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ブッデンブローク家の人びと [20世紀ドイツ文学]

 「ブッデンブローク家の人びと」 トーマス・マン作 望月市恵訳 (岩波文庫)


 ブッデンブローク商会を経営する一族の没落を、四代にわたって描いた大作です。
 マンの処女長編で、完成度が高く、ノーベル賞受賞の理由に挙げられた作品です。

 今年2013年6月に、岩波文庫から復刊されました。
 カバーが良い味を出しています。初版は1969年。


ブッデンブローク家の人びと〈上〉 (岩波文庫)

ブッデンブローク家の人びと〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者: トーマス マン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1969/09/16
  • メディア: 文庫



 1835年8月、ブッデンブローク家において、新居披露宴がおこなわれていました。
 老夫妻、その息子夫妻、その孫たち、ほか親戚一同が、盛大に祝っていました。

 あとから思えば、これがブッデンブローク家の最盛期でした。
 老父が死ぬと、一家は衰退の道をゆるやかにたどり始めます。

 革命による損失を受けながら、なんとか商会を維持した息子の世代。
 戦争による損失を受けながら、自分の才覚で乗り切ろうとした孫の世代。

 さらにその子供へと、四代にわたる壮大な物語です。
 たんたんと、静かに物語は進行します。

 ドストエフスキーのカラマーゾフのような、強烈な個性を発揮する人物はいません。
 トルストイのアンナのような、強烈な印象を残す人物もいません。
 しかしこの作品には、カラマーゾフやアンナに匹敵するインパクトがありました。

 ゆっくりと、しかし確実に下り坂をくだる一族。
 命運から逃れられない一族の悲哀が、作品全体からしみじみと感じられます。

 読み終わるころには、自分もすっかり、ブッデンブローク家の一員でした。
 いつまでもこの一族と一緒にいたいと感じました。

 さて、この本の初版は1969年。そろそろ新訳がほしいです。
 直訳に近くて一文が長く、時々不自然な倒置法があり、少し読みにくかったです。

 また、最初は人名に戸惑いました。
 「若主人」「ヨハン」「ジャン」「コンズル」、これらが、同一人物だったとは!

 ちなみに、「ヨハン」は親から受け継いだ正式名称のようです。
 「ジャン」は奥さんが本人を呼ぶときにだけ使われている名前です。愛称か。

 そして「コンズル」がよく分からない。「一族の長」という肩書きでしょうか。
 このへんの事情だけは、注釈がほしかったです。(辞書に載っていないので)

 訳に難はあるものの、この作品の魅力は決して失われません。
 次回、もう少しこの作品について書きたいです。

 さいごに。(バレエはりきる)

 娘のバレエは、2月に発表会があります。
 そのため、小グループに分かれて、パートごとの振り付け練習に入りました。

 娘はそのグループで一番の古株。そのためパートでは先頭で登場することに。
 それが嬉しかったようで、娘は最近、バレエの練習ではりきっています。

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