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凍 [日本の現代文学]

 「凍」 沢木耕太郎 (新潮文庫)


 山野井夫妻によるギャチュンカンへの挑戦と、奇跡の生還を描いた作品です。
 2006年講談社ノンフィクション賞受賞作です。

 2008年に新潮文庫から出ました。
 カバーがなかなか秀逸です。


凍 (新潮文庫)

凍 (新潮文庫)

  • 作者: 沢木 耕太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/10/28
  • メディア: 文庫



 「垂直の記憶」同様、「凍」もまた、妻に勧められました。
 「垂直の記憶」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-11-06
 この二作を比べてみると・・・

 「垂直の記憶」は、山野井のエッセンスが抽出されている文章でした。
 「凍」では、もっと細かい部分まで、詳細に説明してくれています。

 妻は、「垂直の記憶」の方が感動が大きかったと言っています。
 私は逆に、本書「凍」の方が感動が大きかったです。

 それで、妻とよく話し合いました。
 どうやら読んだ順序が、その作品の感動に、影響を与えているようなのです。

 妻は、最初に「凍」を読みました。
 「凍」を読んで、山野井夫妻について、あらかじめ予備知識を持っていました。

 「凍」で興味を持った妻は、次に、山野井の生の声を聞きたいと思ったようです。
 「垂直の記憶」は、妻のそういう欲求にこたえる本として完璧でした。

 だから妻は「垂直の記憶」に、より大きく感動したようです。
 そして、私に本を勧めるとき、先に「垂直の記憶」を勧めてくれたのです。

 こういう事情で私は、最初に「垂直の記憶」を読みました。
 「垂直の記憶」を読んで感動しながらも、夫妻についての知識は不充分でした。

 「垂直の記憶」で興味を持った私は、夫妻の挑戦を詳しく知りたくなりました。
 「凍」は、私のそういう欲求にこたえる本として完璧でした。

 だから私は「凍」に、より大きく感動したのです。
 さすが沢木耕太郎、と思いました。実にうまくまとめています。

 ただ、人によっては「沢木は書きすぎだ」と言います。
 「沢木は演出のしすぎだ」と。

 たとえそういう面があっても、「凍」の面白さを否定することにはなりません。
 天候、体調、食事、装備、そしてふたりの内面。目に見えるように描かれています。

 特に第七章からラストまでの叙述!
 なかなか本を手から放すことができません。

 まとめると・・・
 山野井本人の、飾らない素朴な声が直接心に響いてくる「垂直の記憶」。
 やや説明的だが、かゆいところまで手が届くような解説を施す「凍」。

 この二作は、お互いに補いながら、支えあって存在している作品です。
 どういう順序でもいいので、二作セットで読むことをオススメします。

 さて、ギャチュンカンのあとで読むべき小説は、マンの「魔の山」でしょう。(笑)
 実際、私はこの作品を、ずっと山岳小説だとばかり思っていました。


魔の山 (上巻) (新潮文庫)

魔の山 (上巻) (新潮文庫)

  • 作者: トーマス・マン
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1969/02/25
  • メディア: 文庫



 さいごに。(いくらあったら、小学校に行かなくていいか)

 年末ジャンボの最高額は7億円。
 「それだけあったら、仕事に行かなくていいね」と冗談で言ったら、
 「それだけあったら、小学校に行かなくていい?」と娘。

 「行かなくてはいけない」と私が言うと、
 「じゃあ、いくらあったら、小学校に行かなくていいの?」と聞かれました。

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