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奇岩城 [20世紀フランス文学]

 「奇岩城」 モーリス・ルブラン作 平岡敦訳 (ハヤカワ文庫)


 ルパンシリーズの初長編で、人気の高い作品です。
 高校生の素人探偵ボートルレが、ルパンを相手に活躍します。

 現在、様々な訳で読めますが、ハヤカワ文庫版がベストでしょう。


奇岩城 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

奇岩城 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: モーリス ルブラン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2006/05
  • メディア: 文庫



 この作品でのヒーローは、ボートルレ君です。
 何事も見逃さず、よく気がつき、父親思いの男子高生です。
 時には怖がったり、敵前で泣いたりしますが、17歳だから許そう。

 ボートルレは前半、ジェーヴル邸の事件を、一人で解明します。
 後半は「空洞の針」の謎を、失敗しながらも、一人で解明します。

 我々は、ボートルレと同じ視点で、ルパンとの対決を楽しめます。
 内容は、暗号あり、宝探しあり、歴史伝説ありと、盛りだくさん。

 そして、ラストは … なんと! ああ、悲劇のルパン。
 哀切な余韻を残して、物語は終わります。

 「まっとうな男」になりたい。(P311)
 そんなふうに思ったのが、いけなかったのではないでしょうか。
 「まっとうな」ルパンなんて、ルパンではありません。

 さて、ルパンものの例に漏れず、本書にも不自然な点があります。
 例えば、ルパンの暗号メモが、事件現場に落とされている点など。
 (どうしてそんな大事なものを、犯行現場に持っていったのか?)

 私としては、ルパンのこの軽率さが受け入れがたいのですが…
 でも、そんなことは言わず、理屈抜きで楽しみましょう。

 とはいえ、シャーロキアンにとっては、受け入れがたい作品です。
 シャーロック・ホームズが、あまりにもぶざまなのです。

 ホームズは、登場直後に、あっけなく退場させられてしまいます。
 そして、ホームズは、いかにして釈放されたか。ああ、ひどすぎ!

 さらに、ホームズを、残忍で卑怯な男として描いています。
 これには、シャーロキアンはもちろん、全イギリス人が怒りますよ。

 一応、ドイルの抗議を受けて、原文では名前を変えています。
 その名も、「ヘルロック・ショルメス」。もじっただけです。
 なんとフランス人らしい。とことん、人を食っています。

 話は変わって。

 ルパンシリーズの文庫本は、どのように読むべきでしょうか。
 一般的には、新訳のハヤカワ文庫版4冊を優先するようです。
 それ以外は、新潮文庫か創元推理文庫で、補いましょう。

 ただし、偕成社文庫を読むという選択肢も、ありです。
 偕成社は全集を出していて、作品が充実しています。
 ただし、「偕成社文庫」は、文庫本ではありません。


奇岩城 (偕成社文庫―アルセーヌ・ルパン・シリーズ)

奇岩城 (偕成社文庫―アルセーヌ・ルパン・シリーズ)

  • 作者: 長島 良三
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 1987/11
  • メディア: 単行本



 ルパンシリーズの様々な本を、紹介しているページがあります。
 とても参考になりました。
 http://www2s.biglobe.ne.jp/~tetuya/lupin/nyumon/nyumon.html

 さいごに。

 2ヶ月間無料キャンペンに乗っかって、ひかりTVを契約しました。
 ところが、まるで使えないのです。

 根本的な問題は、番組を見る時間がないこと。
 見たい番組はあるのですが。
 うちの機器では、録画できないことが、致命的です。

 それに、時間があったら、本を読みたいですよね。
 というわけで、早くも解約を決断したしだいです。

 そういえば、年末にNHKで「坂の上の雲」第二部がやりました。
 ばたばたしている間に、いつのまにか終わっていました。

 第七回「子規、逝く」だけでも見たかったのですが。
 私は、正岡子規が好きなので。
 司馬遼太郎の原作で読もうかな。(ある人いわく「必読書だよ」)
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