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人の世は夢 [17世紀文学]

 「人の世は夢」 カルデロン作 高橋正武訳 (岩波文庫)


 幽閉中に夢のような1日を過ごして、人生を悟ったセヒスムンド王子の物語です。
 17世紀スペインを代表する哲学劇です。

 恥ずかしながら、カルデロンという名前を、私は知りませんでした。
 だから、2011年11月の一括重版で、復刊されたときも、ノーチェックでした。

 カルデロンは、スペイン文学の黄金期の、最後を飾る大劇作家です。
 「人の世は夢」と「サラメアの村長」は、外せない作品だそうです。
 岩波文庫のこの本は、ベスト・カップリング。訳は分かりやすかったです。


人の世は夢,サラメアの村長 (岩波文庫 赤 725-1)

人の世は夢,サラメアの村長 (岩波文庫 赤 725-1)

  • 作者: カルデロン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1978/11/16
  • メディア: 文庫



 父王が星占いで、王座を息子に奪われると知ったため、王子は幽閉されて育ちました。
 あるとき父王は、王子セヒスムンドの性格を、試してみたいと考えます。
 そして王子は、麻薬で眠らされているうちに、ひそかに王宮へ連れて行かれます。

 きらびやかな宮殿で目覚めたセヒスムンドは、一変した自分の境遇に仰天しました。
 そして、抑圧されてきた怒りのため、凶暴性を発揮し、早々と父王に見放されます。

 翌朝、再び牢屋で目覚めたセヒスムンドは、人生について悟ります。
 この場面、なかなか良いです。

 「人の世とは、何だ? 狂気だ。人の世とは、何だ? まぼろしだ。影だ。幻影だ。
  いかなる大きな幸福とても、取るに足りない。人の一生は、まさに夢。
  夢は所詮が夢なのだ。」(P82)

 「だから人生はむなしい」と、ならないところが良い。彼は、こう考えます。
 幸福なんて、一瞬で消える。それだったら、いっそのこと、善を行おう、と。

 このあと、牢中のセヒスムンドの身に、意外な知らせがあり、予想外の展開に…
 面白いし、色々と考えさせられます。とてもよくできた劇です。

 併録されている「サラメアの村長」は、かつてのスペインの様子を伝える歴史劇。
 こちらも、文句無く面白い。

 文庫本ではありませんが、平凡社ライブラリーでも、カルデロンが読めるようです。
 宗教劇の代表作「驚異の魔術師」と、喜劇の代表作「淑女」の二編を収録。


驚異の魔術師 ほか一篇 (平凡社ライブラリー)

驚異の魔術師 ほか一篇 (平凡社ライブラリー)

  • 作者: カルデロン デ・ラ・バルカ
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 1997/04
  • メディア: 新書



 カルデロンは、生涯に120の喜劇と、80の聖体神秘劇を作ったのだそうです。
 我々が、こうして読むことのできるのは、そのうちのほんのわずかな部分なのですね。

 さいごに。(娘の突然の高熱)

 先週末、突然、娘に高熱が出て、38度以上に体温が上がりました。
 当番医に駆け込むと、2時間待ち。夕食を食べてから、出直しました。

 幸い、インフルエンザではありませんでした。
 しかし、一昨日から、じんましんができて、体中が蚊に刺されたみたいです。

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