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コン・ティキ号探検記 [20世紀その他文学]

 「コン・ティキ号探検記」 T・へイエルダール作 水口志計夫訳 (河出文庫)


 自説を証明するため、ペルーからポリネシアの島へイカダで航海した時の記録です。
 1948年に出た本書は世界中で読まれ、ベストセラーとなり、映画にもなりました。


コン・ティキ号探検記 (河出文庫)

コン・ティキ号探検記 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2013/05/08
  • メディア: 文庫



 ヘイエルダールは新妻と、南太平洋のファツ・ヒヴァに滞在したとき気づきました。
 ジャングルの巨大な石像は、南米の失われた文明の石像に、とてもよく似ている!

 ポリネシア人は南米から渡って来たのだろう。島の伝説もそれを裏付けています。
 太陽の子ティキは、海の向こうの大きな国から、祖先をこの島に連れて来たと言う。

 また、ペルーの白い神の伝説も、それを裏付けているように見えます。
 インカ族に様々な技術を伝えた白い神は、海を渡って西の方へ去っていったと言う。

 しかし、多くの学者たちは懐疑的でした。当時の航海手段はイカダだったからです。
 ヘイエルダールは自説を証明するため、冒険に出ることにしました。

 「自分で彼らと同じ種類のイカダを作って、太平洋を横断しようと思うんだ」
 「君はどうかしている!」

 仲間集め、資金集め、バルサ材の調達、食料や備品の調達、イカダの建造・・・
 気まぐれな風、ジンベイザメ、鯨の接近、乗組員の落下、大波と嵐、暗礁・・・

 「バルサ材は水を吸って沈むのではないか?」「綱は擦り切れるのではないか?」
 多くの懐疑的な見方がありましたが、6人の乗組員には、固い決意がありました。

 「イカダがバラバラになっても、それぞれの丸太に乗ってポリネシアに向かおう」
 そして、この意志と彼らの信念が、冒険を成功に導いたのでした。

 中学生の時、英語の授業で、「コン・ティキ号の冒険」を読みました。
 彼らの意志力に感銘を受けたあのころから、現在、40年ほどがたっていました。

 何年か前、映画「コン・ティキ」が話題になったとき、この本が復刊されました。
 映画を意識した限定カバーがカッコ良かったので、当時迷わず購入しました。

 長らく積ん読状態だった本を、コロナで時間ができたので、手に取ってみました。
 自宅で閉じこもり状態のとき、冒険の本は、サイコーの気分転換になりますね。

 「空中の新鮮な潮の香とわれわれを取り巻く青い清らかさが、身も心も洗い清めて
 くれるかのようだった。筏の上のわれわれにとっては、文明人の大問題は偽りであ
 り、幻であり、人間の心の単なる見当違いの生産物のように見えた。」(P159)

 こんな文章を読むと、コロナから逃れ、海の彼方に旅立ってしまいたくなります。
 この探検記は、旅の過酷さよりも、楽しさの方を、多く伝えてくれました。

 ヘイエルダールの本は、「アク・アク 孤島イースター島の秘密」もあります。
 この本も家にあります。20年以上前に購入したので、日焼けで真っ黒でした。

 イースター島のことは、「コン・ティキ号探検記」にも、詳しく書かれています。
 赤い帽子をかぶったモアイを、いつかこの目で見てみたいです。


アク・アク―孤島イースター島の秘密 (現代教養文庫)

アク・アク―孤島イースター島の秘密 (現代教養文庫)

  • 出版社/メーカー: 社会思想社
  • 発売日: 2020/04/19
  • メディア: 文庫



 さいごに。(久々のGW)

 どこにも出かけていません。しかし仕事が無いおかげで、充実していました。
 第一に、これまで読む機会のなかった本を、たくさん読むことができました。

 第二に、レザークラフトを復活しました。作品はまだ製作中ですが。
 そして第三に、ゆっくり休めました! やはりGWは、こうでなくては。

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悪童日記 [20世紀その他文学]

 「悪童日記」 アゴタ・クリストフ作 堀茂樹訳 (ハヤカワepi文庫)


 第二次大戦を、ヨーロッパの田舎でたくましく生き抜いた、双子の少年の日記です。
 1986年に出て世界に衝撃を与えた、作者のデビュー作です。映画にもなりました。


悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2001/05/01
  • メディア: 文庫



 双子の少年たちは、大きな町から母に連れられて、祖母の家に連れてこられました。
 母から離れ、厳しい祖母の元、見知らぬ土地で、二人の新たな生活が始まりました。

 「おばあちゃんは、ぼくらをこう呼ぶ。
 『雌犬の子!』
 人々は、ぼくらをこう呼ぶ。
 『〈魔女〉の子! 淫売の子!』
 また別の人びとは、こんな言葉を叩きつけて来る。
 『バカ者! 与太者! 鼻糞小僧! 阿保! 豚っ子!・・・』」(P30)

 周囲の冷たい目にさらされながら、二人は力を合わせ、たくましく生きていきます。
 ぶたれたら、それに負けないよう体を鍛え、罵詈を浴びせられたら精神を鍛えます。

 乞食の話を聞いたら乞食の練習をし、盲や聾の話を聞いたら盲と聾の練習をします。
 断食の話を聞いたら断食し・・・過酷な状況を体験することで強くなっていきます。

 自分たちだけの小さな知恵と力で、人生を切り開いてゆく姿は、本当にすばらしい。
 これこそ「生きる力」です。この本で、我々が忘れかけているものに出会いました。

 母が迎えに来たとき、二人はすでに祖母との生活を快適に送っていて・・・
 父が助けを求めてきたとき、二人はある企みを実行して・・・

 さて、この作品の魅力を増しているものは、主人公の二人の悪童たちです。
 彼ら二人は、周囲とはかけ離れた、独特の不思議な世界を作っています。

 「あの二人は考えるのもいっしょ、行動するのもいっしょだ。二人で、まわりから
 隔たった、特殊な世界に生きている。彼らだけの世界だ。」(P34)

 曳かれていくユダヤ人たちの行列に、司祭の女中がしたことは・・・
 その光景を目に焼き付けた双子が、そのあとひそかにおこなったことは・・・

 彼ら二人には、何を考えているのか、何をするのか分からないところがあります。
 時々意表をつかれて、びっくりしました。特に、イミシンな結末には驚きました。

 「悪童日記」はたいへん評判になったため、続編ができて、全三巻となりました。
 終戦後を描いた「ふたりの証拠」と、完結編の「第三の嘘」です。


ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)

ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2001/11/01
  • メディア: 文庫



第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)

第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2006/06/01
  • メディア: 文庫



 さいごに。(レザークラフト復活)

 以前やっていたレザークラフトは、仕事が忙しくなってから中断していました。
 ところがコロナによる業務縮小で、GWに時間ができたので、再開しています。

 5年も前に構想した、自分だけのシステム手帳に、ようやく取り掛かりました。
 じっくり時間をかけて何かに取り組むって、いいですね。心が癒されます。

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吶喊 [20世紀その他文学]

 「阿Q正伝・狂人日記」 魯迅 竹内好訳 (岩波文庫)


 「吶喊(とっかん)」は、魯迅の最初の作品集で、14の短編と自序から成っています。
 「故郷」等が教科書に載っているため、魯迅は本国よりも日本で多く読まれています。

 訳者の竹内は魯迅の有名な研究者なので、訳注がとても詳しくて参考になります。
 初版が1955年と古いため読みにくいのですが、竹内訳には根強いファンがいます。


阿Q正伝・狂人日記 他十二篇(吶喊) (岩波文庫)

阿Q正伝・狂人日記 他十二篇(吶喊) (岩波文庫)

  • 作者: 魯 迅
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1981/02
  • メディア: 文庫



 冒頭の「自序」は、自己の精神形成史を語ろうとした、半自伝的作品だそうです。
 日本の医科大学を突然退学し、小説家になった経緯が書かれていて興味深いです。

 「狂人日記」は、最初期の作品です。中国の近代文学の出発点となった名作です。
 伝統的な家族制度や儒教倫理の虚偽を、暴露することを意図していたと言います。

 しかし私は、中国を植民地化する西洋諸国への批判だと、ずっと思っていました。
 「人間を食う」というのは、中国を食いものにしていた西洋諸国のことなのでは?

 「孔乙己」は、わずか7ページですが、本好きにとっては愛すべき小品です。
 「窃書は盗みとは申せん・・・窃書はな・・・読書人のわざ」・・・(笑)

 「故郷」は魯迅の作品中最も広く読まれています。私は中学校の国語で習いました。
 30年前「ルントー」は自分にとって英雄でした。しかし、今は・・・泣けます。

 「阿Q正伝」は魯迅の最高傑作でしょう。50ページ以上あるのはこの作品だけです。
 「正伝」といっても、作者は阿Qの姓も知らなければ、出身や経歴も知りません。

 要するに阿Qは最下層の人間で、家はなく日雇いで働き、お金は酒に消えてしまう。
 そのくせプライドばかり高く、すぐに喧嘩をして常に負け続け、負け惜しみばかり。

 みんなにバカにされ、ある事件を契機に、街の人々から相手にされなくなります。
 しばらく姿を消していましたが、たいそう物持ちになって街に帰ってきて・・・

 笑える所が多いのですが、それは悲しい笑いです。笑ったあとで泣きたくなります。
 特に革命に自ら巻き込まれる結末は、うぬぼれが強いだけの無知な男の悲喜劇です。

 ほか、「吶喊」の作品はどれも重苦しく、悲しくなるような作品ばかりです。
 中国では日本ほど読まれていないらしいですが、その理由はこの暗さでしょうか。

 さて、10年ほど前に古典新訳文庫から、魯迅の読みやすい作品集が出ました。
 上記作品のほか「藤野先生」も収録されているベスト集です。魯迅の入門本です。


故郷/阿Q正伝 (光文社古典新訳文庫)

故郷/阿Q正伝 (光文社古典新訳文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2009/04/20
  • メディア: Kindle版



 さいごに。(英検5級にチャレンジ)

 娘は、英検5級にチャレンジしています。時々私はリスニング問題を読みあげます。
 読むのが下手なので分かりにくいかと思いきや、「逆に分かりやすい」とのこと。

 塾で行なうリスニングテストは、「ネイティブに近いので聞き取りにくい」と言う。
 私はつっかえつっかえ読むので、かえって耳に残りやすいのだそうです。

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血の婚礼 [20世紀その他文学]

 「血の婚礼」 ガルシーア・ロルカ作 牛島信明訳 (岩波文庫)


 「血の婚礼」は、婚礼の日に2人の若者が、因縁のが果たし合いをする物語です。
 ほか、「イェルマ」「ベルナルダ・アルバの家」の二つの戯曲を収録しています。

 1992年に出ました。訳が比較的新しくて、分かりやすいです。
 カバーのロルカ自身によるカットがいいです。また、全三作入っていてお得です。


三大悲劇集 血の婚礼 他二篇 (岩波文庫)

三大悲劇集 血の婚礼 他二篇 (岩波文庫)

  • 作者: ガルシーア ロルカ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1992/07/16
  • メディア: 文庫



 花むこは花嫁をとても愛していますが、その母親は花嫁に対して懐疑的でした。
 というのも、花嫁がかつてある男と恋愛関係にあったという噂があるからです。

 その男というのが、よりによって・・・両家には忘れられない過去があり・・・
 婚礼の日、花嫁は失踪して・・・そして二人の青年は因縁の対決で・・・

 最初は花婿側から描かれていたので、レオナルドを悪党だと思っていました。
 ところがしだいに、愛を語るレオナルドこそ、陰の主役だと分かってきます。

 「あんたは、時間が火傷をいやし、壁がふたをしてくれると思ってるだろうが、
 それは違う、そうじゃないんだ。人の心と体の奥底まで入り込んでしまったもの
 は、決して引き抜くことはできないのさ。」(P54)

 レオナルドは、人生を踏み外しました。しかし、彼は大事なことに気付きます。
 だから、彼の言葉は生き生きとしていて、情熱的で説得力があります。

 一方、花むこはただのお人よしです。花嫁のことを最後まで理解していません。
 そういう意味で、花むこと花嫁とレオナルドの三人は、悲劇の共犯者です。

 さて、この戯曲で大切なことを伝えるのは、なぜか物語に関係のない木こりたち。
 「血を腐らせたまま生きながらえるより、血を流して死ぬほうがはるかにましさ。」

 アンダルシア特有の、情熱のほとばしりを感じました。
 メリメの「カルメン」を思い出します。
 「カルメン」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-01-27

 次の「イェルマ」は、子どもができなくて悩む妻イェルマの苦悩を描いています。
 同時に、家に閉じ込められて生きる女性を、社会から解放することを訴えています。

 「あたしが人生から学んだ唯ひとつのことを教えてあげる。それはね、みんな好き
 でもないことをしながら、家のなかに閉じこめられているってこと。」(P163)

 なお、戯曲の所々から、子のできない原因が夫にあることが、示唆されています。
 「畑の喜びを淀ませてしまうような腐れ種しかもたらさない男たちの・・・」

 そしてここに、ゲイであるゆえに子供を持てなかったロルカ自身が重ねられます。
 つまりこの戯曲には、女性の苦悩とロルカ自身の苦悩の二つが描かれているのです。

 三つめの「ベルナルダ・アルバの家」は、ベルナルダと6人の娘たちの物語です。
 ベルナルダは60歳。長女アングスティアスは39歳、末娘アデーラは20歳です。

 ベルナルダの夫が死に、遺産の多くは長女のアングスティアスに贈られました。
 すると効果てきめん、このオールドミスの長女に、突然婚約者が現れたのです。

 婚約者は25歳の美丈夫。これをきっかけに、一家は悲劇的結末に向かっていきます。
 もちろん男の狙いは遺産で・・・彼が愛したのは・・・そしてアデーラは・・・

 さて、ロルカは20世紀スペインを代表する詩人ですが、文庫で読めませんでした。
 その三大悲劇を、このように文庫で読めるようになって、本当にありがたいです。

 さいごに。(運動会)

 昨日は娘の小学校の運動会でした。とても楽しそうにやっていました。
 ただし、もっとも気合いを入れていたクラス対抗全員リレーはビリ。

 娘が走るところでは、競り合いでなくてよかったです。
 もし相手チームに抜かれたら、また落ち込むので。

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ピランデッロ短篇集 [20世紀その他文学]

 「月を見つけたチャウラ ピランデッロ短篇集」
 ピランデッロ作 関口英子訳 (古典新訳文庫)


 おかしいのにどこか悲しく、死と狂気をひしひしと感じさせる短篇集です。
 作者はイタリア人劇作家で、1934年にノーベル文学賞を受賞しました。

 光文社古典新訳文庫から2012年に出ています。
 200篇以上の短編から15編が選ばれています。訳は分かりやすかったです。


月を見つけたチャウラ―ピランデッロ短篇集 (光文社古典新訳文庫)

月を見つけたチャウラ―ピランデッロ短篇集 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: ルイジ ピランデッロ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2012/10/11
  • メディア: 文庫



 主人公の多くは、日常のひとコマで、突然あることに気付き驚愕します。
 自分は今まで自分の人生を生きてこなかった、自分は本当の自分ではない!

 こういう恐怖が、おそらく世界でいちばん怖い。
 では、その中で特に味わい深かった作品について、以下に紹介します。

 「手押し車」は、ある著名な弁護士の狂気を描いています。
 「わたし」は家の前で気付きます。ここに住んでいる男は自分ではない!

 「わたしは、これまでけっして生きたことなどなかった。一度だって人生
 に存在したことはなかった。」(P124)そして、ふとよぎる狂気・・・

 「自力で」は、3年前に破産して、死んだように生きる男の悲劇です。
 「いまの自分は、いったい誰なのか? 何者でもないではないか。」(P199)

 そして、ふと思います。自分はもう死んでいる、いるべき場所へ行こう!
 彼は、ある場所を目指して、ゆっくりと歩き始めます・・・せつない話です。

 ほか、「ひと吹き」(自分のあるしぐさで、次々に人が死んでいく)や、
 「フローラ夫人とその娘婿のポンツァ氏」(誰が嘘をついている?)や、
 「貼りついた死」(死が貼りついて離れない)など、傑作ぞろいです。

 ちょっと異色だったのは「甕」で、この作品だけは笑えました。
 親方はいかにして危機に陥り、いかにして危機から脱したのか?

 さて、解説によると、ピランデッロ自身、人生にとても翻弄されました。
 「人生はとても悲しい道化に似ている」とは、彼自身が放った名言です。

 ピランデッロの作品は、日本ではあまりお目にかかれませんでした。
 だからこの短篇集は、とても貴重な本だと思います。

 さいごに。(妹の話)

 熊本で被災した妹が、一時的に帰ってきました。
 避難所生活を体験した人でないと分からないような、貴重な話を聞きました。

 最も印象的だったのは、やることがないのがつらかったということです。
 余震におびえながら、何もできないでいるということが、とても苦痛だった、
 むしろ何か仕事を割り振られた方が、精神のバランスを保てたとのことです。

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アミ 小さな宇宙人 [20世紀その他文学]

 「アミ 小さな宇宙人」 エンリケ・バリオス作 石原彰二訳 (徳間文庫)


 一人の少年が、小さな宇宙人アミと交流を通して、様々なことを学ぶ物語です。
 作者はチリの作家。2000年に出て、爆発的に売れた小説です。

 徳間文庫から出ています。訳はとても分かりやすいです。
 しかも、さくらももこのかわいい挿し絵入りです。


アミ小さな宇宙人 (徳間文庫)

アミ小さな宇宙人 (徳間文庫)

  • 作者: エンリケ・バリオス
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2005/08/05
  • メディア: 文庫



 去年の夏、ベドゥリート少年は、海に落ちていくUFOを目撃しました。
 UFOに乘っていたのは、アミという小さな宇宙人でした。

 アミと交流しながら、ベドゥリートはさまざまなことを学びます。
 あるとき、少年はUFOに同乗して・・・

 私は7年前に、「星の王子さま」のような内容を期待して、この小説を読みました。
 しかし、かわいい挿し絵に騙されてしまった。宇宙人に違和感。

 「星の王子さま」は、姿も言葉も、ほんとうにかわいらしかった。
 「アミ」は、姿はかわいらしいのですが、言っていることは少ししゃらくさい。

 宇宙の基本は「愛」。その障害になっているのはエゴ。
 人類の進歩は、エゴを減らし愛を増やすこと。というお説教は、まだよい。

 自分たちの文明に比べて、地球はまだ未開状態にあるとか。
 地球は消滅の危機にある、だから救済計画に従って我々は行動しているとか。

 ずいぶん上から目線で偉そうです。
 「大きなお世話だ」と言いたくなります。

 また、価値観が偏っていて、自分の勝手な考えを押し付けるところもあります。
 猛獣や毒蛇は最も愛から遠いとか。肉食はダメだから、植物の実を食べるとか。

 見かけはかわいらしい少年。でも、中身は口うるさいおじさん。
 私ならこの本のタイトルを、「小さなおっさんの大きなお世話」としますね。

 しかし、レヴューを読むと、「感動した」という感想が圧倒的に多いです。
 しかも、この小説を実話(!)として、受け取っている人までいます。

 軽い読み物として割り切れば、面白い作品かもしれません。
 しかし、内容には充分注意が必要だと、個人的には思いました。

 さいごに。(娘からのメール2)

 最近、仕事の関係で、帰宅が遅い日が続いています。
 娘から「早く帰ってきて」と言われると、全て投げ出して帰りたくなります。


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アルケミスト [20世紀その他文学]

 「アルケミスト」 パウロ・コエーリョ作 山川紘矢・山川亜希子訳 (角川文庫)


 夢で宝のありかを示唆された羊飼いの少年が、宝を探して旅をする物語です。
 ブラジル人作家コエーリョの代表作で、世界的なベストセラー小説です。

 角川ソフィア文庫から出ています。訳は分かりやすく活字も読みやすいです。
 以前は冴えないカバー絵でしたが、最近オシャレな絵になりました。


アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)

  • 作者: パウロ コエーリョ
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1997/02
  • メディア: ペーパーバック



 旅好きなサンチャゴは、羊飼いとなってアンダルシアを歩いていました。
 あるとき不思議な夢を見て、ジプシー女に夢の解釈をしてもらいました。

 「おまえはエジプトのピラミッドに行かねばならない。・・・
 そこでおまえは宝物を見つけてお金持ちになるのさ。」

 偶然出会ったセイラム王メルキゼデックの言葉に、背中を押されました。
 そして、サンチャゴはアフリカに渡り、エジプトを目指しますが・・・

 少年は宝を見つけることができるか?
 その宝とは何だったか?

 10年ほど前に、わくわくしながら読みました。内容はスピリチュアルです。
 心に響く言葉が次々と現れます。はまってしまう人は多いでしょう。

 「おまえが何かを望む時には、宇宙全体が協力して、それを実現するため
 に助けてくれるのだよ」(P29)

 「誰もが理解できたのに、今はもう忘れられてしまった『宇宙のことば』
 があるんだ。僕はその『宇宙のことば』を探しているんだよ。」(P83)

 このような言葉は、私たちに勇気を与えてくれます。
 この本が多くの人々に愛され読まれ続けている理由が、よく分かります。

 作者パウロ・コエーリョは、ブラジルで現在も活躍している作家です。
 「アルケミスト」など、自身の放浪の旅をもとに描いた作品が多いです。

 彼は、学業を放棄して旅に出たり、仕事を放棄して旅に出たりしています。
 ついでながら、反政府活動者と疑われて、投獄されたこともあります。

 「アルケミスト」のほか、「星の巡礼」「ベロニカは死ぬことにした」
 「11分間」など、多くの作品が角川文庫から出ています。


星の巡礼 (角川文庫)

星の巡礼 (角川文庫)

  • 作者: パウロ・コエーリョ
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 1998/04
  • メディア: 文庫



ベロニカは死ぬことにした (角川文庫)

ベロニカは死ぬことにした (角川文庫)

  • 作者: パウロ コエーリョ
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2003/04/25
  • メディア: 文庫



11分間 (角川文庫)

11分間 (角川文庫)

  • 作者: パウロ・コエーリョ
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2006/01/25
  • メディア: 文庫



 さいごに。(48歳に)

 48歳になりました。夕飯はステーキ。
 お祝いに、娘と妻が、私の大好物であるロールケーキを作ってくれました。

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バラバ [20世紀その他文学]

 「バラバ」 ラーゲルクヴィスト作 尾崎義(よし)訳 (岩波文庫)


 イエスの代わりに釈放されたバラバの、その後を描いた物語です。
 スウェーデンのノーベル賞作家ラーゲルクヴィストの代表作です。

 岩波文庫から出ています。1953年の訳で、言葉遣いは少し古いです。
 重版されて出ている今が、購入のチャンス。またいつ無くなるやら。


バラバ (岩波文庫)

バラバ (岩波文庫)

  • 作者: ラーゲルクヴィスト
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1975/12/16
  • メディア: 文庫



 過ぎ越し祭の恩赦で釈放されたのは、意外にも極悪人のバラバでした。
 ゴルゴタの丘の十字架で、死んでいくのは、罪のないイエスです。

 バラバはなぜか、イエスから目をそらすことができませんでした。
 そして、イエスの死ぬ瞬間、丘全体が暗闇に包まれるのを見たのです。

 その日からバラバは、イエスの磔刑の意味を考え始めました。
 彼は神の子だったのか? なぜ、進んで苦しみを受けたのか?

 バラバの人生は、すっかり変わってしまいました。
 そして、ローマの大火では、実に皮肉な展開が・・・

 バラバの視点で、キリストの意味を考えているところがユニークです。
 ただし、文化の違う我々には、少し分かりにくい。

 第一、「バラバ」と言われてピンとくる日本人は少ないのではないか。
 ウルトラマンAに出てきた怪獣バラバを、思い浮かべる人の方が多いかも。
 (怪獣バラバも、極悪人バラバから名前を取ったのだそうです)

 しかし、大戦後のヨーロッパで、この作品はたいへん注目されました。
 作者はノーベル賞を受賞し、映画にもなりました。

 さいごに。(オトキソ・シーズン3終了)

 大好評のEテレ「大人の基礎英語」の、シーズン3が終了しました。
 最後は、なんと! ミカとジョーに2人の子どもができていました。

 これで、ミカとジョーの恋愛ドラマは、結末を迎えてしまいました。
 シーズン4は無いか? それとも、別のドラマが始まるのか?

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やし酒飲み [20世紀その他文学]

 「やし酒飲み」 エイモス・チュツオーラ作 土屋哲訳 (岩波文庫)


 死んだ「やし酒造り」を探して、死者の国に旅する男とその妻の物語です。
 アフリカ文学の傑作です。作者はナイジェリア人ですが、作品は英語です。

 2012年10月に、岩波文庫から出たばかりですが、新訳ではありません。
 土屋訳は、1970年に晶文社から出たものですが、分かりやすかったです。


やし酒飲み (岩波文庫)

やし酒飲み (岩波文庫)

  • 作者: エイモス・チュツオーラ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2012/10/17
  • メディア: 文庫



 10歳からやし酒を飲み始めた「わたし」は、一日中やし酒を飲んで暮らしていた。
 ところがある日、やし酒造りが、やしの木から落ちて、死んでしまいました。
 「わたし」は、死んだやし酒造りを探して、旅立ちますが…

 「わたし」は、魔術者的な存在です。ジュジュというものを使って、変身します。
 妻は、預言者的な存在です。彼女の言うことは、様々な形をとって、実現します。

 この二人の行く先々に現れるのは、様々な怪物たちです。
 死神、頭ガイ骨、親指から生れた赤ん坊、精霊、赤い化け物、赤ん坊の死者・・・
 読むだけで、酔っ払ってしまいそうです。

 この荒唐無稽な物語は、ヨルバ人の伝承に基づいているのだそうです。
 そして、この素朴で神話的な世界観が、高く評価されています。

 しかし私の印象は、ただのヘンな話。でも、それでいいじゃありませんか。
 文学的価値を探したりしないで、割り切って、アフリカ的な世界を味わいましょう。

 例えば、赤い町における冒険は、実に面白かったです。
 その町に入ると、赤い住人と赤い王様が、なぜかとても喜んで迎えてくれました。

 赤い王様は言います。三日後に、赤い化け物が来て、人身御供を要求する。
 誰もいけにえになりたがらないから、あなた、いけにえになってくれ、と。

 「冗談じゃない!」と言うべきところを、なんと「わたし」は、承知するのです。
 というのも、「わたし」は既に、「死」を売ってしまって、死ぬことができないから。

 実はそれ以前、「死」をお金に買えて、そのお金を賭博で無くしていたのです。
 その後、「死」を取り戻そうとしましたが、返してもらえませんでした。(!)
 さて、こうして、赤い化け物との戦いに挑みますが…

 作者エイモス・チュツオーラは、とても苦学して、学問を身につけた人です。
 「やし酒飲み」で国際的に有名になり、ナイジェリアの英雄となりました。

 さいごに。(お酒)

 私にとって、お酒は恐ろしいものです。職場の忘年会で、ビールをコップに
 二杯飲んだら、翌日の夕方まで、コメカミがズキズキと痛くて苦しみました。

 それで、新年会などでも、全くお酒を飲んでいません。
 この時期、飲める人が、ちょっとうらやましく感じられます。

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ロボット [20世紀その他文学]

 「ロボット」 チャペック作 千野栄一訳 (岩波文庫)


 ロボットに労働を押し付けていた人類が、逆にロボットに追い詰められる物語です。
 チャペックを代表するSF劇で、「ロボット」という語を広めた作品です。

 現在、岩波文庫で読むことができます。
 訳は分かりやすくて、所々に初演の時の写真が入っていて、楽しいです。


ロボット (岩波文庫)

ロボット (岩波文庫)

  • 作者: カレル・チャペック
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2003/03/14
  • メディア: 文庫



 人類は、ロボットを大量生産して、自分たちの代わりに、労働させています。
 心が無くて感情が無いロボットは、人類にとって利用価値の高いものでした。

 やがて、大量のロボットが世界にゆきわたり、軍事用に開発されたものまで現れると、
 ロボットたちは団結し、武器を取り、人類に対して反乱を起こし・・・

 よく知られたストーリーです。
 はたして機械文明は、本当に人類を幸せにするのか、と考えさせられます。

 一方、労働から解放された人類は、繁殖できなくなってしまいます。
 労働は生きるためには必要なものということか?
 人類のあり方についても、また考えさせられます。

 ところで、これは戯曲です。
 いったいどのように、ロボット役は演じられたのか?
 気になっていたのですが、ちゃんと写真が収録されていました。(P33・P185)

 ロボットといっても、人造人間であって、我々のイメージとは違います。
 むしろ、フランケンシュタインに近いでしょうか。

 さいごに。(ボルトのオリンピック)

 今、4×100mリレーが終わったところで、ジャマイカが世界新での優勝。
 100mと200mと合わせて、ボルトは、二大会連続三冠!
 ボルトだけはライブで見たため、ボルトが登場すると寝不足になりました。

 日本チームもよく走りました。5位入賞は立派。
 しかも、まだまだこれから速くなりそうなチームです。

 ところで、私は明日13日から15日まで、東京へ出張です。
 毎年この時期に、大事な出張が入ってしまいます。

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