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情事の終り2 [20世紀イギリス文学]

 「情事の終り」 グレアム・グリーン作 上岡伸雄訳 (新潮文庫)


 ある著名作家と、高級官僚の妻との、愛と情事と祈りと信仰の物語です。
 (前回の続きです。今回はネタバレが多めです。)


情事の終り (新潮文庫)

情事の終り (新潮文庫)

  • 作者: グレアム グリーン
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/04/28
  • メディア: 文庫



 内容は深淵です。テーマは「愛と情事」から次第に「祈りと信仰」に移ります。
 「神」は存在するのか否かが、問題になってきます。

 ベンドリックスは「神」を憎みますが、憎むことによって「神」の存在を認めている、
 という論理が面白かったです。確かに、存在しないものを憎むことはできません。

 ベンドリックスは、終始「神」の存在に否定的でした。
 しかし、否定すればするほど、その存在の確かさが身に染みて分かるのです。

 最後には、彼は半ば、「神」の存在を認めているのではないでしょうか。
 少なくとも、作者自身は、「神」は存在すると、言いたかったように思えます。

 ちなみに私は、「神」とはその人の愛する人のことではないか、と思いました。
 例えばサラにとって、ベンドリックスは「神」でした。
 また、ベンドリックスにとって、サラは「神」でした。

 実際、サラのやっていることは、「神」のように自己犠牲的でした。
 私には、サラのイメージが、キリストに重なるように見えました。

 さて、この本を読みながら、しばしば「椿姫」を思い出しました。
 椿姫こそ、自己犠牲の人です。彼女も「神」になったと、信じたい。
 「椿姫」(ネタバレ)→ http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2010-01-16

 ところで、遠藤周作は、「情事の終り」を愛読していたそうです。
 そしてグリーンもまた、「沈黙」を高く評価し、遠藤を慕っていたようです。

 そういえば、遠藤の「深い河」に、「玉ねぎ」というキーワードが出てましたが、
 「情事の終り」にも「玉ねぎ」が出てきます。ここから借用したのでしょうか。

 最後に、この作品の文章について言うと、実は少し読みにくいのです。
 というのも、時間があちこちに飛ぶからです。

 現在は1949年。そこから、1946年、1944年、1939年を、行ったり来たりします。
 私は、頭がごちゃごちゃにならないように、時々年号を記入しながら読みました。

 さいごに。(アプト式)

 先日のハイキングでは、大井川鉄道のアプトラインを使いました。
 日本で唯一のアプト式で急勾配をずんずん進み、娘は大喜びでした。

DSCF1153-2.jpg

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