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やし酒飲み [20世紀その他文学]

 「やし酒飲み」 エイモス・チュツオーラ作 土屋哲訳 (岩波文庫)


 死んだ「やし酒造り」を探して、死者の国に旅する男とその妻の物語です。
 アフリカ文学の傑作です。作者はナイジェリア人ですが、作品は英語です。

 2012年10月に、岩波文庫から出たばかりですが、新訳ではありません。
 土屋訳は、1970年に晶文社から出たものですが、分かりやすかったです。


やし酒飲み (岩波文庫)

やし酒飲み (岩波文庫)

  • 作者: エイモス・チュツオーラ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2012/10/17
  • メディア: 文庫



 10歳からやし酒を飲み始めた「わたし」は、一日中やし酒を飲んで暮らしていた。
 ところがある日、やし酒造りが、やしの木から落ちて、死んでしまいました。
 「わたし」は、死んだやし酒造りを探して、旅立ちますが…

 「わたし」は、魔術者的な存在です。ジュジュというものを使って、変身します。
 妻は、預言者的な存在です。彼女の言うことは、様々な形をとって、実現します。

 この二人の行く先々に現れるのは、様々な怪物たちです。
 死神、頭ガイ骨、親指から生れた赤ん坊、精霊、赤い化け物、赤ん坊の死者・・・
 読むだけで、酔っ払ってしまいそうです。

 この荒唐無稽な物語は、ヨルバ人の伝承に基づいているのだそうです。
 そして、この素朴で神話的な世界観が、高く評価されています。

 しかし私の印象は、ただのヘンな話。でも、それでいいじゃありませんか。
 文学的価値を探したりしないで、割り切って、アフリカ的な世界を味わいましょう。

 例えば、赤い町における冒険は、実に面白かったです。
 その町に入ると、赤い住人と赤い王様が、なぜかとても喜んで迎えてくれました。

 赤い王様は言います。三日後に、赤い化け物が来て、人身御供を要求する。
 誰もいけにえになりたがらないから、あなた、いけにえになってくれ、と。

 「冗談じゃない!」と言うべきところを、なんと「わたし」は、承知するのです。
 というのも、「わたし」は既に、「死」を売ってしまって、死ぬことができないから。

 実はそれ以前、「死」をお金に買えて、そのお金を賭博で無くしていたのです。
 その後、「死」を取り戻そうとしましたが、返してもらえませんでした。(!)
 さて、こうして、赤い化け物との戦いに挑みますが…

 作者エイモス・チュツオーラは、とても苦学して、学問を身につけた人です。
 「やし酒飲み」で国際的に有名になり、ナイジェリアの英雄となりました。

 さいごに。(お酒)

 私にとって、お酒は恐ろしいものです。職場の忘年会で、ビールをコップに
 二杯飲んだら、翌日の夕方まで、コメカミがズキズキと痛くて苦しみました。

 それで、新年会などでも、全くお酒を飲んでいません。
 この時期、飲める人が、ちょっとうらやましく感じられます。

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