SSブログ

変身物語 [古代文学]

 「変身物語」 オウィディウス作 中村善也訳 (岩波文庫)


 変身にまつわる出来事を軸にした、ギリシア・ローマ神話の集大成的作品です。
 紀元8年頃に書かれ、後世の文学や美術に絶大な影響を与えた作品です。

 岩波文庫から二分冊で出ていますが、HPに「在庫僅少」と表示されています。
 初版は上巻が1981年、下巻が1984年。訳は意外に分かりやすかったです。


オウィディウス 変身物語〈上〉 (岩波文庫)

オウィディウス 変身物語〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者: オウィディウス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1981/09/16
  • メディア: 文庫



 オウィディウスは、紀元1世紀のローマ文学黄金時代に活躍したローマ詩人です。
 代表作の「変身物語」は、ギリシア・ローマ神話の決定版と言っていいでしょう。

 ラテン語で書かれているため、神々の名は全てローマ名になっています。
 ゼウスはユピテル、ヘラはユノー、アプロディティはウェヌスという具合です。 

 ギリシア神話は ローマに取り入れられたので、名前は違っても役割は同じです。
 ギリシアはローマに征服されましたが、ギリシア文化はローマを征服しました。

 さて、オウィディウスの語り方は、ヘシオドスやアポロドロスと全く違います。
 これは、ローマ詩人(前者)とギリシア詩人(後者2名)の違いでしょうか。

 ギリシア詩人たちは、系統的にきちんと整理して、淡々と語っています。
 オウィディウスは、自由気ままにあちこち飛びながら、流暢に語っています。

 オウィディウスの「変身物語」は、サービス精神旺盛です。
 次々に面白いエピソードが登場し、意外な展開もあって読んでいて飽きません。

 その一方で、まとまりがなくて、話についていけなくなる面があります。
 あるエピソードの途中で、突然別のエピソードが割り込んだりするので。

 ところで、この本を初めて読んだのは30年前で、私は大学1年生でした。
 西洋文学に憧れていたので、「西洋文学史」という講義を取ったのですが・・・

 しかし講義には、ユゴーもバルザックもディケンズもゲーテも出てきません。
 なんと1年間ひたすら、オウィディウスの「変身物語」読んだのです!

 あっけにとられましたが、「だからダメだった」というわけではありません。
 この講義のおかげで、私はギリシア・ローマ神話の魅力に目覚めたからです。

 さて、この講義のテストでは、ピタゴラスの思想に関する問題が出題されました。
 最終巻のピタゴラスの輪廻転生思想が、「変身」と大きく関わっているためです。

 「万物は変転するが、何ひとつとして滅びはしない。魂は、さまよい、こちら
 からあちらへ、あちらからこちらへと移動して、気に入ったからだに住みつく。
 獣から人間のからだへ、われわれ人間から獣へと移り、けっして滅びはしない」

 数々の「変身」のモチーフは、輪廻転生思想の影響なのですね。
 それにしても、ピタゴラスがこんなことを言っていたとは!

 輪廻転生の思想は、のちにキリスト教によって、異教的だとして排斥されました。
 しかし変身物語は、現在まで2000年以上、世界の中で読み継がれています。

 オウィディウスの作品には、「恋愛指南」もあり、岩波文庫から出ています。
 タイトルどおりの内容を持つ奇書です。ぜひ読んでみたいです。


恋愛指南―アルス・アマトリア (岩波文庫)

恋愛指南―アルス・アマトリア (岩波文庫)

  • 作者: オウィディウス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2008/08/19
  • メディア: 文庫



 さいごに。(娘と読む「アオハライド」)

 「ダ・ヴィンチ」にマンガを載せるなみたいなことを書いて、矛盾しますが、
 「アオハライド」を少しずつ買って、娘と同じペースで読んでいます。

 「成美」が出てきてからの「洸」は、優しさゆえに人を傷つけるパターンでダメ。
 私は「小湊」君のファン。彼は恋愛にも友情にもまっすぐで、決してぶれません。

nice!(5)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。