号泣する準備はできていた [日本の現代文学]
「号泣する準備はできていた」 江國香織 (新潮文庫)
タイトル作ほか、恋に迷う不安定な心理を描いた全12編の短編集です。
恋愛小説のカリスマとも呼ばれる作者の、直木賞受賞作です。
現在、新潮文庫で読むことができます。
どの作品も20ページ前後で、とても読みやすいです。
「人々が物事に対処するその仕方は、つねにこの世で初めてであり一度きりで
あるために、びっくりするほどシリアスで劇的です。」(あとがき)
実際、「びっくりするほどシリアスで劇的」な一瞬をとらえた物語ばかりです。
それにしても江國香織は、そのような瞬間を鮮烈に書き表すのがうまいです。
中でも傑作は、タイトルにもなった「号泣する準備はできていた」でしょう。
深く深く愛し合って、半年前に別れた運命の男。彼からきた電話は・・・
「たとえば悲しみを通過するとき、それがどんなにふいうちの悲しみであろう
と、その人には、たぶん、号泣する準備ができていた。」(あとがき)
「そこなう」も、印象に残る作品です。
2人が15年かけて、ようやくたどり着いた幸せのはずだったのだが・・・
最も気に入った作品は、「じゃこじゃこのビスケット」です。
高校時代、精肉屋の同級生と行った、初めてのドライブは・・・
「何ひとつ、ちっとも愉快ではなかった。美しくもなく、やさしくもなかった。
それでも思いだすのは、あの夏の日のことだ。」(P43)
その思い出を特別なものにしているのは、当時の純真な気持ちだと思います。
私自身は、そういう純真さを失って、だいぶたちました。
ところで、江國香織の「つめたいよるに」という短編集も、とてもオススメです。
こちらも新潮文庫から出ています。どの作品も短くて読みやすいです。
前半の「つめたいよるに」は、怪談めいた短編集ですが、怖くはありません。
後半の「温かなお皿」は、習作的なショートショート集です。
オススメは前半の「つめたいよるに」。特に、その冒頭の「デューク」です。
愛犬デュークが死んだ翌日、私が出会ったハンサムな少年は・・・
「草之丞の話」もまた、しみじみとした味わいを持つ名編です。
ある日、おふくろと一緒にいたさむらいは幽霊で、僕の父親だというが・・・
「スイート・ラバーズ」は、不思議な物語です。
祖母が死んだ翌日に生まれた麻子は、祖母の生まれ変わりと言われたが・・・
ほか、ヘビを見て、自分がヘビだった時を思い出す「いつか、ずっと昔」や、
デビュー作で、唯一不気味な雰囲気をもつ「桃子」などが収められています。
さて、江國香織にはほかにも「神様のボート」などの魅力的な作品があります。
数年前に話題になった「冷静と情熱のあいだ」は、ぜひ読んでみたいです。
さいごに。(完全ヘンタイ?)
娘が、「完全ヘンタイ」「不完全ヘンタイ」と、ヘンなことを言っていました。
何を言っているのかと思ったら、小学3年の理科の教科書を読んでいたのです。
蝶など蛹になるのが「完全変態」、トンボなど蛹にならないのが「不完全変態」。
「おれは完全ヘンタイだあ」というギャグは、うちでは黙殺されるので悲しい。
タイトル作ほか、恋に迷う不安定な心理を描いた全12編の短編集です。
恋愛小説のカリスマとも呼ばれる作者の、直木賞受賞作です。
現在、新潮文庫で読むことができます。
どの作品も20ページ前後で、とても読みやすいです。
「人々が物事に対処するその仕方は、つねにこの世で初めてであり一度きりで
あるために、びっくりするほどシリアスで劇的です。」(あとがき)
実際、「びっくりするほどシリアスで劇的」な一瞬をとらえた物語ばかりです。
それにしても江國香織は、そのような瞬間を鮮烈に書き表すのがうまいです。
中でも傑作は、タイトルにもなった「号泣する準備はできていた」でしょう。
深く深く愛し合って、半年前に別れた運命の男。彼からきた電話は・・・
「たとえば悲しみを通過するとき、それがどんなにふいうちの悲しみであろう
と、その人には、たぶん、号泣する準備ができていた。」(あとがき)
「そこなう」も、印象に残る作品です。
2人が15年かけて、ようやくたどり着いた幸せのはずだったのだが・・・
最も気に入った作品は、「じゃこじゃこのビスケット」です。
高校時代、精肉屋の同級生と行った、初めてのドライブは・・・
「何ひとつ、ちっとも愉快ではなかった。美しくもなく、やさしくもなかった。
それでも思いだすのは、あの夏の日のことだ。」(P43)
その思い出を特別なものにしているのは、当時の純真な気持ちだと思います。
私自身は、そういう純真さを失って、だいぶたちました。
ところで、江國香織の「つめたいよるに」という短編集も、とてもオススメです。
こちらも新潮文庫から出ています。どの作品も短くて読みやすいです。
前半の「つめたいよるに」は、怪談めいた短編集ですが、怖くはありません。
後半の「温かなお皿」は、習作的なショートショート集です。
オススメは前半の「つめたいよるに」。特に、その冒頭の「デューク」です。
愛犬デュークが死んだ翌日、私が出会ったハンサムな少年は・・・
「草之丞の話」もまた、しみじみとした味わいを持つ名編です。
ある日、おふくろと一緒にいたさむらいは幽霊で、僕の父親だというが・・・
「スイート・ラバーズ」は、不思議な物語です。
祖母が死んだ翌日に生まれた麻子は、祖母の生まれ変わりと言われたが・・・
ほか、ヘビを見て、自分がヘビだった時を思い出す「いつか、ずっと昔」や、
デビュー作で、唯一不気味な雰囲気をもつ「桃子」などが収められています。
さて、江國香織にはほかにも「神様のボート」などの魅力的な作品があります。
数年前に話題になった「冷静と情熱のあいだ」は、ぜひ読んでみたいです。
さいごに。(完全ヘンタイ?)
娘が、「完全ヘンタイ」「不完全ヘンタイ」と、ヘンなことを言っていました。
何を言っているのかと思ったら、小学3年の理科の教科書を読んでいたのです。
蝶など蛹になるのが「完全変態」、トンボなど蛹にならないのが「不完全変態」。
「おれは完全ヘンタイだあ」というギャグは、うちでは黙殺されるので悲しい。
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