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知的創造のヒント [読書・ライフスタイル]

 「知的創造のヒント」 外山滋比古 (講談社現代新書)


 著者自身が行っている、知的創造のためのトレーニング法について紹介した著書です。
 1977年に出た講談社新書版は絶版ですが、ちくま文庫に入って読み継がれています。


知的創造のヒント (講談社現代新書 490)

知的創造のヒント (講談社現代新書 490)

  • 作者: 外山 滋比古
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2024/04/14
  • メディア: 新書



知的創造のヒント (ちくま学芸文庫 ト 10-2)

知的創造のヒント (ちくま学芸文庫 ト 10-2)

  • 作者: 外山 滋比古
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2008/10/08
  • メディア: 文庫



 グライダーが空を飛ぶことができるのは、誰かが引っ張ってくれるおかげなのです。
 落ちそうになったらまた引っ張る。教育は、グライダー効果を狙っているようです。

 彼らに「さあ自由に飛んでみよ」と言ったら、優秀な人ほど途方にくれるでしょう。
 しかし、我々は落ちるリスクを冒してでも、自分のエンジンで飛ぶ必要があります。

 というように、いつもの外山節で始まります。外山一流の比喩が際立ちます。
 さまざまな比喩を用いて、「創造すること」の大切さとその方法を教えてくれます。

 私たちは、面白いアイディアがあると、それを借りてきて真似しようとしがちです。
 しかし借りてきたアイディアは、花の咲いている枝を切って来たようなものです。

 切り花には根がないから、たちまち枯れてしまいます。学校教育もまた同じです。
 アイディアは、人間の心という土壌の中で芽を出した植物でなければなりません。

 そういうアイディアは、出来上がるまでしばらく寝かせておくことが大事です。
 「その間に種子は精神の土壌の中で爆発的発芽の瞬間を準備する。」と言います。

 ほかたいへん参考になることが多いです。私は本書で外山滋比古にはまりました。
 ただし、1983年刊行のロングセラー「思考の整理学」と、一部内容がかぶります。
 「思考の生理学」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2022-10-09

 本書でもっとも印象に残っているのが、冒頭の「啐啄(そったく)の機」の話です。
 それは、孵化した卵を親鳥が外からつつくのと、雛が殻を破る呼吸が合うことです。

 自然の摂理は精巧で、親鳥は早くも遅くもない絶妙なタイミングで卵をつつきます。
 アイディアもまた、充分な時間をかけて温め、ちょうどよい時期に生み出すのです。

 7章では、本は面白いところでわざと離れる、という読書法を紹介しています。
 あえて読みさすことで先が気になり、次回本に入り込みやすくなると言うのです。

 ただし、これはいつでも本が読める人の方法でしょう、と私はツッコミたいです。
 私事ですが最近やたらと忙しくて、読みかけの本たちが気になって気になって・・・

 3月じゅうに、「ミドルマーチ」は全4巻すべてを読み終えておくべきでした。
 まったく本が読めていないので、今回も、大学時代に読んだ本書を紹介しています。

 さて外山には、同じ講談社現代新書から出た「読書の方法」という著書もあります。
 読書には、既知を読むアルファー読みと未知を読むベーター読みがあると言います。

 さらに、既知のものを指すアルファー語と未知のものを指すベーター語があって・・・ 
 と続きますが、そのように小難しい分類をする意味が、私には分かりませんでした。


読書の方法: 未知を読む (講談社現代新書 633)

読書の方法: 未知を読む (講談社現代新書 633)

  • 作者: 外山 滋比古
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1981/11/01
  • メディア: 新書



 さいごに。(先週の読書は0ページ)

 4月も2週目に入って、忙しさが倍増しました。まるで冗談のように忙しいです。
 もちろん、本なんて読めません。この1週間の読書は0ページです。ああ・・・

 世の中には「本なんて読まない」という人もいます。そういう人が少し羨ましい。
 ドロシアとラディスローがこの先どうなるのか、気になって仕方がありません。

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知的生産の技術 [読書・ライフスタイル]

 「知的生産の技術」 梅棹忠夫 (岩波新書)


 まだパソコンがない時代に、知的生産活動の実践的技術について提案した著書です。
 1969年に出ました。今なお読み継がれている、知的生産についての古典的名著です。


知的生産の技術 (岩波新書 青版 722)

知的生産の技術 (岩波新書 青版 722)

  • 作者: 梅棹 忠夫
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2024/04/06
  • メディア: 新書



 梅棹は「知的生産」を「頭を働かせて何か新しい情報を提出すること」と言います。
 そして、梅棹自身が行っているその実践的な方法を、次の11章で解説しています。

 ①発見の手帳 ②ノートからカードへ ③カードとその使い方 ④きりぬきと規格化
 ⑤整理と事務 ⑥読書 ⑦ペンからタイプライターへ ⑧手紙 ⑨日記と記録
 ⑩原稿 ⑪文章

 ①の「発見の手帳」とは、毎日の生活体験における発見や着想を記述する手帳です。
 いつでも書けるように持ち歩き、思いついたらその場で文章にして記述します。

 ②では、ノートが整理に向かないため、カードを使い始めたことが書かれています。
 さまざまな発見もカードに書けば、それを並び替えることで、思考が整理されます。

 ③では、そのカードを説明します。B6判のそれを「京大型カード」と呼びます。
 いつでも持って歩き、一枚一項目を原則に書きつけ、書いたら忘れてもいいのです。

 カードで大事なことは組み換え操作であり、並び替えたとき意外な発見があります。
 そしたらその発見もカード化します。そのときカードは創造の装置となるのです。

 ④は、新聞切り抜きをフォルダーに保存する、オープン・ファイル方式の説明です。
 その際、定型の台紙に貼ることで、切り抜きは規格化され、カード化されるのです。

 ⑤では、「垂直式ファイリング・システム」という、文書整理法を紹介しています。
 それは、二つ折りフォルダーに書類を挟み、カードのように立てて並べるものです。

 ⑥では、読書の仕方や、その後の「読書カード」の作り方などを紹介しています。
 本に傍線を引きながら読み、何日か寝かせてから、カードにしていくのだそうです。

 ⑦では、タイプライターの必要性を訴え、⑧では、手紙の形式化を提唱しています。
 ⑨で、日記のカード化を考え、⑩と⑪では、原稿化と文章化のコツを伝えています。

 さて、本書でもっとも有名な箇所は、②と③における「京大型カード」の説明です。
 梅棹が図書館用品店に注文して作ったカードは、本書でさらに有名になりました。

 一方、私が個人的にもっとも興味を覚えた箇所は、もちろん⑥における読書法です。
 私のこのブログは、考えてみると、梅棹の「読書ノート」の代わりになっています。

 ところで、私の持っているこの本は1991年の第49刷です。社会人2年目の年です。
 働き始めたばかりの、仕事に追われる中、自分だけの「知的生活」に憧れたのです。

 「知的生活の方法」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2018-04-24
 「考える技術・書く技術」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2018-04-21
 「思考の整理学」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2022-10-09

 ちなみに本書は、押入れの棚を整理をしていたときに、どこからか出てきました。
 ほか、外山滋比古の「知的創造のヒント」「読書の方法」も一緒に出てきました。

 さいごに。(うなぎ)

 先日、久しぶりにうなぎを食べました。5年ぶりぐらいでしょうか。
 記念に写真を残しました。おそらく次に食べるのは、5年後ぐらいでしょうから。

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2023年に紹介した本のベスト10 [読書・ライフスタイル]

 【2023年の紹介した本ベスト5】

 年末恒例企画です。今年紹介した本の中から、マイ・ベスト5を紹介します。
 今年は5位が3作あって、計7作品となりました。

・1位 「失われた時を求めて」(現在6巻まで)プルースト(岩波文庫)
    読めば読むほどその文体にはまりました。読んでいてクセになる文章です。
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-07-15
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-07-15
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-07-23
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-07-26
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-07-31
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-08-03
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-08-30
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-09-17
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-11-14
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-11-17
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-11-29
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-12-02

・2位 「デューン 砂の惑星」フランク・ハーバート(ハヤカワ文庫)
    アメリカのSF小説オールタイムベストの不動の1位です。圧倒的な面白さ!
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-07-05
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-07-05
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-07-11

・3位 「海賊とよばれた男」百田尚樹(講談社文庫)
    国岡鐵造バンザイ! 日章丸バンザイ! まさに、血沸き肉躍る物語です。
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-10-30
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-11-02

・4位 「指輪物語 王の帰還」トールキン(評論社文庫)
    昨年2位の「二つの塔」の続編で完結編です。映画と一緒に楽しめました。
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-01-08
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-01-11

・5位 「チボー家の人々」マルタン・デュ・ガール(白水Uブックス)
    10月から12月にかけてチボー家一色。特に「一九一四年夏」が良かった。
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-10-02
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-10-05
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-010-08
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-10-11
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-10-14
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-10-17
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-10-27
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-12-05
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-12-08
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-12-15
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-12-18
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-12-22
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-12-25

・5位 「ジャン・クリストフ」ロマン・ロラン(岩波文庫)
    3月から4月にかけて、ジャン・クリストフ一色でした。
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-02-20
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-02-24
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-02-27
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-03-14
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-03-18
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-04-17
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-04-30
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-05-21
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-06-02
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-06-05

・5位 「万延元年のフットボール」大江健三郎(講談社文芸文庫)
    久々に大江にはまったきっかけの作品。まさか、これほど面白かったとは!
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-04-23
   → https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-04-26

 【2023年登場人物ベスト5】

・1位 「失われた時を求めて」のシャルリュス男爵。実に謎めいた人物。
    彼のヘンタイぶりが見られるのはこれ以降だが、ここまででも充分魅力的。
・2位 「海賊とよばれた男」の主人公、国岡鐵造。出光興産の出光佐三がモデル。
・3位 「チボー家の人々」のジェローム。あまりにもダメすぎて、好感が持てる。
・4位 「デューン 砂の惑星」のハルコンネン男爵。悪役中の悪役。
・5位 「オペラ座の怪人」の怪人。恐ろしいと言うより、悲しい。

 【2023年ムー民的に良かった2冊】

・「宇宙を超える地球人の使命と可能性」臨死体験者の木内鶴彦の集大成的著作。
・「秦氏の謎とユダヤ人渡来伝説」古代日本にユダヤの失われた十氏族が来た・・・

 さいごに。(2023年デザートのベスト1)

 熱海の駅前通りで食べた熱海フルーツキングのフルーツサンド。
 ミックスサンド680円を食べました。次は1000円超のマンゴーサンドを食べたい。

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日本人とすまい ほか [読書・ライフスタイル]

 「日本人とすまい」 上田篤 (岩波新書)


 屋根・柱・壁などすまいの基本的な要素について、その意味や伝統を語っています。
 1974年刊行。著者の上田は、都市計画専門の建築家であり、古典にも通じています。


日本人とすまい (岩波新書 青版) (岩波新書 青版 884)

日本人とすまい (岩波新書 青版) (岩波新書 青版 884)

  • 作者: 上田 篤
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1974/03/20
  • メディア: 新書



 屋根・柱・壁・戸・窓・障子・床・畳・床の間・土間・天井・階段・二階・屋上・
 物干場・地下・物置・軒下・縁・庭・東屋・垣・門・錠・・・

 以上、すまいに関わる24の要素を取り上げ、多方面からその意味を考察します。
 それぞれわずか10ページ足らずですが、含蓄ある文章で非常に内容が濃いです。

 (以下「柱」の章)西洋建築は、窓との格闘の歴史でした。
 壁を積み上げたあと、窓を空けるのがたいへんだからです。

 日本建築は、柱との格闘の歴史でした。
 柱を立ててから隙間を埋めるのですが、柱を垂直に立てるのがたいへんだからです。

 柱は日本建築の象徴であり、竪穴式住居にあっても、家屋の中心は2本の柱でした。
 この原始住居の家づくりを、工匠たちは「天地根源の宮づくり」と言い伝えました。

 また、日本建築における柱には、神の憑代という樹木信仰の名残りがあります。
 それゆえ、商家の大黒柱などでは、子どもがもたれかかることすら許さないのです。

 ところが現在では柱が壁の中にしまいこまれてしまい、同時に信仰も消滅しました。
 というように、「柱」の役割から民俗学的意味まで解説していて、とても興味深い。

 (以下「垣」の章)貴族の邸宅や寺院などでは、塀が用いられていました。
 塀は、土でできた目隠しであり、盗賊の侵入を阻むものでした。

 一方、庶民の家では、庭の周りに垣が巡らされていました。
 垣は、主に植物などで作られ、そのため見通しがきき、人の侵入も許します。

 塀が「障壁」であるのに対し、垣は「結界」の意味を持ちます。
 垣が防ぐのは盗賊ではなく死者の霊魂であり、その原型が「しめ縄」に見られます。

 この本もまた、38歳から39歳の頃、わが家を建てるときに読みました。
 すまいを形作るさまざまな要素の歴史的意味を知る上で、とても参考になりました。

 類書では、藤森照信の「天下無双の建築学入門」(ちくま新書)も面白かったです。
 神の憑代としての柱については、出雲大社を引き合いに出して述べていました。

 出雲大社の9本の柱のうち中央の柱は、床を貫いて背丈ぐらいで止まっています。
 これは神の憑代であり、「岩根御柱(いわねのみはしら)」と呼ばれていると言う。

 ほかにも、「庭は末期(まつご)の目で見るべし」など、興味深い指摘があります。
 庭はあの世のものであり、時間を無化する装置である、と言うのです。実に面白い!

 このように知的好奇心をくすぐる本ですが、正直言って私には読みにくかったです。
 藤森の文章のクセ(体言止めが多くて話し言葉的)が、私には合わなかったです。

 さいごに。(脳ドック、大丈夫?)

 最近もの忘れがひどくて、水筒をどこかに置き忘れて、思い出せなくなりました。
 結局、副社長が見つけてくれました。なんと、職員トイレに置き忘れていたのです。

 そんな具合なので、脳ドックでは何かしらひっかかると、思い込んでいました。
 ところが「問題なし」でした。嬉しい一方で、納得できない気持があり、複雑です。

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住まい方の演出 住まい方の実践 [読書・ライフスタイル]

 「住まい方の演出」 渡辺武信 (中公新書)


 扉、階段、書棚など、住まい方を演出する仕掛けや小道具について解説しています。
 1988年刊行です。映画のさまざまなシーンを引用しているところに特徴があります。


住まい方の演出―私の場を支える仕掛けと小道具 (中公新書)

住まい方の演出―私の場を支える仕掛けと小道具 (中公新書)

  • 作者: 渡辺 武信
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 2023/08/26
  • メディア: 新書



 玄関扉、上がり框、階段、障子と襖、カーテン、テーブル、椅子、ソファ、ベッド、
 家具、屋根、天井、窓と壁、縁側、庭、本棚、鍵、冷蔵庫、食器、テレビ、電話、
 風呂、神棚と仏壇・・・と、さまざまな小道具の意味について語られています。

 冒頭の玄関扉について。外国では内開きなのに、日本では外開きになっています。
 確かに外国映画などでは、刑事がドアに体当たりして侵入するシーンが見られます。

 外国式の内開きの方が、客を中に招きやすく、侵入者を外に押し返しやすいです。
 ではなぜ日本では外開きなのか? 玄関で靴を脱ぐには、その方が便利だからです。

 ところで、日本では伝統的に、ドアではなく引き戸を使っていました。 
 引き戸を境界として相手と少し距離を取るのは、おじぎをする文化があるから・・・

 と、外国と日本を比べて、機能の違いはもちろん、文化の違いまで説明しています。
 知的好奇心がくすぐられる文章で、しかもその語り口は、とても歯切れがいいです。

 もっとも興味深かったのは、庭について語っている部分です。
 山口瞳「庭の砂場」を引用しながら、庭(自然)には治癒効果があると語ります。

 「それを見て心が和むのは、自然の営みというものが、いかに断片的であっても、人
 間の日常生活の偶発的な喜怒哀楽と独立したリズムを持って動いており、ぼくたちは
 そのリズムを感じとることで自分の感情をなにがしか相対化できるからではないのか。
 つまりこの場合、視線を受けとめてくれるということは感情を受けとめてくれるとい
 うのにほぼ等しい。」(P186)

 なるほど、だから自然に癒されるのか。こんなふうに考えたことはありませんでした。
 また、渡辺が勧める、山口瞳の短編小説「庭の砂場」を、読んでみたくなりました。


庭の砂場 (文春文庫)

庭の砂場 (文春文庫)

  • 作者: 山口 瞳
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2023/08/26
  • メディア: 文庫



 この本でもっとも参考になったのは、実は「あとがき」かもしれません。
 渡辺いわく、神を信じられぬ以上、唯一の救いとして「住むこと」を信じる(!)。

 「住むことを信じるとは、住まいを、食べて寝るという生理的欲求や労働力の再生産
 という社会的機能を満たす施設以上のものと考え、それが内部に『私はあそこではな
 くここに居る。そしてそれは正しい』と思えるような時間と空間を抱くようにと望む
 ことである。」(P298)

 住まいとは人生観の表現であり、住まいを作ることは人生観の再確認だと言います。
 「住まい方の演出」から、住まいが人生の演出の場であることを教えられました。


 さて、渡辺にはさらに「住まい方の実践」(中公新書)という類書があります。
 1997年刊行です。「住まい方の思想」「住まい方の演出」と合わせて三部作です。

 「実践」とあるとおり、著者の仕事場と家について、具体的実践が書かれています。
 とは言っても単なるハウツーものではなく、渡辺一流の思想が随所に表われています。


住まい方の実践―ある建築家の仕事と暮らし (中公新書)

住まい方の実践―ある建築家の仕事と暮らし (中公新書)

  • 作者: 渡辺 武信
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 2023/08/26
  • メディア: 新書



 「思うに人生はこうしたありふれた行為の積み重ねから成っているので、それが空し
 ければ人生は空しく、それが楽しければ人生は楽しいのだ・・・」(P10)

 「私は『何かのため』ではないからこそ、かけがいのない人生そのものを、その個々
 のありふれた行為の集積を信じているのだ。いわば人生を信じていると言ってもいい
 かもしれない。」(P11)

 「住まいとは生活の便宜のための道具ではなく、なによりもまず、ありふれた行為を、
 つまり人生を包み込む容器なのだと思い、そういうものとしての住まいをつくること
 が、私の『信仰』であるようだ。」(P11)

 「宇宙とは巨大な無関心であり、それは人類の運命など思い遣ることなく、まして私
 たち一人一人のささやかな生には関わりなく存在しつづける。しかしそうであるから
 こそ、いわば仮に定まった時の節目にあたって、来し方を思い行く末を生き抜く人生
 の連続感を確認することは、実に人間的な営みと言えるのではないだろうか。」(P84)

 ついでながら、渡辺には「住まいのつくり方」という本も出ているのだそうです。
 副題は「建築家といかに出会い、いかに建てるか」。機会があったら読みたいです。


住まいのつくり方―建築家といかに出会い、いかに建てるか (中公新書)

住まいのつくり方―建築家といかに出会い、いかに建てるか (中公新書)

  • 作者: 渡辺 武信
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2023/08/26
  • メディア: 新書



 さいごに。(一昨年の数値に戻る)

 人間ドックの結果が送られて来ました。大きな問題はありませんでした。
 腎機能は、昨年著しく低下しましたが、今回は一昨年の数値に戻っていました。

 特に気を付けたのは、「ハッピーターン パウダー250%」を完全に断ったことです。
 昨年病みつきになっていたこのお菓子をやめたら、まさに効果てきめんでした。





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住まい方の思想 [読書・ライフスタイル]

 「住まい方の思想」 渡辺武信 (中公新書)


 「私性」を守るための住まいについて、大事な点をさまざまな視点で論じています。
 1983年の刊行です。渡辺は建築家であると同時に、詩人・映画評論家でもあります。


住まい方の思想―私の場をいかにつくるか (中公新書 (702))

住まい方の思想―私の場をいかにつくるか (中公新書 (702))

  • 作者: 渡辺 武信
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2023/08/24
  • メディア: 新書



 現代人はみな、社会性とは矛盾するいわば「私性」というものを抱えて生きています。
 「私性」の実現は、住み手が「ここは私の場所だ」と心底感じる空間を作ることです。

 玄関とは本来「玄妙に入る関門」のことであり、心理的なけじめをつける場所です。
 エアロック同様、内部の私を漏らさず、外部の公共を持ち込まないための空間です。

 居間は、家族がそれぞれ居るだけの部屋であり、それゆえ皆が集まる大事な空間です。
 そこには、無為を無為として充実させるという、信仰にも似た哲学が必要となります。  

 あらゆる行為から解放されて居間に座るとき、我々は遊戯的時間の中にいるのです。
 この遊戯は一時のものでなく、時間の中で積分され蓄積されていくべきものなのです。

 居間と同じく、家族の成立に重要な役割を果たすのが、会食の空間である食堂です。
 ただし、居間が抽象的・精神的であるのに対し、食堂は具体的・生活的だと言えます。

 そして、家族そろっての会食は、ひとつの祝祭または儀式としてとらえ直すべきです。
 会食は、生きている実感や共生感を感じさせ、祈りたいような気分にさせて・・・

 玄関、居間、食堂、厨房、寝室、書斎、子ども部屋、和室、照明、冷暖房、収納など、
 住まいにおける要素について、その意味を述べて、どう作るべきかを提案しています。

 さすが、プロの建築家です。住まいのさまざまな空間に、深い意味を見出しています。
 しかもその文章は、含蓄がありながらとても分かりやすいので、説得力があるのです。

 寝室について、「夜の居間」であり「就眠儀式のための聖堂」であると言ったり・・・
 和室について、椅子式空間にはない、文化的な根を感じる場所と言ったり・・・

 しかしながら、私が最も面白いと思ったのは、書斎について考察している箇所です。
 次の文章の、「逃げ場所」としての書斎、という考え方に私はとても共感しました。

 「つまり現在における書斎への憧れは、男が戦前、住宅全体に持っていた支配権を放
 棄したことを前提としている。男は、この支配権がもはや取りもどしようがないこと
 を悟った上で、自分だけのささやかな逃げ場所を求めているのだ。言いかえれば、こ
 れは戦後の日本住宅が『女子ども化』したことへの一つの揺り返しである。」(P98)

 まったく、わが家と同じです。私も17年前に家を建てたとき、書斎を造りました。
 壁一面を書棚にしたかったのですが、費用が無かったので、書棚を手作りしました。

 当時「熟年離婚」という言葉が出始めた頃でしたが、妻とある取り決めをしました。
 それは、私が書斎を持つ代わりに、定年後はできるだけ書斎で過ごすというものです。

 そう、住宅は、ほぼ完全に妻の支配下にあります。
 だから私たち亭主は、昼間からリビングでぐだぐだすることは許されません。

 妻の支配権が及ばない唯一の場所が、書斎です。亭主は書斎に逃げ込むべし。
 逆に、亭主の書斎がないと、夫婦でしょっちゅう顔を合わせて喧嘩ばかり・・・

 林望の本同様、家を建てることは生き方の問題だ、ということが伝わってきました。 
 たとえば、冷房の章にあった次のような文章に、私は膝を打ちました。

 「必要悪なのは冷房ではなく、仕事、つまり労働そのものではないかと思えてくる。
 つまり、自然にさからっているのは、冷房ではなく、夏にもせっせと働こうとする
 人間たちなのだ。」(P172)

 ところで、渡辺武信は、中公新書から類書をあと二つ出しています。
 「住まい方の演出」と「住まい方の実践」です。すべて良書です。


住まい方の演出―私の場を支える仕掛けと小道具 (中公新書)

住まい方の演出―私の場を支える仕掛けと小道具 (中公新書)

  • 作者: 渡辺 武信
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 2023/08/25
  • メディア: 新書



住まい方の実践―ある建築家の仕事と暮らし (中公新書)

住まい方の実践―ある建築家の仕事と暮らし (中公新書)

  • 作者: 渡辺 武信
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 2023/08/25
  • メディア: 新書



 さいごに。(青春18きっぷ万歳!)

 娘と同じ高校の子で、夏休みにイタリア一周旅行に行ってきた子がいるそうです。
 うちの得意技は青春18きっぷなので、娘はこんなふうにぼやいていました。

 飛行機でイタリア中を飛び回っている人もいるけど、
 うちみたいに、東京へ行くのでさえ、ケチって青春18きっぷを使う人もいる、と。

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思想する住宅 思い通りの家を造る [読書・ライフスタイル]

 「思想する住宅」 林望(はやしのぞむ) (文春文庫)
 「思い通りの家を造る」 林望 (光文社新書)


 自身の建て替え経験をもとに、現代日本の本当に住みやすい住宅について論じます。
 林望はイギリスに詳しい国文学者。本書は、イギリス住宅事情を参考にしています。


思想する住宅 (文春文庫)

思想する住宅 (文春文庫)

  • 作者: 林 望
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/02/06
  • メディア: 文庫



 日本では、家を家族構成に合わせて建てますが、家族構成は時とともに変わります。
 そうなると途端に住みにくくなるので、壊して建て直したりすることもあります。

 しかし、イギリスでは、家族構成の変化とともに、住宅を変えていくのが普通です。
 壊して建て替えるという習慣がなくて、100年も200年も昔の家が残っているのです。

 さて、住宅というものは、その人の「人生の思想」を、家という形にしたものです。
 だから、家造りで大事なことは、住む人がコンセプトをしっかり持つことなのです。

 たとえば・・・
 1 夫婦の寝室は作らず、夫の個室と妻の個室を作る。
 2 応接間(応接セットを含む)や和室(押入れを含む)は、作らない。
 3 ベランダは作らない。物干し場 は作らず室内乾燥機を使う。
 4 南向きの家は夏暑い。家は北向きに建てる。
 5 玄関は暗くして、そこを通った先が広く開けるように作る。
 6 できるだけ発酵素材を使い、腐敗素材の使用を避ける。・・・・

 この中で特に興味深かったのが、発酵素材と腐敗素材の区別です。
 それは以下のように定義されていますが、「なるほど!」と思いました。

 発酵素材は石や木など、時がたつにつれてかえって味わい深くなる素材です。
 逆に、腐敗素材は、アルミやプラスチックなど、時とともに汚くなる素材です。

 私は古寺を巡るのが好きですが、古寺はまさに発酵素材の宝庫だからかもしれません。
 奈良の東大寺や興福寺や唐招提寺などは、そこにいるだけで幸せな気分になるのです。

 この本で最も感銘を受けたところは、「住まいは、日常である。」という言葉です。
 これに続いて次のように述べます。林の家に対する思いが、実によく伝わってきます。

 「通俗な生活がそこにある。雲霞を喰らって生きている仙人が住むのでもなく、花の
 陰に息づく妖精の住まいなのでもない。世俗ふつうの、私やあなたが、だらだらと散
 文的に暮らしている場所、それが住宅なのだ。」(P185)

 さて、林には「思い通りの家を造る」(光文社新書)という、似た本があります。
 2001年刊行です。内容的にも「思想する住宅」と重なる部分がたくさんありました。

 私は39歳で家を建てたときに、この本に書かれていることを参考にしました。
 そして、自宅を建てたとき(17年前)には、わざわざ北側の土地を購入したのです。

 しかし、「思い通りの家を造る」で、それ以上に印象に残っているのは林の思想です。
 林の、家を建てることは、生き方を考えることだ、という思いがよく伝わってきます。

 「たとえば家を造った、それと同時に『自分はもう出世幻想は捨てる』と覚悟しても
 いいはずです。で、『自分は転勤しません、その代わり出世もしません』と宣言する
 人生を選び取るということがあってもよい筈です。」(P95)

 ぜひ同時に読みたい本に、林の「リンボウ先生の書斎のある暮らし」があります。
 この本も、17年前の私の家づくり・書斎づくりに、とても役立った本です。
 「リンボウ先生の」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2022-04-28

 さいごに。(「グローバルワーク = ワークマン」ではない)

 ワークマンの店舗で、「グローバルワークのシューズありますか」と聞きました。
 グローバルワークを、ワークマンのオリジナル・ブランドだと思っていたので。

 たとえば、マックスバリューの中に、トップバリューがあるのと同じイメージです。
 思い込みは恐ろしい。ちなみに、グローバルワークは街中の百貨店内にありました。

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自分の中に毒を持て [読書・ライフスタイル]

 「自分の中に毒を持て」 岡本太郎 (青春文庫)


 「もし迷ったら危険な道を進め」という、岡本太郎一流の人生論を説いた著作です。
 1993年刊行。著者は、1970年大阪万博で「太陽の塔」を作ったことで有名です。


自分の中に毒を持て<新装版> (青春文庫)

自分の中に毒を持て<新装版> (青春文庫)

  • 作者: 岡本 太郎
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2017/12/09
  • メディア: 文庫



 自分の前に、安全な道と危険な道があったら、迷わず危険な道を選ぶべきなのです。
 危険な道は、本当は自分が行きたい道なのだから、それに賭けてみるべきなのです。

 岡本太郎も、危険な道を選び、人から好かれない絵を描いて、己を貫いてきました。
 最大の敵は自分自身。自分に甘えず、自分と対決し、本当の生き方をするべきです。

 「ほんとうに生きるということは、自分で自分を崖から突き落とし、自分自身と闘っ
 て、運命をきりひらいていくことなんだ。」(P33)

 また岡本は、出る釘になれと言います。叩かれても叩かれても自分を突き出す釘に。
 打ち砕かれることを恐れず、ひたすら純粋に突き出すことで、誇りを取り戻し・・・

 岡本太郎節、炸裂! 前半は特に、エネルギッシュなメッセージに溢れています。
 しかし、最も興味深かったのは、終盤の「爆発」について語っている箇所です。

 「ぼくが芸術というのは生きることそのものである。人間として最も強烈に生きる者、
 無条件に生命をつき出し爆発する。その生き方こそが芸術なのだということを強調し
 たい。 ”芸術は爆発だ” 」(P214)

 「全身全霊が宇宙に向かって無条件にパーッとひらくこと。それが『爆発』だ。人生
 は本来、瞬間瞬間に、無償、無目的に爆発しつづけるべきだ。いのちのほんとうの在
 り方だ。」(P216)

 また、最も印象に残っているのは、パリで同棲していた女たちについての記述です。
 抽象的表現が多い本書の中で、女たちとのことは、具体的で分かりやすかったです。

 特に、ウィーン出身のショーダンサー、ステファニーとの別れの場面がすばらしい。
 ドイツとフランスとの戦争が激しくなり、彼女はパリにいられなくなって・・・

 ところで、第三章で語られる結婚観は、「自由への道」のマチウそっくりです。
 人間には自由が必要だが、結婚は手かせ足かせにしかならない、と言っています。

 そういえば、サルトル(1905年生)と岡本太郎(1911年生)は、ほぼ同時代人です。
 岡本がパリに留学していた1930年代、もしかしたら出会っていたかもしれませんね。

 さいごに。(ライン友達登録)

 50代のおじさん二人がラインの友達になろうとしました。そのうちの一人は私です。
 ところが、私も相手もスマホにうとくて、どうやっても自分のQRが出ないのです。

 さんざん試したあげく、結局諦めました。家に帰って妻に聞いたら、笑われました。
 翌日試して「やっとできた」と思ったら、いきなり相手をブロックしてしまい・・・

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自分のための人生 [読書・ライフスタイル]

 「自分のための人生」ウェイン・W・ダイアー著 渡部昇一訳(三笠書房)


 人生は自分で選ぶことができるということを伝えた、ダイアーの世界的な名著です。
 1976年刊行。著者は自己啓発書を多数出版して、多くの人々に影響を与えました。


自分のための人生 三笠書房 電子書籍

自分のための人生 三笠書房 電子書籍

  • 出版社/メーカー: 三笠書房
  • 発売日: 2022/08/31
  • メディア: Kindle版



自分のための人生 (知的生きかた文庫)

自分のための人生 (知的生きかた文庫)

  • 出版社/メーカー: 三笠書房
  • 発売日: 2011/07/21
  • メディア: 文庫



 人の顔色をうかがって態度を変えたり、人の反応を見て言葉を選んだり。
 人に気に入られようとしてお世辞を言ったり、人に嫌われないように気を使ったり。

 そんなふうに人を気にしてばかりいるなら、それはいったい誰の人生でしょうか?
 人に賛同されたり賞賛されたりすることが、そんなにすばらしいことでしょうか?

 「大勢の人が自分を理解してくれることはないだろう。しかし、それはそれでかま
 わないというシンプルな事実を受け入れる。」

 人がどう思おうと、自分が正しいと思うこと、大事だと思うことをやるべきです。
 それでこそ、「自分のための人生」と言えるでしょう。・・・

 そのほか、自分にレッテルを貼ってしまわないこと、できない理由を探さないこと、
 過去にとらわれないこと、失敗を恐れずに挑戦することなどが、語られています。

 私は若いころ、渡部昇一のマイブームのときに、知的生きかた文庫で読みました。
 2014年に単行本で新版が出たとき、思わず買ってしまい、今回それを読みました。

 久しぶりに読み直して、改めて本書は名言の宝庫だと思いました。
 30代のころに読んだときも、多くのページに線を引いたことを思い出しました。

 「その瞬間を費やす価値のあることのために一瞬一瞬を生きているのなら、そうい
 う人こそ『知的な人』だと言える。」(新版P30)

 「もし、『なすべきこと』という重荷を背負って、他人の定めたルールを破ること
 ができないでいるとしたら、自分の外にある箱の中にすっぽり入っていることを意
 味する。」(P210)

 「人を非難することは、責任を取りたくないときに利用できる、巧妙で卑劣な手口
 である。」(新版P216)

 ベネットの「自分の時間」と、本書「自分のための人生」は、ワンセットです。
 私の本棚では、この新版の二冊は仲良く並んでいます。
 「自分の時間」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2023-03-22

 さいごに。(デザート1皿)

 ブッフェで食べすぎました。しかし、デザートは1皿しか食べられませんでした!
 以前は、最低でもデザートを2皿は食べたものです。年々食べられなくなります。

 という、いつもの愚痴に、妻は言います。「別にいいじゃん」と。
 いやいや、デザートは2皿食べたい。これもまた私流の「自分のための人生」です。

IMG_0113 3.png

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自分の時間 [読書・ライフスタイル]

【お知らせ】
外国から意味不明のコメントが多数寄せられたため、コメント欄は一時閉めています。

 「自分の時間」 アーノルド・ベネット著 渡部昇一訳 (三笠書房)


 一日24時間でいかに生きるか、その具体的なヒントについて書いた著書です。
 1908年に出て、20世紀を代表する小説家ベネットの作品中、最も売れた本です。

 私が最初に読んだのは、知的生きかた文庫版1999年第10刷で、現在は絶版です。
 2016年に新書で新版が出たときカバーに惹かれて購入し、最近読み直しました。


自分の時間―――1日24時間でどう生きるか (三笠書房 電子書籍)

自分の時間―――1日24時間でどう生きるか (三笠書房 電子書籍)

  • 出版社/メーカー: 三笠書房
  • 発売日: 2017/07/25
  • メディア: Kindle版



自分の時間 (知的生きかた文庫)

自分の時間 (知的生きかた文庫)

  • 出版社/メーカー: 三笠書房
  • 発売日: 1990/02/01
  • メディア: 文庫



 人間には誰でも、1日24時間が平等に与えられています。これは驚くべきことです。
 毎朝目が覚めると、われわれの財布には、24時間がぎっしりと詰まっているのです。

 この時間は、寸分の狂いもなく与えられ、冷酷なまでに限定されています。
 そして人生のすべては、1日24時間の利用の仕方しだいで決まるのです。

 ではどうしたらよいか? そのためには、頭の中に「内なる1日」を作ることです。
 夕方仕事が終わってから、翌朝仕事に出かけるまでの時間を、別枠で考えるのです。 

 そこから毎朝30分を6日分取り分けます。また、夜の90分を週に3回取り分けます。
 合わせて週に7時間30分となります。これが、神聖なる「自分の時間」であり・・・ 

 ちなみにベネットは、仕事をする時間を、朝10時から夕方6時までと仮定しています。
 よって「内なる1日」を16時間としていますが、この計算は甘いと言わざるをえない。

 私の場合は朝7時半から夕方7時までですが、もっと拘束される人も多いでしょう。
 「内なる1日」を12時間とし、通勤や睡眠や食事等の時間を差し引くと残りません。

 仕方なく、睡眠時間を削るしかないのです。
 国民の多くがブラックな環境で働いている現状が、早く是正されることを願います。

 それはともかく、仕事時間のほかに「自分の時間」を想定するという考え方はいい。
 さらに、「自分時間」に何か専門的な研究をするべし、という考えもいいです。

 私の場合は、なるべく1日1時間以上は、「自分の時間」を作るようにしています。
 そしてその時間に、毎年テーマを決めて系統的な読書をしています。

 そうやって読書した内容のアウトプットを、時々このブログでおこなっています。
 このブログはいわば、私の「自分の時間」の成果の発表の場になっています。(笑)

 ライフワークを真剣に考えている人にとって、「自分の時間」の考え方は重要です。
 私がまだ30歳になったばかりの頃に、この本に出会えたことはとても幸運でした。

 (当時ブームだった「知的生活の方法」の渡部昇一が訳していたため読みました。)
 「知的生活の方法」→ https://ike-pyon.blog.ss-blog.jp/2018-04-24

 ところで、小説家のベネットが皆に勧めていることは、意外にも詩を読むことです。
 その理由は、詩を読む人は少なく、それには努力が必要だから、というものです。

 つまり「自分の時間」を努力する時間と考えています。娯楽の時間ではありません。
 この考えの裏には、優れた小説はどんどん読めてしまう、という考えがあります。

 そして実際、ベネットの作品は非常に軽快で、ベストセラーになっていたそうです。
 ではなぜ現在、代表作の「二人の女の物語」ですら絶版で、読めないのでしょうか?

 売れたのが裏目に出て、お金儲けのために書いたイメージが付いたからでしょうか。
 自己啓発書の本書だけが今も売れ続けているという事実に、人生の皮肉を感じます。


二人の女の物語 上 (岩波文庫 赤 252-2)

二人の女の物語 上 (岩波文庫 赤 252-2)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2023/03/19
  • メディア: 文庫



 さいごに。(カッコ良すぎるGo)

 マイ・ブームのおひとりさまカラオケで、最初に歌うのが「2億4000万の瞳」です。
 妻も娘も理解しませんが、誰が何と言おうと、今も昔も郷ひろみはサイコーです。

 私はこの動画を0.5倍速にして見ながら、振り付けをマスターしている途中です。
 妻と娘には内緒です。知られたら絶対笑われるので。



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