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山椒魚 [日本の近代文学]

 「山椒魚(さんしょううお)」 井伏鱒二 (新潮文庫)


 岩屋から出られなくなってしまった山椒魚を、ユーモラスに描いた短篇です。
 中学校の頃、国語の教科書に載っていたように思います。

 現在、新潮文庫、岩波文庫、小学館文庫などで読むことができます。
 私の本棚には、新潮文庫版が並んでいます。

 新潮文庫は、昨年改版されて、活字が読みやすくなりました。
 カバーもオシャレになっていたので、旧版を持っているのに、また買ってしまいました。


山椒魚 (新潮文庫)

山椒魚 (新潮文庫)

  • 作者: 井伏 鱒二
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1948/01/19
  • メディア: 文庫



 頭が大きくなりすぎて、すみかである岩屋から、出ることができなくなった山椒魚。
 彼は、岩屋の出入り口から、外の世界を眺めるしかありません。
 ところがあるとき、その岩屋に、一匹の蛙が迷い込んできて…

 ユーモラスに描かれていますが、なんとも言えない悲哀を感じる作品です。
 最後の蛙の言葉は、妙に悲しい。
 「今でもべつにお前のことをおこってはいないんだ」

 おそらく蛙は、山椒魚のことを、ずっと怒ってはいなかったのでしょう。
 二匹は、ちょっとこじれただけだったのです。それなのに、意地を張り通して。
 それを悟ったのは、死ぬ間際だった。ばからしく、また悲しい物語です。

 新潮文庫版には、合計12編の短篇が収録されています。
 中には、「屋根の上のサワン」も名作で、これもいつだったか、教科書で読みました。
 自分の気持ちを伝えられないうちに、サワンが旅立ってしまうのが、悲しかったです。

 ほか「女人来訪」「寒山拾得(かんざんじっとく)」「夜ふけと梅の花」等は捨てがたい。
 しかし、私にとってのベストは、「へんろう宿」です。

 「へんろう宿」はわずか9ページ。しかし、限りない哀感が込められています。
 舞台は土佐。それにしても、変わった宿があったものです。旅に出たくなる一編です。

 岩波文庫の短編集では、新潮文庫版では読めない名作が、収録されています。
 タイトルの「遙拝隊長」などは外せません。
 重複する作品がありますが、ぜひ、岩波文庫版も読みたい。


山椒魚・遙拝隊長 他7編 (岩波文庫 緑 77-1)

山椒魚・遙拝隊長 他7編 (岩波文庫 緑 77-1)

  • 作者: 井伏 鱒二
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1969/12/16
  • メディア: 文庫



 しかし、かつては新潮文庫から、「遥拝隊長・本日休診」が出ていたのです。
 私は買いそびれました。ぜひ、改版を出してほしい。


遥拝隊長・本日休診 (新潮文庫)

遥拝隊長・本日休診 (新潮文庫)

  • 作者: 井伏 鱒二
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1955/06
  • メディア: 文庫



 ところで、「山椒魚戦争」というSF小説があります。
 アンチ・ユートピア小説の、古典的名作なのだそうです。ちょっと気になります。


山椒魚戦争 (岩波文庫)

山椒魚戦争 (岩波文庫)

  • 作者: カレル チャペック
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2003/06/13
  • メディア: 文庫



 さいごに。(45歳)

 先日、誕生日を迎えて、また一つ年をとりました。45歳です。
 気持ちだけは35歳のつもりで、と思うのですが…

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