼家との結婚を喜び、やがてひとり息子の道綱が生まれました。
しかし、蜜月時代は短く、「結ばれてすでに十一、二年・・・。そのあいだの私の
内奥を打ち明けて言えば、一日として物思いのない日はなかった。」という。
その間「うつろひたる菊」「ゆするつきの水」等、有名なエピソードも登場します。
結婚生活への失望、浮気相手への嫉妬、正妻への複雑な心情、我が子への執着・・・
当時の悩める姫君の姿が、とてもリアルに感じられました。
平安貴族の世界に入り込んだようで、興味深く読むことができました。
特に、兼家を身近に感じられて楽しかったです。この男、まったく憎めませんね。
著者が、兼家を憎みながらも、どうしようもなく愛している様子が伝わってきます。
さて、数ある現代語訳の中で本書を選んだのは、断然に分かりやすかったからです。
その読みやすさの理由は、以下のような編集方針にあります。
「冗漫な部分を思い切ってカットし、原作者自身は触れていないけれども政界官界
の動きなどを挿入して、当時の時代背景を知っていただけるよう配慮しました。」
原典では分かりにくい個所が、文章中でとてもさりげなく補足説明されています。
そのため、註を読んで中断したり、不明箇所を読み飛ばしたりすることもないです。
しかも、巻末に「その後のかげろふ日記」が付いています。(これが良かった!)
日記で書かれなかった日々のことが、知ることができて、とても参考になりました。
さいごに。(富士山世界遺産センター)
今年のGWもほとんど仕事で潰れました。働き方改革って、どこの国の話?
唯一休めた4月29日に、富士宮の富士山世界遺産センターに行ってきました。
外観が有名ですが、中では螺旋階段を登りながら富士登山を体験できて面白い。
娘は「富士山に登りたい」と言いました。夏に、一緒に登れるといいのだけど。