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ティラン・ロ・ブラン 4 [中世文学]

 「ティラン・ロ・ブラン 4」 J・マルトゥレイ作 田澤耕訳 (岩波文庫)


 騎士ティラン・ロ・ブランの愛と冒険を、写実的かつ現実的に描いた長編小説です。
 2016年に岩波文庫から全四巻で出ました。その最終巻の第4巻です。


ティラン・ロ・ブラン 4 (岩波文庫)

ティラン・ロ・ブラン 4 (岩波文庫)

  • 作者: J.マルトゥレイ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/01/18
  • メディア: 文庫



 ティランは、北アフリカのモーロ人たちの間で、めきめきと頭角を現していきます。
 アスカリアヌ王と友情を結び、計略をもってモーロ人の国々を征服していきました。

 敵が穴を掘って城内に侵入するのを、ティランはどのように防いだか?
 さまよう牛の群れを、ティランはどのようにして味方にしたか?

 少ない味方を多く見せるため、ティランは女たちをどのように使ったか?
 北アフリカのモーロ人を、ほとんど支配下に加えたあと、再会した意外な人物は?

 第三巻のもやもやした展開から一転し、イケイケムードの展開で実に面白いです。
 しかし、ギリシャ帝国に帰り、何もかもうまく運んだと思ったそのとき・・・

 「今日、この素晴らしい大将殿が命を落とされるようなことがあったら、一体誰が
 世界の騎士道を代表する者となるのだ!」(P52)

 この言葉が第四巻を象徴しています。ティランの代わりなんていません。
 甥のイポリトが後を継ぎますが、彼はただ老いた皇后と結婚しただけですよ。

 ティランはまさに「騎士道を支えてきた騎士」です。4巻の帯にはこうあります。
 「この騎士が死んでしまえば、この世の騎士道も死滅するであろう」

 解説によるとティランのモデルは、14世紀の傭兵隊長ルジェ・ダ・フローとのこと。
 「アルムガバルス」という傭兵隊を率いて、オスマントルコに抵抗したと言います。

 この傭兵隊もめちゃくちゃ強くて、ギリシア帝国をトルコの脅威から救いました。
 ところが、利用されるだけ利用されたあと、皇帝によってだまし討ちに遭ったとか。

 さて、「ティラン・ロ・ブラン」が書かれたのは、1490年とのことです。
 1453年にはコンスタンチノープルは陥落し、ギリシア帝国が滅亡していました。

 オスマントルコの全盛期だったからこそ、このような小説が求められたのでしょう。
 当時の読者は、物語の中に、古き良き騎士の時代を、虚しく夢見ていたのでしょう。

 さいごに。(トルコ至宝展)

 先日の家族旅行では、乃木坂の国立新美術館の「トルコ至宝展」に立ち寄りました。
 吊るし飾りには、どでかいエメラルドが三つ。豪華さのスケールが違いました。

 また、バラ水を入れる装飾付きの瓶など、騎士道小説でおなじみの物もありました。
 バラ水は気付け薬で、物語では人が倒れるたびに、バラ水の瓶が持ち出されました。

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ティラン・ロ・ブラン 3 [中世文学]

 「ティラン・ロ・ブラン 3」 J・マルトゥレイ作 田澤耕訳 (岩波文庫)


 騎士ティラン・ロ・ブランの愛と冒険を、写実的かつ現実的に描いた長編小説です。
 2016年に岩波文庫から全四巻で出ました。そのうちの第3巻です。


ティラン・ロ・ブラン 3 (岩波文庫)

ティラン・ロ・ブラン 3 (岩波文庫)

  • 作者: J.マルトゥレイM.J.ダ・ガルバ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2016/12/17
  • メディア: 文庫



 前半は、ギリシア帝国の皇女とティランの、少しもやもやするラブ・ロマンスです。
 侍女のプラエールの手引きで、ティランは皇女の寝室に入り込みましたが・・・

 後半は一転して、出陣したティランの船が大嵐に遭って、難破してしまう展開です。
 北アフリカに着いたティランはモーロ人に仕え・・・プラエールも流されて・・・

 第4巻ではプラエールの存在が光ります。ティランの皇女への恋を煽る言葉がいい。
 「まず罪を犯し、それから悔い改めればいいのだということをご存知ないのですか?」

 皇女のもとにはピウダ・ラプザダという悪女がいて、ティランの陰口をたたきます。
 皇女は、彼女のえげつない嘘を平気で信じてしまいますが、14歳だから仕方ないか。

 ところがティランもまた、ピウダ・ラプザダの小賢しい計略にはまってしまいます。
 そりゃないでしょう。この巻のティランはカッコ悪すぎです。出陣前に足を折るし。

 一方、「想いを遂げるためなら悪魔に魂を奪われてもかまいはしない。」とピウダ。
 ピウダは、気持ちが良いくらい悪を貫徹させていて、闇の魅力を放っています。

 第三巻の大半は、宮廷内のどうでもいいおしゃべりがえんえんと続き、退屈します。
 当時の読者は、皇帝・皇后・皇女・騎士らを身近に感じて、楽しめたのでしょうか。

 しかし後半、というより終盤、ティランが出陣してから、劇的に展開が変わります。
 舞台が北アフリカに移ってから、ティランも物語も本来の輝きを取り戻しました。

 第四巻は、いよいよ最終巻です。
 このあと、怒涛の展開だと聞いています。楽しみです。

 さいごに。(またムキになってしまった)

 娘に、「嵐のメンバーは誰か」と言われたのですが、4人しか言えませんでした。
 そこで「嵐のメンバーぐらい、全員言えないと恥ずかしいよ。」と言われました。

 「それならドリフを全員言ってみろ。これは教養問題だぞ。」と言ってやると、
 うちの娘は、志村とカトちゃんしか知らないので、その一言で黙りました。(笑)

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ティラン・ロ・ブラン 2 [中世文学]

 「ティラン・ロ・ブラン 2」 J・マルトゥレイ作 田澤耕訳 (岩波文庫)


 騎士ティラン・ロ・ブランの愛と冒険を、写実的かつ現実的に描いた長編小説です。
 2016年に岩波文庫から全四巻で出ました。そのうちの第2巻です。


ティラン・ロ・ブラン 2 (岩波文庫)

ティラン・ロ・ブラン 2 (岩波文庫)

  • 作者: J.マルトゥレイ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2016/11/17
  • メディア: 文庫



 コンスタンチノーブルからシチリア王に、ティランの助力を請う手紙が来ました。
 皇帝じきじきの依頼にティランは喜んで承諾し、さっそく帝国に赴きました。

 コンスタンチノーブルに着くと、皇帝はその場でティランに元帥の杖を渡しました。
 「そちに帝国全体を任せ、そちを軍と司法を統率する元帥に任命しようぞ」

 元帥となったティランは、寝台に寝ていた皇女カルマジーナ姫に一目惚れしました。
 「恋をしているんだ」と言って、目からぽろぽろ涙を流し始めるティラン・・・

 今までにない展開です。そして、ティランと姫の会話がぐだぐだ入ります。
 喜んだり、悲しんだり、怒ったり、謝ったり。茶番はやめて、とっとと出陣しろ!

 戦場では、味方であるマケドニア公爵に、妨害されたり、命を狙われたりします。
 卑劣で強欲でずる賢いサイテーな公爵。だが、こういう人物が物語を面白くする。

 早く死んでくれ、早く死んでくれ、と思うのですが、マケドニア公爵はしぶとい。
 しかし、いなくなってしまうと寂しい。こういう悪役は、物語には必要なのですね。

 一方、敵陣のアブダラー・ソロモンとは、敵味方を超えた微妙な交流が始まります。
 敵でありながら善良であっぱれな騎士。こういう人物が、物語を格段に面白くする。

 アブダラー・ソロモンは、ティランらの求めに応じて、心からの助言を与えます。
 彼の話は次第に熱がこもってきます。また、時にはなかなか洒落たことも言います。

 「結局のところ、この世は危険と苦難が載った食卓のようなものだ、ということを
 悟ることが大事です。その食卓に軽々しく着いてはなりません。」(P209)

 ところで、第二巻における名場面(迷場面)の第一は、皇女の肌着の場面でしょう。
 ティランいわく、あなたの肌着をいただきたい、この手で脱がせていただきたいと。

 与える皇女も皇女です。ティランはその肌着を、鎧の上からまとってしまう(!)。
 皇帝は、ティランの姿を見て、「我が元帥よ、その陣羽織はいったい何だ?」・・・

 なお、第二巻の最後で、なぜかアーサー王が、ちらっと登場します。
 ここだけ幻想的で異質な場面でした。アーサー王の登場にはどんな意味があるのか?

 さて、第三巻では、後半から全く新しい展開となり、ぐっと面白くなると言います。
 ちょっと楽しみです。

 さいごに。(「おら」は誰のせい?)

 最近自分のことを「おら」と言ってしまうことが多くて、不思議に思っていました。
 謎が解けました。職場の近くの席の年配の方が、よく「おら」と言っているのです。

 私が、「おら」と言ってしまうのは、あの人の口癖が移ってしまっていたのだ!
 妻には「おら」禁止令を出されました。「おじさん化 ストップ運動」だとか。

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ティラン・ロ・ブラン 1 [中世文学]

 「ティラン・ロ・ブラン 1」 J・マルトゥレイ作 田澤耕訳 (岩波文庫)


 騎士ティラン・ロ・ブランの愛と冒険を、写実的かつ現実的に描いた長編小説です。
 「ドン・キホーテが読みふけり正気を失う原因となった世界一の騎士道小説」です。

 2016年に岩波文庫から刊行されました。1冊1200円前後なので4巻で4800円です。
 かつて広辞苑のような分厚いで、17280円で出ていたことを考えるとお買い得です。


ティラン・ロ・ブラン 1 (岩波文庫)

ティラン・ロ・ブラン 1 (岩波文庫)

  • 作者: J.マルトゥレイ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2016/10/19
  • メディア: 文庫



 イングランド王とフランス王女との婚約が決まり、武術試合の開催が決まりました。
 ティラン・ロ・ブラン一行は、宮廷に行く途中、隠者から様々なことを学びました。

 婚礼の祝宴からの帰途、再び隠者を訪れた一行は、ティランの活躍を語ります。
 ティランはいかに戦い、いかに勝ったか。いかにして、最高の騎士の称号を得たか。

 世界中にその名を鳴り響かせたティランは、その後ロードス島の救援に向かいます。
 モーロ人の包囲網を突破し、奇策を用いてモーロ人を撤退させ・・・

 イングランドへ、シチリア島へ、ロードス島へ、フランスへ・・・
 さすが、ドン・キホーテを狂わせた物語。ティランの八面六臂の活躍はありえない。

 ところがこの物語は、当時の騎士道物語に比べては、とても現実的なのだそうです。
 そう言われると、確かに「アーサー王」と違って、魔法使いや妖怪は出てきません。

 そして、宮廷生活や武術試合などの描写が、細かすぎるぐらい細かくてリアルです。
 このリアルさは作品の価値を高めていますが、同時に物語を退屈にもしています。

 婚礼の祝宴の様子をえんえんと語ったり、宮廷の食事の場面をいちいち述べたり。
 物語の展開上、必要でしょうか? 当時の資料としては、重要かもしれませんが。

 また、会話文が多いのも特徴です。おしゃべりが長くて、なかなか先に進みません。
 ごちゃごちゃ言ってないでさっさと戦えと、何度か叱りつけたくなりました。

 ところで、第一巻で最も面白かったのは、冒頭の「隠者王」の活躍の部分でした。
 ウォーウィック伯ウィリアムは、いかにしてイングランドを救ったか・・・

 勝手ながら私は、隠者がティランの父親だと思い、劇的な展開を予想していました。
 しかしティランと血筋の関係はなく、途中で退場してしまうので、少し驚きました。

 さて第二巻では、ティランが恋に落ち、いよいよ恋愛ロマンスが始まると言います。
 恋の相手は、なんとコンスタンチノーブルの皇帝の娘?!・・・楽しみです。

 さいごに。(アイスティーしか飲まなくなった理由)

 仕事が早く終わってカフェに寄るとき、最近はアイスティーしか飲みません。
 その理由は、私の場合、コーヒーを飲むと眠くなって、本が読めなくなるからです。

 ブラックで飲めなくて、砂糖をたっぷり入れてしまうのが、悪いのかもしれません。
 アイスティーはシロップを入れないで飲むためか、本を読んでも眠くならないです。

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中世文学のベスト20を選びました2018 [中世文学]

 「文学全集 第Ⅷ集 中世編」


 私のライフワークは、文庫本で自分だけの文学全集をそろえることです。
 その「文学全集」の第Ⅰ集から第Ⅵ集は、以下のように完成しています。

 第Ⅰ集「19世紀フランス編」(20作)・2010年
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-10-23

 第Ⅱ集「19世紀イギリス編」(20作)・2011年
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-08-04

 第Ⅲ集「19世紀ロシア編」(20作)・・2012年
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2012-12-22

 第Ⅳ集「19世紀ドイツ北欧編」(20作)2013年
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-11-09

 第Ⅴ集「19世紀アメリカ編」(10作)・2014年
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2014-08-06-1

 第Ⅵ集「18世紀編」(10作)・・・・・2015年
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2015-09-25-2

 第Ⅶ集「古代編」(20作)・・・・・・・2016年
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2016-12-27

 昨年2017年と今年2018年の2年間は、第Ⅷ集「中世編」選出の年でした。
 昨年暫定的に決めた、中世編の西洋文学の収録候補は以下のとおりです。

 「アラビアン・ナイト(選集)」「ベーオウルフ」「ローランの歌」
 「ニーベルンゲンの歌」「エル・シードの歌」「神曲」「デカメロン」
 「カンタベリー物語」「アーサー王の死(選集)」
 「ガルガンチュア」と「パンタグリュエル」「エルサレム解放」

 選出の経緯については、以下のページを参照してください。
 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2017-12-26
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2017-12-28

 以上、西洋の作品に、東洋の中世文学を加えて、決定版を作ります。
 今年2018年までに紹介した、東洋の中世文学は、以下のとおりです。

 「遊仙窟」「西遊記」「金瓶梅」「水滸伝」「捜神記」「唐詩」「封神演義」
 「十八史略」「三国志演義」「源氏物語」「とりかえばや物語」「落窪物語」
 「日本書紀」「古事記」「竹取物語」「万葉集」「伊勢物語」「徒然草」
 「西行物語」「かげろふ日記」「枕草子」「方丈記」「今物語」「平家物語」

 中国四大奇書「西遊記」「金瓶梅」「水滸伝」「三国志演義」は外せません。
 史書の集大成的な作品である「十八史略」も、個人的には絶対入れたいです。

 また、8世紀においてすでに洗練の極みに達した「唐詩」も入れたいです。
 以上で、中国文学から6作。「捜神記」等は収録できそうにありません。

 日本の古典では、「源氏物語」と「平家物語」は絶対に外せないでしょう。
 まだ紹介していませんが、物語集の集大成である「今昔物語集」も入れたい。

 以上で、ちょうど中世文学は20作になります。日本文学からは3作。
 「伊勢物語」「徒然草」「枕草子」等は収録できそうにありません。

 しばし待て。騎士道小説の傑作「ティラン・ロ・ブラン」が入っていない!
 岩波文庫から出た時から、読まないうちに私の中では採用されている作品です。

 これで21作。どの作品を外すか? 考えた末「水滸伝」を外すことにしました。
 中国四大奇書の中では、個人的には最も弱い作品でした。(抄訳だったから?)

 以上で、「文学全集 第Ⅷ集 中世編」が決定しました。
 収録作品と採用の文庫は、以下のとおりです。

 1「アラビアン・ナイト(選集)」(9世紀頃・イスラム)岩波少年文庫2冊
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2017-11-04

 2「ベーオウルフ」(1000年頃・英)岩波文庫
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2014-08-20-1

 3「ローランの歌」(11世紀・仏)ちくま文庫
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2017-01-14

 4「ニーベルンゲンの歌」(1205年頃・独)ちくま文庫2冊
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-05-11-1

 5「エル・シードの歌」(1207年頃・西)岩波文庫
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2017-03-03

 6「神曲」ダンテ(1308年頃・伊)河出文庫3冊
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-08-10
   https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-08-16

 7「デカメロン」ボッカッチョ(1353年・伊)河出文庫3冊
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2017-07-01
   https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2017-08-04
   https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10

 8「カンタベリー物語」チョーサー(14世紀・英)岩波文庫3冊
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2017-09-22
   https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2017-10-26

 9「アーサー王の死(選集)」マロリー(15世紀後半・英)ちくま文庫
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2017-02-10

10「ティラン・ロ・ブラン」J・マルトゥレイ(1490・西)岩波文庫4冊
 → 未読

11「ガルガンチュア」と「パンタグリュエル」ラブレー2冊
  (1534年1532年・仏)ちくま文庫
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2017-12-08
   https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2017-12-21

12「エルサレム解放」タッソ(1581年・伊)岩波文庫
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-08-01

13「中国名詩選(中)」(8世紀・中)岩波文庫
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2018-05-12

14「源氏物語」紫式部(11世紀初頭・日)新潮文庫3冊
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2011-02-19

15「今昔物語集(抄訳)」(12世紀)ちくま文庫
 → 未読

16「平家物語」(13世紀初頭)岩波現代文庫2冊
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2018-12-22

17「三国志演義」羅貫中(14世紀・中)講談社学術文庫4冊
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2018-10-16
   https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2018-11-01
   https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2018-11-16
   https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2018-12-01

18「十八史略」曾先之(14世紀・中)徳間文庫5冊
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2018-05-27
   https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2018-09-16

19「西遊記(抄訳)」呉承恩(16世紀・中)光文社文庫2冊
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2018-02-02
   https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2018-02-08

20「金瓶梅(抄訳)」蘭陵笑笑生(16世紀末・中)ちくま文庫
 → https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2018-02-11
   https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2018-03-03
   https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2018-03-18
   https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2018-04-05

 「ティラン・ロ・ブラン」と「今昔物語」については、来年読みたいです。
 「源氏物語」は、林望の「謹訳」が全て文庫化されたら読み直したいです。

 さいごに。(プレゼントがいらない理由)

 娘が、クリスマスプレゼントはいらないと言ったのには、理由がありました。
 今後、新しくHei! Say! JUMPの何かが出た時、それを買ってほしいからです。

 突然ライブのDVD等が出たとき、「クリスマスプレゼント代わりに買って」と、
 そう言うつもりらしいです。なるほど。そういうことだったのか・・・

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三国志演義4 [中世文学]

 「三国志演義(四)」 羅貫中 井波律子訳 (講談社学術文庫)


 魏呉蜀の三国時代を舞台にした講談を、明時代にまとめて成立した歴史小説です。
 ここでは、最も新しい講談社学術文庫(全4巻)の井波律子訳を紹介します。


三国志演義 (四) (講談社学術文庫)

三国志演義 (四) (講談社学術文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/12/11
  • メディア: 文庫



 講談社学術文庫版(四)には、第九十一回から第百二十回までが収められています。
 出師の表、北伐、街亭の敗北、趙雲の死、諸葛孔明の死、司馬仲達の死、蜀滅亡・・・

 この巻が最終巻です。すでに第三巻で、劉備・関羽・張飛は亡くなっていました。
 だから、この巻はおまけだと思っていたけど、とんでもない! 結構面白かったです。

 特に前半、蜀の諸葛孔明と魏の司馬仲達との駆け引きは、大きな読みどころでした。
 孔明の反間の計、街亭の戦い、五丈原の戦い、死せる孔明生ける仲達を走らす・・・

 5回にわたる北伐の中で、蜀も魏も完全に世代交代し、巻の後半は終焉に向かいます。
 後半の読みどころは、姜維(きょうい)と鄧艾(とうがい)の駆け引きでしょう。

 魏呉蜀が、戦いでなく、お家騒動で衰退していく過程は、なんとも寂しい限りです。
 終盤でキラリと光るエピソードが、陸抗と羊祜(ようこ)の不思議な信頼関係です。

 敵に贈られた酒を疑うことなく飲む羊祜。敵から贈られた薬を疑うことなく飲む陸抗。
 敵味方を超えて、お互いにリスペクトし合う二人。この「男の世界」にしびれます!

 さて、この巻の中で、私が最も興味深く思った人物は、裏切り者の魏延です。
 忠義の将が多い蜀では、異色の存在ですが、魏延のことを考えると悲しくなります。

 劉備のために働きながら、「反骨の相」ゆえに、孔明に斬られそうになりました。
 蜀のために活躍しながらも、孔明からは裏切るのではないかと、疑われ続けました。

 それゆえ魏延は、劉備の取り巻きになじめず、孤独を感じていたのではないか?
 もしかしたら、孔明は、魏延が裏切るようにしむけてしまったのではないか?

 孔明が反骨の相などにこだわらず、心から信頼していたら魏延は変わったのでは?
 暖かい触れ合いがあったら、魏延は自分自身を成長させることができたのでは?

 思うに、魏延は最初から見限られていたため、成長する機会を与えられなかった。
 魏延を生かせなかったことが、孔明の最大の失敗だったように思えてしまいます。

 ところで、三国志演義全4巻を読み通すにあたって、参考にした本があります。
 三国志ナビ(新潮文庫)です。

 主な戦いについて、流れが地図で示されていて、とても分かりやすいです。
 できれば全120回のあらすじを入れてもらえると、さらに良かったです。


三国志ナビ (新潮文庫)

三国志ナビ (新潮文庫)

  • 作者: 渡邉 義浩
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/01/29
  • メディア: 文庫



 さいごに。(会話に入れない)

 娘と妻でジャニーズの会話になると、時々わけのわからない言葉が飛び交います。
 「セクゾ」とか「ディーディー」とか「タンオリ」とか・・・会話に入れません。

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三国志演義3 [中世文学]

 「三国志演義(三)」 羅貫中 井波律子訳 (講談社学術文庫)


 魏呉蜀の三国時代を舞台にした講談を、明時代にまとめて成立した歴史小説です。
 ここでは、最も新しい講談社学術文庫(全4巻)の井波律子訳を紹介します。


三国志演義 (三) (講談社学術文庫)

三国志演義 (三) (講談社学術文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/11/11
  • メディア: 文庫



 講談社学術文庫版(三)には、第六十一回から第九十回までが収められています。
 益州と漢中支配、関羽の死、張飛の死、曹操の死、蜀建国、呉に敗北、劉備の死・・・

 第三巻の前半は、劉備が益州と漢中を支配し、一大勢力となった全盛期を描きます。
 しかし後半は、関羽が死に、張飛が死に、劉備も死に、いっきに衰退へ向かいます。

 また、この巻では曹操も死に、これまで物語の中心人物たちが一気に退場しました。
 魏では曹丕が、蜀では諸葛孔明が中心となり、物語の大きな転換点を迎えました。

 さて私はこれまで、関羽は完璧な人、張飛はおっちょこちょい、と思っていました。
 しかし第三巻を読んで、私の持っていた二人のイメージが、大きく覆されました。

 特に張飛は、「義によって厳顔を許す」ことで、劉備の危機を救いました。
 また、酔ったふりをして敵を欺くなど、並みの人物ではできない計略を用いました。

 おそらく張飛は、劉備・関羽・孔明に感化され、この時期に急成長したのでしょう。
 そしてこの時期、4人の歯車が一番かみ合っていたからこそ全盛期を迎えたのです。

 しかしそれもつかのま、意外にも、完璧なはずの関羽から、ほころびが生じました。
 関羽の慢心によって荊州は取られ、関羽は関平とともに斬られてしまいました。

 桃園の誓い以来、三人は一体ですから、一人が死ねば他の二人も崩れてしまいます。
 これが義兄弟で行動することの限界でしょう。張飛も劉備もすぐ後を追ってしまう。

 私は、この三人が死んだ場面で、「三国志演義」は終わっても良かったと思います。
 南蛮を攻略し、五丈原で戦い、蜀が滅亡する過程は、この物語のおまけですよ。

 しかしあと三十回分も物語を残しています。「三国志演義」は第四巻へと続きます。
 ここまで読んだのだから、もちろん最後まで読みます。

 余談ですが、第三巻は転換点なので、人物が次から次に入れ替わってたいへんです。
 冒頭の登場人物リストは10ページにわたっていて、眺めるだけで酔ってしまいそう。

 さいごに。(超ムーの世界)

 毎週日曜日の20時から、BS12で「超ムーの世界R」が放送されています。
 宇宙人が人類を監視しているとか、UFOは異次元からやってくるとか・・・

 毎回私が感心しながら番組を見て、娘と妻は呆れながらそんな私を見ています。
 久しぶりにオカルト雑誌「ムー」を買ってみようかと思っています。


ムー 2018年 12 月号 [雑誌]

ムー 2018年 12 月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 学研プラス
  • 発売日: 2018/11/09
  • メディア: 雑誌



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三国志演義2 [中世文学]

 「三国志演義(二)」 羅貫中 井波律子訳 (講談社学術文庫)


 魏呉蜀の三国時代を舞台にした講談を、明時代にまとめて成立した歴史小説です。
 ここでは、最も新しい講談社学術文庫(全4巻)の井波律子訳を紹介します。


三国志演義 (二) (講談社学術文庫)

三国志演義 (二) (講談社学術文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/10/11
  • メディア: 文庫



 講談社学術文庫版(二)には、第三十一回から第六十回までが収められています。
 三顧の礼、天下三分の計、赤壁の戦い、荊州四郡の獲得、潼関の戦い、そして入蜀。

 この巻で圧倒的な存在感を示すのは、なんといっても諸葛孔明です。さすが伏龍!
 特に赤壁の戦いでは、一夜で10万本の矢を得、三日で東風を呼び起こしました。

 ところが、物語を彩るこれらのエピソードは、どちらも虚構なのだそうです。
 かつて読んだ吉川英治版では、これらの場面がとても印象的だったのですが。

 ところで、年をとったせいか、今回読み直してみると孔明の計略が鼻につきました。
 荊州に居座って言を左右し、魯粛を振り回す場面は、あまり紳士とは言えません。

 諸葛孔明は、魯粛の善良さに付け入ったとしか思えません。実に身勝手ですよ。
 劉備がグズだから、軍師として仕方なくやったことなのかもしれませんが・・・

 その一方で非常に好感が持てたのが、お人好しと言っていいほど善良な魯粛でした。
 魯粛は呉に忠義を尽くすのはもちろん、ライバルの劉備にも誠実に振る舞います。

 周瑜と孔明の間を、右往左往するところは、善良すぎてまるで道化のようです。
 しかし決して笑えません。こんな良い人を苦しめる孔明に違和感を覚えました。

 さて、孔明に次いで印象的な人物が、周瑜です。彼こそ、呉の国の大黒柱でしょう。
 赤壁の戦いの勝利は、なんといっても周瑜の苦肉の計と水軍があったからこそです。

 蔣幹にわざと手紙を盗ませる(演義の虚構だというが)場面など、実に周瑜らしい。
 呉の天下統一のための壮大な計画を抱いていた点でも、並みの人物ではありません。

 卑怯な手段で孔明の命を狙っていたのも、誠心誠意呉のためを思っていたからこそ。
 36歳で病死してしまったのがもったいないです。もっと活躍してほしかったです。

 第60回で、「三国志演義」はちょうど半分。今ようやく、劉備が蜀に入りました。
 これで、三国鼎立の基礎ができつつあります。後半も楽しみです。

 さいごに。(修学旅行に出発)

 今朝、娘は、小学校最大のイベントである修学旅行に出発します。
 昨夜、持ち物の最終チェックを、何度も何度もしていました。

 行き先の不満はあるようですが、それでもやはりとてもワクワクしているようです。
 楽しい思い出をたくさん作って帰ってきてほしいです。

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三国志演義1 [中世文学]

 「三国志演義」 羅貫中 井波律子訳 (講談社学術文庫)


 魏呉蜀の三国時代を舞台にした講談を、明時代にまとめて成立した歴史小説です。
 中国四大奇書の筆頭です。日本では吉川英治の小説や横山光輝の漫画で有名です。

 講談社学術文庫(全4巻)から出ている井波律子訳が、最も新しい訳です。
 文章はとても分かりやすいです。魅力的な挿し絵が1回に2枚ずつ入っています。


三国志演義 (一) (講談社学術文庫)

三国志演義 (一) (講談社学術文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/09/11
  • メディア: 文庫



 私は大学生の頃、講談社文庫から出ていた吉川英治の「三国志」を読みました。
 社会人になってすぐ、コミックで出始めた横山光輝の「三国志」を読みました。

 どちらもとても面白くて、夜に読み始めると、よく徹夜になってしまいました。
 だから、私にとって「三国志」といったら、吉川栄治版の「三国志」でした。

 あれから30年近くたって、ようやく羅貫中の「三国志演義」を読み始めました。
 原典はとっつきにくいかと思いきや、これまた、めちゃくちゃ面白いです。

 「三国志演義」は、明時代に古くからある多くの講談をまとめて成立しました。
 だから、ストーリーも膨大なもので、全120回となっています。

 講談社学術文庫版の(一)には、第一回から第三十回までが収められています。
 桃園の誓い、黄巾の乱、董卓の乱、曹操・孫策・劉備の台頭、そして官渡の戦い。

 この巻で最も存在感があるのは曹操です。まさに「治世の能臣、乱世の奸雄」。
 天下統一という壮大な目的のためには、「ためらわず、手段を選ばず」です。

 曹操の人物を象徴する有名な逸話が、恩人呂伯奢(りょはくしゃ)の殺害です。
 「私が天下の人を裏切ろうとも、天下の人に私を裏切るような真似はさせぬ」

 この事件で陳宮と袂を分かちますが、曹操と陳宮との関わりが実に味わい深い。
 呂布を補佐する陳宮を苦々しく思いながらも、曹操は受けた恩を忘れなかった。

 曹操が陳宮を助けたいと思いながらも、泣きながら斬るところは名場面です。
 こういう男気に、我々男どもはしびれてしまうのです。

 また、曹操が敵将である関羽を降伏させ、自軍で大切に扱う場面も印象的です。
 結局関羽は立ち去りますが、曹操が関羽との関わりで得たものは大きかった。

 「貴公はわしの友人、上下関係などない」と、敵で無官の許攸を迎えました。
 このような対応は、関羽との触れ合いで養われたものだと、私は考えています。

 そして許攸が加わったことで、曹操は天下分け目の官渡の戦いに勝利しました。
 第1回から第30回までの間に、曹操の勢力も曹操自身も本当にでっかくなった。

 極めつけは第30回の最後で語られる、スパイの証拠文書を焼く場面でしょう。
 よほど器が大きな人間でなければ、できることではありません。

 一方で、劉備のスケールはひと回り小さい。彼はただのお人よしにすぎません。
 それどころか、時々「アホか」とつっこみたくなってしまいます。

 例えば、陶謙に徐州を譲られたにもかかわらず、あっさり呂布に譲ろうとする。
 のちには呂布に乗っ取られる。だからこそ、関羽と張飛が引き立つのだけれど。

 ところで、この本に掲載されている挿し絵は、すべてかわいらしいです。
 中でも呂布は、なぜか実にかわいいです。P382の呂布なんてサイコーです。

 さいごに。(声をかけないで)

 先日、朝の旗振り当番がありました。娘は小6なので、おそらくこれが最後です。
 娘には、「恥ずかしいから、みんなの前で声をかけないで」と言われていました。

 ところが娘の集団が来たとき、嬉しくなって思わず「オッス」と言ってしまった。
 それだけなのに、娘からは「すごく恥ずかしい思いをした」と言われました。
 小さい頃は、「パパ!」と言って、手を振ってくれたものですが・・・

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十八史略2 [中世文学]

 「十八史略3・4・5」 曾先之著 丸山松幸・西野広祥訳 (徳間文庫)


 伝説時代から南宋までの18の史書を、簡潔にまとめた中国歴史の入門書です。
 14世紀前半に曾先之によって作られ、明の陳殷によって注釈が施されました。


十八史略〈3〉梟雄の系譜 (徳間文庫)

十八史略〈3〉梟雄の系譜 (徳間文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: 文庫



十八史略〈4〉帝王の陥穽 (徳間文庫)

十八史略〈4〉帝王の陥穽 (徳間文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2007/01/06
  • メディア: 文庫



十八史略〈5〉官僚の論理 (徳間文庫)

十八史略〈5〉官僚の論理 (徳間文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2007/02
  • メディア: 文庫



 第一巻と第二巻については、すでに紹介しました。
 「十八史略1」→ https://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2018-05-27

 第三巻は、後漢滅亡から、三国鼎立を経て、晋統一ののち、再び混乱の時代へ。
 世が混乱してくると、目まぐるしく社会が変わるため、頭の中も混乱してきます。

 さて、王莽については、王朝の簒奪者として、否定的なイメージが強かったです。
 しかし実際は、ひたすら徳行を積み学問に励む、とてもまじめな人だったのです。

 ところが、そういうまじめすぎる人ほど、おかしな間違いをしてしまうものです。
 「祭器の威力で、反乱軍をおさえつけることができる」と、信じてしまうとは。

 第三巻における読みどころは、やはり三国志の時代でしょう。
 曹操、孫権、劉備、そして諸葛亮。「三国志演義」を早く読みたくなりました。

 続く第四巻では、隋の統一から唐の安定期を経て、再び混乱の時代へ移ります。
 この時代も、個性的で魅力的な英雄たちが続々と登場します。中国は人材が豊富。

 中国を久々に統一した隋の楊堅。やりたい放題やって国を滅ぼした二代目の煬帝。
 名君の誉れ高い唐の李世民。その後、一時的に国を簒奪した女傑、則天武后。

 名君なのか迷君なのか判断に迷う玄宗。国を乱した、楊貴妃と、安禄山。
 讒言に倒れた名宰相・大将軍たち。誅殺された宦官たち・・・

 この時代の中国は、遣隋使と遣唐使によって、日本に大きな影響を与えました。
 そのためかこの巻は、読んでいてとても身近に感じました。

 第五巻は、宋の統一から、金による侵略、元の興隆、南宋の滅亡までです。
 社会が目まぐるしく変わっていくありさまが、よく分かります。

 宋王朝三百年の基礎を作った、太祖趙匡胤(ちょうきょいん)と太宗趙匡義。
 宋代の士風を作り出した士大夫階級。改革派の王安石、保守派の司馬光。

 講和派の秦檜(しんかい)と抗戦派の岳飛。
 金を建国したアクダ、元を建国したチンギス・ハーン。

 そして、国の衰亡時に必ず現れる乱臣、利権政治の賈似道(かじどう)。
 一方で、傾く国を最後まで守り続けた忠臣、張世傑と文天祥。

 「十八史略」の最後を飾る南宋滅亡の場面は、平家物語に似て涙を誘います。
 特に、最後まで義を貫いた文天祥! 著者の筆にも力が入っています。

 「人と生まれ、むかしから死ななかった者があろうか
 一片の誠心をこの世にとどめ、歴史にかすかな灯をともしたい」(P362)

 さいごに。(修学旅行コース)

 娘の小学校の修学旅行は、それはないだろうと言いたくなるようなコースです。
 特に1日目は、国会議事堂、最高裁判所、キッザニア、狂言鑑賞(!)・・・

 昨年は東京ドームシティがあり、一昨年はディズニーランドがあったのですが。
 修学旅行が近づいても、うちの子は全くテンションが上がってきません。

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