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にんじん [19世紀フランス文学]

 「にんじん」 ルナール作 高野優訳 (新潮文庫)


 にんじんと呼ばれ、母親から不当な扱いを受ける男の子の、成長を描いた物語です。
 ルナール自身の幼少期の体験をもとにした、49のエピソードから成っています。

 2014年に新潮文庫から新訳が出ました。とても分かりやすい訳です。
 原書と同じ挿し絵が入っていているのも嬉しいです。


にんじん (新潮文庫)

にんじん (新潮文庫)

  • 作者: ジュール ルナール
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/09/27
  • メディア: 文庫



 主人公は、赤毛でソバカスがあるため「にんじん」と呼ばれる男の子です。
 にんじんは、母親によって虐待されています。この虐待がなかなかひどい。

 家の雑用を押し付けられ、おいしいものは与えられませんが、それはまだいい。
 極めつけは、おねしょをスープに混ぜて、飲ませられる場面でしょう。

 この母親の残酷な仕打ちは理解に苦しみます。彼女は精神的な病気でしょうか。
 訳者はあとがきで、「モラル・ハラスメント」として解釈していますが・・・

 一方で父親は、にんじんに不器用ながらも愛情を持って接しています。
 たとえば、お父さんとの手紙のやりとりは、冷淡というよりもユーモラスです。

 「おまえが手紙に書いてきた作家たちは、私やおまえと同じく人間だ。
  つまり、彼らにできることは、おまえにもできるということだ。
  だから、まず自分で本を書きなさい。」

 ほかにも随所で、残酷な母親と優しい父親、という構図が成り立っています。
 しかし、最後まで読んで、私はそのとらえ方が大きく変わりました。

 「ぼくも母親が嫌いなんだ。」というにんじんに、父親が答えた言葉は・・・
 この言葉は、母親に対してあまりにも残酷ではないか?

 この小説は、虐待を生き抜いた男の子が、人間的に成長する物語だと言われます。
 しかし私には、ダメな母親が、最後にのけものにされる物語だと思いました。

 ある意味、この物語で一番かわいそうなのは、母親なのかもしれません。
 このような終わり方をしたところに、ルナールの幼少期の深い傷跡が見えます。

 さて、49の小話のうち最も面白かったのは、「赤いほっぺ」です。
 にんじんが、ヴィオロン先生のことを告げ口した本当の理由は・・・

 にんじんの屈折した心理が読み取れて面白いです。
 「赤いほっぺ」は、単独のショートショートとして楽しむことができそうです。

 ところで、恥ずかしながら私は、49になって初めて「にんじん」を読みました。
 実際に読んでみて、今まで漠然と抱いていたイメージが、だいぶ変わりました。

 さいごに。(ころぼっくるヒュッテ)

 家族旅行初日は、台風が次々に三つも発生した日で、天気が不安定でした。
 車山は、肩の駐車場から歩いて登りましたが、山頂は霧の中でした。

 しかし、ころぼっくるヒュッテで食べたボルシチが、とてもおいしくて良かったです。
 知る人ぞ知る老舗のヒュッテです。来年はここに泊まろうか、と話しています。

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