SSブログ

デイヴィッド・コパフィールド [19世紀イギリス文学]

 「デイヴィッド・コパフィールド」 ディケンズ作 石塚裕子訳 (岩波文庫)


 自伝的な要素が強い長編小説で、ディケンズ自身が最も愛した作品です。

 現在、岩波文庫と新潮文庫で読むことができます。
 岩波文庫は全5巻。訳が新しくて分かりやすく、当時の挿し絵も良いです。


デイヴィッド・コパフィールド〈1〉 (岩波文庫)

デイヴィッド・コパフィールド〈1〉 (岩波文庫)

  • 作者: チャールズ ディケンズ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2002/07/16
  • メディア: 文庫




デイヴィッド・コパフィールド 全5冊 (岩波文庫)

デイヴィッド・コパフィールド 全5冊 (岩波文庫)

  • 作者: ディケンズ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • メディア: 文庫



 私は岩波文庫版で読みましたが、新潮文庫版も評判は良いです。
 新潮文庫版は、挿し絵がありませんが、表紙がなかなかカッコイです。


デイヴィッド・コパフィールド〈1〉 (新潮文庫)

デイヴィッド・コパフィールド〈1〉 (新潮文庫)

  • 作者: チャールズ ディケンズ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1989/03
  • メディア: 文庫



 この作品が、ディケンズにとって、特別なものだという意味が、よく分かります。
 主人公のデイヴィッドは、ディケンズの分身です。
 この長い作品の隅から隅まで、ディケンズの愛に満たされているように感じます。

 先が気になって、ずんずん読んでしまうというタイプの作品ではありません。
 むしろ、デイヴィッドと共有する時間を惜しみながら、ゆっくりと読む作品です。
 読み通すのに1ヶ月かかりましたが、一度も読み飛ばしたいと思いませんでした。

 本を開いている間は、デイヴィッドがそこにいて、直接語りかけてくれました。
 本を閉じている時もずっと、そばにデイヴィッドがいるのを感じました。

 以下、岩波文庫版の各巻について一言ずつ。

 第1巻。
 突然、新しい父親が現れ、楽しい生活が一変します。そして、母の死。
 デイヴィッドは独り立ちをしますが…

 第2巻
 デイヴィッドは逃げ出し、偏屈なトロットウッド伯母さんのもとへ。
 そして、意外な展開に…

 第3巻
 旧友スティアフォースと再会。しかし、とんでもないことに。
 一方、ドーラと婚約しますが…

 第4巻
 新しい生活が始まります。
 一方、アグネスたちのもとに、ユライア・ヒープの黒い影が…

 第5巻
 意外な人物によって、ユライアの化けの皮がはがされます。
 また、デイヴィッドの人生には、大きな変化が…

 この作品も、ディケンズ小説の例に漏れず、魅力的な人物満載です。

 ミスター・ペゴティーは、男の中の男です。
 トロットウッド伯母さんは、女の中の女です。
 この二人は、かげの主役ではないでしょうか。

 他にも、幼馴染で天使のアグネス、気のいい狂人のディック氏、
 頼りになる女召使いペゴティー、脳天気で意外性のあるミコーバー氏、
 善良な旧友トラドルズ、悪魔的な魅力を持つスティアフォース…

 しかし私にとって忘れられないのは、何と言ってもユライア・ヒープです。
 「私はしがない身だから」と卑下しながら、こそこそと悪事を企てる男。
 臆病で肝っ玉は据わっていないが、陰険で卑劣な手段を平気で使います。

 こういう男の考えていることは、最もたちが悪い。
 実際ユライアは、実にいやらしい男として、描かれています。

 しかしながら、(だからこそ)とても興味深い人物です。
 第4巻で、ユライアが語る自身の生い立ちは、なかなか魅力的です。
 こういう人間が、善悪どちらに走るかは、紙一重ではないでしょうか。

 この作品は私にとって、ディケンズ作品の、ダントツのNO1です。
 (ちなみに2位は「二都物語」、3位は微妙。)
 しかも、年間ベスト作になりそうです。まだ3月なのに、やばいです。

 余談です。
 「ユーライア・ヒープ」というロックバンドを御存知でしょうか。

 1970年に結成された、イギリスのハードロックバンドです。
 変なバンド名だなあと、私はずっと思っていました。
 このたび、本書のユライアから命名されたということを、知りました。

 サードアルバム「対自核」は有名。タイトルソングは必聴!
 頭の中で、花火がバチバチはじけるみたいな、すさまじい曲です。

 最近、懐かしくなって、出勤中の車の中で聞いています。
 職場に着く頃には、疲れてぐったりしてしまいます。


対自核+7

対自核+7

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: USMジャパン
  • 発売日: 2010/12/22
  • メディア: CD



nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。