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ティラン・ロ・ブラン 2 [中世文学]

 「ティラン・ロ・ブラン 2」 J・マルトゥレイ作 田澤耕訳 (岩波文庫)


 騎士ティラン・ロ・ブランの愛と冒険を、写実的かつ現実的に描いた長編小説です。
 2016年に岩波文庫から全四巻で出ました。そのうちの第2巻です。


ティラン・ロ・ブラン 2 (岩波文庫)

ティラン・ロ・ブラン 2 (岩波文庫)

  • 作者: J.マルトゥレイ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2016/11/17
  • メディア: 文庫



 コンスタンチノーブルからシチリア王に、ティランの助力を請う手紙が来ました。
 皇帝じきじきの依頼にティランは喜んで承諾し、さっそく帝国に赴きました。

 コンスタンチノーブルに着くと、皇帝はその場でティランに元帥の杖を渡しました。
 「そちに帝国全体を任せ、そちを軍と司法を統率する元帥に任命しようぞ」

 元帥となったティランは、寝台に寝ていた皇女カルマジーナ姫に一目惚れしました。
 「恋をしているんだ」と言って、目からぽろぽろ涙を流し始めるティラン・・・

 今までにない展開です。そして、ティランと姫の会話がぐだぐだ入ります。
 喜んだり、悲しんだり、怒ったり、謝ったり。茶番はやめて、とっとと出陣しろ!

 戦場では、味方であるマケドニア公爵に、妨害されたり、命を狙われたりします。
 卑劣で強欲でずる賢いサイテーな公爵。だが、こういう人物が物語を面白くする。

 早く死んでくれ、早く死んでくれ、と思うのですが、マケドニア公爵はしぶとい。
 しかし、いなくなってしまうと寂しい。こういう悪役は、物語には必要なのですね。

 一方、敵陣のアブダラー・ソロモンとは、敵味方を超えた微妙な交流が始まります。
 敵でありながら善良であっぱれな騎士。こういう人物が、物語を格段に面白くする。

 アブダラー・ソロモンは、ティランらの求めに応じて、心からの助言を与えます。
 彼の話は次第に熱がこもってきます。また、時にはなかなか洒落たことも言います。

 「結局のところ、この世は危険と苦難が載った食卓のようなものだ、ということを
 悟ることが大事です。その食卓に軽々しく着いてはなりません。」(P209)

 ところで、第二巻における名場面(迷場面)の第一は、皇女の肌着の場面でしょう。
 ティランいわく、あなたの肌着をいただきたい、この手で脱がせていただきたいと。

 与える皇女も皇女です。ティランはその肌着を、鎧の上からまとってしまう(!)。
 皇帝は、ティランの姿を見て、「我が元帥よ、その陣羽織はいったい何だ?」・・・

 なお、第二巻の最後で、なぜかアーサー王が、ちらっと登場します。
 ここだけ幻想的で異質な場面でした。アーサー王の登場にはどんな意味があるのか?

 さて、第三巻では、後半から全く新しい展開となり、ぐっと面白くなると言います。
 ちょっと楽しみです。

 さいごに。(「おら」は誰のせい?)

 最近自分のことを「おら」と言ってしまうことが多くて、不思議に思っていました。
 謎が解けました。職場の近くの席の年配の方が、よく「おら」と言っているのです。

 私が、「おら」と言ってしまうのは、あの人の口癖が移ってしまっていたのだ!
 妻には「おら」禁止令を出されました。「おじさん化 ストップ運動」だとか。

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