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テス [19世紀イギリス文学]

 「テス」 ハーディ作 井上宗次・石田英二訳 (岩波文庫)


 けなげで清純な女性テスが、運命に翻弄される悲劇です。
 イギリスの文豪ハーディの、長編小説の傑作です。

 現在、岩波文庫上下二巻で読むことができます。
 訳が古く、活字が小さくて、少し読みにくかったです。


テス 上 (岩波文庫 赤 240-1)

テス 上 (岩波文庫 赤 240-1)

  • 作者: トマス・ハーディ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1960/10/05
  • メディア: 文庫



 少し前までは、ちくま文庫からも、上下二巻で出ていました。
 テスを描いた表紙が、とても魅力的でした。
 しかし、現在は品切れ中。ちくまさんは、こういう所が気まぐれ。


テス 上 (ちくま文庫)

テス 上 (ちくま文庫)

  • 作者: トーマス・ハーディ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2004/06/10
  • メディア: 文庫



 テスの家は、落ちぶれた旧家です。
 一家の窮状を救うために、テスはダーバヴィル家に働きに行きます。
 しかし、そこで待っていたのは…

 ひとことで言うと、テスは男運が悪い。

 アレクは、軽薄。この男には、誠実さが無い。
 エンジェルは、期待外れ。この男には、寛容さが足りない。

 彼らに振り回されるテスは、不運な女性です。
 しかし当時の風潮は、テスの不運に同情しません。
 それどころか、テスを、ふしだらな女と見てしまいます。

 それでもテスは、愚痴を言ったり、不満を述べたりしません。
 自分の宿命を受け入れて、前向きに生きていこうとします。

 テスの姿は、可憐で神々しいほどです。
 テスは、本当に魅力的で、すばらしい女性です。
 テスこそ、幸せになる資格がある女性だったはずです。

 それなのに、この結末は!
 なんということでしょう。救いがありません。

 作者ハーディは、「内在意志」というものを信じていたそうです。
 それは、宇宙を支配する盲目的な意志です。(ある種の神?) 
 人間は、その意志の戯れに翻弄される、哀れな存在に過ぎないのです。

 まさに、テスは、宇宙の内在意志に翻弄された女性です。
 結末の言葉に、それが象徴されています。
 「『神々の司』は、テスに対する戯れを終わったのだ。」

 さて、結末の直前の58章で、ストーンヘンジが描かれています。
 このシーンが、とても印象的で美しく、そして感動的です。
 ストーンヘンジは、太陽信仰の場です。

 ストーンヘンジは、様々な象徴として、読者に受け取られてきました。  
 例えば、宇宙の内在意志の象徴、この世の摂理と儚い人類の象徴、
 テスの逃れられぬ宿命の象徴、生命が永続していくことの象徴などなど。

 でも私は、このように受け取りたい。
 やがてテスの魂が天へ昇り、永遠の安らぎを得ることの象徴であると。
 そうでなければ、この小説には、救いがまったく無いですよ。

 さいごに。

 東日本大震災の影響は、まだ至るところで残っています。
 自然の猛威を目の当たりにして、改めてその恐ろしさを実感しています。

 これを、天罰だと言った某都知事がいますが…
 民主党を批判したいのだと思いますが、あまりにも心が狭い。

 今は、敵も味方もない、みんなで乗り越えよう。
 そういう言葉が聞きたかったです。

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