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大転落 [20世紀イギリス文学]

 「大転落」 イーヴリン・ウォー作 富山太佳夫訳 (岩波文庫)


 不運によって退学処分になった青年の、転落していく多難な人生の物語です。
 ウォーのデビュー作で、20世紀イギリスを代表するユーモア小説です。

 岩波文庫から出ていましたが、現在は品切れ。アマゾンで1円です。
 初版は1991年。訳は分かりやすかったです。 


大転落 (岩波文庫)

大転落 (岩波文庫)

  • 作者: イーヴリン・ウォー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1991/06/17
  • メディア: 文庫



 主人公のポール・ペニーフェザーは、極めてまじめな大学生でした。
 しかし、他の生徒の乱痴気騒ぎに巻き込まれて、退学処分になりました。

 最後に門番が言うことには「あなたも先生におなりになるんでしょうな。
 素行不良でここを退学になる学生さんは、大半がどうですから」(P15)

 聖職志望から教員へ、人生の「大転落」!
 「あなたにうってつけ」と勧められて、赴任したその学校は・・・

 第一章で1回目の転落があり、学校を舞台にのんびり進みます。
 第二章で2回目の転落があり、急に冒険小説っぽくなって激しく展開します。

 人生がどんなに激しく吹き荒れても、淡々としているポールは退屈な男です。
 むしろこの小説の面白さは主人公ポールではなく、その取り巻きにあります。

 義足のグライムズ 、かつらのプレンダーガスト、詐欺師のフィルブリック。
 それから、悪女マーゴット、さすらいの建築教授ジレーヌス。

 みんなひとクセもふたクセもあり、良い味を出しています。
 彼らに振り回されながらも、ポールが人生を学ぶところが、物語の醍醐味です。

 さて、ウォーの作品には、光文社古典新訳文庫の「ご遺体」もあります。
 岩波文庫の「愛されたもの」も同じ小説らしい。買わなくて良かった。


ご遺体 (光文社古典新訳文庫)

ご遺体 (光文社古典新訳文庫)

  • 作者: イーヴリン ウォー
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/03/12
  • メディア: 文庫



愛されたもの (岩波文庫)

愛されたもの (岩波文庫)

  • 作者: イーヴリン・ウォー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2013/03/16
  • メディア: 文庫



 詩人のデニスは、映画会社との契約が更新されず、ペット葬儀屋で働いています。
 ところがある日、部屋に帰ると、寄宿先の主人フランクが首をつっていたのです。

 デニスは葬儀屋を訪れ、そこで出会ったコスメ係りのエイメに一目ぼれし・・・
 と、ここまでは理解できます。このあと、普通なら次のように展開するはずです。

 二人は結婚し、協力しながら仲良く暮らし、ささやかな幸せをつかむ。
 その仲を取り持ったのは、友人フランクの「ご遺体」であった、と。

 しかし、私のありふれた予想を裏切り、物語はあらぬ方向へ迷走していきます。
 なんじゃこの展開は? ウォーが日本で受け入れられない理由が分かります。

 イーヴリン・ウォーの代表作は、青春回想ものの「回想のブライズヘッド」。
 岩波文庫から上下二分冊で出ています。絶版になる前に購入だけはしておこう。


回想のブライズヘッド〈上〉 (岩波文庫)

回想のブライズヘッド〈上〉 (岩波文庫)

  • 作者: イーヴリン ウォー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2009/01/16
  • メディア: 文庫



 さいごに。(転勤は無かったが)

 転勤は無かったのですが、仕事内容が少しだけ変わりました。
 2年間運営から外れてのんびりしていましたが、再び忙しくなります。

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