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デューン 砂の惑星3 [20世紀アメリカ文学]

 「デューン 砂の惑星(下)」フランク・ハーバート作 酒井昭伸訳(ハヤカワ文庫)


 砂の惑星アラキスに移ったアトレイデス家と、ハルコンネン家との闘いの物語です。
 1965年刊。ハヤカワ文庫で全三巻。今回は下巻「第三部 砂の惑星」を紹介します。


デューン 砂の惑星〔新訳版〕 (下) (ハヤカワ文庫SF)

デューン 砂の惑星〔新訳版〕 (下) (ハヤカワ文庫SF)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/01/22
  • メディア: 文庫



 ポールが、ムアッディブとしてフレメンに受け入れられてから、2年が経ちました。
 ポールは守り神となってフレメンを統率し、母のジェシカは教母となっていました。

 18歳のポールは巨大なワームに乗る儀式を終え、フレメンたちと南に向かいました。
 そこで奇しくも、密輸業者として身を隠す旧友ガーニ―・ハレックと再会しました。

 ところがガーニ―は、ジェシカを裏切り者だと思っていたので、殺そうとして・・・
 ポールの見てきた予知の中に、このようなパターンはまったく無かったため・・・

 「未来はーー灰色の暗雲に包まれた未来はーー沸きたつ焦点に向かって全宇宙が転が
 っていく感覚とともに、ポールのまわりに幻影世界のごとくまとわりついている。」
 (P172)

 ポールは伝説のクウィサッツ・ハデラックなのか? いかにしてそれを証明するか?
 ポール率いるフレメン軍団は、サーダカー五個軍団を相手に、どのように戦うのか?

 帝王皇帝シャッダム四世との会見、演算能力者ハワトの最期、教母ガイアとの再会、
 ハルコンネンとの最後の果し合い、そしてポールが皇帝となるための決断・・・

 ラストは怒涛の展開です。ただし、あまりにも展開が急激すぎだと思いました。
 最後はもう少し丁寧に描いてほしかったです。やや尻切れトンボのようでした。

 ポールはメランジを握っているとはいえ、あまりにもあっさり主導権を握りました。
 アトレイデス家を滅ぼした時の、男爵の用意周到さはどこへ行ってしまったのか?

 また、皇帝の娘イルーランは、最後にほんのちょっと登場するだけでした。
 しかし彼女もベネゲセリットであり、ポールの素質を一瞬で見抜くほどの人物です。

 このあとイルーランはどうなるのか? そしてチェイニーはどうなるのか?
 フレメンたちはどうなるのか? ポールは聖戦を防ぐことができるのだろうか?

 良くも悪くも、読後にややもの足りなさがあり、もっと読みたいと感じさせます。
 ぜひ続編の「デューン 砂の惑星 砂漠の救世主」も読んでみたいと思いました。


デューン 砂漠の救世主〔新訳版〕 上 デューン・シリーズ (ハヤカワ文庫SF)

デューン 砂漠の救世主〔新訳版〕 上 デューン・シリーズ (ハヤカワ文庫SF)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2023/04/15
  • メディア: Kindle版



 ところで、このハヤカワ文庫版は、2016年発行の新訳版です。
 ところが「砂の惑星」は、この版が出る前まで何十年も絶版だったのだそうです。

 アメリカのオールタイム・ベストで不動の第1位の本作が、長年絶版だったとは!
 現在、この本がとても読みやすい新訳で刊行されて、我々は本当に幸せです。

 さて、第三巻の最後に付録(報告書のようなもの)が三つついています。
 ここまでを含めて小説です。この部分が意外に面白かったです。

 特に「附録Ⅲ ベネ・ゲセリットの動機と目的に関する報告書」は興味深いです。
 ここを読むと、人類よりさらに高次の力を持つ何者かがいることが分かるのです。

 さいごに。(なんで体育委員?)

 どのクラスも体育委員は運動神経抜群な人ばかりなのに、うちの娘も体育委員です。
 ジャンケンで負けたため、一番どんくさいうちの娘が、クラスを仕切っています。

 昨日の球技大会もつらかっただろうなあ。
 バレーボールのサーブでは、ボールをまともに前に飛ばすこともできないのだから。

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デューン 砂の惑星2 [20世紀アメリカ文学]

 「デューン 砂の惑星(中)」フランク・ハーバート作 酒井昭伸訳(ハヤカワ文庫)


 砂の惑星アラキスに移ったアトレイデス家と、ハルコンネン家との闘いの物語です。
 1965年刊。ハヤカワ文庫で全三巻。今回は中巻「第二部 ムアッディブ」の紹介です。


デューン 砂の惑星〔新訳版〕 (中) (ハヤカワ文庫SF)

デューン 砂の惑星〔新訳版〕 (中) (ハヤカワ文庫SF)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/01/22
  • メディア: 文庫



 アトレイデス公爵が死んで、再びハルコンネン男爵家が、砂の惑星を支配しました。
 ポールと母ジェシカのソプターは砂嵐に入ったので、二人は死んだと思われました。

 ところがふたりは、危ういところを逃れて、砂漠の深奥部を彷徨っていたのです。
 ふたりは砂漠の民フレメンの部隊に発見され、その庇護を受けることとなりました。

 昔からフレメンには、次のような伝承があったのです。
 「ベネ・ゲセリットがきたりて、その息子がわれわれを楽園に導く」と。

 フレメンはジェシカこそ伝承のベネ・ゲセリットであり、巫女であると考えました。
 ただし伝承は、ジェシカが代理闘士を連れていて、決闘で勝つと伝えているのです。

 代理闘士は、弱冠16歳のポールでしかありえません。
 屈強なフレメンの男が、ポールに決闘を申し込み、ポールは受けるしかなく・・・

 中巻に入って、舞台はフレメンの世界である、アラキスの砂漠となりました。
 雰囲気ががらりと変わりましたが、ますます面白くなってきました。

 特に興味深いのは、なぜか急にポールが未来を予知できなくなったことです。
 予知の空白期が訪れ、ふたりは未来に通じる道筋から外れてしまいました。

 「今夜のいずれかの時点において、ポールは意思決定のひとつを通りすぎ、深い未
 知の領域に踏みこんでしまっていたのだ。自分を包みこむ時空域把握している。し
 かし、『ここ』と『いま』の連続体は、神秘的な『場』として存在していた。まる
 で、はるか遠くから谷底を覗きこんだとたん、自分自身の姿を見失ってしまったか
 のようだった。」(P65)

 予知できないということは、今彼らが未来の分岐点に立っているということです。
 それは、ポールとジェシカの行動次第で、未来が大きく変わるということです。

 「ここにはさまざまな可能性が沸きたち、集中している。ここでは、ほんのちょっ
 とした行動でも――片目をまばたきしたり、不用意な発言をしたり、砂を不適切な
 位置に動かしたり、といった程度のことでも――巨大な梃子に力を加えて、既知の
 宇宙を動かすこととなる。」(P220)

 現在、非常に重要な場面に入っています。
 ポールは、かつて何度も予知夢で見てきたフレメンの娘チェイニーと出会い・・・

 クライマックスの決闘でも、ポールは予知能力なしで、つまり自力で戦いました。
 闘いのあと、ポールはあえて予知のヴィジョンとは違うことをして・・・

 終盤、砂漠の中に隠された池が出てきて、フレメンの遠大な計画が垣間見えます。
 そして、ワームとメランジとの意外な関係も、少しずつ見えてきます。

 次は下巻に入ります。さまざまな謎がどのように明かされていくのか楽しみです。
 ポールはいかにして砂の惑星を救うのか? 本当に救うことができるのか?

 さいごに。(許しがたい愚行)

 7/2のストックホルムのダイヤモンドリーグで、信じられない事件がありました。
 400mH のゴールに、環境保護団体(本当に?)のメンバーが乱入したのです。

 彼らは数人で横断幕を広げて、ゴールする選手らを妨害したのです。
 世界最高峰の選手らを愚弄するような行為に、私は腹が立って腹が立って・・・

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デューン 砂の惑星1 [20世紀アメリカ文学]

 「デューン 砂の惑星(上)」フランク・ハーバート作 酒井昭伸訳(ハヤカワ文庫)


 砂の惑星アラキスに移ったアトレイデス家と、ハルコンネン家との闘いの物語です。
 1965年刊。のちにシリーズ化しました。今回は上巻「第一部 砂の惑星」の紹介です。


デューン 砂の惑星〔新訳版〕 (上) (ハヤカワ文庫SF)

デューン 砂の惑星〔新訳版〕 (上) (ハヤカワ文庫SF)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/01/22
  • メディア: 文庫



 ポールは、ベネ・ゲセリット(教団)である母から、特別な教育を授けられました。
 15歳の時に教母による試練に耐えて、特別な存在ではないかと期待されています。

 父アトレイデス公爵は、皇帝の命令で、砂の惑星アラキスに移ることとなりました。
 そこは乾燥して砂漠が広がる荒涼とした地で、貴重な香料メラジンの産地でした。

 前の支配者は宿敵ハルコンネン男爵で、メラジンの利権で私腹を肥やしていました。
 アラキスを手放す気のない男爵は、公爵を破滅させるため巧妙な罠を仕掛けました。

 危険を承知しながらも、アトレイデス公爵家の一族は、砂の惑星に乗り込みました。
 メンタート(演算能力者)のハワトは、あらゆる危険を計算に入れ防備に努めます。

 屋敷の中でポールの命が狙われ、内部に裏切り者がいることが確実となりました。
 怪しいのは医師のユエですが、彼は裏切ることができない条件付けがされています。

 敵の策略もあって、ハワトはポールの母であるジェシカを疑うようになり・・・
 そしてある夜中、シールドが解除されると、あっという間に館は制圧されて・・・

 医師ユエは敵を殺めるため、アトレイデス公爵にどのような仕掛けを施したか?
 ポールと母ジェシカは、どのようにして生き延びることができたのか?

 とにかく面白いです。これまで読まなかったことが悔やまれます。
 この作品は、「20世紀アメリカ文学のベスト40」に入れるべきでした!

 それぞれの章の前に、「ムアッディブを知る」など後世の著作の引用があります。
 その内容がネタバレなので、読者には次の展開が嫌でも分かるようになっています。

 たとえば、ポールはのちにムアッディブと呼ばれる歴史的な人物となっています。
 だからポールが生き残ることが分かっているので、安心して読み進められます。

 そういう意味で、これはSF小説よりも、歴史小説に似ているかもしれません。
 生き残るかどうかよりも、いかにして生き残るのかが、興味深く語られています。

 私にとってもっとも興味深かったのは、この小説の世界です。
 時代は遠い未来ですが、人類は一度、AIとの全面戦争をしていたのです。

 AIに勝るため、ベネ・ゲセリットは精神性を高める訓練を何世紀も積みました。
 そして、ポール・アトレイデスが、待ち望んでいた特別な存在ではないかと・・・

 「ぼくには先々を見通す力がある。常人には見えない地平が見える。起こりうる未
 来への、さまざまな道程が見える」(P464)

 この上巻が、映画のパート1とほぼ重なるようです。
 そして中巻は、ポールの修行時代。いったいどうなるか? 次も楽しみです。

 さいごに。(映画も見てみたい)

 2年前に「デューン 砂の惑星」が上映されたときは、スルーしていました。
 しかし、今回その予告編を見て、絶対見てみたいと思いました。レンタルで。



 なんと、続編もすでに作られているのですね。
 ぜひ見たいです。今度はぜひ映画館で。



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ローマの休日 [20世紀アメリカ文学]

 「ローマの休日」 ダルトン・トランボ原案 百瀬しのぶ訳 (ヴィレッジブックス)


 ローマ訪問中の某国王女が、平凡な新聞記者と忘れられない1日を過ごす物語です。
 1953年に公開の映画は、ヘップバーンのデビュー作にして、彼女の最高傑作です。

 完全ノベライズ化したものが、ヴィレッジブックスから出ていましたが、現在絶版。
 ヘップバーンのカバーのように見えますが、これは帯です。私の本にはありません。


ローマの休日 (ヴィレッジブックス)

ローマの休日 (ヴィレッジブックス)

  • 出版社/メーカー: ソニーマガジンズ
  • 発売日: 2001/12/01
  • メディア: 文庫



 最古の王室の一員であるアン王女は、親善旅行の最後に、ローマを訪問しました。
 19歳の美しい王女は、各地で大歓迎されていますが、疲労は限界に達していました。

 「でも、こんな生活にはもう飽き飽き。ほんとうに欲しいのは贅沢な服や宝石ではな
 くて、自由なのに・・・」(P10)

 少女から大人へ移る途上にいる王女は、自分の立場に迷いと怖れを感じていました。
 あやつり人形でしかない職務にうんざりして、外の世界への憧れを抱いていました。

 その夜、王女は厳重に警備された屋敷から抜け出し、一日のみの冒険が始まります。
 そして、外で寝ていたところを、新聞記者のジョー・ブラッドレーと出会いました。

 この出会いを特ダネとして見ていたジョーは、王女と過ごすうちにしだいに・・・
 王女もまた、ジョーとの冒険を通して、生まれて初めての感情を味わって・・・

 という説明など、野暮かもしれません。
 この映画を知らない人は少ないでしょう。その忠実な小説版です。

 よくこの作品は、ローマでのわずか一日の儚い恋を描いた、などと紹介されます。
 もちろんそのとおりであり、結末部の喪失感は、深い余韻となって心に残ります。

 しかし、それ以上にこの作品は、ふたりの成長の物語です。
 特にアン王女については、この経験を通して、少女から大人へと脱皮していきます。

 ふたりが初めてキスをしたとき、王女は突然自分が違う世界の人間だと気づきます。
 そして、自分には王族の一員としての職務があることを、とても強く自覚しました。

 ジョーもまた王女との恋を通して、特ダネより大切なものがあることに気づきます。
 それは信頼です。ラストの記者会見で、お互いの信頼を確認する場面はすばらしい。

 ショートカットになってさらに輝きを増した王女は、これまでとは違う存在です。
 今後アン王女は、ジョーと過ごした一日を、心の支えにして生きていくのでしょう。

 さて、映画「ローマの休日」は、一度は見ておきたい名画です。
 私は大学生のころ見ました。ただただヘップバーンのキュートさに見とれました。


ローマの休日 [DVD]

ローマの休日 [DVD]

  • アーティスト: オードリー・ヘプバーン
  • 出版社/メーカー: ARC
  • 発売日: 2008/03/10
  • メディア: DVD



 さいごに。(最寄りのコメダ、全席禁煙に)

 コメダでは少しずつ、オール禁煙席の店舗を増やしてきていました。
 そしてとうとう最寄りのコメダでも、全席禁煙となってしまいました。

 私は、喫煙席のカウンターを愛用してきたので、正直に言ってとても残念です。
 全席禁煙になって、入るお客さんが増えて、逆に空気が悪くなったような気も・・・

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宇宙囚人船の反乱 [20世紀アメリカ文学]

 「宇宙囚人船の反乱 / 異次元侵攻軍迫る! キャプテン・フューチャー全集7」
 エドモンド・ハミルトン作 野田昌宏訳 (創元SF文庫)


 フューチャーメンが宇宙を舞台に冒険する、スペース・オペラの全集の第七弾です。
 「宇宙囚人船の反乱」は、「時のロスト・ワールド」と並ぶ傑作と言われています。


宇宙囚人船の反乱/異次元侵攻軍迫る!<キャプテン・フューチャー全集7> (創元SF文庫)

宇宙囚人船の反乱/異次元侵攻軍迫る!<キャプテン・フューチャー全集7> (創元SF文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2005/05/10
  • メディア: 文庫



 「宇宙囚人船の反乱」は、愛機コメットが出てこない異色の作品として有名です。
 囚人たちとの友情や、泣けるラストシーンなど、人間ドラマが読みどころです。

 惑星警察機構の囚人護送船ヴァルカンは、凶悪犯たちを収容しながら進んでいます。
 目指すは冥王星の衛星ケルベルス。警備にジョオン・ランドールが付いていました。

 ジョオンの身を案じたキャプテン・フューチャーもまた、囚人船に乗り込みました。
 そして目的地まであとわずかと迫ったとき、囚人たちの反乱に巻き込まれたのです。

 囚人たちを率いるキム・イヴァンは、船をアルファ・ケンタウリへ向かわせました。
 ところが、ヴァルカン号は小惑星に不時着して、溶岩の中に沈んでしまいました。

 しかもこの小惑星は、二か月後には太陽の潮汐力によって破壊されると言うのです。
 助かる道はただひとつ。フューチャーメンは、宇宙船を建造する決意を固めました。

 「素手で宇宙船をつくろうというのか?」
 弱気から疑念を口にする囚人たちを、キャプテン・フューチャーが励まします。

 「素手だけじゃない、脳だってあるぞ」カーティスが訂正した。「おれたちは、猿
 人がはじめて石斧を使いはじめて以来の知識をたくわえているんだ」(P93)

 キム・イヴァンとフューチャーメンが協力して、宇宙船の建造を始めたが・・・ 
 狂気にとらわれた者、なぜか少しずつ姿を消していく囚人たち・・・

 「小惑星の主」とは何か? 「立方体」は何者か? 食人樹とは?
 宇宙船建造は間に合うのか? 制御剤のカルシウムは手に入るのか?

 手に汗握る終盤の怒涛の展開!
 涙なしには読めない感動のラスト! そして、読後の深い余韻!

 また、悪役のキム・イヴァンが良い味を出していて、作品を奥深くしています。
 何度でも読み返したくなる作品です。絶対にオススメの作品です。

 さて、この本にはもうひとつ「異次元侵攻軍迫る!」が収録されています。
 ところがこちらは、ハミルトンではなく、ジョゼフ・サマクソンの作品です。

 謎の生物スヴァードを操って、次々と星を侵略するゴーマ・ハスと戦います。
 ポイントはゴーマ・ハスが、異次元の宇宙からやってきているというところです。

 「おれは、空間曲率がここより十倍も大きい宇宙からやってきたのだ。おまえがわ
 れわれの宇宙では生きていけないように、おれもこの宇宙では物理的には生きてい
 くことができない」(P380)

 「物質は、次元の枠を越えて二つの宇宙の間を転移することはできない。しかし放
 射線は単なる波動だから、四次元の深淵を隔てていても、われわれの宇宙まで伝わ
 ってくるのだ。(中略)この社会がさまざまな形で発射する放射線が、われわれの
 宇宙に対して深刻な影響を及ぼしていたのだ。」(P301)

 いいですねえ。正しいかどうか分かりませんが、こういう蘊蓄は大好きですよ。
 いかにもハミルトンが書きそうな講釈です。

 また、物語のテーマは「異次元から来た敵との戦い」です。
 「宇宙囚人船の反乱」より、よほどハミルトンらしい作品のように感じました。

 さて、「キャプテン・フューチャー全集」全10巻のうち、5巻を紹介しました。
 どれも、私にとって懐かしくて大事な作品です。

 「全集1」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-04-05
 「全集4」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-06-29
 「全集5」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-07-23
 「全集6」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-11-04

 しかし、まだ紹介していないのがあと5巻あります。
 今後紹介する楽しみが、5巻分も残っていることが嬉しいです。

 さいごに。(かわいい金銅弥勒さま)

 先日の姪の結婚式で東京に行ったついでに、仏像フィギュアのイSムに行きました。
 完全予約制で、1時間自由に見た結果、とてもかわいい子を見つけました。

 野中寺(やちゅうじ)の金銅弥勒菩薩半跏像です。製造終了で、在庫限りとのこと。
 興福寺の阿修羅か広隆寺の半跏思惟を狙ってきたので、迷った末に購入しました。

miroku.png

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狂気の山脈にて2 [20世紀アメリカ文学]

 「狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選」
 H・P・ラヴクラフト作 南條竹則編訳 (新潮文庫)


 タイトル作や「時間からの影」など、重要なクトゥルー神話を含む作品集です。
 前作「インスマスの影」に続く、「クトゥルー神話傑作集」の第二弾です。
 「インスマスの影1」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-11-30
 「インスマスの影2」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-12-03


狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選 (新潮文庫)

狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選 (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/11/28
  • メディア: 文庫



 南極の探検隊が、人類誕生前の超古代文明を発見する「狂気の山脈にて」は傑作です。
 クトゥルー神話を語るうえで外すことができません。すでに前回紹介しました。
 「狂気の山脈にて1」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2022-04-22
 
 「時間からの影」も「狂気の山脈にて」同様、クトゥルー神話上の重要作品です。
 5年間記憶を失っていたピーズリー教授が、当時の自分を調査するという物語です。

 ピーズリー教授はあるとき記憶をすべて失い、同時に全く別の人格が現れました。
 もとに戻ると夢を手掛かりに、わが身に起こったことを次のように解釈しました。

 未知の領域から侵入したはるかに優れた知性が、自分を乗っ取っていたのだと。
 そしてその間、自分は時空を超えて、彼ら「大いなる種族」の体の中にいたのだと。

 「『大いなる種族』の身体は高さ十フィートの巨大な皺の寄った円錐体で、その頂部
 から伸び広がる太さ一フィートの膨張性の肢に、頭や他の器官がついていた。」(P336)

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 しかしそれは、結局ただの夢だったのではないか?
 ところが、オーストラリアの遺跡で彼が見たものは・・・ラストにハッとします!

 「ランドルフ・カーターの陳述」は、墓地における恐怖体験です。
 親友ウォレンは何を見たのか? 彼の身に何が起こったのか?

 ランドルフ・カーターは、この作品をはじめ、5回にわたって登場するそうです。
 彼はまた、夢を介して異世界に行くという特殊能力を持つのだそうです。

 「ピックマンのモデル」は、奇怪で妖しい絵を描く画家ピックマンの物語です。
 「恐怖も現実を見て描かなくては」と言う彼は、いったい何をモデルにしたのか?

 「エーリッヒ・ツァンの音楽」は小品ですが、たいへん印象に残る作品です。
 「私」が大学時代に出会った、エーリッヒ・ツァンというヴィオール弾きの話です。

 異様で妖しい音楽を奏でるツァンは、窓の外にある何かに怯えているようなのです。
 そしてある夜、外から美しい音が響くと、彼は狂ったように弾き始めて・・・

 「ダゴン」は、「インスマスの影」との関連がありそうな「半魚人もの」です。
 ボートで座礁した「私」が、そこで見た一本石には、奇妙な浮き彫がありました。

 「水掻きのついた手と足、ゾッとするほど幅広く、たるんだ唇、どんよりした突き出
 した眼、(中略) それでも全体の輪郭はいやらしくも人間の形をしていた。」・・・

 ほか、「猟犬」「祝祭」など、恐ろしい物語ばかりです。
 しかし、現実的に本当に恐ろしいのは、新型コロナウィルスだったりします。

 ところが、「新型コロナはでっちあげでワクチンは毒だ」と信じている人もいます。
 本当に恐ろしいのは、我々人間の迷妄なのかもしれません。

 ところで、ラヴクラフトのマニアは、創元推理文庫版の全集を読むのだそうです。
 私も少し読んでみましたが、訳が古いせいか、新潮文庫よりも読みにくかったです。


ラヴクラフト全集 1 (創元推理文庫)

ラヴクラフト全集 1 (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/10/25
  • メディア: Kindle版



 さいごに。(トレンド転換か)

 先日モデルナを打った同僚が、副反応が何も出なかったと言って自慢していました。
 周囲の仲間たちも「すごいねー」と称賛していました。

 まさか、トレンドが転換していたとは。今は副反応が出ないことか自慢になるとは。
 そうとは知らず、まじめに副反応を求めていた私は、なんと愚かだったことか!

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狂気の山脈にて1 [20世紀アメリカ文学]

 「狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選」
 H・P・ラヴクラフト作 南條竹則編訳 (新潮文庫)


 タイトル作で代表作の「狂気の山脈にて」は、ラヴクラフトには珍しい中編小説です。
 そのほか「時間からの影」など、重要なクトゥルー神話を含む怪奇幻想小説集です。


狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選 (新潮文庫)

狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選 (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/11/28
  • メディア: 文庫



 「狂気の山脈にて」は、地質学者ダイアー教授の手記という形をとっています。
 ダイアー教授は探検隊の隊長として、化石を採集するために南極にやってきました。

 ところが、別動隊を率いる生物学者のレイク教授が、とてつもない発見をしました。
 未知なる黒い山脈の洞窟の中で、見たこともない奇怪な化石を見つけたのです。

 ヒトデのような形の頭部を持ち、巨大な植物を思わせる姿だったと言うのです。
 しかも背中には羽があり、古代神話で語られる「最先のものら」を思わせたと。

 その中で、無傷で残っていた八体を、レイクがキャンプで解剖を試みたところ・・・
 その後、レイクからの連絡は途絶え、ダイアーは救援に向かいますが・・・

 ダイアーが漆黒の山脈の上で見たものは? レイクのキャンプで見たものは?
 レイクたち隊員に何があったのか? あの奇怪な化石は何だったのか? 

 読み応え充分です。非常に面白かったのですが、非常に疲れました。
 物語の恐怖と、うねるような独特の文体が、我々読者の神経を消耗させます。

 200ページ弱の中編なので、それほど長くはないのですが、とても長く感じました。
 特に緻密な描写が続く場面は、頭の中で想像するのがたいへんでたいへんで・・・

 ところが、「狂気の山脈にて」をもっと手軽に楽しめる方法があるのです。
 ビームコミックスから全4巻で出ているのです。これが本当にすばらしかった!


狂気の山脈にて ラヴクラフト傑作集 コミック全4巻完結セット (ビームコミックス)

狂気の山脈にて ラヴクラフト傑作集 コミック全4巻完結セット (ビームコミックス)

  • 作者: 田辺 剛
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/08/01
  • メディア: 単行本



 レビューの評判が非常に良かったので購入しました。なんといっても絵が良い。
 とてもイメージ湧きました。「百聞は一見にしかず」とはよく言ったものです。

狂気の山脈にて1.jpg
kyouki_3_2.png

 私はこの作品で田邊剛を知りました。
 代表作は「ラヴクラフト傑作集」です。シリーズ全作を読みたいです。

 この作品はみんなにおすすめしたい。
 と思ったら、岡田斗司夫がユーチューブで紹介していました。



 さいごに。(友達ができた)

 娘に友達ができたと言う。よかった。
 近くの席にイケメン君がいると言う。次はイケメン君と仲良くなるのが目標だな。

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クリスマスのフロスト1 [20世紀アメリカ文学]

 「クリスマスのフロスト」R・D・ウィングフィールド作 芹澤恵訳(創元推理文庫)


 仕事はできるが下品極まりないフロスト警部が、数々の事件を解決する警察小説です。
 現在、第六集まで出ている人気シリーズです。本書は、1984年に出た第一弾です。


クリスマスのフロスト (創元推理文庫)

クリスマスのフロスト (創元推理文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1994/09/21
  • メディア: 文庫



 日曜日に、田舎町のデントンで、少女の失踪事件が起きました。
 娼婦アップヒル夫人の8歳の娘トレイシーが、日曜学校から帰らなかったのです。

 翌月曜日、フロスト警部はトレイシー失踪事件の捜査に乗り出しました。
 相棒は、昨日着任したばかりのクライヴ。警察長の甥っ子で新進気鋭の青年です。

 アップヒル夫人宅の捜査、その常連客の特定、トレイシーの友達への聞き込み、
 トレイシーのマフラー発見、と大忙し。おまけに銀行の扉破壊事件も起こり・・・

 わずか一日の内に、フロストは次から次へと行動します。展開がとても速いです。
 私は先が気になって気になって・・・物語の世界にぐいぐい引き込まれました。

 その一方で、主人公フロストに対しては、けっこう厳しい意見があるようです。
 文庫のカバーを見てください。このイラストで拒否反応をおこす人も多いのだとか。

 フロストは、遅刻をするし、仕事を忘れるし、会議をすっぽかすし、部屋を片付けな
 いし、署長の車にぶつけて、しかもそれを隠蔽するし、どうしようもない問題児です。

 そしてフロストの本領を発揮するのは、なんと言っても、お下品な会話や行動です。
 彼は下品な逸話の宝庫であり、場面に応じ最も趣味の悪い逸話を披露できるのが特技。

 ただし、「浣腸は好きかい」と言って、男にも女にも浣腸をするのはいかがなものか。
 私は好きですけどね。でも、このシーンを読んで、引いてしまう女性は多いのでは?

 そういう意味で、フロスト・シリーズは、読む人を選ぶ作品かもしれません。
 その点がもったいないと思います。作品自体はとてもよくできていて面白いのだから。

 だらしなくていいかげんで問題児のフロストですが、不思議と皆から好かれています。
 基本的に悪意やずるさが無く、純粋で人間味があるので、時々ほろりとさせられます。

 「おれがなぜ、銃を持った男に飛びかかっていったと思う? 殺してほしかったから
 だ。だから、飛びかかったのさ。生きていたくなかったんだ。」(P311)

 現在、火曜日の途中まで読みました。浮浪者の死体を発見したり、教会を捜査したり、
 銀行で大金をおろすアップヒル夫人を目撃したり、とうとう霊媒師を訪問したり・・・

 出来事は盛りだくさんですが、事件の解決の糸口はいっこうに現れません。
 トレイシーはどうなった? 誘拐犯は誰? 冒頭で撃たれていたフロストは大丈夫か?

 さいごに。(濃厚接触者の特定作業)

 オミクロンの感染力がハンパなくて、わが町の保健所はとうとう限界です。
 お客様に陽性者が出た場合、濃厚接触者の特定を、職場で行わなければなりません。

 そこで、私たちが聞き取りにかり出されるので、仕事がちっとも終わりません。
 「オミクロンはただのカゼ。気にするのはやめよう。」と、誰か言ってくれないか。

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アンの青春 [20世紀アメリカ文学]

 「アンの青春」 L・M・モンゴメリ作 村岡花子訳 (新潮文庫)


 新任教師として働きながら、村の改善会の活動も行うアンの日常生活を描いています。
 「赤毛のアン」に続いて、1902年に出ました。16歳から18歳のアンを描いています。


アンの青春 赤毛のアン・シリーズ 2 (新潮文庫)

アンの青春 赤毛のアン・シリーズ 2 (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/02/26
  • メディア: 文庫



 16歳半のアンは、プリンス・エドワード島のアヴォンリー小学校で働き始めました。
 目を悪くしたマリラを支えながら、持ち前の明るさで何事も前向きに取り組みます。

 仕事の傍ら、村の改善会を結成して、公会堂のペンキ塗り替えのために奔走します。
 よその小学校で教えているギルバートも、土日は戻ってきてアンと一緒に活動します。

 隣に引っ越してきたハリソンさん。マリラが引き取った双子のデイビーとドーラ。
 そしていつもそばにいるギルバート。いろいろな人と関わりながらアンも成長し・・・

 前作同様「アンの青春」も楽しく読めました。魅力はなんといっても「アン」です。
 どんなときにも明るさを失わず一生懸命なアンの言葉に、読者は元気をもらいます。

 「けっきょく、一番、幸福な日というのは、すばらしいことや、驚くようなこと、胸
 の沸きたつようなできごとがおこる日ではなくて、真珠が一つずつ、そっと糸からす
 べりおちるように、単純な、小さな喜びを次々にもってくる一日一日のことだと思う
 わ」(P276)

 前作の終盤で和解したギルバートは、アンに遠慮して、やや控えめに行動しています。
 そこが少しもどかしかったです。二人の関係の発展は、次作のお楽しみとなります。

 さて、私にとってとても印象的だったのは、アンとギルバートの何気ない会話です。
 特にギルバートがかっこいい。彼は医者になる決意をアンに打ち明けました。

 「僕は病気と苦痛と無知に挑戦するんだ・・・それはみんな、つながり合っている一
 族なんだよ。僕はね、アン、この世界にある、誠実な、貴重な仕事に加わって自分も
 その一部分の使命を果たしたいんだ。世界がはじまって以来、りっぱな人たちが積み
 かさねてきた人間の知識に、たとえわずかでもつけくわえたいんだ。」(P92)

 こんなことを自分の言葉で伝えられるギルバートは、すばらしい。
 また、これに対するアンの言葉もアンらしくてとても良いです。

 「あたしは、自分がこの世に生きているために、ほかの人たちが、いっそうたのしく、
 暮らせるというようにしたいの・・・どんなに小さな喜びでも幸福な思いでも、もし
 あたしがいなかったら味わえなかったろうというものを世の中へ贈りたいの」(P93)

 この物語は、アンとギルバートが、レドモンド大学に出発する直前で終わっています。
 この場面に、今後のふたりの関係が示唆されています。次作が本当に楽しみです。

 「けっきょくロマンスはすばらしい騎士がラッパのひびきも華やかに、自分の生涯に
 あらわれてくるというものではなく、いつのまにか、昔ながらの友達が自分の傍を静
 かに歩いていた、というふうに、忍びよるものかもしれなかった。」(P460)

 アンとギルバート以外にも、読みどころはたくさんありました。
 ハリソンさん夫妻の出来事、ミス・ラヴェンダーの婚姻、ヘスターの庭の逸話・・・

 続く「アンの愛情」では、とうとうアンとギルバートと・・・?
 ぜひ近いうちに読みたいです。


アンの愛情 赤毛のアン・シリーズ 3 (新潮文庫)

アンの愛情 赤毛のアン・シリーズ 3 (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/02/26
  • メディア: 文庫



 さいごに。(幹事長としても)

 私は職場の親睦会の幹事長をしています。
 オミクロン株の感染が拡大したことで、幹事長としての仕事も急に増え始めました。

 送別会の開催が心配になってきましたが、すでにキャンセル料が発生しています。
 今月末には30%に上がります。忘年会同様、難しい判断をしなければなりません。

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20世紀アメリカ文学のベスト40を選びました。 [20世紀アメリカ文学]

 「世界文学全集Ⅺ集 20世紀アメリカ編」


 私のライフワークは、文庫本で自分だけの文学全集をそろえることです。
 その「文学全集」の第Ⅰ集から第Ⅹ集までは、以下のように完成しています。

・ 第Ⅰ集「19世紀フランス編」(20作)・2010年
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-10-23
・ 第Ⅱ集「19世紀イギリス編」(20作)・2011年
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-08-04
・ 第Ⅲ集「19世紀ロシア編」(20作)・・2012年
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2012-12-22
・ 第Ⅳ集「19世紀ドイツ北欧編」(20作)2013年
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-11-09
・ 第Ⅴ集「19世紀アメリカ編」(10作)・2014年
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2014-08-06-1
・ 第Ⅵ集「18世紀編」(10作)・・・・・2015年
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2015-09-25-2
・ 第Ⅶ集「古代編」(20作)・・・・・・・2016年
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-12-27
・ 第Ⅷ集「中世編」(20作)・・・2017年・2018年
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2018-12-25
・ 第Ⅸ集「17世紀編」(10作)・・・・・2019年
 → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2019-10-01
・ 第Ⅹ集「20世紀ラテンアメリカ文学編」(10作)2020年
 → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2020-12-11


 さて、今年2021年は、第Ⅺ集「20世紀アメリカ編」を決定する年です。
 20世紀アメリカ文学で紹介した作品は、以下のとおり100作以上もあります。

 絶対に外したくない作品がちょうど40作だったので、第Ⅺ集は40作とします。
 ちなみに、絶対外したくない作品には●印を付けました。

 なお、モンゴメリはカナダの作家ですが、この中に加えました。
 ナボコフは古典新訳文庫に合わせてロシア文学に分類したので、ここにありません。

 シオドー・ドライサー    「シスターキャリー」00年
               「アメリカの悲劇」25年 ●
 アーネスト・T・シートン  「シートン動物記」1898年~
 ジャック・ロンドン     「荒野の呼び声」03年
               「白い牙」06年
 ジーン・ポーター      「そばかすの少年」04年
 オー・ヘンリー       「賢者の贈り物」など06年 ●
 L・M・モンゴメリ     「赤毛のアン」08年 ●
 ジーン・ウェブスター    「あしながおじさん」12年
 シャーウッド・アンダーソン 「ワインズバーグ・オハイオ」19年
 ヒュー・ロフティング    「ドリトル先生航海記」22年
 ユージン・オニール     「楡の木陰の欲望」24年 ●
               「奇妙な幕間狂言」28年
 スコット・フィッツジェラルド「短編集」20年代 ●
               「偉大なるギャツビー」25年 ●
               「夜はやさし」34年
               「最後の大君」41年
 アーネスト・ヘミングウェイ 「われらの時代に」23年 ●
               「日はまた昇る」26年 ●
               「武器よさらば」29年 ●
               「誰がために鐘は鳴る」40年 ●
               「老人と海」52年 ●
               「海流のなかの島々」70年
 ソーントン・ワイルダー   「サン・ルイス・レイ橋」28年
               「わが町」38年
 トマス・ウルフ       「天使よ故郷を見よ」29年
 ダシール・ハメット     「血の収穫」29年
               「マルタの鷹」30年 ●
               「ガラスの鍵」31年 ●
 ウィリアム・フォークナー  「響きと怒り」29年
               「サンクチュアリ」31年 ●
               「八月の光」32年
               「アブサロム、アブサロム!」36年 ●
 パール・バック       「大地」31年 ●
 アースキン・コールドウェル 「タバコ・ロード」32年 ●
               「神の小さな土地」
 エラリー・クイーン     「エジプト十字架の謎」32年
               「Xの悲劇」32年
               「Yの悲劇」32年
               「エラリー・クイーンの冒険」34年
               「災厄の町」42年 ●
 ロバート・E・ハワード   「英雄コナン」シリーズ 32年
 ヘンリー・ミラー      「北回帰線」34年 ●
 ジェームズ・ケイン     「郵便配達は二度ベルを鳴らす」34年
 マーガレット・ミッチェル  「風と共に去りぬ」36年 ●
 ハワード・F・ラヴクラフト 「インスマスの影」36年 ●
 ジョン・スタインベック   「ハツカネズミと人間」37年
               「怒りの葡萄」39年 ●
               「エデンの東」52年 ●
 エドモンド・ハミルトン   「フェッセンデンの宇宙」37年
               「反対進化」40年代
               「キャプテン・フューチャー」シリーズ 40年 ●
               「さすらいのスターウルフ」67年
 レイモンド・チャンドラー  「大いなる眠り」39年 ●
               「さよなら、愛しい人」40年
               「高い窓」42年
               「リトル・シスター」49年
               「ロング・グッドバイ」53年 ●
 ウィリアム・サロイヤン   「僕の名はアラム」40年
 ウィリアム・アイリッシュ  「幻の女」42年 ●
 ウィリアム・サロイヤン   「ヒューマン・コメディ」43年 ●
 テネシー・ウィリアムズ   「ガラスの動物園」44年 ●
               「欲望という名の列車」47年
 ソール・ベロー       「宙ぶらりんの男」44年
               「この日をつかめ」56年
 カーソン・マッカラーズ   「結婚式のメンバー」46年
 アーサー・ミラー      「セールスマンの死」49年 ●
 トールマン・カポーティ   「夜の樹」49年
               「草の竪琴」51年
               「ティファニーで朝食を」58年 ●
               「誕生日の子どもたち(短編集)」
               「叶えられた祈り」86年
 J・D・サリンジャー    「ライ麦畑でつかまえて」51年 ●
               「ナイン・ストーリーズ」53年
               「フラニーとズーイ」61年
 アイザック・アシモス    「銀河帝国の興亡1」51年 ●
               「黒後家蜘蛛の会」74年
 パトリシア・ハイスミス   「見知らぬ乗客」50年
               「キャロル」52年
               「リプリー」55年 ●
 ジャック・ケルアック    「オン・ザ・ロード」57年 ●
 ロバート・A・ハインライン 「夏への扉」57年 ●
               「月は無慈悲な夜の女王」66年
 ジョン・アップダイク    「走れウサギ」60年(新書)
 ロバート・F・ヤング    「たんぽぽ娘」61年
 ロス・マクドナルド     「ウィチャリー家の女」61年
               「さむけ」64年 ●
 エルモア・レナード     「オンブレ」61年
 ダニエル・キイス      「アルジャーノンに花束を」66年
 フィリップ・ディック    「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」69年 ●
               「ヴァリス」81年
 ロバート・P・パーカー   「ゴッドウルフの行方」73年
               「約束の地」76年
               「初秋」80年 ●
 リチャード・バック     「かもめのジョナサン」74年
               「イリュージョン」77年
 ジェイムズ・P・ホーガン  「星を継ぐもの」78年 ●
               「ガニメデの優しい巨人」78年
               「巨人たちの星」81年
 ポール・オースター     「ガラスの街」85年
               「幽霊たち」86年
 ジョン・アーヴィング    「ホテル・ニューハンプシャー」81年
 カール・セーガン      「コンタクト」86年
 チャールズ・ブコウスキー  「パルプ」94年


 では改めて、●のついた40作を第1巻から順に並べてみます。
 第Ⅺ集は、次のようなラインアップになりました。

 1 オー・ヘンリー「賢者の贈り物」など06年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2014-10-15
 2 L・M・モンゴメリ「赤毛のアン」08年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2014-09-05
 3 シオドー・ドライサー「アメリカの悲劇」25年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-07-11
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-07-14
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-07-17
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-07-20
 4 ユージン・オニール「楡の木陰の欲望」24年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-05-24
 5 スコット・フィッツジェラルド「短編集」20年代 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2014-05-24
 6 スコット・フィッツジェラルド「グレート・ギャツビー」25年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2014-04-25
 7 アーネスト・ヘミングウェイ「われらの時代に」23年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2014-05-02
 8 アーネスト・ヘミングウェイ「日はまた昇る」26年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2014-08-20
 9 アーネスト・ヘミングウェイ「武器よさらば」29年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2014-04-01
10 アーネスト・ヘミングウェイ「誰がために鐘は鳴る」40年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2014-05-20
11 アーネスト・ヘミングウェイ「老人と海」52年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2014-03-23
12 ダシール・ハメット「マルタの鷹」30年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2016-05-19
13 ダシール・ハメット「ガラスの鍵」31年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2016-10-06
14 ウィリアム・フォークナー「サンクチュアリ」31年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2014-11-12
15 ウィリアム・フォークナー「アブサロム、アブサロム!」36年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2014-12-13
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2014-12-19
16 パール・バック「大地」31年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-05-09
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-05-12
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-05-18
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-05-21
17 アースキン・コールドウェル「タバコ・ロード」32年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-03-27
18 エラリー・クイーン「災厄の町」42年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-08-01
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-08-04
19 ヘンリー・ミラー「北回帰線」34年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-03-21
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-03-24
20 マーガレット・ミッチェル「風と共に去りぬ」36年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2019-10-10
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2019-10-17
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2019-10-26
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2019-11-06
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2019-11-16
21 ハワード・F・ラヴクラフト「インスマスの影」36年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-11-30
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-12-03
22 ジョン・スタインベック「怒りの葡萄」39年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2015-01-06
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2015-01-11
23 ジョン・スタインベック「エデンの東」52年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-09-01
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-09-04
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-09-07
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-09-10
24 エドモンド・ハミルトン「時のロストワールド」40年代 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-06-29
25 レイモンド・チャンドラー「大いなる眠り」39年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-01-17
26 レイモンド・チャンドラー「ロング・グッドバイ」53年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-03-12
27 ウィリアム・アイリッシュ「幻の女」42年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2011-04-02
28 ウィリアム・サロイヤン「ヒューマン・コメディ」43年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-04-08
29 テネシー・ウィリアムズ「ガラスの動物園」44年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2012-05-24
30 アーサー・ミラー「セールスマンの死」49年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2014-08-29
31 トールマン・カポーティ「ティファニーで朝食を」58年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2009-12-25
32 J・D・サリンジャー「キャッチャー・イン・ザ・ライ」51年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2014-04-22
33 アイザック・アシモス「銀河帝国の興亡1」51年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-10-25
34 パトリシア・ハイスミス「リプリー」55年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-10-13
35 ジャック・ケルアック「オン・ザ・ロード」57年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-01-29
   https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2021-02-01
36 ロバート・A・ハインライン「夏への扉」57年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2013-06-01
37 ロス・マクドナルド「さむけ」64年 ●
  →https://blog.ss-blog.jp/MyPage/blog/article/edit/input?id=115240396
38 フィリップ・ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」69年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2019-06-11
39 ロバート・P・パーカー「初秋」80年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2013-06-05
40 ジェイムズ・P・ホーガン「星を継ぐもの」78年 ●
  →https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2013-05-24

 以上です。「ヘミングウェイが多すぎだろう」という声が聞こえそうです。
 では、この中で外せる作品があるでしょうか? 文句なく5作採用!

 「名作『天使よ故郷を見よ』が無いじゃないか」という声も聞こえそうです。
 ではこの作品、今後も読み継がれると思えるでしょうか? 文句なく不採用!

 「ノーベル賞作家のソール・ベローの作品が無いじゃないか」という声も。
 同じ理由で不採用! ただし、ウルフとベローは新訳が出たら採用するかも。

 「フォークナーといったら、『響きと怒り』だろ」という声もありそうです。
 そうかもしれません。しかし、私にはまったく良い作品とは思えませんでした。

 「あれだけけなしていた『オン・ザ・ロード』を入れたのはなぜか?」
 なぜでしょう、読み終わって何日もたってからとても愛着が湧いてきたのです。

 そのほかいろいろなご意見がありそうですが、私的にはこの40作がベストです。
 「世界文学全集Ⅺ集 20世紀アメリカ編」は、これにて決定!

 ちなみに、この中からマイ・ベスト5を挙げると、次のようになります。
 あくまで、私の独断と偏見ですが、何度も読み返したい作品ばかりです。

 1位 「武器よさらば」   アーネスト・ヘミングウェイ
 2位 「風と共に去りぬ」  マーガレット・ミッチェル
 3位 「大地」(特に第一部)パール・バック
 4位 「ロング・グッドバイ」レイモンド・チャンドラー
 5位 「星を継ぐもの」   ジェイムズ・P・ホーガン

 さいごに。(明日から年末休暇)

 明日29日から年末休暇に入ります。娘は受験勉強、我々は大掃除三昧です。
 昨年、高圧洗浄機を買ったので、大掃除がちょっと楽しみになりました。


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  • メディア: Tools & Hardware



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