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サンクチュアリ [20世紀アメリカ文学]

 「サンクチュアリ」 フォークナー作 加島祥造訳 (新潮文庫)


 無実の罪で逮捕された男の悲劇と、彼の弁護人の絶望的な努力を描いた作品です。
 作者自身が、「想像しうる限りの最も恐ろしい物語」を書いたと言いました。

 新潮文庫から出ていますが、初版が1972年で、訳が少し古いです。
 しかし、それほど読みにくくはありませんでした。


サンクチュアリ (新潮文庫)

サンクチュアリ (新潮文庫)

  • 作者: フォークナー
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1955/06/01
  • メディア: 文庫



 弁護士ベンボウは、ある午後偶然、酒の密造人グッドウィンの屋敷に立ち寄りました。
 そこには、ヤクザ者のポパイなど、怪しい男たちがいましたが、彼は無事帰されます。

 数日後、大学生のカップルが車を横転させて、グッドウィンの屋敷にやってきました。
 そして、そこで事件は起きるのです。

 犯人として逮捕されたのは、グッドウィンでした。
 弁護を買ってでたのはベンボウ。グッドウィンの無実を直感していましたが・・・

 作者自身の言葉が一人歩きをして、残虐な物語というイメージが定着しています。
 実は私も、そういうイメージを持っていたため、なかなか読む気になりませんでした。

 ところが、実際に読んでみると、「正義の物語」という印象が強かったです。
 絶望的な状況下で最善を尽くそうとする、弁護士ベンボウの「正義の物語」です。

 「男というのはね、ときにはそれが正しいと知ったら、ただそれだけのために
 何かをしようとするものなんだ、」(P362)

 妻から逃げてきたような、ダメダメな男なのですが、やるときはやる。
 監獄で三人で過ごす場面は、ほんとうにすばらしい。心を打たれます。

 ベンボウの言葉の端から、彼自身は正義を信じていなかったような気がします。
 正義を信じていなかったからこそ、あれだけ必死に戦おうとしたのではないか。

 そして、結末は・・・やりきれません。
 「それはないだろう!」と言いたい。

 思うに、フォークナー自身も、正義を信じていなかったのではないか。
 正義を信じていなかったからこそ、あのような結末に?

 さいごに。(楽寿園)

 家族3人で、三島の楽寿園に行き、紅葉を見ました。
 とてもきれいでした。しかも、たまたま入園料タダの日でした。ラッキー。

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