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銀河英雄伝説2 野望篇 [日本の現代文学]

 「銀河英雄伝説2 野望篇」 田中芳樹 (創元SF文庫)


 遥か未来における、銀河帝国と自由惑星同盟との宇宙戦争を描いたSF叙事詩です。
 1982年から1989年にかけて刊行。アニメ化されています。今回は第2巻の紹介です。


銀河英雄伝説〈2〉野望篇 (創元SF文庫) (創元SF文庫 た 1-2)

銀河英雄伝説〈2〉野望篇 (創元SF文庫) (創元SF文庫 た 1-2)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2007/04/25
  • メディア: 文庫



 宇宙歴797年は、銀河帝国と自由惑星同盟が戦火を交えなかった特異な年でした。
 というのも、両国とも内戦が勃発し、その収拾にエネルギーを費やしたからです。

 銀河帝国では皇帝が急死し、5歳の幼帝エルウィン・ヨーゼフが即位しました。
 新帝を擁立した老宰相リヒテンラーデ公は、ローエングラム公と手を組みました。

 これに対抗したのが、ブラウンシュヴァイク公を中心とした、大貴族たちです。
 彼らは盟約を交わし、メルカッツ上級大将を味方につけ、戦いの準備をしました。

 このときラインハルト・フォン・ローエングラムは、若干20歳でした。
 彼らの動きを知ると、ただちに軍務省を占拠し、帝国軍最高司令官となりました。

 こうして、帝国を二分する「リップシュタット戦役」は始まりました。
 ラインハルトは相手を賊軍と呼び、その拠点を次々と落としていきますが・・・

 一方、自由惑星同盟の首都ハイネセンでは、軍部によるクーデターが勃発しました。
 首都を実効支配したのは救国軍事会議であり、その議長はグリーンヒル大将でした。

 ところが、彼らは自分で気づかぬうちに、ラインハルトに操られていたのです。
 ヤン・ウェンリーは、気が進まないまま、彼ら革命軍と戦うことになって・・・

 「ろくでもない戦いだが、それだけに勝たなくては意味がない。勝つための計算はし
 てあるから、無理をせず、気楽にやってくれ。かかっているものは、たかだか国家の
 存亡だ。個人の自由と権利にくらべれば、たいした価値のあるものじゃない」(P176)

 この言葉の中に、ヤン・ウェンリーという軍人の思想と魅力が、凝縮されています。
 ヤンは、敵の第11艦隊を倒すと、アルテミスの首飾りに守られたハイネセンへ・・・

 「アルテミスの首飾り」とは、ハイネセンの周囲にある12個の軍事衛星のことです。
 ヤンは、この12の衛星を一度に、しかもひとりの犠牲者も出さず、攻略するのです。

 この場面こそが、第2巻での最大の読みどころでしょう。
 いったいヤンはいかなる手を使ったのか? 私はうなりました。さすが魔術師です。

 ところで、随所で読み取れるヤンの諦観が、この物語を情緒あるものにしています。
 ヤンは言います。この世に絶対善と絶対悪の戦いなんて、一度もなかったのだと。

 「一方的な侵略戦争の場合ですら、侵略する側は自分こそ正義だと信じているものだ。
 戦争が絶えないのはそれゆえである。人間が神と正義を信じているかぎり、あらそい
 はなくなるはずがない。」(P251)

 現在行われている戦争も同じです。ロシアもウクライナも。イスラエルもガザ地区も。
 どちらも自分の国の正義があり、自分たちの神があります。正義と神はやっかいです。

 「遠い遠い昔、十字軍というものが地球上に存在した。聖地を奪回すると称し、神の名
 のもとに他国を侵略し、都市を破壊し、財宝をうばい、住民を虐殺して、その非道を恥
 じるどころか、異教徒を迫害した功績を誇示すらしたのだ。
  無知と狂信と自己陶酔と非寛容によって生みだされた、歴史上の汚点。神と正義を信
 じてうたがわない者こそが、もっとも残忍に、狂暴になりえるという事実の、それはに
 がい証明だったはずである。」(P35)

 長い引用ですが、作者はこういうところを一番訴えたかったのではないかと思います。
 今も昔も、神とか正義とか言う連中に限って、もっとも残忍で狂暴になりえるのだと。

 さて、この巻でラインハルトは地位を確立し、野望に向かって大きく前進しました。
 しかし、彼の野望が実現するのと引き換えのように、大きな悲劇がもたらされて・・・

 この悲劇は想定外に早くやってきました。この事件で物語をひと区切りとしたいです。
 続きが気になりますが、アニメが出ているので、レンタルして見ようと思っています。

 さいごに。(花博にもう一度)

 連休中に花博に行きました。4月に行った時とは、別の会場です。
 今回は、バラがとてもきれいでした。私は特に、真紅のバラが好きです。

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