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そして、バトンは渡された [日本の現代文学]

 「そして、バトンは渡された」 瀬尾まいこ (文春文庫)


 これまで7回も家族の形態を変えている、高校2年生の森宮優子の成長の物語です。
 2018年刊行。2019年に本屋大賞を受賞し、映画にもなった、瀬尾の代表作です。


そして、バトンは渡された (文春文庫)

そして、バトンは渡された (文春文庫)

  • 作者: 瀬尾 まいこ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2020/09/02
  • メディア: Kindle版



 「困った。全然不幸ではないのだ。(中略)いつものことながら、この状況に申し訳
 なくなってしまう。」(P8)

 高校2年の森宮優子は、これまで家族形態が7回変わり、苗字は4回変わりました。
 3人の父親と2人の母親をリレーされたものの、とても大切に育てられてきました。

 優子が3歳のとき母は亡くなり、小学2年のとき父の水戸は梨花と再婚しました。
 小学5年で父が仕事でブラジルに赴任した時、優子は梨花と日本に留まりました。

 優子が中学1年のとき、梨花は金持ちの泉ヶ原と再婚し、すぐに出て行きました。
 高校1年のとき、梨花は同級生で一流企業の森宮と再婚し、優子を引き取りました。

 やがて梨花は出て行き、森宮と2人暮らしですが、優子は愛情を注がれています。
 高校2年の優子に悩みは無く、不幸な境遇なのに不幸でないことが唯一の悩みで・・・

 私は最初この小説を、勝手な大人の事情に振り回される少女の悲劇だと思いました。
 ところが、この小説は優子を主人公にした恋愛小説であり、青春小説だったのです。

 なんといっても、この作品の魅力は主人公の優子です。
 前向きというか、諦観というか、優子は何事も受け入れ、けなげに生きていきます。

 クラスの女子全員から避けられていたときも、「時間が解決する」と考えました。
 「だいたいのことは、どう動こうと関係なく、ただぼんやりと収束していくのだ。」
 (P170)

 優子がもてるのは、きれいなだけでなく、人と違う何かを感じさせるからでしょう。
 少し大人びたところは、少年たちにとってミステリアスな魅力なのだと思います。

 そして、不器用ながら懸命に父親を務める森宮、優子を愛してやまない梨花・・・
 中でも、森宮が語る梨花の言葉は、親の気持ちを代弁していて忘れられません。

 「自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日が、やってくるんだ
 って。親になるって、未来が二倍以上になることだよって。明日が二つにできるなん
 て、すごいと思わない? 未来が倍になるなら、絶対にしたいだろう。」(P315)

 さて、私的にとても好感が持てたのは、一緒に球技大会実行委員をやった浜坂です。
 浜坂は利己的な計算をしません。ひとりでトンボを引くし、告白を諦めるし・・・

 浜坂は大胆な行動を取りますが実は繊細で、しっかり他人のことを考えられます。
 後半あっさり退場してしまい、早瀬にその座を譲ってしまったのは惜しかったです。

 私的には、実は浜坂にはピアノの才能があり、一緒に伴奏の練習をするうちに・・・
 というストーリーだったら、と思いました。だいぶ物語は変わってしまいますが。

 ところでラストで、重病の梨花がすっかり治っている点に、違和感がありました。
 しかし、映画版では結末が違うと言います。なんとなく、予想できてしまうが・・・



 さいごに。(audible退会)

 オーディブルは便利でしたが、「聴きながら読む派」の私にはお得感が希薄でした。
 そこで、退会することにしました。会費が1000円を切るくらいなら続けたのですが。

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DavidAnaro

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by DavidAnaro (2023-12-12 23:48) 

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