テス [19世紀イギリス文学]
「テス」 ハーディ作 井上宗次・石田英二訳 (岩波文庫)
けなげで清純な女性テスが、運命に翻弄される悲劇です。
イギリスの文豪ハーディの、長編小説の傑作です。
現在、岩波文庫上下二巻で読むことができます。
訳が古く、活字が小さくて、少し読みにくかったです。
少し前までは、ちくま文庫からも、上下二巻で出ていました。
テスを描いた表紙が、とても魅力的でした。
しかし、現在は品切れ中。ちくまさんは、こういう所が気まぐれ。
テスの家は、落ちぶれた旧家です。
一家の窮状を救うために、テスはダーバヴィル家に働きに行きます。
しかし、そこで待っていたのは…
ひとことで言うと、テスは男運が悪い。
アレクは、軽薄。この男には、誠実さが無い。
エンジェルは、期待外れ。この男には、寛容さが足りない。
彼らに振り回されるテスは、不運な女性です。
しかし当時の風潮は、テスの不運に同情しません。
それどころか、テスを、ふしだらな女と見てしまいます。
それでもテスは、愚痴を言ったり、不満を述べたりしません。
自分の宿命を受け入れて、前向きに生きていこうとします。
テスの姿は、可憐で神々しいほどです。
テスは、本当に魅力的で、すばらしい女性です。
テスこそ、幸せになる資格がある女性だったはずです。
それなのに、この結末は!
なんということでしょう。救いがありません。
作者ハーディは、「内在意志」というものを信じていたそうです。
それは、宇宙を支配する盲目的な意志です。(ある種の神?)
人間は、その意志の戯れに翻弄される、哀れな存在に過ぎないのです。
まさに、テスは、宇宙の内在意志に翻弄された女性です。
結末の言葉に、それが象徴されています。
「『神々の司』は、テスに対する戯れを終わったのだ。」
さて、結末の直前の58章で、ストーンヘンジが描かれています。
このシーンが、とても印象的で美しく、そして感動的です。
ストーンヘンジは、太陽信仰の場です。
ストーンヘンジは、様々な象徴として、読者に受け取られてきました。
例えば、宇宙の内在意志の象徴、この世の摂理と儚い人類の象徴、
テスの逃れられぬ宿命の象徴、生命が永続していくことの象徴などなど。
でも私は、このように受け取りたい。
やがてテスの魂が天へ昇り、永遠の安らぎを得ることの象徴であると。
そうでなければ、この小説には、救いがまったく無いですよ。
さいごに。
東日本大震災の影響は、まだ至るところで残っています。
自然の猛威を目の当たりにして、改めてその恐ろしさを実感しています。
これを、天罰だと言った某都知事がいますが…
民主党を批判したいのだと思いますが、あまりにも心が狭い。
今は、敵も味方もない、みんなで乗り越えよう。
そういう言葉が聞きたかったです。
けなげで清純な女性テスが、運命に翻弄される悲劇です。
イギリスの文豪ハーディの、長編小説の傑作です。
現在、岩波文庫上下二巻で読むことができます。
訳が古く、活字が小さくて、少し読みにくかったです。
少し前までは、ちくま文庫からも、上下二巻で出ていました。
テスを描いた表紙が、とても魅力的でした。
しかし、現在は品切れ中。ちくまさんは、こういう所が気まぐれ。
テスの家は、落ちぶれた旧家です。
一家の窮状を救うために、テスはダーバヴィル家に働きに行きます。
しかし、そこで待っていたのは…
ひとことで言うと、テスは男運が悪い。
アレクは、軽薄。この男には、誠実さが無い。
エンジェルは、期待外れ。この男には、寛容さが足りない。
彼らに振り回されるテスは、不運な女性です。
しかし当時の風潮は、テスの不運に同情しません。
それどころか、テスを、ふしだらな女と見てしまいます。
それでもテスは、愚痴を言ったり、不満を述べたりしません。
自分の宿命を受け入れて、前向きに生きていこうとします。
テスの姿は、可憐で神々しいほどです。
テスは、本当に魅力的で、すばらしい女性です。
テスこそ、幸せになる資格がある女性だったはずです。
それなのに、この結末は!
なんということでしょう。救いがありません。
作者ハーディは、「内在意志」というものを信じていたそうです。
それは、宇宙を支配する盲目的な意志です。(ある種の神?)
人間は、その意志の戯れに翻弄される、哀れな存在に過ぎないのです。
まさに、テスは、宇宙の内在意志に翻弄された女性です。
結末の言葉に、それが象徴されています。
「『神々の司』は、テスに対する戯れを終わったのだ。」
さて、結末の直前の58章で、ストーンヘンジが描かれています。
このシーンが、とても印象的で美しく、そして感動的です。
ストーンヘンジは、太陽信仰の場です。
ストーンヘンジは、様々な象徴として、読者に受け取られてきました。
例えば、宇宙の内在意志の象徴、この世の摂理と儚い人類の象徴、
テスの逃れられぬ宿命の象徴、生命が永続していくことの象徴などなど。
でも私は、このように受け取りたい。
やがてテスの魂が天へ昇り、永遠の安らぎを得ることの象徴であると。
そうでなければ、この小説には、救いがまったく無いですよ。
さいごに。
東日本大震災の影響は、まだ至るところで残っています。
自然の猛威を目の当たりにして、改めてその恐ろしさを実感しています。
これを、天罰だと言った某都知事がいますが…
民主党を批判したいのだと思いますが、あまりにも心が狭い。
今は、敵も味方もない、みんなで乗り越えよう。
そういう言葉が聞きたかったです。
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