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墨汁一滴 [日本の近代文学]

 「墨汁一滴」 正岡子規 (岩波文庫)


 俳人正岡子規の、病床における随筆です。
 死の前年に、半年にわたって、新聞に連載されました。

 現在、岩波文庫で読むことができます。


墨汁一滴 (岩波文庫)

墨汁一滴 (岩波文庫)

  • 作者: 正岡 子規
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1984/03/16
  • メディア: 文庫



 この本を読んだのは、社会人2年目か3年目の時です。
 今から20年近く前で、仕事が全くうまくいってなかった頃です。
 「明日は、辞表を出そう」と、当時、何度思ったことか。

 そういう時期だったからこそ、身に染みたのです。
 病床の子規が投げつける言葉に、どれほど励まされたことか!

 助からない命と知りながら、精一杯生きた男の魂の叫び。
 それが、悲しいユーモアの形をとって、表現されています。

 例えば4月9日の記事。
 「一 人間一匹 / 右返上申候(後略)」
 思わず、ぷっと笑いながらも、同時に胸を締め付けられます。

 と思えば、5月11日の記事は、こうです。
 「試に我枕もとに若干の毒薬を置け。
  而して余が之を飲むか飲まぬかを見よ。」

 どこを読んでも面白いです。
 しかし、何度も読み返したのは、6月14日の記事です。
 試験中、分からないところを、隣の男が教えてくれたが…

 ぜひここは、実際に読んでいただきたいです。
 昔の思い出を淡々と語る記事は、面白いのに哀切なのです。
 これこそ、子規の真骨頂でしょう。

 さて、子規とはホトトギスのこと。
 「鳴いて血を吐くホトトギス」という言葉があります。
 声が美しく、クチバシの近くが赤いため、そう言うようです。

 正岡子規は、結核を病み、血を吐きました。
 それでも歌を詠み、俳句を作り続けました。
 まさに、「鳴いて血を吐く」人だったのです。

 岩波文庫では、子規の四大随筆すべてを、読むことができます。
 これも、NHK「坂の上の雲」の人気のおかげでしょうか。
 願わくば、これら4冊と句集は、今後も絶やさないように。

 さいごに。

 ようやく、ディケンズの「荒涼館」を読み始めました。
 全4巻です。
 年末年始の休みに読もうと思って購入したものです。

 それにしても、いったい、年末年始は何をしていたのでしょうか。
 気がついたときには、休暇は終わっていました。
 でも、年末年始って、そういうものですよね。
 
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